• 日常

Raspberry pink

マスター:楠々蛙

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
3日
プレイング締切
2016/05/25 12:00
リプレイ完成予定
2016/06/03 12:00

オープニング

※このシナリオは原則として戦闘が発生しない日常的なシナリオとして設定されています。

 初めて、口紅を手に取った時、どんな気持ちだった?
 ワクワクした? ドキドキしたよね?
 カワイくなりたいって、もっとキレイになりたいって、今の自分とほんのちょっぴり違う自分になってみたいって思った?
 それとも、もしかして──気になるあの人が見てくれたらいいなって想いながら、紅を引いたの?
 まだ私が、わたしだった時の事──まだ自分を世界にたった一人しか居ない特別な女の子だと思っていた時の事、覚えてる? もう忘れちゃった?
 なら、思い出してみて。
 きっと、素敵な気持ちになれるから。



 赤煉瓦を積んだ建物が目立つ石造りの街並みを歩く、男女が一組。
「あ──」
 いや、その内の一人を女と呼ぶには、やや語弊がある。ようやく十を越した年頃の少女を指す言葉としては不適切だろう。
「ん? どうしたんだ、ラウラ」
 不意に立ち止まった同行者の赤髪少女──ラウラ=フアネーレへと、金髪オールバックの男──バリー=ランズダウンが振り返った。彼が小脇に抱えているのは、日用品の入った紙袋。どうやら、買い出しの途中らしい。
 バリーの足下で、一匹の黒猫もまた飼い主の少女を振り返った。
「──ん、なんでもないわ。さあ、買い物を続けましょ」
「何でもないって事は──ああ、成程これか」
 バリーは、ラウラがその視線を吸い寄せられていた物──硝子の向こう側に置かれている物を見て、微笑する。
「ち、違うわよ」
「別に恥ずかしがらなくても良いんだぞ? 女の子なら、化粧品に気を惹かれるのは当然だ」
 ショーウインドウに展示された、彩り豊かな口紅やファンデーション、他にも数種取り揃えられた化粧品の数々は、確かに婦女子の心を留めて離さない事だろう。
 どうやらそこは、最近開店した化粧品専門店のようだ。それも、取り扱っているのは全て、リアルブルーの技術を転用した物。こちらの世界の事情故、石油製品は一つ足りともなく、どれも天然素材のみで製造されている物だが、それが却って好評らしい。
「何か欲しい物でもあるのか?」
「違うったら。……ただ、ちょっと見てただけ」
 バリーが問い掛けてみても、ラウラは彼とショーウインドウから目を逸らすばかり。その原因が、恥じらいだけではない事を、とうにバリーは察していた。
「──あー、ラウラには美味い食事を用意して貰ってるし、そのお礼にプレゼントを渡したいと思っていた所でね、どうせなら好みに合った物を渡したいんだが──
 良ろしければこのわたくしめに、今一番欲しい物をお教え願いますかか?」
 恭しい仕草で、ラウラの前に膝を立てる。
「……良いの?」
 囁くように問う声に、顔を上げたバリーは、また微笑を浮かべた。
「勿論。金ってのは、人間が幸せになる為にある物だ。それを我慢して不幸になってたんじゃ、意味がないだろう? それで、どれが欲しいんだ?」
「じゃあじゃあ、中に入って選んでも良い?」
 今すぐ駆け出しそうな勢いで店内を指差すラウラ。その表情は、キラキラと輝く粒子でも零れそうな程に輝いている。
「ああ、じっくり選ぶと良い──俺は一服付けさせて貰うから、先に入っててくれ」
「うん、わかった!」
 早く行かなければ店が逃げ出すとでも思っているかのような勢いで駆けて行くラウラを見送ると、バリーは懐の紙箱を取り出すと、煙草を一本咥える。煉瓦壁で燐寸を擦って火を点けると、紫煙を吐き出した。
 そして財布を手に取って、中身を確認した。
「食費と弾代をケチるわけにもいかんからな。──やっぱり、煙草と酒を堪えるしかないかな」
 空を仰いで、溜息と共にまた紫煙を吐き出す。しかし、横目でチラリと店内を窺い、硝子窓の向こうの笑顔を見ると、肩を竦めて苦笑を漏らした。
「ま、仕方ないか」



「で、煙草は?」
「だから、ないっつったろう」
 部屋を借りている宿屋に戻ったバリーは、仏頂面で都合三度目の問いを投げて来たキャロルに、当然これも三度目になる答えを返す。
「そもそも口紅ってのはそんなに高えのか?」
「素材にかなりこだわってるらしくてな、それに殆ど手作業でやってるらしいから、割高になるんだと」
「糞っ、返品して──」
「ほお、ならお前、今のラウラからアレを取り上げられるのか?」
 バリーの視線が、部屋に備え付けてあるソファに座って、ピンクの口紅を矯めつ眇めつ眺めているラウラへと向けられる。どうやら、夢中のあまり彼らの声は一切聞こえていないらしい。
「…………」
 同じくラウラに視線を向けたキャロルはしばし押し黙ると、不意に立ち上がった。
「どうするんだ?」
「……仕事探して来るんだよ」
 キャロルの返答に、バリーがさも可笑しそうに笑みを浮かべた。それを見たキャロルは、舌打ちを漏らす。
「何かおかしな事でもあったかよ」
「いやなに、俺も付き合うとしよう」
 バリーも立ち上がり、二人揃って戸口へと向かう。
「──二人とも出掛けるの?」
 それに気付いたラウラが呼び掛けると、バリーが振り返った。
「ああ、夕方には戻って来る。それまで留守番でもしといてくれ」
「うん、わかった。──んふふー、帰って来たら見違えるわたしを見せてあげるわ」
 口紅を片手に胸を張るラウラ。それを見たキャロルが、皮肉気に口端を歪めて応える。
「そりゃ良い。ピカソばりの名作を期待しててやるよ」
「ぴかそ?」
「向こうで有名な絵描きの事さ。そりゃもう飛びっ切りの別嬪を描く天才だ」
「んん? そう、なの?」
 おかしい。普段のキャロルなら、もっと馬鹿にしそうなものだが。だがまあ、悪い気はしない。
「まあ良いわ。期待してなさい、改めてわたしを一人前のレディだと認めさせてあげるから」



 数分後──
「これが……わたし?」
 鏡に映った自分の姿を見て、ラウラは愕然とした。
 酷い、とにかく酷い。いや、いっそ惨たらしいと表現しても良い程だろう。トロールでも裸足で逃げ出しそうな形相だ。彼らに靴を履く習慣があるかどうかは謎だが。
「と、とにかく拭いて──」
 布巾で顔を拭って、筆舌に尽くし難い顔面をリセットする。
「ど、どうしようかしら」
 また再挑戦してみようかと考えて、思い直す。独力でどうにかできる問題ではない事は、もう確実だ。それどころか、悪化の一途を辿る事は目に見えている。
「──そうだ。ルーナ、出掛けるわよ!」
 飼い主が思い悩むのを、窓際で日向ぼっこを満喫しながら眺めていた黒猫に呼び掛けると、外出の仕度を整え、ポケットに口紅を入れてから、ラウラは部屋を飛び出した。



 ハンター達が臨時のバイトとして働いている化粧専門店へ、黒猫を従え入店して来た少女が、開口一番にこう言った。
「お化粧の仕方を教えて下さい!」
「あらん、さっきの子じゃないの。良いわよ、この私が直々に手解きしてあげるわ。──と言いたい所だ・け・ど、ちょっと今手が離せないのよねぇ。仕方ないわん、ちょっとバイトの子たち、この子にレディの嗜みを教えてあげて頂戴」

解説

・目的
ラウラ=フアネーレに口紅の塗り方を教える。

・場所
化粧品専門店

・NPC
ラウラ=フアネーレ
赤毛、緑眼、小麦肌の少女。

ルーナ
二歳の黒猫。紫が掛かった毛並み。

・備考
今シナリオのコンセプトは、「PC達が初めて化粧した時の思い出語り」であって、目的はその為の手段です。ただ、あくまでも想定であり、楽しみ方は各々で判断して貰って構いません。
尚、「思い出語り」は、心中での独白、実際に語って聞かせる、どっちのパターンでもOK。ただ、後述のような闇がキツイ過去の場合は、MS判断で心中の独白に変更するかもしれませんが、悪しからず。

ラウラと同じく化粧をした事がない乙女でも、オネエサマでも参加は可。
一応、バイト中という設定ですので、男性(ノーマル)PCの参加も可。力仕事もあるでしょうし。

ラウラや、乙女PCの顔をメイクアップしたい場合は、試供品を使用して下さい。

OP冒頭で、「素敵な気持ちになれるから」と謳ってはいますが、素敵な気持ちになれそうもない過去でも構いません。
失恋くらいならまだ優しいほうで、親の借金を返す為に花売りになり、その時に化粧を覚えたとか。水の神の怒りを鎮める人身御供に選ばれた時に、初めて化粧をしたとか。そういう系統でも何とかします。いや寧ろ、そっちの方が得意ですから。
勿論、素敵な気持ちになれる過去は大歓迎ですよ? 本当だって。やめて、そんな眼で見ないで……!

ちなみに、店長はアフロなオネエサマ。最後の一言だけで、濃いキャラである事はおわかりいただけただろうか。

マスターより

 女の子が初めて化粧する。これかなりの萌えイベントだと思うんですが。
 第二次成長期の娘が、口紅を唇に当てる。その心情を描写するのは、なんとなくドキドキします。

 ラウラは時々ブレる、精神年齢が。10歳くらいの時もあれば、17、8歳の時もある。男だとチグハグになるけど、女の子でやると魅力になる。背伸びしてるわけじゃなく、本当にそういう時がありますよね、女の子って。
 『Star Dust Memory』のラウラが凄く好き。執筆してる時に何度か机に突っ伏して、自キャラにときめきそうになる自分を抑えた。そして、ちょっと自分に引いた。多分誰しも通る道……そう思いたい。

関連NPC

  • Senorita
    ラウラ=フアネーレ(kz0162
    人間(クリムゾンウェスト)|12才|女性|一般人
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2016/06/02 01:04

参加者一覧

  • 其の霧に、籠め給ひしは
    ヴィルマ・レーヴェシュタイン(ka2549
    人間(紅)|23才|女性|魔術師
  • 灰かぶり姫
    セレナ=XVIII(ka3686
    人間(紅)|20才|女性|疾影士
  • コル・レオニス
    ミコト=S=レグルス(ka3953
    人間(蒼)|16才|女性|霊闘士
  • Lady Rose
    ロス・バーミリオン(ka4718
    人間(蒼)|32才|男性|舞刀士
  • 淑やかなる令嬢
    ユリシウス(ka5002
    人間(紅)|18才|女性|猟撃士
  • 金色のもふもふ
    パトリシア=K=ポラリス(ka5996
    人間(蒼)|19才|女性|符術師
依頼相談掲示板
アイコン お化粧談義
ミコト=S=レグルス(ka3953
人間(リアルブルー)|16才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2016/05/25 06:50:32
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/05/23 09:00:52