ゲスト
(ka0000)
大きな少女と大きな群れ
マスター:春野紅葉

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在10人 / 4~10人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2016/09/23 19:00
- リプレイ完成予定
- 2016/10/02 19:00
オープニング
●暗雲
お祭りを終えて、町には普段ののんびりとした空気が帰ってきている。
心の奥に燻る寂しさのような感情に、ぼうっと外を眺めるだけの一日を過ごしてしまったが、ユリヤは気持ちを持ち直して羊の護衛のお仕事をすべく、雇い主の男性の下へと歩みを進めていた。
「そう言えばなんだべが、あれ、最近は広がってるって話だべ?」
「あれ……あぁ、西のことかの?」
雇い主の家に辿り着き、挨拶をしようとした時、ふとそんな会話が聞こえた。
「こんにちは~」
そっと扉を開けると、中にいた初老の男性――雇主と、たしかその友人だったはずの同職の40代の男がいた。
「あぁ、こんにちは、ユリアお嬢ちゃん」
初老の男性がにっこりと人の好い笑みを浮かべる。
「あの……何かあったんですか?」
「あぁ、実はのう、お嬢ちゃんがくるよりもちょっと前から何じゃがの、町の西側の草木が枯れ果ててもうた場所があるんじゃ」
「そういえば、西には行かなくていいっておっしゃってましたね。それが理由なんですか?」
「うむ……」
初老の男性はそう言って彼がいつも自慢にしている長いあごひげを撫でる。
「この男の話じゃと、それが最近、広がっとるんじゃと。危険かもしれんから、行ってはいかんぞ?」
「はい。分かりました。いつも通りの辺りでやってきますね!」
ぺこりと頭を下げて、ユリヤはその場を後にした。大通りを抜け、町の門へ辿り着いたところ、疲れ果てた様子で椅子に座っている男性を見つけた。
夜中に外に出ていた――というのとは少し違う。そもそも、町の中では見慣れない顔だった。
「こんにちは……どうかなさったのですか?」
「君は……?」
「この町の住人でユリヤと申します」
「ああ……そうかい、いや、いいんだ。ちょっと狼に襲われてね。旅の予定を変えてここに来たんだ」
「それは……災難でした。大丈夫ですか?」
「ああ、うん……」
「何か、どうしようもないときは目を閉じてじっとしているのも、良いものですよ。私もそうやってるんです」
元気づけようと、そう言うと男は小さく笑って目を閉じた。ユリヤはそっとその手を自身の手で握ると、自らも目を閉じる。
「大丈夫です。町の中にいれば、狼は来ません……だから、ゆっくりと」
そうやって手を握った後、男の呼吸が落ち着いたのを感じて、ユリヤはそっと笑み、その場を後にした。
●平穏を裂く咆哮
いつも通りの場所で、いつも通りに羊たちを放ち、ユリヤ自身は少し後ろから馬に跨ってそれを見渡していた。一応もうけられている柵の中を見回し、抜け出そうな羊がいたら犬と馬を駆ってそれを柵の中に戻す、ただそれだけを延々と続けるだけの作業である。
「あれって……」
いつも通りの日常に、心地よい日差しを受けて一つ欠伸をしたところで、ユリヤはふと、それの姿を見た。犬ほどの大きさだが、ユリヤの知る感じではない。
「あれが、町に来た男性の言ってた狼?」
たった一匹、それを見て、ユリヤは馬を走らせた。杖を抜いて、狼に向けて走りよる。馬が怯えぬよう、5メートルほどの所で飛び降りると、覚醒し、一気に近づいて行く。
狼の進行方向へと躍り込み、柵を背にして構えた――ところで、胸が一つ、大きく鳴ったように感じた。
それは、そう。正しく狼である。狼であることには、違いはないのだろう――ただ、ソレの顔の左半分や、足といった所々は腐り果てていた。
――ユリヤは知っている。これが何なのか、脳裏を駆け抜けていくのは、やっと意識さえしなければ思い出さなくなってきた、故郷での記憶。
気付けば、ユリヤはわめき散らすように声を上げていた。
後ろ腰に挿している片手剣を抜き、遮二無二ソレに向かって走り出す。頭は真っ白だ。
狼との接近したら、いつの間にか手が動いていた。肉を貫く重みが、腕をつたっていく。
「うあああ!?」
思わず叫ぶと、そのまま無理矢理、相手を押すようにして剣を引き抜いた。狼が飛び去り、間合いを開けたかと思うと、数度、吠えた。すると、どこに隠れていたのか、或いは単に追いついて来てなかったのか、更に2匹現れた。
三匹を相手に、剣と杖を使って狂ったように格闘を続けていたユリヤだったが、やがて狼たちが踵を返して去っていく。
「待ちなさい!!」
既に枯れつつあった声で叫び、走る。幾つか傷が増え、体力も使い果たし、呼吸を乱しながら走って、倒れ込みそうになったところで、馬が姿を現した。
「……ありがとう、追いますよ……」
かすれた声で馬に指示をだし、走らせた。何とか呼吸を戻しながら、どれくらい馬に乗っただろう。
小さな丘を一つ越え――そこでユリヤは馬を止めた。
「なに、これ……」
ただただ平原の広がる小さな町の、その近郊。そのはずなのに、そこは草一本も生えず、荒野と成り果てているように思えた。荒野自体、かなりの大きさであることはうかがえる。
「こんな数……ありえるの?」
声が震えた。寒気も止まらない。何よりも恐ろしかった。こんなことが、こんなモノ達が、町のほど近くに存在していることそれ自体が、気持ち悪かった。
危ないから西には行かないように、確かにそう言われていた。だが、まさかそれがこんなことになっているからなんて思わなかった。
「ほとんど土が見えない……何匹いるの……? この光景、まるで故郷と同じ……ううん違うもっとひどい」
荒野を埋め尽くす狼たち。動揺も、緊張も、ありとあらゆる感情がはっきりと恐怖に塗りつぶされた。
そのあり得ない程の数の狼――モドキの歪虚たちは、荒野と化したその一帯をある程度の数で歩き回っているように見える。それがいわゆる一つ一つの群れなのだろう。
荒野の中心では、他の狼より一回り大きめの狼が静かに体を横たえていて、一匹たりともその近くへ近寄ろうとしない。まるで小さな国を見せられているかのような錯覚さえ覚えさせられる光景だった。
「戻らなきゃ……私一人がどうこうできる数じゃないよ……」
ユリヤは馬が嘶きを発さないことを祈りながら、静かにそこから走り去った。急く気持ちを馬に乗せて、潰れないことを願いながら、無心に走らせた。
●討伐令を
ほうほうの体で村へ帰還したユリヤは、すぐにハンターオフィスへ走り込んで、このことを伝えると、ふらふらと町に出た。
「どうしたんだ? ユリヤ」
誰かにぶつかって、謝罪しようとして上を見る。そこにいたのは、ツェザールだった。
震える声で同郷の士に事を告げる。しかし、恐怖で下を向いていたユリヤは、ツェザールの双眸に浮かぶ喜びのような感情に気付けなかった。
お祭りを終えて、町には普段ののんびりとした空気が帰ってきている。
心の奥に燻る寂しさのような感情に、ぼうっと外を眺めるだけの一日を過ごしてしまったが、ユリヤは気持ちを持ち直して羊の護衛のお仕事をすべく、雇い主の男性の下へと歩みを進めていた。
「そう言えばなんだべが、あれ、最近は広がってるって話だべ?」
「あれ……あぁ、西のことかの?」
雇い主の家に辿り着き、挨拶をしようとした時、ふとそんな会話が聞こえた。
「こんにちは~」
そっと扉を開けると、中にいた初老の男性――雇主と、たしかその友人だったはずの同職の40代の男がいた。
「あぁ、こんにちは、ユリアお嬢ちゃん」
初老の男性がにっこりと人の好い笑みを浮かべる。
「あの……何かあったんですか?」
「あぁ、実はのう、お嬢ちゃんがくるよりもちょっと前から何じゃがの、町の西側の草木が枯れ果ててもうた場所があるんじゃ」
「そういえば、西には行かなくていいっておっしゃってましたね。それが理由なんですか?」
「うむ……」
初老の男性はそう言って彼がいつも自慢にしている長いあごひげを撫でる。
「この男の話じゃと、それが最近、広がっとるんじゃと。危険かもしれんから、行ってはいかんぞ?」
「はい。分かりました。いつも通りの辺りでやってきますね!」
ぺこりと頭を下げて、ユリヤはその場を後にした。大通りを抜け、町の門へ辿り着いたところ、疲れ果てた様子で椅子に座っている男性を見つけた。
夜中に外に出ていた――というのとは少し違う。そもそも、町の中では見慣れない顔だった。
「こんにちは……どうかなさったのですか?」
「君は……?」
「この町の住人でユリヤと申します」
「ああ……そうかい、いや、いいんだ。ちょっと狼に襲われてね。旅の予定を変えてここに来たんだ」
「それは……災難でした。大丈夫ですか?」
「ああ、うん……」
「何か、どうしようもないときは目を閉じてじっとしているのも、良いものですよ。私もそうやってるんです」
元気づけようと、そう言うと男は小さく笑って目を閉じた。ユリヤはそっとその手を自身の手で握ると、自らも目を閉じる。
「大丈夫です。町の中にいれば、狼は来ません……だから、ゆっくりと」
そうやって手を握った後、男の呼吸が落ち着いたのを感じて、ユリヤはそっと笑み、その場を後にした。
●平穏を裂く咆哮
いつも通りの場所で、いつも通りに羊たちを放ち、ユリヤ自身は少し後ろから馬に跨ってそれを見渡していた。一応もうけられている柵の中を見回し、抜け出そうな羊がいたら犬と馬を駆ってそれを柵の中に戻す、ただそれだけを延々と続けるだけの作業である。
「あれって……」
いつも通りの日常に、心地よい日差しを受けて一つ欠伸をしたところで、ユリヤはふと、それの姿を見た。犬ほどの大きさだが、ユリヤの知る感じではない。
「あれが、町に来た男性の言ってた狼?」
たった一匹、それを見て、ユリヤは馬を走らせた。杖を抜いて、狼に向けて走りよる。馬が怯えぬよう、5メートルほどの所で飛び降りると、覚醒し、一気に近づいて行く。
狼の進行方向へと躍り込み、柵を背にして構えた――ところで、胸が一つ、大きく鳴ったように感じた。
それは、そう。正しく狼である。狼であることには、違いはないのだろう――ただ、ソレの顔の左半分や、足といった所々は腐り果てていた。
――ユリヤは知っている。これが何なのか、脳裏を駆け抜けていくのは、やっと意識さえしなければ思い出さなくなってきた、故郷での記憶。
気付けば、ユリヤはわめき散らすように声を上げていた。
後ろ腰に挿している片手剣を抜き、遮二無二ソレに向かって走り出す。頭は真っ白だ。
狼との接近したら、いつの間にか手が動いていた。肉を貫く重みが、腕をつたっていく。
「うあああ!?」
思わず叫ぶと、そのまま無理矢理、相手を押すようにして剣を引き抜いた。狼が飛び去り、間合いを開けたかと思うと、数度、吠えた。すると、どこに隠れていたのか、或いは単に追いついて来てなかったのか、更に2匹現れた。
三匹を相手に、剣と杖を使って狂ったように格闘を続けていたユリヤだったが、やがて狼たちが踵を返して去っていく。
「待ちなさい!!」
既に枯れつつあった声で叫び、走る。幾つか傷が増え、体力も使い果たし、呼吸を乱しながら走って、倒れ込みそうになったところで、馬が姿を現した。
「……ありがとう、追いますよ……」
かすれた声で馬に指示をだし、走らせた。何とか呼吸を戻しながら、どれくらい馬に乗っただろう。
小さな丘を一つ越え――そこでユリヤは馬を止めた。
「なに、これ……」
ただただ平原の広がる小さな町の、その近郊。そのはずなのに、そこは草一本も生えず、荒野と成り果てているように思えた。荒野自体、かなりの大きさであることはうかがえる。
「こんな数……ありえるの?」
声が震えた。寒気も止まらない。何よりも恐ろしかった。こんなことが、こんなモノ達が、町のほど近くに存在していることそれ自体が、気持ち悪かった。
危ないから西には行かないように、確かにそう言われていた。だが、まさかそれがこんなことになっているからなんて思わなかった。
「ほとんど土が見えない……何匹いるの……? この光景、まるで故郷と同じ……ううん違うもっとひどい」
荒野を埋め尽くす狼たち。動揺も、緊張も、ありとあらゆる感情がはっきりと恐怖に塗りつぶされた。
そのあり得ない程の数の狼――モドキの歪虚たちは、荒野と化したその一帯をある程度の数で歩き回っているように見える。それがいわゆる一つ一つの群れなのだろう。
荒野の中心では、他の狼より一回り大きめの狼が静かに体を横たえていて、一匹たりともその近くへ近寄ろうとしない。まるで小さな国を見せられているかのような錯覚さえ覚えさせられる光景だった。
「戻らなきゃ……私一人がどうこうできる数じゃないよ……」
ユリヤは馬が嘶きを発さないことを祈りながら、静かにそこから走り去った。急く気持ちを馬に乗せて、潰れないことを願いながら、無心に走らせた。
●討伐令を
ほうほうの体で村へ帰還したユリヤは、すぐにハンターオフィスへ走り込んで、このことを伝えると、ふらふらと町に出た。
「どうしたんだ? ユリヤ」
誰かにぶつかって、謝罪しようとして上を見る。そこにいたのは、ツェザールだった。
震える声で同郷の士に事を告げる。しかし、恐怖で下を向いていたユリヤは、ツェザールの双眸に浮かぶ喜びのような感情に気付けなかった。
解説
よろしくお願いします。
今回は狼型歪虚の群れと戦っていただければと思います。
舞台はただっぴろい荒野です。
遮蔽物がないのでお気を付け下さい。
ユリヤちゃんからの情報で、PCの皆さんには「凄い数の狼型歪虚がいること」と「その中央に一回り大きい歪虚がいること」だけ分かっています。
以下PL情報です
20匹くらいの狼ゾンビと、やや大きめの歪虚らしき狼を討伐してください。
やや大きめの奴は狼ゾンビ共に比べると少々、強めですのでご注意ください
今回は狼型歪虚の群れと戦っていただければと思います。
舞台はただっぴろい荒野です。
遮蔽物がないのでお気を付け下さい。
ユリヤちゃんからの情報で、PCの皆さんには「凄い数の狼型歪虚がいること」と「その中央に一回り大きい歪虚がいること」だけ分かっています。
以下PL情報です
20匹くらいの狼ゾンビと、やや大きめの歪虚らしき狼を討伐してください。
やや大きめの奴は狼ゾンビ共に比べると少々、強めですのでご注意ください
マスターより
お世話になっております。春野紅葉にございます。
前回のお祭りから一転変わって、だいぶやばめな状況での戦闘依頼になります。
純戦なので、作戦を練って、命一杯戦闘を楽しんでくださいませ。
それでは、皆さまのプレイングをお待ちしております。
前回のお祭りから一転変わって、だいぶやばめな状況での戦闘依頼になります。
純戦なので、作戦を練って、命一杯戦闘を楽しんでくださいませ。
それでは、皆さまのプレイングをお待ちしております。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2016/09/29 12:16
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/09/19 19:44:57 |
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相談卓 通りすがりのSさん(ka6276) エルフ|18才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2016/09/23 17:20:19 |