• 戦闘

【早暁】細橋の先へ

マスター:真柄葉

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
サポート
現在0人 / 0~5人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2016/09/21 09:00
リプレイ完成予定
2016/09/30 09:00

オープニング

●集落
 煌々と焚かれた松明が照らし出す一室は、笑い声と酒気に満ちていた。
「そ、そんなに呑めなって!」
「まぁまぁ、そう言わず」
 ぐぐっと酒瓶を近づけてくる老人に、さっと盃を背に隠す。
「いやぁ、本当に助かりました。お蔭で疫病に備える事ができる」
「遠くで噂を聞いたから。でも、間に合ってよかったわ」
 引っ込める様子の無い酒瓶を、乾いた笑みで見つめていたエミルタニア=ケラー。
「このまま疫病がこの集落に広まっていたかと思うと……ぞっとしますわい。本当に、本当に感謝の言葉しかありませぬ」
「そ、そう。そこまで感謝されると、私もうれしいわ」
 心の底から感謝の意を表す老人の笑顔に、エミルは観念したのか背に隠してあった盃をそっと差し出した。

 辺境で疫病の広がっていると噂がある。
 そう聞いたのはノアーラ・クンタウのとある酒場でだった。
 ハンター達がよく集まるそこには、辺境の情報がかなりの速度且つなかなかの精度で集まってくる。
 エミルは先日の依頼で初めてハンター達と仕事を共にし、その知識と力量に感服。これからの商売にハンター達の協力は欠かせないと結論付けた。
 そして、今回もハンター達との交流を通じて得た情報を元に、疫病に対応できる薬を仕入れ、この集落を訪れたのだ。
 もちろんエミルは商人である。慈善事業はしない。今回の訪問ももちろん商売の内。薬と引き換えに、報酬として少なくない金額を得た。
 しかし、事は商売だけで終わらなかった。
 疫病を回避できると知った集落の人々の感激はかなりのもので、商売を終えたエミルを半ば無理やり引き止め、宴を始めると言い出したのだった。

「私はもういいからさ、ハンターの皆に振舞ってあげてよ」
 酒の注がれた盃をちびちびと口元に運んでいたエミルが、老人に願い出る。
「それはもう」
 と、答えは相変わらず笑みに包まれていた。
「あちらで、うちの若い衆に酌をさせておりますわい」
「え?」
 見ればハンター達を囲んで大きな輪ができている。
 宴会に招かれたのは、薬を売りに来たエミルだけではなかった。
 従者のリットはもちろん、護衛のハンター達まで巻き込んだ大宴会が催されたのだ。
 部族の若い娘や青年が代わる代わる酌をして回っている様はとてもとても楽しそうだ。
 若者たち特有の活気ある笑い声。酒の力を借りて弾む様々なトーク。果ては、歌やダンスまで飛び出す始末。
「……」
「うん? どうかされましたかな?」
 その光景を目撃し、一気に表情の熱が冷めていくエミルに、老人は問いかけた。
「な、な、な……なんで私だけこっちなのよぉ!?」
 どんと割れんばかりの勢いでエミルは盃を地面に叩きつけたのだった。

●朝
「いやぁ~、すっかり長居しちゃったわねぇ」
 ほんのりと頬を染め、上機嫌でトラックに揺られる助手席のエミル。
「まさか、完徹だとは思いませんでしたよ……」
 トラックのハンドルを握るリットは、諦めにも似た溜息をつく。
 結局、宴会は夜を迎え、日を跨ぎ、朝日を拝むまで続けられた。
「仕方ないじゃない、あちらがどうしてもっていうんだし~」
「まぁ、今後の付き合いを考えると、お誘いを断るのは得策じゃないですけど……」
「でしょ! 私の判断は間違ってないのよっ」
「場の雰囲気に流されただけでしょうに……」
 そんなリットの愚痴など聞いているのかどうか、エミルはにへらとだらしない笑みを浮かべている。
「うっぷ……っ。リットぉ、もうちょっとゆっくり走ってよぉ~」
 エミルは胸の奥から込み上げてくるものを何とか堪え、リットに文句を放つ。
 ちゃんと舗装もされていない道である。いくらゴムのタイヤを履いたトラックと言えど、揺れる揺れる。
「エミル。出発が随分遅れたのはわかってますよね?」
「そんなの、私のせいじゃないしぃ」
 まるで悪びれる様子もないエミルは、ツーンとそっぽを向くとそのまま瞳を閉じた。

 助手席にエミル、荷台にハンター達を乗せたトラックが、ケリド川にかかる橋へと差し掛かる。
「ふぅ……またここを渡るんですね」
 リットは目の前を横切る大河と、それにかかる心細い橋を陰鬱に見やる。
 トラックを手に入れたのはごく最近。そこからリアルブルーの技師の猛特訓を受け、何とか人並みに運転できるようになった。
 しかし、目の前の橋はトラックが一台ギリギリ通れる程度の幅しかない上に、橋板は置いただけの簡易なもの。
「誰か代わって……とは言えない状況ですよね。はぁ……よしっ!」
 隣では微かに寝息を立てだしたエミル。そして、荷台に乗るハンター達も同じ状況だろう。
 リットは深くため息をつくと意を決し、アクセルを踏み込んだ。

●渡河
 先ほどの舗装されていない道が王都の大通りに思える程、酷い揺れがトラックを襲う。
 リットはハンドルを握る手に汗しながらも、エンストしないギリギリの速度を保って、トラックはゆっくりと橋を渡っていた。

 ゴンっ。

 橋も3分の1ほど来ただろうか。その時突然、窓を何かが叩く音がした。
「うん?」
 何事かとリットは横目で助手席側の窓を見やる。
「……気のせい――うあっ!?」
 再び硬いものが窓に当たり、その正体にリットは驚きのあまり声を上げた。
「こ、これって、飛喰魚!? なんでこんな所に!?」
 窓に突撃してきたのは、巨大な牙が特徴的な怪魚であった。
「んー? リット、どうしたのぉ?」
「飛喰魚ですよ、飛喰魚!!」
「飛喰魚……? ふー……ん? うん!? 飛喰魚!?」
 睡魔の魅了に屈しようとしていたエミルは、ようやくその単語に覚醒する。
「どういう事!? なんでこんな所に居るのよ!」
「僕にもわかりませんよ! とにかく急いで荷台で寝てる人を起こしてください! タイヤをやられたらお終いです!」
「わ、わかったわ!」
 そう答えたエミルは咄嗟に助手席の窓を開けそうになったが何とか思いとどまり、くるりと体の向きを変えると荷台が見えるのぞき窓をたたき割った。
「皆起きてっ!! 敵よ……! 歪虚が出たわっ!!」
 ガラスの割れる甲高い音とエミルの叫び声が重なる。
「何とかこの橋さえ渡りきれば……!」
 エミルの機転に胸を撫で下ろし、リットは再びハンドルを握る手に力を込めた。
 飛喰魚は鋭い牙をもった捕食者であるものの、幸いにして鉄の車体に穴を穿つほどの力はない。
 しかし、タイヤをやられれば、パンクからの脱輪、転落……そこに待っているものは、考えたくもない。
 渡河は三分の一。行くか戻るか。
 座席の後部に空いたのぞき窓から後方を確認し、リットは転進は出来ない、と即座に判断した。
 橋の幅はトラック一台がようやく通れるほどに細く、橋板は不安定で脆い。
 ここをバックで戻るなど、今の自分の技量ではとてもではないが無理だ。
「このまま、進みます! 皆さん、よろしくお願いします!」
 リットは即座に決断すると、エミルの開けたのぞき窓からハンター達へ声をかけた。

解説

●目的
無事に橋を渡り切る事です。

●場所
ケリド川にかかる流れ橋(洪水などで橋自体が流されないように、わざと橋板を流して支柱を守り、復旧しやすくした橋)。欄干は無く、魔導トラック一台がギリギリ通れる幅しかありません。
橋板も固定していませんので、トラックで爆走すると橋板が外れ川に落ちます。速度はせいぜい、時速10km程度が精いっぱいでしょう。

橋が架かる場所の川幅は、約3km。残り2kmくらいあります。

●人物
エミルタニア=ケラー:18歳。辺境を縄張りにする行商人。先日の依頼で大きな儲けを手に入れ、中古の魔導トラックを買いました。酔い深度はほどほどです。

リット:14歳。エミルの助手兼トラックの運転手。運転手の為、飲酒は免れました。唯一の素面?

●荷物
トラックにはお土産品の酒樽が二つ。一つは度数の強いウォッカ。もう一つは馬乳酒になります。
飲んでもいいですし、戦闘で使っても構いません。
他には交易品の熊の毛皮が何枚か積んであります。

●敵
飛喰魚:
サメの様に鋭い牙と、トビウオの様な空中を飛べる胸鰭を持った歪虚で、水中から空中に飛び上り滑空しながら獲物を襲います。
時折、集団で現れて川を往来する船や、川を住処にする動物などに襲い掛かります。
大きさは20cm程。群れているので沢山います。しかし、本来はもう少し下流に居る歪虚のはずですが……。

●補足
・飲めや歌えの大宴会は朝まで続き、徹夜で飲み明かした皆さんは、立派に『できあがって』います。
・酔深度(どれだけ酔っぱらっているか)は皆さんにお任せします。酩酊によりどんなデバフ(『眩暈』『吐き気』『泣き上戸』等々)が発生するのかもそれぞれのPC様次第です。
・飲めないPCさんは、『飲まなかった』or『無理やり飲まされた』、どちらを選んでも大丈夫ですが、無理やり飲まされた方がきっとおもしr(
・本来いるはずの無い場所に現れた飛喰魚。何かに追われているようですが……。

マスターより

お世話になっております。真柄 葉(まがら よう)と申します。
今回の依頼は、色々と悪条件の揃った戦闘依頼!
皆さんの力で、トラックを無事対岸まで送り届けてください!

ここで一つ、真柄から参加いただいた皆様へ、ご提案です。
本当ならOP本文中に宴会の風景をたくさん書いて盛り上げたかったのですが、諸々の事情であっさりしたものになりました。
もしよろしければ、エミルも交え相談卓に宴会卓でも立てて、掲示板飲み会でも出来ればなっと思っています。

依頼へご参加いただけました皆様、よろしければ宴会卓へもご参加ください。
それでは、今回もよろしくお願いいたします。

関連NPC

  • 同盟の海商
    エミルタニア=ケラー(kz0201
    人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2016/09/25 00:02

参加者一覧

  • 真実を包み護る腕
    ルキハ・ラスティネイル(ka2633
    人間(紅)|25才|男性|魔術師
  • は た ら け
    鵤(ka3319
    人間(蒼)|44才|男性|機導師
  • ヒトとして生きるもの
    蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009
    エルフ|22才|女性|魔術師
  • 真実を斬り拓く牙
    丑(ka4498
    人間(紅)|30才|男性|闘狩人
  • 背徳の馨香
    ブラウ(ka4809
    ドワーフ|11才|女性|舞刀士
  • 凛然奏する蒼礼の色
    イルム=ローレ・エーレ(ka5113
    人間(紅)|24才|女性|舞刀士
依頼相談掲示板
アイコン 宴会場 ※RP推奨
エミルタニア=ケラー(kz0201
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/09/21 07:49:34
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/09/16 19:26:55
アイコン 酔っ払い?素面?
ブラウ(ka4809
ドワーフ|11才|女性|舞刀士(ソードダンサー)
最終発言
2016/09/19 19:33:38