ゲスト
(ka0000)
初恋とお弁当
マスター:佐倉眸

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2016/09/12 22:00
- リプレイ完成予定
- 2016/09/21 22:00
オープニング
●
この町まで届けてくれたハンター達にはいくら感謝してもしきれないくらいだ。
ボートの買い手が付いて、ついでにその家の屋根裏に居候が決まったことは僥倖。
伝手のある宿に入って通報……もとい、お叱りを受ける前に逃げ出すなんていう、杜撰な計画よりも余程良かった。
その日は僕もティナも疲れきって、ベッドも無いなんて言う床の硬さも気にならないくらいに眠ってしまった。
次の日から仕事を探して、何日かを日雇いで繋いですぐに近くの商店が雇ってくれたのも運が良かったのだろう。場所も品揃えも良くて、店長にもう少し商売っ気があれば繁盛していたのになんて言いながら、伝票を見れば買っていった客の顔が思い浮かぶような、この町に寄り添った商売を僕はとても気に入った。
ティナとの逃避行について、父に連絡したのはその週の終わり。荒れ狂ったティナの父、カッペリーニ家の当主が家中を探していったらしいけれど、僕以上に充実した日々を送っているらしい彼女に帰る気は無さそうだ。
●
僕がまだ日雇いで船を繋ぐロープの結び方にすら苦しんでいた頃、ボートと荒い潮風に滅入ったティナは、屋根裏で一日中転がって居たらしい。
何も出来なくてごめんね、なんてしおらしく謝りながら、寝しなに幼少期の話しを聞かせてくれた。
庭で遊んでいて、気に入りのドレスを破いてしまった。
それを直してくれたナニーは魔法使いに見えたし、糸は魔法の光りに、針はそれを操るステッキに見えた。
幼い頃からお転婆で可愛らしかったんだろうなと、ティナが寝付くまで髪を撫でながら思い浮かべていた。
「その頃から、私の夢は魔法使いなの」
ティナがそう言ったが、すぐに聞こえてきた寝息に、それは寝言だと思った。
体調が回復したティナは、屋根裏を貸してくれた家の奥さんに習いながら僕の弁当を作ってくれた。
その日はその奥さんに町を案内して貰ったらしい。
どこに行ったかも聞き忘れて、ティナの元気そうな様子にただ安堵した。
元漁師の旦那さんは一線を退いて船の修理や若い漁師を鍛えていると言っていた。
奥さんも似たようなものだと言っていたが、昔の勤め先はもっと街中にあるらしい。
「ティナちゃんを連れて行ったら、すっごく喜んでくれてさー」
大きな声で笑って、ティナも嬉しそうにしている。旦那さんも柔和な目で僕たちを見ていた。
仲の良い夫婦の様子に、両親を思い出したり、ティナとの未来を考えたりもするけれど、新しいことばかりの目まぐるしい日々は、そんなことに耽る時間を与えてはくれない。
ティナはその日から毎日、とても楽しそうに出掛けていた。
●
僕が通うことになった商店は言ってしまえば何でも屋だ。
この辺りは店というもの自体が少ないから、注文があれば扱っていない物でも探して発注する。
断ろうかとさえ思うような難しい注文にも一日で答えてしまった店長を、僕はとても尊敬している。
ある日、少し先の工場から弁当の注文が入った。
その工場の近所の弁当屋が休みらしい。
幸い数は揃った物の運ぶ手立てが無い。
店長が引っ張り出してきた自転車を突き付けて、乗れるかと聞いた。
「乗れますよ」
荷台に籠に詰めるだけ括り付けて、ナップザックの中にも詰めて。
こんなに沢山何の工場かと尋ねると、店長一言、服、と答えた。
縫製の工場らしい。
この自転車にお針子達の昼ご飯を託されているわけだ。
「……行ってきます」
店長は頷いて、気を付けろと言った。
自転車で街を走る。風が心地良い。
もうすぐかと道を眺めながら走っていると、不意に飛び出してきた影にブレーキを握り締めた。
それ程スピードは出していなかったが弁当が心配になる。
「……な、何だったんだ……」
片足を付けて弁当を確かめると、店長の面目は保てる程度で済んでいる。
不審な影はぎょろりと大きな目でこちらを向いていた。
背筋に冷や汗が伝う。
狙われている。
弁当が。
自転車を思い切り漕いで、その影から逃げながら工場を目指した。
吼えながら追ってくるその姿は嘗て図鑑で見たコボルトにとてもよく似ていた。
工場に近づくと庭へ出ている所長らしき人が出てきていた。
「――すみません! コボルトに追われてます……!」
叫ぶと彼は落ち葉用の大きなフォークを持って仁王立ちになる。僕に入れと庭を示すと、追ってきたコボルトを一突きでその腹を貫いた。
「……よく出るんですか……? あ、弁当お届けに上がりました……」
「最近増えてね。駆除しても駆除しても……だから、娘達にも」
若い女性が多い職場だ。食べ物を持っての通勤途中で襲われたら大事だからと、所長は溜息交じりに言いながら、自転車に積んだ弁当の荷解きを手伝ってくれた。
その時、建物の中から悲鳴が上がった。
何事だとドアを開けると、所長に気付いた女性の1人が指差した。
そこにはどこからか進入したらしいコボルトが3匹。
更に悲鳴が、工場に向かった僕たちの背後から、擦れ違って庭へ逃げたお針子達から聞こえてきた。
振り返ると更に2匹のコボルトが自転車に迫っていた。
「べ、弁当っ」
背負っていたナップザックを近くの女性に預けて、自転車を、積み残した弁当を守ろうと思った。
「持っててくれる?」
「ええ、マウロ、ちゃんと預かっておくわね」
「――――ティナ!」
「そうよ?」
「何でここ……っ、あとで、詳しく聞くからね!」
揃いのエプロンを着けて糸くずに塗れながら可愛らしく笑ったティナに見送られ自転車に向かった僕に、所長はもう1本のフォークを投げて寄越した。
この町まで届けてくれたハンター達にはいくら感謝してもしきれないくらいだ。
ボートの買い手が付いて、ついでにその家の屋根裏に居候が決まったことは僥倖。
伝手のある宿に入って通報……もとい、お叱りを受ける前に逃げ出すなんていう、杜撰な計画よりも余程良かった。
その日は僕もティナも疲れきって、ベッドも無いなんて言う床の硬さも気にならないくらいに眠ってしまった。
次の日から仕事を探して、何日かを日雇いで繋いですぐに近くの商店が雇ってくれたのも運が良かったのだろう。場所も品揃えも良くて、店長にもう少し商売っ気があれば繁盛していたのになんて言いながら、伝票を見れば買っていった客の顔が思い浮かぶような、この町に寄り添った商売を僕はとても気に入った。
ティナとの逃避行について、父に連絡したのはその週の終わり。荒れ狂ったティナの父、カッペリーニ家の当主が家中を探していったらしいけれど、僕以上に充実した日々を送っているらしい彼女に帰る気は無さそうだ。
●
僕がまだ日雇いで船を繋ぐロープの結び方にすら苦しんでいた頃、ボートと荒い潮風に滅入ったティナは、屋根裏で一日中転がって居たらしい。
何も出来なくてごめんね、なんてしおらしく謝りながら、寝しなに幼少期の話しを聞かせてくれた。
庭で遊んでいて、気に入りのドレスを破いてしまった。
それを直してくれたナニーは魔法使いに見えたし、糸は魔法の光りに、針はそれを操るステッキに見えた。
幼い頃からお転婆で可愛らしかったんだろうなと、ティナが寝付くまで髪を撫でながら思い浮かべていた。
「その頃から、私の夢は魔法使いなの」
ティナがそう言ったが、すぐに聞こえてきた寝息に、それは寝言だと思った。
体調が回復したティナは、屋根裏を貸してくれた家の奥さんに習いながら僕の弁当を作ってくれた。
その日はその奥さんに町を案内して貰ったらしい。
どこに行ったかも聞き忘れて、ティナの元気そうな様子にただ安堵した。
元漁師の旦那さんは一線を退いて船の修理や若い漁師を鍛えていると言っていた。
奥さんも似たようなものだと言っていたが、昔の勤め先はもっと街中にあるらしい。
「ティナちゃんを連れて行ったら、すっごく喜んでくれてさー」
大きな声で笑って、ティナも嬉しそうにしている。旦那さんも柔和な目で僕たちを見ていた。
仲の良い夫婦の様子に、両親を思い出したり、ティナとの未来を考えたりもするけれど、新しいことばかりの目まぐるしい日々は、そんなことに耽る時間を与えてはくれない。
ティナはその日から毎日、とても楽しそうに出掛けていた。
●
僕が通うことになった商店は言ってしまえば何でも屋だ。
この辺りは店というもの自体が少ないから、注文があれば扱っていない物でも探して発注する。
断ろうかとさえ思うような難しい注文にも一日で答えてしまった店長を、僕はとても尊敬している。
ある日、少し先の工場から弁当の注文が入った。
その工場の近所の弁当屋が休みらしい。
幸い数は揃った物の運ぶ手立てが無い。
店長が引っ張り出してきた自転車を突き付けて、乗れるかと聞いた。
「乗れますよ」
荷台に籠に詰めるだけ括り付けて、ナップザックの中にも詰めて。
こんなに沢山何の工場かと尋ねると、店長一言、服、と答えた。
縫製の工場らしい。
この自転車にお針子達の昼ご飯を託されているわけだ。
「……行ってきます」
店長は頷いて、気を付けろと言った。
自転車で街を走る。風が心地良い。
もうすぐかと道を眺めながら走っていると、不意に飛び出してきた影にブレーキを握り締めた。
それ程スピードは出していなかったが弁当が心配になる。
「……な、何だったんだ……」
片足を付けて弁当を確かめると、店長の面目は保てる程度で済んでいる。
不審な影はぎょろりと大きな目でこちらを向いていた。
背筋に冷や汗が伝う。
狙われている。
弁当が。
自転車を思い切り漕いで、その影から逃げながら工場を目指した。
吼えながら追ってくるその姿は嘗て図鑑で見たコボルトにとてもよく似ていた。
工場に近づくと庭へ出ている所長らしき人が出てきていた。
「――すみません! コボルトに追われてます……!」
叫ぶと彼は落ち葉用の大きなフォークを持って仁王立ちになる。僕に入れと庭を示すと、追ってきたコボルトを一突きでその腹を貫いた。
「……よく出るんですか……? あ、弁当お届けに上がりました……」
「最近増えてね。駆除しても駆除しても……だから、娘達にも」
若い女性が多い職場だ。食べ物を持っての通勤途中で襲われたら大事だからと、所長は溜息交じりに言いながら、自転車に積んだ弁当の荷解きを手伝ってくれた。
その時、建物の中から悲鳴が上がった。
何事だとドアを開けると、所長に気付いた女性の1人が指差した。
そこにはどこからか進入したらしいコボルトが3匹。
更に悲鳴が、工場に向かった僕たちの背後から、擦れ違って庭へ逃げたお針子達から聞こえてきた。
振り返ると更に2匹のコボルトが自転車に迫っていた。
「べ、弁当っ」
背負っていたナップザックを近くの女性に預けて、自転車を、積み残した弁当を守ろうと思った。
「持っててくれる?」
「ええ、マウロ、ちゃんと預かっておくわね」
「――――ティナ!」
「そうよ?」
「何でここ……っ、あとで、詳しく聞くからね!」
揃いのエプロンを着けて糸くずに塗れながら可愛らしく笑ったティナに見送られ自転車に向かった僕に、所長はもう1本のフォークを投げて寄越した。
解説
目的 コボルト駆除し弁当を守る
●エネミー
コボルト5匹
腹を空かせたごく普通のコボルト
●場所
縫製の工場
机が並び、布や裁縫道具、服やトルソーが散らかっている。
働いている女性が50人程度が混乱している。
______(壁)______
|
散ら × × |
かって × |
いる |
(壁)
机や椅子、裁縫道具 |
通路は縦横共に狭い 散ら |
混乱する女性達 かって|
いる |
__(ドア)_________|
庭
混乱する女性達は
この辺りにも広がっている
自転車
△ ▲
××
=(出入り口)==(柵)===(柵)==
×=コボルト
△マウロ
▲=所長
報せを受けたPCは出入り口付近に集合後、
出入り口から、或いは柵を乗り越えて入ることが出来る。
●NPC
マウロ(オープニング中の「僕」)
新興の商家の少年、ティナと逃避行中。
フォークを構えているが、図鑑でしか見たことのないコボルトに怯えている。
指示があれば従う。
ティナ
貴族の少女、マウロと逃避行中。
混乱する女性達に紛れている。
指示があれば従う。
所長
工場の所長、コボルト駆除の心得はあるが、体力の衰えを感じる年頃。
工場で働く女性達の安全を第一に考えて行動する。
指示があれば従う。
混乱する女性達
とても騒がしく、どんな行動に出るか分からない。
「椅子でも投げつけてやれば……!」「机を寄せてバリケードにしましょう」「やだー気持ち悪いー!」
「じゃあ、私はこのトルソーで!」「庭にも居るのね、所長、助太刀します!」
●エネミー
コボルト5匹
腹を空かせたごく普通のコボルト
●場所
縫製の工場
机が並び、布や裁縫道具、服やトルソーが散らかっている。
働いている女性が50人程度が混乱している。
______(壁)______
|
散ら × × |
かって × |
いる |
(壁)
机や椅子、裁縫道具 |
通路は縦横共に狭い 散ら |
混乱する女性達 かって|
いる |
__(ドア)_________|
庭
混乱する女性達は
この辺りにも広がっている
自転車
△ ▲
××
=(出入り口)==(柵)===(柵)==
×=コボルト
△マウロ
▲=所長
報せを受けたPCは出入り口付近に集合後、
出入り口から、或いは柵を乗り越えて入ることが出来る。
●NPC
マウロ(オープニング中の「僕」)
新興の商家の少年、ティナと逃避行中。
フォークを構えているが、図鑑でしか見たことのないコボルトに怯えている。
指示があれば従う。
ティナ
貴族の少女、マウロと逃避行中。
混乱する女性達に紛れている。
指示があれば従う。
所長
工場の所長、コボルト駆除の心得はあるが、体力の衰えを感じる年頃。
工場で働く女性達の安全を第一に考えて行動する。
指示があれば従う。
混乱する女性達
とても騒がしく、どんな行動に出るか分からない。
「椅子でも投げつけてやれば……!」「机を寄せてバリケードにしましょう」「やだー気持ち悪いー!」
「じゃあ、私はこのトルソーで!」「庭にも居るのね、所長、助太刀します!」
マスターより
よろしくお願いします。
混乱している女性達を上手く躱して、工場(こうば)の中も残さずきゅっと駆除して下さい。
ポルトワールからのクルージングの最中に、
避難用ボートでの逃避行toリゼリオを敢行したティナとマウロですが、
割と上手くやっているみたいです。
混乱している女性達を上手く躱して、工場(こうば)の中も残さずきゅっと駆除して下さい。
ポルトワールからのクルージングの最中に、
避難用ボートでの逃避行toリゼリオを敢行したティナとマウロですが、
割と上手くやっているみたいです。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2016/09/21 01:50
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 鞍馬 真(ka5819) 人間(リアルブルー)|22才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2016/09/12 00:34:44 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/09/10 01:32:51 |