ゲスト
(ka0000)
悪意満ちゆく者
マスター:T谷

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 4~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2016/04/19 19:00
- リプレイ完成予定
- 2016/04/28 19:00
オープニング
アイアンメイデンに座って足をばたばたさせるエリザベートは、で先程から文句ばかりを垂れ流している。
「ねー、ホントに来んの?」
「……ああ」
その側に立つ青黒い鎧に身を包んだ男――オウレルは、彼女のことなど我関せずじっと正面を見据えていた。
この小屋から”掃除屋”と呼ばれる存在が逃げ出してしばらく経つ。それがどこに行ったのか。残された負のマテリアルが東に向かったと聞き、直ぐに思い当たった。
カールスラーエ要塞だ。
そしてそれが要塞へ辿り着いたなら。間違いなくこの場所は特定され、部隊が派遣される。
どのようにして地中深く埋もれたか細い痕跡を追うのかは分からない。だが、オウレルの知っている彼らならそれを成し遂げると、そう確信していた。
根底にあるのは、忌まわしき記憶。
思い出す度に、どうしようもない苛立ちに襲われ、同時に酷い頭痛と胸の痛みに苛まれる。
楽しいと。面白いと。このままここで、何も考えずに過ごしていたいと。
かつてあの場所で、そんな愚劣極まりないことを考えてしまっていた過去の自分という存在。
そのものを。
全てすり潰し乗り越えるためにオウレルは、ただ待っていた。
「はぁ……もうあたし行くかんね?」
「好きにしたらいい」
「……マジ意味分かんね」
声を掛けられても、オウレルは目線すら向けない。
それに苛ついたのだろう。エリザベートは聞こえよがしに舌打ちを鳴らした。
何と言われようとも構わない。オウレルは消し去らなければならないのだ。自分が人間であったという、その証を。
そうしなければ、決して堂々と胸を張ることなど出来ないだろう。
――自分が、オルクス様に忠義を誓う者であると。全てをオルクス様に捧げた身であると。
そうだ、オルクス様。
オルクス様だ。
あの聡明で、高潔で――
聡明……? あの、嫌みたらしい口調の持ち主が?
高潔? 人の体を啜り喰らう、語るも憚る化け物が?
「……う、あああ」
頭の中にノイズが走る。
視界が歪んで極彩色がぎらぎらと舞う。
目が痛い頭が痛い喉が胸が胃が全身の筋肉が。全て張り裂けとばかりに悲鳴を上げる。
「ぐ、うう、僕……僕は……!」
脳がぐちゃぐちゃに掻き乱され、自分は誰なのか、ここはどこなのか、様々な疑問が脳裏に怒濤の如く浮かんでは消える。
「何、またぁ?」
そこに、声が飛び込んできた。
それを聞いた瞬間、咄嗟にオウレルは腰の剣を抜いていた。
「お前は……お前が……!」
視界の端に辛うじて捉えたその影に向け、オウレルは剣を投げつけていた。
力の入らない腕で、踏ん張ることも出来ずに投げた剣は、明後日の方角に飛んでいく。
「ホント、オルちゃんの魅了喰らってまだ頑張るとかさ、ちょっとしつこすぎない?」
「仲間……僕の、仲間は……グンター、ジーク、ヨゼフ……」
「いつの話してんの」
蹲るオウレルを見下すように、エリザベートが完璧な嘲笑を浮かべ言い放つ。
「んなもんとっくに死んでるっつーの」
「おま、えがあああっ!」
その瞬間、全ての力を注いでオウレルはエリザベートに飛びかかった。しかし少しも行かないうちに、足をもつれさせて地面を転がる。
「てかさ」
それをエリザベートは、動物園のパンダでも見るような目で眺めると、
「殺したんじゃん。あんたが、その手で」
何を当たり前なことをと告げた。
「命乞いするのを、なーんの躊躇もなくさぁ。あれはちょっと楽しかったなぁ、きゃはははっ!」
エリザベートは転がったオウレルの髪を鷲づかみにし、顔を引っ張り上げる。
「もうさ、あんたは戻れないの。いい加減諦めたら?」
エリザベートの瞳が赤く輝く。強制的に視線を合わされ、オウレルはその光を間近に浴びる。
「それにその発作みたいなの、だんだん間が開いてきてるよねぇ。抵抗する力が、無くなってきてんの」
光が侵食するように目から脳へと入り込み――そして、荒れた心が穏やかになっていくのを感じた。
オウレルが大人しくなったのを見てエリザベートはニヤリと笑い……しかしその笑みの中に、何か違う感情を覗かせて。
掴んだ頭を、思い切り蹴飛ばした。
「……痛いな」
「目ぇ覚めたでしょ」
オウレルがゆっくりと体を起こす。
そうだ、自分はこんなことをしている場合ではないのだ。示さなければいけない。
全ては、オルクス様のために。
●
「よっしゃ掘れ掘れぇっ!」
「おう!」
カールスラーエ要塞の直下に広がる大空間に、熱気と怒号が渦巻いていた。
スライム襲撃事件。これを受けて、その侵入経路の特定が、今まさに第二師団員の手によって行われているのだ。
痕跡は薄く、またその大半は地中に埋もれている。それを辿るのは簡単ではない。
ならばどうするか。
簡単だ。地中に埋もれ分かりづらいなら、地中ではなくしてしまえばいい。
「どうだ、何か臭うか!」
「何となくな! そのまま掘り進めてくれ!」
とにかく怪しい部分を掘り返し、そこに覚醒者が顔を突っ込んでマテリアルの残滓を探す。
大体の方角が分かれば十分だ。その方角の延長線上、そこを虱潰しに調べればいい。
「よーしお前らとにかく掘れぇっ! 敵は待っちゃくれねえぞ!」
「誰か新しいシャベル持って来てくれ! 力入れすぎてぶっ壊れちまった!」
「てめえ何本目だよ!」
ひたすら騒がしく、昼も夜も通して師団員は穴を掘っていく。そしてそれは数日にも及び――
「伝令! 要塞西数キロの地点に、怪しげな小屋を発見しました!」
「よっし、ハンター呼んでこい! 俺らだけじゃ怖え!」
「了解!」
やがてその場所を、何とか探し当てたのだった。
●
小屋に駆けつけたハンター、そして第二師団員を待っていたのは、青黒い鎧に身を包んだ一人の男だった。
師団員達の数人が、その姿を見て声を上げる。
「お、お前、オウレル……!」
生きていたのかとその目に涙を浮かべ。しかし次の瞬間、彼の雰囲気に違和感を覚える。
「……待ってたよ」
オウレルは、腰に下げた二本の剣を引き抜いた。
その目には、何の感情も浮かんでいない。まるで羽虫を叩くときのように。
「何だ、ヴァルターはいないのか」
ちらりと視線だけを動かして、オウレルが呟く。
「そ、そうだヴァルター! あいつが一番お前を心配してたんだ。待ってろ、いま呼んで……!」
「ああ、別にいいよ」
急いで魔導短伝話を取り出そうとした師団員は――しかしそれを取ることが出来なかった。
「お、オウレル……なんで」
血が吹き上がる。袈裟懸けに胴体を斬り裂かれ、目を見開いたまま師団員はどさりと倒れた。
剣に付いた血糊を払い、オウレルが片手を上げる。
「どちらにしろ、皆殺すんだから」
――周囲の茂みが一斉に音を鳴らし、手に手に剣を構えたゾンビの群れが飛び出してきた。
「ねー、ホントに来んの?」
「……ああ」
その側に立つ青黒い鎧に身を包んだ男――オウレルは、彼女のことなど我関せずじっと正面を見据えていた。
この小屋から”掃除屋”と呼ばれる存在が逃げ出してしばらく経つ。それがどこに行ったのか。残された負のマテリアルが東に向かったと聞き、直ぐに思い当たった。
カールスラーエ要塞だ。
そしてそれが要塞へ辿り着いたなら。間違いなくこの場所は特定され、部隊が派遣される。
どのようにして地中深く埋もれたか細い痕跡を追うのかは分からない。だが、オウレルの知っている彼らならそれを成し遂げると、そう確信していた。
根底にあるのは、忌まわしき記憶。
思い出す度に、どうしようもない苛立ちに襲われ、同時に酷い頭痛と胸の痛みに苛まれる。
楽しいと。面白いと。このままここで、何も考えずに過ごしていたいと。
かつてあの場所で、そんな愚劣極まりないことを考えてしまっていた過去の自分という存在。
そのものを。
全てすり潰し乗り越えるためにオウレルは、ただ待っていた。
「はぁ……もうあたし行くかんね?」
「好きにしたらいい」
「……マジ意味分かんね」
声を掛けられても、オウレルは目線すら向けない。
それに苛ついたのだろう。エリザベートは聞こえよがしに舌打ちを鳴らした。
何と言われようとも構わない。オウレルは消し去らなければならないのだ。自分が人間であったという、その証を。
そうしなければ、決して堂々と胸を張ることなど出来ないだろう。
――自分が、オルクス様に忠義を誓う者であると。全てをオルクス様に捧げた身であると。
そうだ、オルクス様。
オルクス様だ。
あの聡明で、高潔で――
聡明……? あの、嫌みたらしい口調の持ち主が?
高潔? 人の体を啜り喰らう、語るも憚る化け物が?
「……う、あああ」
頭の中にノイズが走る。
視界が歪んで極彩色がぎらぎらと舞う。
目が痛い頭が痛い喉が胸が胃が全身の筋肉が。全て張り裂けとばかりに悲鳴を上げる。
「ぐ、うう、僕……僕は……!」
脳がぐちゃぐちゃに掻き乱され、自分は誰なのか、ここはどこなのか、様々な疑問が脳裏に怒濤の如く浮かんでは消える。
「何、またぁ?」
そこに、声が飛び込んできた。
それを聞いた瞬間、咄嗟にオウレルは腰の剣を抜いていた。
「お前は……お前が……!」
視界の端に辛うじて捉えたその影に向け、オウレルは剣を投げつけていた。
力の入らない腕で、踏ん張ることも出来ずに投げた剣は、明後日の方角に飛んでいく。
「ホント、オルちゃんの魅了喰らってまだ頑張るとかさ、ちょっとしつこすぎない?」
「仲間……僕の、仲間は……グンター、ジーク、ヨゼフ……」
「いつの話してんの」
蹲るオウレルを見下すように、エリザベートが完璧な嘲笑を浮かべ言い放つ。
「んなもんとっくに死んでるっつーの」
「おま、えがあああっ!」
その瞬間、全ての力を注いでオウレルはエリザベートに飛びかかった。しかし少しも行かないうちに、足をもつれさせて地面を転がる。
「てかさ」
それをエリザベートは、動物園のパンダでも見るような目で眺めると、
「殺したんじゃん。あんたが、その手で」
何を当たり前なことをと告げた。
「命乞いするのを、なーんの躊躇もなくさぁ。あれはちょっと楽しかったなぁ、きゃはははっ!」
エリザベートは転がったオウレルの髪を鷲づかみにし、顔を引っ張り上げる。
「もうさ、あんたは戻れないの。いい加減諦めたら?」
エリザベートの瞳が赤く輝く。強制的に視線を合わされ、オウレルはその光を間近に浴びる。
「それにその発作みたいなの、だんだん間が開いてきてるよねぇ。抵抗する力が、無くなってきてんの」
光が侵食するように目から脳へと入り込み――そして、荒れた心が穏やかになっていくのを感じた。
オウレルが大人しくなったのを見てエリザベートはニヤリと笑い……しかしその笑みの中に、何か違う感情を覗かせて。
掴んだ頭を、思い切り蹴飛ばした。
「……痛いな」
「目ぇ覚めたでしょ」
オウレルがゆっくりと体を起こす。
そうだ、自分はこんなことをしている場合ではないのだ。示さなければいけない。
全ては、オルクス様のために。
●
「よっしゃ掘れ掘れぇっ!」
「おう!」
カールスラーエ要塞の直下に広がる大空間に、熱気と怒号が渦巻いていた。
スライム襲撃事件。これを受けて、その侵入経路の特定が、今まさに第二師団員の手によって行われているのだ。
痕跡は薄く、またその大半は地中に埋もれている。それを辿るのは簡単ではない。
ならばどうするか。
簡単だ。地中に埋もれ分かりづらいなら、地中ではなくしてしまえばいい。
「どうだ、何か臭うか!」
「何となくな! そのまま掘り進めてくれ!」
とにかく怪しい部分を掘り返し、そこに覚醒者が顔を突っ込んでマテリアルの残滓を探す。
大体の方角が分かれば十分だ。その方角の延長線上、そこを虱潰しに調べればいい。
「よーしお前らとにかく掘れぇっ! 敵は待っちゃくれねえぞ!」
「誰か新しいシャベル持って来てくれ! 力入れすぎてぶっ壊れちまった!」
「てめえ何本目だよ!」
ひたすら騒がしく、昼も夜も通して師団員は穴を掘っていく。そしてそれは数日にも及び――
「伝令! 要塞西数キロの地点に、怪しげな小屋を発見しました!」
「よっし、ハンター呼んでこい! 俺らだけじゃ怖え!」
「了解!」
やがてその場所を、何とか探し当てたのだった。
●
小屋に駆けつけたハンター、そして第二師団員を待っていたのは、青黒い鎧に身を包んだ一人の男だった。
師団員達の数人が、その姿を見て声を上げる。
「お、お前、オウレル……!」
生きていたのかとその目に涙を浮かべ。しかし次の瞬間、彼の雰囲気に違和感を覚える。
「……待ってたよ」
オウレルは、腰に下げた二本の剣を引き抜いた。
その目には、何の感情も浮かんでいない。まるで羽虫を叩くときのように。
「何だ、ヴァルターはいないのか」
ちらりと視線だけを動かして、オウレルが呟く。
「そ、そうだヴァルター! あいつが一番お前を心配してたんだ。待ってろ、いま呼んで……!」
「ああ、別にいいよ」
急いで魔導短伝話を取り出そうとした師団員は――しかしそれを取ることが出来なかった。
「お、オウレル……なんで」
血が吹き上がる。袈裟懸けに胴体を斬り裂かれ、目を見開いたまま師団員はどさりと倒れた。
剣に付いた血糊を払い、オウレルが片手を上げる。
「どちらにしろ、皆殺すんだから」
――周囲の茂みが一斉に音を鳴らし、手に手に剣を構えたゾンビの群れが飛び出してきた。
解説
・概要
オウレルの待ち伏せを制し、これを撃退せよ。
・敵
「オウレル」
闘狩人。覚醒者としてかなりの能力を持っており、二本の長剣を用いた剣技を操ります。
未だに人間ではあるようですが、歪虚に忠誠を誓っていて容赦がありません。
ゾンビと連携し襲いかかってきますが、基本的には小屋の前に陣取っています。
「ゾンビ」
剣技に優れた、比較的腐敗の少ないゾンビの群れです。左右と背後から五体ずつ、計十五体が一斉に襲いかかってきます。
全ての個体が執事服かメイド服のどちらかをきっちりと着込んでいます。
喋る個体はいないようです。
・場所
周囲を高い木々と低木、茂みに囲まれた広場です。正面には古びた薪割り小屋が存在します。
・友軍
第二師団員六人。全員が闘狩人であり、平均的な能力を持っています。具体的には、ゾンビ一体と互角と言ったところです。
スライムが発生していた場合を想定し、まとめて焼くため大量の油を持ってきています。
オウレルの待ち伏せを制し、これを撃退せよ。
・敵
「オウレル」
闘狩人。覚醒者としてかなりの能力を持っており、二本の長剣を用いた剣技を操ります。
未だに人間ではあるようですが、歪虚に忠誠を誓っていて容赦がありません。
ゾンビと連携し襲いかかってきますが、基本的には小屋の前に陣取っています。
「ゾンビ」
剣技に優れた、比較的腐敗の少ないゾンビの群れです。左右と背後から五体ずつ、計十五体が一斉に襲いかかってきます。
全ての個体が執事服かメイド服のどちらかをきっちりと着込んでいます。
喋る個体はいないようです。
・場所
周囲を高い木々と低木、茂みに囲まれた広場です。正面には古びた薪割り小屋が存在します。
・友軍
第二師団員六人。全員が闘狩人であり、平均的な能力を持っています。具体的には、ゾンビ一体と互角と言ったところです。
スライムが発生していた場合を想定し、まとめて焼くため大量の油を持ってきています。
マスターより
ゾンビを出すのは久しぶりなような気がしますT谷です。
ちなみにエリザベートは待つのに飽きて、どこかに行ってしまいました。
ちなみにエリザベートは待つのに飽きて、どこかに行ってしまいました。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2016/04/27 12:49
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/04/15 20:12:31 |
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作戦相談卓 玉兎 小夜(ka6009) 人間(リアルブルー)|17才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2016/04/19 07:08:45 |