ゲスト
(ka0000)
紅蓮の微笑
マスター:神宮寺飛鳥

- シナリオ形態
- ショート
関連ユニオン
APV- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2014/09/01 07:30
- リプレイ完成予定
- 2014/09/10 07:30
オープニング
「――実は、皇帝の座を降りようかと考えているのだ」
バルトアンデルス城内、皇帝の執務室。お茶を運んできた所に放たれた一言にオズワルドは目を丸くする。
が、今度はあまり驚かなかった。眉を潜め腕を組むと、しばし考え込んだ後に言った。
「それは……なんだ? どういう意味なんだ?」
「どうとは?」
「なんか違う意味があンだろ? お前が本当に皇帝をやめるとは思えん」
「いや、そのまんまの意味だよ?」
しばし見つめ合う二人。オズワルドはゆっくりと歩み寄り、ヴィルヘルミナの胸倉を掴み上げた。
「このクソ小娘ェ! いい加減ぶん殴るぞ!」
「暴力はやめないかオズワルド。というか、皇帝を殴るな」
「うっせェ! お前さんが皇帝をやめたらこの国がどうなンのかわかってんだろうが!?」
にこりと穏やかに微笑むヴィルヘルミナ。そう、わかっている。この国にはどうしても皇帝が必要なのだ。
強く、圧倒的で、人ならざる覇気を持つ強王がいてこそ、危ういバランスが保たれている。革命戦争で頭が挿げ変わった武力国家なのだ。その皇帝は並大抵で勤まる役職ではない。
「勿論だよ。だからこそタングラムは私をこの国に呼び戻したのだからね」
胸倉を掴まれたまま懐かしそうに語る。そう、世界を一人で旅していたヴィルヘルミナをこの国に呼び戻したのがタングラムであった。あの時は色々あってタングラムと決闘する事になり、それを打ち破って皇帝となったのだ。
「うん、懐かしい懐かしい」
「懐かしんでる場合か! お前はなぁ、毎度毎度もう少し物を考えて……」
「考えた上での結論だよ、オズワルド」
手を離させながら立ち上がると、窓の向こうに顔を向ける。
「この国の皇帝に相応しいのは本当に私なのだろうか? 国民の多くはそんな疑問を頭の片隅に持ってこれまで生きて来たはずだ」
「当たり前だろ。万能の王なんざ幻想だ」
「だが今一度それを問う必要はあるのではないかね? 私もほら、女だ。己のやり方を不安に思ったり思わなかったりする事がある」
「嘘つけェ!! お前がしなを作ってる時はぜってぇ碌な事考えてねェ時なんだよ!!」
ニコニコしながらオズワルドの叫びを受けていたヴィルヘルミナだが、急に纏っている雰囲気が変わる。重く、どす黒い迫力のある空気だ。表情は相変わらず優しげな笑みだが、その瞳には異様な気配が渦巻いている。
「剣機の目撃情報が増え始めている。そろそろ新たな剣機がお目見えするだろう」
「……それがどうした?」
「同盟領で発生した事件に兵を送らなかった事で、国民も兵も私に対する疑念を抱いている筈だ」
「……そうだな」
まるでそうであってほしいと言わんばかりの語り口に冷や汗を流すオズワルド。
昔からそうだった。まだこの女が少女であった時から、時折何を考えているのかさっぱりわからない瞬間があった。そしてその悪寒にも似た気配は、彼女が王としてこの国に呼び戻された頃から増したように思える。
「考えなしってわけじゃねェんだな?」
「深い思慮があるわけではないよ。ただ、“そうなったらいいな”と思っているだけだ」
「いいだろう。だが話は騎士議会にかけさせてもらう。この国はお前一人の物じゃねぇからな。師団長の意見を仰ぐ」
「ではその議会を招集している間、私は地方の視察でもしていよう。彼方此方の師団が同盟領の事件に手を出している今が好機だからな」
「どこが好機なんだ。狙われやすくなるだけじゃねェか」
女はまたニコリとほほ笑んだ。まさかそれこそが“好機”という事なのか。
「だったら俺かエイゼンシュテインを護衛につけろ。シグルドは……話がややこしくなるからな……」
「いや、私一人で十分だ。この国内の人間で師団長以外に私を殺せる者などいない」
「そういう問題じゃねぇよ」
「護衛ならハンターをつける。彼らと話したい事もあるからね」
「まさかお前……今の話をハンターにするつもりじゃねェだろうな?」
今日一番の楽しそうな笑顔に思い切り肩を落とすオズワルド。この女が悪ふざけにおいて折れる事がないという事も、嫌という程承知していた。
「おい、聞いたか? なんでも皇帝陛下がこの町にも来るらしいぞ」
「地方の小都市を視察して周ってるそうだが……いったいどういうつもりなんだか」
とある田舎町ではその噂でここ数日持ちきりだった。普段は帝都から出ない皇帝が地方にやってくるのは彼らにとっては一大事であり、そしてその時を待っていた者達から見れば朗報であった。
「手筈は整っているな? ヴィルヘルミナは明日、間違いなくこの町にやってくる」
「ああ。既に町長には話をつけてある。金を掴ませれば連中は絶対に喋らんだろう。どっちみち望む所だからな」
噂話をする人々を遠巻きに路地裏から眺める黒ずくめの男達がいた。彼らは数日前から仲間を集め、入念に準備を進めて来たのだ。
「偽りの皇帝を我らの手で討ち、帝国を正しき血筋の元に返すのだ」
「今は我らに否定的な旧皇族の方々も、ウランゲルの血が流れれば奮起なさるに違いない」
「「「 正統なる太陽の為に 」」」
声を合わせ頷き合う男達。段取りを終えると彼らは闇に散り散りになってゆく。
「くれぐれも気をつけろ。ヴィルヘルミナはあの剣機を破壊し、剣豪と戦い生き残った猛者だ……」
「相手が怪物であろうが関係ない。我らが命を代価に誅殺を果たすまでよ……」
気配は全て闇に消えたと思われた。しかしそこへひょっこり、一人の青年が顔を見せる。
「……やれやれ。こうなる事はわかってたろうに。何考えてやがんだ、ウランゲルの娘はよ」
頬を掻き、それから胸から提げたペンダントに手を伸ばす。
「正統なる太陽の為に……か」
この国に正義などありはしない。問題は今と昔、そのどちらがより真っ当だったかという事だけだ。
「馬鹿な連中だぜ。皇帝を殺せば世界が急に変わるわけもねぇってのによ」
この話を聞かなかった事にするか、或いは……。ひとしきり悩んだ後、青年は答えを出せぬまま暗がりを後にした。
バルトアンデルス城内、皇帝の執務室。お茶を運んできた所に放たれた一言にオズワルドは目を丸くする。
が、今度はあまり驚かなかった。眉を潜め腕を組むと、しばし考え込んだ後に言った。
「それは……なんだ? どういう意味なんだ?」
「どうとは?」
「なんか違う意味があンだろ? お前が本当に皇帝をやめるとは思えん」
「いや、そのまんまの意味だよ?」
しばし見つめ合う二人。オズワルドはゆっくりと歩み寄り、ヴィルヘルミナの胸倉を掴み上げた。
「このクソ小娘ェ! いい加減ぶん殴るぞ!」
「暴力はやめないかオズワルド。というか、皇帝を殴るな」
「うっせェ! お前さんが皇帝をやめたらこの国がどうなンのかわかってんだろうが!?」
にこりと穏やかに微笑むヴィルヘルミナ。そう、わかっている。この国にはどうしても皇帝が必要なのだ。
強く、圧倒的で、人ならざる覇気を持つ強王がいてこそ、危ういバランスが保たれている。革命戦争で頭が挿げ変わった武力国家なのだ。その皇帝は並大抵で勤まる役職ではない。
「勿論だよ。だからこそタングラムは私をこの国に呼び戻したのだからね」
胸倉を掴まれたまま懐かしそうに語る。そう、世界を一人で旅していたヴィルヘルミナをこの国に呼び戻したのがタングラムであった。あの時は色々あってタングラムと決闘する事になり、それを打ち破って皇帝となったのだ。
「うん、懐かしい懐かしい」
「懐かしんでる場合か! お前はなぁ、毎度毎度もう少し物を考えて……」
「考えた上での結論だよ、オズワルド」
手を離させながら立ち上がると、窓の向こうに顔を向ける。
「この国の皇帝に相応しいのは本当に私なのだろうか? 国民の多くはそんな疑問を頭の片隅に持ってこれまで生きて来たはずだ」
「当たり前だろ。万能の王なんざ幻想だ」
「だが今一度それを問う必要はあるのではないかね? 私もほら、女だ。己のやり方を不安に思ったり思わなかったりする事がある」
「嘘つけェ!! お前がしなを作ってる時はぜってぇ碌な事考えてねェ時なんだよ!!」
ニコニコしながらオズワルドの叫びを受けていたヴィルヘルミナだが、急に纏っている雰囲気が変わる。重く、どす黒い迫力のある空気だ。表情は相変わらず優しげな笑みだが、その瞳には異様な気配が渦巻いている。
「剣機の目撃情報が増え始めている。そろそろ新たな剣機がお目見えするだろう」
「……それがどうした?」
「同盟領で発生した事件に兵を送らなかった事で、国民も兵も私に対する疑念を抱いている筈だ」
「……そうだな」
まるでそうであってほしいと言わんばかりの語り口に冷や汗を流すオズワルド。
昔からそうだった。まだこの女が少女であった時から、時折何を考えているのかさっぱりわからない瞬間があった。そしてその悪寒にも似た気配は、彼女が王としてこの国に呼び戻された頃から増したように思える。
「考えなしってわけじゃねェんだな?」
「深い思慮があるわけではないよ。ただ、“そうなったらいいな”と思っているだけだ」
「いいだろう。だが話は騎士議会にかけさせてもらう。この国はお前一人の物じゃねぇからな。師団長の意見を仰ぐ」
「ではその議会を招集している間、私は地方の視察でもしていよう。彼方此方の師団が同盟領の事件に手を出している今が好機だからな」
「どこが好機なんだ。狙われやすくなるだけじゃねェか」
女はまたニコリとほほ笑んだ。まさかそれこそが“好機”という事なのか。
「だったら俺かエイゼンシュテインを護衛につけろ。シグルドは……話がややこしくなるからな……」
「いや、私一人で十分だ。この国内の人間で師団長以外に私を殺せる者などいない」
「そういう問題じゃねぇよ」
「護衛ならハンターをつける。彼らと話したい事もあるからね」
「まさかお前……今の話をハンターにするつもりじゃねェだろうな?」
今日一番の楽しそうな笑顔に思い切り肩を落とすオズワルド。この女が悪ふざけにおいて折れる事がないという事も、嫌という程承知していた。
「おい、聞いたか? なんでも皇帝陛下がこの町にも来るらしいぞ」
「地方の小都市を視察して周ってるそうだが……いったいどういうつもりなんだか」
とある田舎町ではその噂でここ数日持ちきりだった。普段は帝都から出ない皇帝が地方にやってくるのは彼らにとっては一大事であり、そしてその時を待っていた者達から見れば朗報であった。
「手筈は整っているな? ヴィルヘルミナは明日、間違いなくこの町にやってくる」
「ああ。既に町長には話をつけてある。金を掴ませれば連中は絶対に喋らんだろう。どっちみち望む所だからな」
噂話をする人々を遠巻きに路地裏から眺める黒ずくめの男達がいた。彼らは数日前から仲間を集め、入念に準備を進めて来たのだ。
「偽りの皇帝を我らの手で討ち、帝国を正しき血筋の元に返すのだ」
「今は我らに否定的な旧皇族の方々も、ウランゲルの血が流れれば奮起なさるに違いない」
「「「 正統なる太陽の為に 」」」
声を合わせ頷き合う男達。段取りを終えると彼らは闇に散り散りになってゆく。
「くれぐれも気をつけろ。ヴィルヘルミナはあの剣機を破壊し、剣豪と戦い生き残った猛者だ……」
「相手が怪物であろうが関係ない。我らが命を代価に誅殺を果たすまでよ……」
気配は全て闇に消えたと思われた。しかしそこへひょっこり、一人の青年が顔を見せる。
「……やれやれ。こうなる事はわかってたろうに。何考えてやがんだ、ウランゲルの娘はよ」
頬を掻き、それから胸から提げたペンダントに手を伸ばす。
「正統なる太陽の為に……か」
この国に正義などありはしない。問題は今と昔、そのどちらがより真っ当だったかという事だけだ。
「馬鹿な連中だぜ。皇帝を殺せば世界が急に変わるわけもねぇってのによ」
この話を聞かなかった事にするか、或いは……。ひとしきり悩んだ後、青年は答えを出せぬまま暗がりを後にした。
解説
●目的
帝国皇帝の護衛。
●概要
ゾンネンシュトラール帝国皇帝より入った直々の依頼により、彼女の護衛を行う。
皇帝は現在地方を巡視し、いくつかの村や町で陳情を受け付けたり演説を行っている。
基本的には帝国兵が護衛する事になっているが、この日はハンターに護衛を行ってほしいという要望により、ハンターが護衛の任に当たる。
視察を行う町は小規模な所謂地方の町で、兵隊に男手を奪われ女子供と老人だけが細々と生活を行っている。
正直な話、あえて巡回する重要度の低い、何処にでもありふれたただの町だ。
この町にある集会場で町長を始め村の一部の大人たちを集め、陳情などを受け付ける予定だと言う。
集会場が開かれるのは夕方からで、夜はこの町に一泊する。食事や寝床は町長から提供される。
●???
『黒ずくめ』
怪しい黒ずくめの男達。覚醒者ではないが、どこかで戦闘訓練を詰んでいる。
かなり鍛えているのか、生半可な帝国兵より強い。対人戦にも慣れている。複数人出現。
『???』
銀髪の青年。槍使いの覚醒者。
出てくる場合と出てこない場合がある。PCの行動によっては出現する。
出てこなくても全く依頼の成功度には影響しない。
●特筆
依頼人のヴィルヘルミナ・ウランゲルが同行。
帝国皇帝であり、彼女自身も闘狩人の武人。
愛用の剣も盾も持ってきていない自信満々スタイル。
帝国皇帝の護衛。
●概要
ゾンネンシュトラール帝国皇帝より入った直々の依頼により、彼女の護衛を行う。
皇帝は現在地方を巡視し、いくつかの村や町で陳情を受け付けたり演説を行っている。
基本的には帝国兵が護衛する事になっているが、この日はハンターに護衛を行ってほしいという要望により、ハンターが護衛の任に当たる。
視察を行う町は小規模な所謂地方の町で、兵隊に男手を奪われ女子供と老人だけが細々と生活を行っている。
正直な話、あえて巡回する重要度の低い、何処にでもありふれたただの町だ。
この町にある集会場で町長を始め村の一部の大人たちを集め、陳情などを受け付ける予定だと言う。
集会場が開かれるのは夕方からで、夜はこの町に一泊する。食事や寝床は町長から提供される。
●???
『黒ずくめ』
怪しい黒ずくめの男達。覚醒者ではないが、どこかで戦闘訓練を詰んでいる。
かなり鍛えているのか、生半可な帝国兵より強い。対人戦にも慣れている。複数人出現。
『???』
銀髪の青年。槍使いの覚醒者。
出てくる場合と出てこない場合がある。PCの行動によっては出現する。
出てこなくても全く依頼の成功度には影響しない。
●特筆
依頼人のヴィルヘルミナ・ウランゲルが同行。
帝国皇帝であり、彼女自身も闘狩人の武人。
愛用の剣も盾も持ってきていない自信満々スタイル。
マスターより
お世話になっております、神宮寺でございます。
今回はものすごく自由度の高い感じの依頼です。そういう意味でやや難しいです。
また政治色が強く、帝国の内政とかに興味がない人にはあまり向いていないかもしれません。
皇帝の話に付き合うかどうかによってはOPにあるような話をされます。
また、場合によっては銀髪の青年が登場しますが、出てこなくても大成功にすることは可能です。
それでは宜しくお願い致します。
今回はものすごく自由度の高い感じの依頼です。そういう意味でやや難しいです。
また政治色が強く、帝国の内政とかに興味がない人にはあまり向いていないかもしれません。
皇帝の話に付き合うかどうかによってはOPにあるような話をされます。
また、場合によっては銀髪の青年が登場しますが、出てこなくても大成功にすることは可能です。
それでは宜しくお願い致します。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2014/09/04 22:50
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 ロジャー=ウィステリアランド(ka2900) 人間(クリムゾンウェスト)|19才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2014/08/31 23:30:36 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/08/26 20:44:46 |