• 戦闘

異世界武侠 盲の拳は万を見通す

マスター:楠々蛙

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
無し
相談期間
5日
プレイング締切
2016/06/01 15:00
リプレイ完成予定
2016/06/10 15:00

オープニング

「まったく、何で俺がお前の買い物に付き合わなきゃいけないんだ」
「おやまあ、女の荷も持てないので? そんなお子に育てた覚えはありんせんよ? 霧燈(むとう)」
 賑わう市場を並んで歩く、一組の男女。
 いや、女性の方は妙齢の年頃──その容姿もさる事ながら、言動もまた蠱惑的な雰囲気を持つ妖艶な美女だったが、彼女の隣を歩く霧燈と呼ばれた方を男と呼ぶのには、少々差し支えがあるかもしれない。
 そろそろ変声の兆しが見えながら未だ高い声。そして、跳ねた栗色の髪先がようやく美女の肩に届く程の背丈を見れば、彼が少年と呼ばれる年の頃だろうと推測が付く。
 では、その顔付きから確証を得ようと試みれば、しかし、それは叶わない相談だった。
 彼の両眼を覆うように巻かれた厚布が、面貌の上半分を隠しているからだ。とはいえ、小さく尖った鼻先、不機嫌そうに曲がる口元を見れば、やはり少年と呼ぶに差し支えなさそうではあったが。
「俺だって、お前に育てられた覚えはないよ、香扇(かせん)。大体、お前に育児なんてできるもんか。狼に育てられた方が、まだ人間らしくなるさ」
「おやまあ、酷い言われようですねぇ。わっちが何度、霧燈のおしめを換えてあげた事か」
「で、出鱈目を言うな! それもこんな往来で、知り合いでも居たらどうするんだ!」
「では、文句を言わずに付いて来なんし」
「……わかったよ、荷物持ちでも何でもやれば良いんだろ」
 美女──香扇に、霧燈は渋々と従って歩く。その様子を見て、香扇はころころと笑みを零した。
「そう、拗ねる事はありんせん。今日の献立に使う食材の買い出しですよう。何か食べたい物はありんすか、霧燈?」
「……麻婆豆腐と杏仁豆腐」
「またそれでありんすか。それでは、また臥城(がじょう)からお叱りを受ける事になりんすよ」
「良いだろ、好きなんだから。香扇の事は嫌いだけど、香扇の麻婆豆腐は好きだ」
「それはそれは、哀しいやら嬉しいやら。とにかく、そう何度も同じ料理では、無口な天雷(てんらい)まで口を──おや?」
「なんだ、揉め事か?」
 他愛ない会話を交わしながら市場を歩く二人が、奥の方で喧噪が起きている事に気が付く。
「ちょいと覗いてみんしょう」
「あ、おい待てよ、香扇!」
 衆人の間をぬらりくらりと蛇のようにすり抜けて行く香扇と、それを追う霧燈──彼の足取りもまた、布で視界を覆っているとは思えない程、いや常人を上回る機敏さで人の群れを潜り抜ける。まるで、群衆一人一人がどう動こうとしているか、予見しているかのように。
「なあ、俺らはただ、ショバ代を納めて欲しいだけなんだ。さっきからそう言ってるだろ?」
 ざわつく人々の柵を超えた霧燈の耳が捉えたのは、子供に言い聞かせるように甘ったるく、しかし、その裏に暴力的な色を潜ませた声音。
「今月分の支払いは済ませている筈です。もうあなたがたに払う義理はありません」
 声の主である男に対して気丈に応えているのは、霧燈より二、三歳上の少女。青果店の軒先に立っているのだから、彼女はこの店の娘か何かなのだろう。
(馬鹿々々しい)
 彼らのやり取りを聞いた霧燈は、そのおおよその経緯を察した。男──その背後には、彼と同様に品の悪そうな顔が数人立っている──はこの辺りを縄張りにするヤクザ者、いや、その威光を借りたド三流のチンピラといった所か。
 勝手に小遣い稼ぎをしようとしている手合いだ。その内に組の正規構成員が出張って来て、ごみ掃除でもしてくれる事だろう。変に引っ掻き回しても、分別が面倒になるだけだ。そう判断し、彼はその場を過ぎようとしたのだが、
「なあ、こっちが優しくしてやってる内に、出すもん出してくんねえかなぁ?」
「痛っ──」
 男が少女の細腕を乱暴に掴み取ったその時──
「──おいたは、止めなんし」
 香扇が、やんわりと、しかし冷やかな声音で言い放った。
「ぁあ? 何か言ったか、そこの別嬪な姉ちゃん」
 少女の手を掴んだまま、男が香扇の方を見遣る。
「おや、嬉しや。口の巧い殿方は嫌いではありんせんよ? ですが、用がござんすのは、わっちではなくこの子でありんす」
「おい、香扇!?」
 香扇に背を押され、霧燈が前に出る。
「何だ小僧? 用件ってのはよ」
 少女の手を離した男が、霧燈に詰め寄り高圧的に見下ろした。上から睨まれた霧燈は舌打ちを打って、止むを得ず口を開く。
「あんた達、組はこの事承知してないんだろ。極道にも法はあるだろうに。こんな勝手やって、タダで済むと思ってるのか?」
 子供らしからぬ弁舌を吐く霧燈に、男とその背後の数人は一瞬呆気に取られ、すぐに表情を嘲笑に変えた。
「はっ、人に見せられねえお顔のガキが、舐めた口利いてんじゃねえよっ!」
 男が右腕を振りかぶって、霧燈に殴り掛かる。
 大振りなだけの拳を繰り出したのは、武術の不心得、それだけではあるまい。まさか考えてもいなかったのだろう。両目を布で覆った少年が、この殴撃を捌くなどと。
 左手で拳を払い落し、更に右手を貫手にして、喉元に突き入れて来るなどと。
「ごはぁ!?」
 喉を押さえて、男はその場に蹲る。
「みえでんごが!?」
 苦痛に歪ませた顔を上げ、潰れた声で疑問を発する男。霧燈は、彼が言いたい事を察して、男を見下ろしながら応える。
「ああ、視えてるさ木偶の棒。お前の節穴なんかより、よっぽどな」
 聴勁。
 相対する者と手を重ね、接触部位より伝う相手の勁を読み取り、次の動きを先見する、勁の運用法の中でも上位に位置する技法だが、霧燈はそれを視覚の代替、いやそれ以上の知覚手段となる程にまで拡大させているのだ。
 周囲に生じる力の流れを──たとえそれが停滞する物体であっても、淀みとして──認識する霧燈に、死角は皆無。故に──
 背後から肉切り包丁の肉厚な刃を脳天に落とされても、振り返り様に肘を突き上げ、包丁の柄を握る拳を叩いた。
 包丁を真上に弾き飛ばし、落下するそれを掴むと、峰を返し奇襲を目論んだ男の首筋を強かに打つ。
「喧嘩に刃物持ち出すなよ、みっともない」
 頽れた男の傍に包丁を放り捨てた霧燈は、背後に立つ自身よりも背の高い少女に気を向けた。
「おい、俺の後ろから離れるな」
「──え?」
「勘違いすんな、あっちこっち動かれたら気が散るだけだ。あんたの為に戦うわけじゃない」
「では、わっちの為でありんすか?」
「お前のせいだろ!」
 いつの間にか通りの隅に置かれた樽に腰掛け、暢気な声を掛ける香扇に怒声を返す霧燈。
「嫌ですよう、怒鳴っては。──それより無手では心許ないでしょう、これを使いなんし」
 香扇は壁に立て掛けてあったモップを手に取り、霧燈へと投げ渡す。
「もっとマシなのはないのかよ」
 霧燈は悪態を吐きながら、受け取ったモップで棍術の構えを取る。どうやら、近くに仲間が居たらしく、今しがた伸した男達と似たような手合いが集まり始めた。

「全部纏めて掃除してやる」

解説

・目的
チンピラの成敗

・フィールド
市場。
鮮魚、肉、青果を取り扱う店や、飲食品を扱う露店などもある。

・敵
チンピラ
非覚醒者のみで構成。武術の心得は、精々が齧る程度。

・味方
霧燈 男性 蒼 舞刀士 直感特化
スキル
聴勁 『柳の構え』改
備考
詠春拳の使い手。
周囲の状況を、力の流れを感じる事によって知覚する。これには相応の集中力が必要になり、精神状態に大きな乱れが生じると知覚できなくなる。つまり、照れるとこける。

香扇 女性 格闘士
戦闘不参加

少女
霧燈の背後に固定

・備考
参加PCは、基本喧嘩に巻き込まれたという流れで。露店で食事中に、チンピラが吹っ飛んで来て、テーブルごと料理を台無しにされたとか。喧嘩だ喧嘩、俺も混ぜろーみたいなテンションでもOK。

今シナリオにおいて、武器の使用は全面禁止である。杖や盾などの使用も不可能。(依頼ではなく、プライベート中に不意に喧嘩に巻き込まれたという設定)攻撃手段として用いないのであれば、武器を所持する事は可能。
だが、周囲にある物を武器として扱う事が可能。
テーブルや椅子、鍋や包丁、モップや箒など、市場に置かれてある物なら、基本的に武器として扱える。
また、PCが身に着けた上着や、アクセサリなども使いようによっては武器として使用可能。
従って、判定はかなり緩めになる。というより、今シナリオは無双シナリオと考えて貰いたい。ある程度心得がある者ならば、非覚醒状態でも十分に戦えるだろう。策を凝らす必要はあまりなく、暴れた者勝ちである。
だが、殺人はご法度。せめて正当防衛が通じる程度に留める事。

今回、当然報酬は見込めない。チンピラ達の財布の中身も、騒動で滅茶苦茶になった市場の修繕費に当てられる。だが戦闘後に、少女がお礼にと林檎をくれる(データ反映はなし)。

マスターより

 そこの素敵な趣味を御持ちのお姉さん、ついに来ましたセルフ目隠しショタです。──じゃなくて、ついに来ました、真のカンフーアクションが。その場にある物を武器に暴れ回ってこそのカンフーアクションでしょう。
 
 しかし、好きな人には堪らない丁度良い生意気加減なんじゃないでしょうか。精神が乱れると何もわからなくなるっていう設定で、あれこれ妄想してくれても構わんぜ?
 それにしても、香扇さんがまさか子供好きだとは。花魁口調で子供好きとか、なんか切ない過去でもありんすか? それか、ショタコン。

 ほらそこ、モップを取り合うんじゃありません。人数分あるから、喧嘩しないの! ……流石に全員モップ装備にはならんよな?
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2016/06/08 23:16

参加者一覧

  • 未来を示す羅針儀
    ジャック・エルギン(ka1522
    人間(紅)|20才|男性|闘狩人
  • HappyTerror
    リオン(ka1757
    人間(蒼)|20才|女性|疾影士
  • 能力者
    狭霧 雷(ka5296
    人間(蒼)|27才|男性|霊闘士
  • 救済の宝飾職人
    ジェシー=アルカナ(ka5880
    ドワーフ|28才|男性|格闘士
  • 友よいつまでも
    大伴 鈴太郎(ka6016
    人間(蒼)|22才|女性|格闘士
  • 忍者(自称)
    琴吹 琉那(ka6082
    人間(蒼)|16才|女性|格闘士
依頼相談掲示板
アイコン 異世界武侠の相談卓
ジャック・エルギン(ka1522
人間(クリムゾンウェスト)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2016/05/31 18:17:56
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/05/28 08:55:34