ゲスト
(ka0000)
屍の上を行く者
マスター:鹿野やいと

このシナリオは5日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- イベント
関連ユニオン
アム・シェリタ―揺籃館―- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加人数
- 現在20人 / 1~25人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2016/05/28 19:00
- リプレイ完成予定
- 2016/06/11 19:00
オープニング
※このシナリオは原則として戦闘が発生しない日常的なシナリオとして設定されています。
■望まれた姿
私は死を運ぶ。身振り手振り、言葉の一つ、視線ですらも。
私は望んだ。人は必ず死ぬ。ならばその死が、より良きものであるように。
それは啓示であり、業であり、人々の望みである。
示した先で彼らが誰の手に掛かろうと事実は同じ。
彼らを殺めたのは私の業に他ならない。
「我が神よ。今、貴方の御元に戦で命を落としたこの者達の魂を送ります。彼らは神の栄光と地上の平穏の為に、死を恐れず勇敢に戦いました。どうか父なるエクラの御元で安息の日々を送られますよう、エクラの御名においてお願い申し上げます」
これこそが私の本質。人々が私を戦乙女と評価した事は正しい。私は人を戦に駆り立て、華々しく散らせるのが役目。
決して人を救う聖女ではない。私は人を救う聖女には成れないのだ。
■蓮華草の花冠
王都に住む司祭達は一部の例外を除きその多くが、今回の合同葬へ参列するよう呼びかけがあった。戦闘に参加した聖堂戦士団や負傷者の治療にあたった司祭達にとって、今回の葬儀は他人事ではなく誰もが呼びかけと関係なく参加を決めていた。
聖堂教会関係者に限らず、王国から多くの文武官、貴族、更には国内の有力な商人たちも列席した。それ以下の民間人や低位の役人達は大聖堂に収まりきらず、大聖堂から続く街道に列をなした。
立場だけが司祭であるアイリーンや、研究職のオーラン・クロスも、末席ではあるが大聖堂内部に入ることができた。
厳かな空気の中で葬式は進行し、ヴィオラが朗々と祈りの言葉を唱え始めた頃、オーランの目からは涙があふれていた。
彼は喪失と向き合っている。そして、向き合いながらも受け止め切れてはいない。やがて自身の状況に気づいたのか、頭を垂れて祈りの言葉を唱え、頬を伝う涙をごまかしていた。彼の来歴を知るアイリーンには、その激しい自罰の念が痛いほどわかった。
覚悟のあったヴィオラやエリオットは良い。2人はそう成るべく自己研鑽を積み、命令することに慣れ、責任を負う覚悟ができている。だが彼は違う。本来は研究分野が今必要とされているだけの、1研究者に過ぎない。
彼を守る為に2人の人間が死んだという。戦場の不足を補う為という話なら更に多くの人が死んでいる。彼らの死はそれを命じた者達の責任だが、オーランはそれを自分の非であると思っているのだろう。
気持ちは痛いほどにわかる。体温を失っていく体に触れるのは、何度しても慣れるものではない。それが回復の魔法に長ける聖導士であればなおさら、救う手立てを持つがゆえに辛いだろう。
彼の気持ちを理解しながらも、アイリーンには掛ける言葉が無かった。彼のような心優しき者達に、なんと声をかければ良いのかわからなかったのだ。多くの聖堂戦士や騎士達が、仲間の死を受け入れることができるのは何度となく戦火を潜り抜けた経験あってこそだ。
ここでオーランに強者であれと言うのは容易い。同じ仲間であれば当然のようにそう求めるだろう。だが自分達は、彼のような者がそのままでも良い世界こそ良しとする。この地を守る者にはそれこそが矜持。アイリーンのような正道を行かぬ者であっても同じだ。
合同葬の後、オーランは泣きはらした目のままふらふらとどこかへ消えていった。オーランを追いかけようと考えたが、アイリーンは頭を振って思いとどまった。
普段ならそこまで他人の面倒を見る性質でもない。これが自分の変調なのだと、最近ようやく思い至って来たのだ。
あの日以降、敗戦という結果が残された騎士や聖堂戦士達はどこかしら様子がおかしい。エリオットは働きづめで休息を拒むと彼の副官のフィアが嘆いていたようだ。普段なら団長の弱みを外に漏らすなど害悪でしかないだろうに、彼女自身も疲れているのだろう。
ヴィオラは普段の行動にこそ変化はないが、以前にも増して笑わなくなり、1人で書室に籠る事が増えた。ヴィオラは決戦においてエリオットに一時的にでも指揮権を移譲した事もあり、彼が責任を感じていることに思うところもあるのだろう。変調を庇いあうにはお互いが近すぎる。誰にも何も、干渉しないほうがいい。どんなにもどかしくても、感情の淀みに巻き込まれるのは避けたい。
アイリーンは思考の隅から湧き出る虚無を感じながらも、祈りの唱和以外にそれを静める方法が思いつかなかった。
■芽吹きの頃に
瓦礫の撤去と城壁の修復は一朝一夕にはいかない。それでも街道が最低限使用可能な状態になると、仕事の忙しさは山を越した。
この時最も気の滅入る作業は死体の回収であった。人の原型を保ったものはまだ良い。中には元の形も判別できぬほど破壊された死体もあった。それを急ぎ氷を扱う魔術師達で保存し、可能な限り個人を特定し、所属する組織へとリストと共に返却した。担当する役人達は日に日に目から光を失い、感情を無くしながらも黙々と作業していた。
この時ハンター達に割り振られた仕事は様々だったが、誰もがこの惨憺たる光景を目に焼き付けていた。戦場に立たなかった者達でさえも、この光景によって心に深い傷を負った。白の隊においてハンターの労務を管理していたローレンスは、日に日に病んでいく者達を慮り、予定よりも早い仕事の切り上げを決定した。
「あとは国内の兵士で分担して、残りは民間人に順次委託すれば賄える。君達の仕事はここまでだ」
ローレンスの言葉を聞いたハンターに、仕事を終えた達成感はなかった。虚脱とも喪失とも言える空白が心を支配していた。空白の理由はわかる。どれだけ復興に携わっても、荒れ地が更地になるだけでしかない。非日常から日常へと移り変わる為に必要なこととはいえ、砂ばかりの更地は殊更に寒々しい。
それでも通りには武装した兵士や騎士の姿は減っていき、代わりに建築に関わる職人達が増えていた。彼らが新たな家屋を立てるために寸法を取り図面を引く一方で、彼らに食べ物を売る人々が現れ、工具を扱う鍛冶屋が現れる。街は人に満ちていく。すると流れる血によって冷やされ麻痺していた心が、ようやくまともに動き始めた。
それが良かったのか悪かったのか、今日から先はしばらく予定はない。喪失と向き合う時間だけはありあまるほどにあった。
■望まれた姿
私は死を運ぶ。身振り手振り、言葉の一つ、視線ですらも。
私は望んだ。人は必ず死ぬ。ならばその死が、より良きものであるように。
それは啓示であり、業であり、人々の望みである。
示した先で彼らが誰の手に掛かろうと事実は同じ。
彼らを殺めたのは私の業に他ならない。
「我が神よ。今、貴方の御元に戦で命を落としたこの者達の魂を送ります。彼らは神の栄光と地上の平穏の為に、死を恐れず勇敢に戦いました。どうか父なるエクラの御元で安息の日々を送られますよう、エクラの御名においてお願い申し上げます」
これこそが私の本質。人々が私を戦乙女と評価した事は正しい。私は人を戦に駆り立て、華々しく散らせるのが役目。
決して人を救う聖女ではない。私は人を救う聖女には成れないのだ。
■蓮華草の花冠
王都に住む司祭達は一部の例外を除きその多くが、今回の合同葬へ参列するよう呼びかけがあった。戦闘に参加した聖堂戦士団や負傷者の治療にあたった司祭達にとって、今回の葬儀は他人事ではなく誰もが呼びかけと関係なく参加を決めていた。
聖堂教会関係者に限らず、王国から多くの文武官、貴族、更には国内の有力な商人たちも列席した。それ以下の民間人や低位の役人達は大聖堂に収まりきらず、大聖堂から続く街道に列をなした。
立場だけが司祭であるアイリーンや、研究職のオーラン・クロスも、末席ではあるが大聖堂内部に入ることができた。
厳かな空気の中で葬式は進行し、ヴィオラが朗々と祈りの言葉を唱え始めた頃、オーランの目からは涙があふれていた。
彼は喪失と向き合っている。そして、向き合いながらも受け止め切れてはいない。やがて自身の状況に気づいたのか、頭を垂れて祈りの言葉を唱え、頬を伝う涙をごまかしていた。彼の来歴を知るアイリーンには、その激しい自罰の念が痛いほどわかった。
覚悟のあったヴィオラやエリオットは良い。2人はそう成るべく自己研鑽を積み、命令することに慣れ、責任を負う覚悟ができている。だが彼は違う。本来は研究分野が今必要とされているだけの、1研究者に過ぎない。
彼を守る為に2人の人間が死んだという。戦場の不足を補う為という話なら更に多くの人が死んでいる。彼らの死はそれを命じた者達の責任だが、オーランはそれを自分の非であると思っているのだろう。
気持ちは痛いほどにわかる。体温を失っていく体に触れるのは、何度しても慣れるものではない。それが回復の魔法に長ける聖導士であればなおさら、救う手立てを持つがゆえに辛いだろう。
彼の気持ちを理解しながらも、アイリーンには掛ける言葉が無かった。彼のような心優しき者達に、なんと声をかければ良いのかわからなかったのだ。多くの聖堂戦士や騎士達が、仲間の死を受け入れることができるのは何度となく戦火を潜り抜けた経験あってこそだ。
ここでオーランに強者であれと言うのは容易い。同じ仲間であれば当然のようにそう求めるだろう。だが自分達は、彼のような者がそのままでも良い世界こそ良しとする。この地を守る者にはそれこそが矜持。アイリーンのような正道を行かぬ者であっても同じだ。
合同葬の後、オーランは泣きはらした目のままふらふらとどこかへ消えていった。オーランを追いかけようと考えたが、アイリーンは頭を振って思いとどまった。
普段ならそこまで他人の面倒を見る性質でもない。これが自分の変調なのだと、最近ようやく思い至って来たのだ。
あの日以降、敗戦という結果が残された騎士や聖堂戦士達はどこかしら様子がおかしい。エリオットは働きづめで休息を拒むと彼の副官のフィアが嘆いていたようだ。普段なら団長の弱みを外に漏らすなど害悪でしかないだろうに、彼女自身も疲れているのだろう。
ヴィオラは普段の行動にこそ変化はないが、以前にも増して笑わなくなり、1人で書室に籠る事が増えた。ヴィオラは決戦においてエリオットに一時的にでも指揮権を移譲した事もあり、彼が責任を感じていることに思うところもあるのだろう。変調を庇いあうにはお互いが近すぎる。誰にも何も、干渉しないほうがいい。どんなにもどかしくても、感情の淀みに巻き込まれるのは避けたい。
アイリーンは思考の隅から湧き出る虚無を感じながらも、祈りの唱和以外にそれを静める方法が思いつかなかった。
■芽吹きの頃に
瓦礫の撤去と城壁の修復は一朝一夕にはいかない。それでも街道が最低限使用可能な状態になると、仕事の忙しさは山を越した。
この時最も気の滅入る作業は死体の回収であった。人の原型を保ったものはまだ良い。中には元の形も判別できぬほど破壊された死体もあった。それを急ぎ氷を扱う魔術師達で保存し、可能な限り個人を特定し、所属する組織へとリストと共に返却した。担当する役人達は日に日に目から光を失い、感情を無くしながらも黙々と作業していた。
この時ハンター達に割り振られた仕事は様々だったが、誰もがこの惨憺たる光景を目に焼き付けていた。戦場に立たなかった者達でさえも、この光景によって心に深い傷を負った。白の隊においてハンターの労務を管理していたローレンスは、日に日に病んでいく者達を慮り、予定よりも早い仕事の切り上げを決定した。
「あとは国内の兵士で分担して、残りは民間人に順次委託すれば賄える。君達の仕事はここまでだ」
ローレンスの言葉を聞いたハンターに、仕事を終えた達成感はなかった。虚脱とも喪失とも言える空白が心を支配していた。空白の理由はわかる。どれだけ復興に携わっても、荒れ地が更地になるだけでしかない。非日常から日常へと移り変わる為に必要なこととはいえ、砂ばかりの更地は殊更に寒々しい。
それでも通りには武装した兵士や騎士の姿は減っていき、代わりに建築に関わる職人達が増えていた。彼らが新たな家屋を立てるために寸法を取り図面を引く一方で、彼らに食べ物を売る人々が現れ、工具を扱う鍛冶屋が現れる。街は人に満ちていく。すると流れる血によって冷やされ麻痺していた心が、ようやくまともに動き始めた。
それが良かったのか悪かったのか、今日から先はしばらく予定はない。喪失と向き合う時間だけはありあまるほどにあった。
解説
■依頼の趣旨
「合同葬」「敗戦直後」が今回のテーマです
リプレイでは上記テーマにまつわる内容を描写します
合同葬への参列は末席付近であれば可能です
OP後半でハンターは仕事をしている事になっていますが、
これもその場に居る理由づくりの一例なので導入としては無視して問題ありません
酒飲んで暴れたり、夜を泣き明かしたり、仲間に慰められたり
今回の敗戦の責任者に詰め寄ったりとかもありです
あるいは未来志向で今後に向けた活動をしてもかまいません
お好きなようにPCを動かしてください
●その他制限事項
1.同じ時系列の藤山MS及びムジカSSDの依頼との同時参加した場合、
整合性のため描写が極端に減る可能性があります
2.他MSの扱うNPCへの接触は原則不可とします
伝言や陳情は可能です
●推奨の行動・相談
「このPCさん(あるいはNPC)とこういう会話をしたい」「こんなやりとりをしたい」
という調整を相談卓でした上でプレイングを書いていただけると
希望に添ったリプレイを制作しやすくなります
調整が無い場合は、こちらで適宜組み合わせて描写します
●NPC解説
・ヴィオラ・フルブライト
【審判】特設ページ参照
普段と変わらず実務をこなしていますが、目に見えてふさぎこんでおり、誰も近づいていません
・オーラン・クロス
詳細は【聖呪】【審判】連動より。
本来はムジカSSDのキャラクターですが一時的に預かっています
彼のする受け答えはムジカSSDに確認の上で描写します
・ローレンス・ブラックバーン
クラスが魔術師の騎士。齢50を超えることと、足に障害を残している為、戦場にはあまり出ない
今回の仕事におけるハンターの労務担当の一人。もっと働きたい方はこちらへどうぞ
・アイリーン
ヴィオラの副官(相当職)。疾影士の斥候で長い付き合い。
事件の終息したここに至ってはただの雑用で、便利に使われている
「合同葬」「敗戦直後」が今回のテーマです
リプレイでは上記テーマにまつわる内容を描写します
合同葬への参列は末席付近であれば可能です
OP後半でハンターは仕事をしている事になっていますが、
これもその場に居る理由づくりの一例なので導入としては無視して問題ありません
酒飲んで暴れたり、夜を泣き明かしたり、仲間に慰められたり
今回の敗戦の責任者に詰め寄ったりとかもありです
あるいは未来志向で今後に向けた活動をしてもかまいません
お好きなようにPCを動かしてください
●その他制限事項
1.同じ時系列の藤山MS及びムジカSSDの依頼との同時参加した場合、
整合性のため描写が極端に減る可能性があります
2.他MSの扱うNPCへの接触は原則不可とします
伝言や陳情は可能です
●推奨の行動・相談
「このPCさん(あるいはNPC)とこういう会話をしたい」「こんなやりとりをしたい」
という調整を相談卓でした上でプレイングを書いていただけると
希望に添ったリプレイを制作しやすくなります
調整が無い場合は、こちらで適宜組み合わせて描写します
●NPC解説
・ヴィオラ・フルブライト
【審判】特設ページ参照
普段と変わらず実務をこなしていますが、目に見えてふさぎこんでおり、誰も近づいていません
・オーラン・クロス
詳細は【聖呪】【審判】連動より。
本来はムジカSSDのキャラクターですが一時的に預かっています
彼のする受け答えはムジカSSDに確認の上で描写します
・ローレンス・ブラックバーン
クラスが魔術師の騎士。齢50を超えることと、足に障害を残している為、戦場にはあまり出ない
今回の仕事におけるハンターの労務担当の一人。もっと働きたい方はこちらへどうぞ
・アイリーン
ヴィオラの副官(相当職)。疾影士の斥候で長い付き合い。
事件の終息したここに至ってはただの雑用で、便利に使われている
マスターより
葬式というのは死者を弔う為に行いますが、同時に生者が死者と決別し、
前を向くためにあるとも言われます
この結果もPL諸氏のロールプレイの足しになればと願っています
前を向くためにあるとも言われます
この結果もPL諸氏のロールプレイの足しになればと願っています
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2016/06/14 04:29
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 小鳥遊 時雨(ka4921) 人間(リアルブルー)|16才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2016/05/27 23:32:53 |
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![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/05/27 14:49:50 |