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　整備された河を一隻の船が下っていく。両岸に生える草花が強めの風に揺れ、ほのかに沸き立つ水の匂いが鼻に感じられた。
「へー、意外と早いものですのね」
　船の上から身を乗り出して、サチコ・W・ルサスールは船が起こす波を眺めていた。後ろから危ないですよ、と従者のタロとジロがその身体を引き戻す。
「はっは、お嬢ちゃん。船は初めてだったか。落ちても、拾えないからな？」
　サチコたちの様子を眺め、船長が冗談っぽく笑い声をあげる。
　数時間前、南方へ移動するために川下りの船を探していたサチコたちを船長は快く迎え入れてくれた。しかも、実質無料である。
「思ったより穏やかで……船とは酔うものと聞いておりましたが」
「最近は天気も安定してましたからね、かといって水量は十分」
　船長は行き交う水夫たちに指示を飛ばしながら、サチコにいろいろと説明をする。川の流れにそって移動するため、人手もかからず早いのだという。一方で上りならば、船引の人夫を使うなどするのだといっていた。
「それにしても、運賃は本当によろしいのでしょうか」
「最近は貨物船を襲う賊もいると聞きますから、持ちつ持たれつですよ。何かあった場合に護っていただければ、保険料もお支払いします」
　安全を取るためにこの船長は、ハンターや傭兵を乗せていた。幸いなことに今まで襲われたことはないが、今回は嫌な噂を耳にしていた。海坊主ならぬ河坊主が出るというのだ。いつもならバカバカしいと一笑に付すこともあっただろう。
　その噂を説明した上で、サチコたちは乗船を承諾した。
「近年の情勢を見聞するに、笑い事でもないですから」
　船長の勘は当たるからちょうどいいと船員たちもサチコたちを歓迎してくれた。そう、何事もなければ無料……何事か起こった場合は解決すればお金がもらえる。
「何事もないのが一番ですわ」
　笑顔で告げるサチコだが、かくしてその望みは破られた。

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「イカリ降ろせ！」
　船長の怒号に合わせて水夫たちが慌ただしく動きまわる。船の前方に半透明の物体がせり上がってきたのだ。船は急停止し、様子を見ている間に物体は増えていった。その数、４体……物体はチンアナゴのように細長く、先端部をぐるりと動かして辺りを見渡していた。
　顔らしいものは何もないが、先端の部分が怪しく発光していた。
「でちまいましたな……サチコさん」
「出てきましたね、船長」
　嘆息すら漏れでてこない。大きさは確かに海坊主もとい河坊主といえなくもないが、想像よりも細長い。眺めている間に、先端部分が船のほうを向く。
「……っ！　危ないですわ！」
　サチコが前へ飛び出て、放たれた液体を盾で受ける。ジュッと音をたてたところをみるに、酸の類だろうか。盾を下げて見上げれば、河坊主は身体から何本もの触手を生み出していた。
「とりあえず、水夫さんには下がって頂いて……一度接岸してくださいませ。三方向から一気に攻めますわ！」
　剣を抜き放ち、切っ先を河坊主へ向ける。船は再びイカリを上げ、河坊主へと少しずつ近づいていくのだった。

●目的
河坊主の討伐

●河坊主
スライム亜種の雑魔であり、ローパーに姿は似ている。
触手と強酸による攻撃ができる。
ゆったりと移動するが、河から完全に出てくることはない。
体積の大きさから見て、体力は多めと思われる。
触手を攻撃しても、河坊主にダメージを入れることは十分に可能。

●戦場
右岸、左岸と船の上から選択可能。
選択した場所からの移動はできない。
船から両岸までの距離は、約２０ｍ。
河坊主は５～７ｍ感覚で立っており、船はすでに攻撃の届く範囲にいる。後退はできないが、前進は可能。
水中に潜っても良いが、触手の速さ等は減速されないので注意。

●船
全防御値５０、生命力１０００
生命力が０になった場合、沈没する。
また、３００以下になった場合も航行不能となり、護衛失敗とみなされる。

乗船者が回避した場合、船へとダメージが入ることがある。
また、河坊主の船に対する攻撃をかばうことが可能である。
この場合、受け防御のみ試みることができる。

●サチコ・W・ルサスール
川を下り、水辺を移動しながら南方の海を目指している。
貴族の少女であり、ワルワル団なる組織の総帥を自称している。

ご無沙汰しております。御影堂です。
今回から三回ぐらいサチコには、河・湖・海を冒険してもらう予定です。
夏ですから、涼しい水辺めぐりですね。
今回は河ということで、河坊主と戦ってもらいます。
船を護るのは大変ですが、よろしくお願いいたします。