• 日常

王女の想い

マスター:藤山なないろ

このシナリオは5日間納期が延長されています。

シナリオ形態
ショート

関連ユニオン
アム・シェリタ―揺籃館―

難易度
普通
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
少なめ
相談期間
4日
プレイング締切
2014/08/25 19:00
リプレイ完成予定
2014/09/08 19:00

オープニング

●Nightmare repeated

「……報告は、以上です」
 先日の円卓会議から半月ほど経過しただろうか。
 現在、その円卓の間には、王国騎士団長エリオット・ヴァレンタイン(kz0025)と、大司教セドリック・マクファーソン(kz0026)の姿があった。
「また、羊型の歪虚……か」
 セドリックが、眉間の皺を深める。吐き出す溜息は、重く、長い。
 対するエリオットは、しばし発言を躊躇うように視線を落としていたが、意を決したように切り出した。
「僭越ながら、あの“羊”はもしや……」
「エリオット・ヴァレンタイン」
 騎士団長の提言を根本から否定するかのように、大司教は強く青年の名を呼び、静かに首を左右に振った。
 エリオットの発言は気の迷いからくるものでもなければ、迂闊な発言などという類のものではないだろう。
 だが、セドリックは皆まで言わせることはなかった。
「貴君の言わんとすることは解る。だが……いや、止そう。同盟領への派遣、失策であったなどと言わせるな」
 大司教の反応は“相応の強さ”が感じられた。
 そこに幾つもの意図が含められていることは、痛いほど理解できた。だから……
「承知しました」
 青年はそれを噛み砕き、確りと頷いた。

 エリオットが報告を上げたのは、つい数日前に王国西部に再び現れた半人半羊の歪虚の群れの事だった。現在王国騎士団は同盟領への戦力派遣に伴い、国内の警備を主とした各種業務で手いっぱい──どころではなく、既に限界を迎えようとしていた。王国西部にある酒の名産地デュニクス近くの駐屯地では、多数の騎士が病に伏せってしまい、挙句管理をしていた上位騎士までもが倒れたとの報告が入っている。この状況でいつまで持ちこたえられるだろうか──などと愚かしい考えを巡らせる寸前、円卓の間を出てすぐの廊下の角に、ふわふわと輝く金の髪が見えた。
「システィーナ様?」
 隠れていたつもりだったのだろう。エリオットに名を呼ばれてからしばし、間をおいて申し訳なさそうな様子の少女がそろりと顔を出した。それは、グラズヘイム王国の宝とも呼ばれる、王女システィーナ・グラハム(kz0020)だった。
「エリオット、あの……」
 ここは王城だ。システィーナがどこを歩いていても不思議ではない。だが、当の少女はその場にいることを申し訳なく思っているような、今にも泣き出しそうな顔で俯いている。
「私……偶然、聴こえてきて、それで……」
 戦況や殺気の類には恐ろしく鋭敏ではあるが、エリオットは人の気持ちにさほど敏くないのだろう。王女の心中を察せられず疑問符を浮かべていたのだが……
「騎士団の状況は、どう、なのですか」
 そこで漸く認識が追いついた。少女は、騎士団長から大司教への先程の報告を聞いてしまったらしい。同盟領への戦力派遣に伴い王国騎士団が酷い状況に陥っている事を知り、それ故に“こんな”顔をしているのだろう。同盟領への騎士団派遣は、少女の願いでもあったから。
「……皆、王国のため、人々のため、誠心誠意努めております」
「そ、そうですか……あ、いえ、そうではなくて……」
 エリオットの言葉に嘘はない。だが、システィーナは何か言いたげな様子で青年を見上げている。
「王国は、皆で守り通します。ですから、ご安心下さい」
 誤魔化す意図でそう告げた訳ではない。王女は、自分が命に代えても守るべきであった主君──先王の忘れ形見。その少女に心配をかけることも、この判断の責を感じさせることも、どちらもしたくはない。だからこそ、エリオットはそう告げて、丁重にその場を辞した。
「私が、訊きたかったのは……」
 隅々まで磨かれた美しい王城の廊下、その真紅の絨毯の上。儚げな少女の呟きが、ぽつりと落ちた。

●王女の想い

 翌日の事。体調不良を訴えた騎士の代わりに巡回業務を勤めてきたエリオットが、王都第3街区にある騎士団本部へ帰還。すると、戸惑った様子の部下が「エリオット様……」と青年の名を呼び何かを訴えている。現在組織としての臨界点を彷徨っている王国騎士団は、いつ何が起こってもおかしくはない。自らの判断の重みを感じ、小さく息をついて頭を整理。冷静をとり戻した後、「何があった」と覚悟を決めて切り出した。
「あの、つい先ほどハンターさんたちがお見えになって……どちらにお通しすれば良いですか?」
「……ハンターが?」
「え? エリオット様じゃないんですか? “お手伝いさん”召喚したの」
「どういうことだ?」

 所変わって王国騎士団長の執務室。本部の中に設えられたその部屋は、団長が代替わりした際にエリオットの意向で必要最低限の調度品以外が排され、至って簡素な有様だった。しかしながら、残された品のどれも拵えが良く、騎士団長の執務室という言葉の印象に相応しく感じられる。
「手狭で申し訳ないが、そこにかけてくれ。状況を、把握したい」
 ハンターらは促され、執務机の手前にある年季の入ったソファに腰を下ろした。王国騎士団本部にやってきた経緯について、ハンター曰くはこうだ。
『我が友、ハンターの皆さまにお願いです。王国騎士団は今、前代未聞の人手不足にあえいでいるようなのです。どうか、王国に、騎士達に、一時のご助力をお願いできませんでしょうか』
 ハンターズソサエティに張り出された緊急依頼の内容が、このようなものだったと彼らは説明する。
 質の良い羊皮紙に描かれた美しい文字から依頼人の身分を感ぜられたが、依頼主は隠された。
 いや、その前に、だ。そもそも依頼内容が漠然としており、良くわからないようにも感じられる。
 それ故に、ソサエティに集ったハンターらはひとまず王国騎士団本部に直接来たとのことだが……そこまで話を聞き、エリオットは軽い眩暈を覚えた。
 ───大司教に、また叱られる。
 いや、その程度で済めばまだマシだろう。王国が派遣した戦力は非覚醒者も混在しているため転移門は使えない。そこに来て、転移門を使って瞬時に長距離移動できる覚醒者のハンターを雇って急場を凌ぐ、という発想は依頼人なりに“どこの戦力も削らない妙案”なのだろうとは思ったが……これを額面通りに受け取れば、それこそ本末転倒ではないだろうか。
 ひとまず青年は溜息をつき思考を重ねる。恐らく大司教が知っていれば当然このような事態になっていないだろう。つまり依頼人は“小遣いの範疇でこっそりハンターを雇い、派遣した”のだと思われる。16歳の少女が、恐らくは自ら責を感じ、現場の騎士を思い、その結果出来得る限りのことで助けたいという気持ちがこの結果に至ったのだろう。
 溜息をもう一つ。覚悟を決めて、青年はこう尋ねた。
「……そうだな。今日一日、仕事を頼めるか?」

 ここまでが、王国騎士団長エリオット・ヴァレンタインの視点で綴られた話。
 この物語がどんな未来に繋がっているか? それは、貴方の“行動”次第。

解説

▼依頼書全文(エリオットたちには一部の情報が伏せられた状態です)

我が友、ハンターの皆さまにお願いです。王国騎士団は今、前代未聞の人手不足にあえいでいるようなのです。
どうか、王国に、騎士達に、一時のご助力をお願いできませんでしょうか。
~ここからはエリオットたちに内緒にしてください~
実はもう1つ、皆さんにお願いがあるんです。
恥を忍んで申し上げますが……私は、国を、今を、知らなさすぎるのです。
知らないことは、時としてそれだけで罪と言えましょう。
私に、騎士団の現状を、教えて頂けませんか?
王城にて、お待ち申し上げます。

依頼人
グラズヘイム王国
王女システィーナ・グラハム

▼目的
依頼人の“2つの願い”の達成
1)王国騎士団の1日お手伝いさんとなり騎士達に助力する
2)その後、騎士団長や騎士達にばれないよう依頼人に騎士団の現状を報告する

▼状況
皆様は依頼人より仕事を引き受け、今日一日「王国騎士団専属お手伝いさん」になりました
王国騎士団の現状把握に努めつつ、騎士団をお手伝いして対応できる問題点を改善していったり、慰労などして頂けると幸いです
騎士団の状況が悪化しないようなことならば(笑)、本当に色々自由に提案&行動して頂いて大丈夫です
ポイントは、人材不足によって起こり得る問題を想定し、考え得る対策や準備を行うこと、でしょうか

問題の一端@ご参考までに
人員の不足→休みが取りにくい環境→心身ともに疲弊→体調管理に影響あり→哨戒任務の質の低下→歪虚による事件・事故を見逃しかねない→増加する負担&上がる事故率、そして責任…→対外業務に集中力&時間とも割かれるためその他業務がおろそかに
人材不足によって起こり得る各種問題は現代日本も同じようなものです

▼人物
エリオット・ヴァレンタイン(kz0025)
グラズヘイム王国騎士団団長
先日依頼でハンターさんに休息時間を作って頂いたお陰で、顔色は悪くない
外周り直後でこの日は内勤予定

マスターより

……というのがオープニング(注:エリオット視点)でのやり取りでしたが、
実は皆さんは、“エリオットには意図して告げなかったある任務”を負っている!
と言うところから物語が始まります。

何気ない日常で何気なくしたことが、後で意外な結果をもたらしてくれたり、物語を好転させてくれることもありえちゃう。それがWTの良いところですよね。
皆さまのお力でほんの少し張りつめた糸を緩めることができたなら、騎士団はもう少し頑張ることができるのではないかと思いますし、依頼人にも何らか“変化”があったりするんじゃないかなぁと思ったりします。
勿論、まだ解りませんが、皆さま次第かもしれません。どうぞよろしくお願いいたします。

関連NPC

  • 王国騎士団“黒の騎士長”
    エリオット・ヴァレンタイン(kz0025
    人間(クリムゾンウェスト)|29才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2014/09/07 20:54

参加者一覧

  • カコとミライの狭間
    ジョージ・ユニクス(ka0442
    人間(紅)|13才|男性|闘狩人

  • ルカ(ka0962
    人間(蒼)|17才|女性|聖導士
  • 光森の太陽
    チョココ(ka2449
    エルフ|10才|女性|魔術師
  • 戦うメイドさん
    プルミエ・サージ(ka2596
    人間(紅)|15才|女性|猟撃士
  • 未来を想う
    アイシュリング(ka2787
    エルフ|16才|女性|魔術師
  • 黒の懐刀
    誠堂 匠(ka2876
    人間(蒼)|25才|男性|疾影士
依頼相談掲示板
アイコン 相談卓ですっ
プルミエ・サージ(ka2596
人間(クリムゾンウェスト)|15才|女性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2014/08/24 20:27:22
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/08/24 18:30:36