• 戦闘

アニタ・カーマインと猪退治

マスター:T谷

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
少なめ
相談期間
5日
プレイング締切
2016/04/11 22:00
リプレイ完成予定
2016/04/20 22:00

オープニング

 アニタ・カーマイン(kz0005)は、退屈に押し潰されそうだった。
 来る日も来る日も終わりの見えない雑事をこなし、本を読む暇さえない。
 それもこれも、帝国領内に新しく設立された難民キャンプなどというものの管理を、連合軍から任されてしまったからだ。
 行き場のないリアルブルー人を受け入れる器としてのキャンプだったが、やはりというか、高度な文明にあぐらを掻いた現代人がこの世界の環境に慣れようとすれば時間が掛かるらしい。
 日々不満や愚痴が、マシンガンのようにひっきりなしにアニタへと届く。水道用のポンプや発電機など、サルヴァトーレ・ロッソから少しばかりの機器を預かってはいるのだが、その稼働も整備も、誰も技術を持っておらずアニタに任せきりの有様だ。
 もしも帰ることが出来なければ……などという仮定は考えたくないが、そうなれば彼らはここに順応するしかない。出来ることなら、文明に頼らず生きていく力を身に付けてくれればと思うのだが。
「……ま、一ヶ月程度じゃそんなもんかねえ」
 そもそも、彼らの殆どは一般人だ。あらゆる知識が生命線となりうる戦場で生きてきた、アニタの感覚の方がズレているというのは否めなかった。



 しかし、彼女を取り巻く環境の変化はそれだけではない。
「アニター!」
 今日も朝から小屋に籠もり、陳情の処理や軍への報告書作成に追われていたアニタの耳に、外から彼女を呼ぶ子供の声が聞こえてきた。
「はぁ……またかい」
 切羽詰まったようなその声は恐らく泣き出す寸前で、文机から顔を上げたアニタはため息をついて目頭を揉む。
 バタンと大きな音を立ててドアが開いた。目を擦りながら入ってきたのは、小さな男の子だ。
「フリッツ、そんな簡単に泣くもんじゃないよ。男だろ?」
「……だって、だってお兄ちゃんが!」
 その後ろでぶすっと拗ねるハインリヒは、泣いているフリッツの兄に当たる。
 フリッツが泣くのは、決まってハインリヒの仕業だ。アニタは椅子を回し、兄弟に向き直る。
「で、ハイン。今日は何をやらかした?」
「……」
 拗ねて拳を握ったまま何も言わないハインリヒと、泣いたまま要領の得ないフリッツ。
 十歳と八歳というまだ幼いこの兄弟をアニタが引き取ってから、およそ二ヶ月。こんなことは日常茶飯事だった。
 三ヶ月前のあの戦場で、彼らを助けたことに後悔はない。だが、まさか自分が子育てまがいのことをすることになるとは思っていなかった。
 何を考えてこの二人は、自分の元に居たいなどと引取先の施設に直談判などしたのだろう。嫌という訳ではないが、子供と接した経験などないアニタにとって、彼らはよく分からない怪物のようなものだった。
 毎日どうしたらいいか分からないし、仕事と相まって心労は溜まっていく一方だ。
「ほらハイン、悪いことしたんならちゃんと謝りな」
「してないよ! アニタに銃教えて貰おうって、言っただけ!」
「はあ……またか。あんたにはまだ早いって、いつも言ってるだろうに。……いいか、何度も言うけどこれは人殺しの道具だ。気安く触っていいもんじゃないし、軽い気持ちで習うもんでもない。そういうもんじゃないんだよ」
 最近キャンプのおばさんに教えて貰った、視線を合わせるという必殺技を用いてハインリヒに語りかけた。
 だが聞いているのかいないのか、ハインリヒはぷいと顔をアニタから背け、また拗ねたような横顔を見せた。
「だから、アニタ嫌だって言うって言ったじゃん!」
 フリッツの抗議も空しく、ハインリヒはむっとした様子でフリッツを睨み付ける。
 また今にも、喧嘩が始まってしまいそうだ。
「何なんだその原因は……」
 これまでアニタが見てきた喧嘩と言えば、屈強な男達が女を巡って殴り合うような類いのものだ。目の前のものは世間一般では微笑ましいと言えるのかもしれないが、毛色が違いすぎてまるで異次元だ。
 だから、

「あ、アニタさん、ちょっと来て貰えますか!」
 普段は鬱陶しくて頭痛のする雑事が、神の思し召しに聞こえるのも仕方の無いことなのだ。



 キャンプから出るなとだけ子供達に言い聞かせ、アニタは管理事務所へと向かう。
 彼女の要望で事務所から離れて建てられた住居から、歩くこと五分程度。その道中で見られるキャンプの有様は、一言で言えば”雑然”だった。
 近代的なプレハブの小屋が並ぶ中にログハウスが見えたかと思えば、テントが張ってあったり牛や羊も闊歩している。未だ建造中の建物も多く、建造しようと材料を集めたところで放置している箇所まである。
 これは近々、誰かしらに手伝いを頼む必要があるかもしれない。
 そんなことを考えながら事務所に赴けば、そこにはキャンプを囲む農業地の管理を任せてある男がしゅんとうなだれて机に目を落としていた。
「いやー何と言いますか……近くの山を開墾しようとしたらですね、作業員達が揃って大きな猪を見たというんです。こちらには降りてきていないんですが、皆怖がっちゃいましてね……畑仕事も思うように進まんのです」
 ぴくりと、それを聞いたアニタの眉が動く。
 猪。それは歪虚だろうか、野生の生物だろうか。
「なるほどね。それを退治すればいいのかい?」
 そんなことはどうでも良いとばかりに、アニタの瞳に光が灯る。ニヤリと、口元は知らず綻んでいた。
 ――久しぶりに、戦える。
「ええ、ここらにたまたま来ていたハンターの皆さんが手伝ってくれるというので、カーマイン殿には道案内をお願いしたいのです」
「……ああ、ハンターの都合は付いてるのかい」
 一人の方が濃い闘争を楽しめるというのに、などと思って少し落胆する。
 だがここで反対するのは余りに大人げない。アニタは何食わぬ顔で了承し、社交辞令的な感謝の言葉を背に受けながら事務所を後にした。

解説

・概要
 山に潜む猪型歪虚をアニタと共に討伐せよ。
 あと子供達と遊んでやってくれると、あたしが助かる。(アニタ談)

・敵
 猪型の歪虚です。通常の猪の数倍の体躯を誇り、サイズは3となります。
 外敵がいなければ比較的穏やかな性質で、そのため行動範囲が狭くこれまで発見されなかったようです。頑丈な二本の牙を使って地面を掘り、そこに潜って過ごしています。
 ただし一度外敵を発見すれば一も二もなく激昂し、巨体を活かした突進で襲いかかってくるでしょう。
 また、その毛皮は尋常でない程に分厚く、かなりの防御力を持ちます。

・場所
 山の裾、木もまばらな平地です。起伏は少なく、見通しも悪くありません。

・アニタ
 とにかく銃を撃ちまくりたいようです。

マスターより

子供に好かれた覚えがあまりありませんT谷です。
そういえば、猪の旋回性能って実はかなり高いらしいですよ?

関連NPC


  • アニタ・カーマイン(kz0005
    人間(リアルブルー)|24才|女性|猟撃士(イェーガー)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2016/04/19 16:39

参加者一覧

  • 遙けき蒼空に心乗せて
    ユキヤ・S・ディールス(ka0382
    人間(蒼)|16才|男性|聖導士
  • 双璧の盾
    近衛 惣助(ka0510
    人間(蒼)|28才|男性|猟撃士
  • 生者の務め
    結城 藤乃(ka1904
    人間(蒼)|23才|女性|猟撃士
  • この手で救えるものの為に
    カッツ・ランツクネヒト(ka5177
    人間(紅)|17才|男性|疾影士
  • 兎は今日も首を狩る
    玉兎 小夜(ka6009
    人間(蒼)|17才|女性|舞刀士
  • お約束のツナサンド
    アルスレーテ・フュラー(ka6148
    エルフ|27才|女性|格闘士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/04/07 20:38:46
アイコン 作戦相談卓
玉兎 小夜(ka6009
人間(リアルブルー)|17才|女性|舞刀士(ソードダンサー)
最終発言
2016/04/11 11:46:35