ゲスト
(ka0000)
路地裏工房コンフォートと逃避行
マスター:佐倉眸

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2016/10/08 12:00
- リプレイ完成予定
- 2016/10/17 12:00
オープニング
●
人も荷物も満載にした乗り合いの馬車がヴァリオスの街道入り口に着いた。
転がるように飛び降りた少年と、少年の手を取って、その腕の中へ飛び込むように下りた少女。
「たくさん我が儘を聞いて貰ったわ」
少女がぽつりと零した。
「――いいよ、僕も少し興味がある。それに、ティナのお祖母様にもお目にかかりたいから」
「ふふ、ありがとう。安心して、お祖母ちゃんはパパ程煩くないから」
楽しげな声、ティナと呼ばれた少女はくるくると踊るように歩きながら街を目指した。
「……マウロ、はやく。日が暮れるわ!」
少年を急かして走り出す。
閑静な住宅街の一角に小さな家が佇んでいた。
手入れの行き届いた庭木にアイアンレースの緻密なデザイン、窓に嵌め込まれた色硝子壁から屋根瓦まで質の良さは窺えるとても小さな家だ。
「私が小さい頃は一緒に住んでいたお祖母ちゃんが、ときどき連れてきてくれた隠れ家なの」
「……素敵な場所だね」
「でしょう? 私も大好きなの」
石畳を少し進んで、木のアーチを潜る。磨かれたノッカーを握って3つ叩く。
2人を迎えたのは白い髪を纏め、鮮やかな色のドレスに身を包んだ優しげな老女。
ティナに似た面差しで、肌には深い皺を刻みながらも背筋のしゃんと伸びた小柄なひと。
ティナの祖母であるという彼女は2人を交互に見詰めて溜息を吐く。
「ヴァレンティーナ、感心しませんよ。あなたは楽しんだかも知れませんが、今回のことで、あなたのお父さんも、お母さんもとても心配していたんです。あなたは子供の頃から……
玄関先での祖母の話は、小一時間続いた。
それから、他所のお家に口を出すつもりはありませんが、モンテリーゾのお家の方々だって、大変心配されたと聞いています。マウロ君も、もう少しご家族のことを大切にしてあげなくては。あなたを立派に……
更に1時間程、マウロに向かって話し続けた。そして。
さあ、話しはお終い。お茶にしましょう」
そう言って、祖母はにっこりと微笑み、2人をリビングへ招いた。
奥様、と呼ぶ若い声。メイドが顔を覗かせる。
「ええ、この子達にもケーキを用意して。お茶は、そうね……この前のアップルティーが美味しかったわ。それにしましょう――さあ、座って。2人ともよく来てくれたわね、リゼリオはどんな街だったのかしら?」
祖母はリゼリオでの話し、特にマウロがコボルトと遭遇した話しに目を輝かせた。
好奇心旺盛なところがティナと似ている。ゲストルームを借りたマウロは、久しぶりの柔らかなベッドに横たわり、これからのことを考えながら瞼を伏せた。
翌朝、ティナは先に起きてメイドと並んでキッチンに立っていた。
「お料理を習ったから披露してくれるんですって」
祖母は2人の様子を見守りながら、マウロにも椅子を勧めた。
ティナがフライパンを揺すって器用にオムレツを裏返して得意気に笑うと、不安そうにティナを見ていたメイドが拍手を送った。
朝食後、すぐに戻ってポルトワールへ向かう馬車を探すというと、祖母はある住所を書いたメモと小切手を差し出した。
若い頃に見付けた宝飾工房、小さな店だけど良い物を置いていた。一緒に見には行けないけれど、気に入る物を探しなさいと。
●
諸諸の礼を告げて祖母の家を辞した2人はメモの住所へ向かう。
巡回の馬車に乗って街道入り口の方へ走り、それを途中で降りると、メモに書かれた通りを見付けた。
入り組んだ路地に時計屋に薬屋、色色と揃っている。その影にひっそりと「宝飾工房コンフォート」の看板を見付けた。
ドアを叩くと小さな子供を背負った少女が鍵を開けた。
「いらっしゃいませ。でも、ごめんなさい、今、お祖父ちゃ、……オーナーが寝込んでいて」
「……ぴーのー。ねーね、もーか」
「ピノと、姉のモニカです、って、自己紹介してるの。お客さんが来た時はいつもそう」
子供と視線を合わせながらティナが名乗る。マウロも初めましてと会釈をした。
「てーな。まーろ、ろっ、まーま、ぱーぱ?」
「多分、ご夫婦ですか? って、聞いてると思うんだけど」
モニカは2人を見て肩を竦めた。そんなことを聞くのはまだ早いと背中のピノを揺らしながら。
ドアを開けて店内の椅子を勧める。祖母の紹介だと伝えると、それは先代のことだろうとモニカは笑った。
先代が亡くなり、建物としての店はオーナーが引き継いで片付ける予定だった。モニカは病床のオーナーの看病をしながら、偶に来る先代の頃の客の相手や修理の依頼を請け負っている。
「――売れる物は置いて無いんだけど、良かったらこれ着けてみて?」
先代のデザインを参考にしながら、習作で作ったペアのシルバーリング。
絡むように輪を重ねたレリーフ、2つ並べるとその流線が繋がりハートを描く。
「あら、ぴったり?」
モニカは嬉しげに言い、磨くから待っていてと椅子を勧めた。
作ったものの売れるような素材でも無く、出来は悪くなかったから捨てるのも惜しくてと、手元できらきらと銀を煌めかせながら言う。
「だから、合う人が来たらあげようって思ってたの」
●
2人はこれからポルトワールに向かうと言う。ここまで来たような、護衛のある乗り合いの馬車が有れば良いけれど、と溜息交じりに。
モニカは少し困ったように首を傾げた。
来るときも襲われているなら、気を付けた方が良い。安くてもお願い出来る人がいると思うからと。
自身も襲われたことがあるし、世話になっている薬屋の女性も、ジェオルジまでの道で遭遇している。
いずれもハンターに助けられて無事だったと。
「……そうですね、僕はまだ、コボルト1匹ろくに倒せませんし……」
「あら! コボルトなら、箒とかブラシとかの柄を思い切り振って吹っ飛ばすのが効果的よ」
探した安価な馬車は見付からず、直接ハンターオフィスに連絡を取る。
「予算が心許ないと言うことですね? 大丈夫です! それでもオーケイと言ってくれるハンターさんを探しますので!」
食い気味に依頼を受け付けた受付嬢が掲示板にぺたりと募集の依頼を貼り付けた。
●
互いの指に銀のリングを輝かせた2人を見送って、モニカは店のドアを閉める。祖父の体調は落ち付いているが、医者は冬を越すのは厳しいだろうと言っていた。ときどき不安になるが、悪化することも無く、穏やかに過ごしている。
思い出すのは、彼の愛する本当の孫娘、モニカが姉と慕うある若い女性のこと。
歪虚の起こした事件に巻き込まれて衰弱し、今は保護され静かに暮らしていると聞く。
せめて、会いに来てくれたらと、叶わぬことを祖父の皺の多い手を握って祈る。
どうかこの手の温もりの消えぬうちに、彼女の命の尽きて仕舞わぬことを。
ベッドに寝かせていたピノが、火の付いたように泣きわめいた。
人も荷物も満載にした乗り合いの馬車がヴァリオスの街道入り口に着いた。
転がるように飛び降りた少年と、少年の手を取って、その腕の中へ飛び込むように下りた少女。
「たくさん我が儘を聞いて貰ったわ」
少女がぽつりと零した。
「――いいよ、僕も少し興味がある。それに、ティナのお祖母様にもお目にかかりたいから」
「ふふ、ありがとう。安心して、お祖母ちゃんはパパ程煩くないから」
楽しげな声、ティナと呼ばれた少女はくるくると踊るように歩きながら街を目指した。
「……マウロ、はやく。日が暮れるわ!」
少年を急かして走り出す。
閑静な住宅街の一角に小さな家が佇んでいた。
手入れの行き届いた庭木にアイアンレースの緻密なデザイン、窓に嵌め込まれた色硝子壁から屋根瓦まで質の良さは窺えるとても小さな家だ。
「私が小さい頃は一緒に住んでいたお祖母ちゃんが、ときどき連れてきてくれた隠れ家なの」
「……素敵な場所だね」
「でしょう? 私も大好きなの」
石畳を少し進んで、木のアーチを潜る。磨かれたノッカーを握って3つ叩く。
2人を迎えたのは白い髪を纏め、鮮やかな色のドレスに身を包んだ優しげな老女。
ティナに似た面差しで、肌には深い皺を刻みながらも背筋のしゃんと伸びた小柄なひと。
ティナの祖母であるという彼女は2人を交互に見詰めて溜息を吐く。
「ヴァレンティーナ、感心しませんよ。あなたは楽しんだかも知れませんが、今回のことで、あなたのお父さんも、お母さんもとても心配していたんです。あなたは子供の頃から……
玄関先での祖母の話は、小一時間続いた。
それから、他所のお家に口を出すつもりはありませんが、モンテリーゾのお家の方々だって、大変心配されたと聞いています。マウロ君も、もう少しご家族のことを大切にしてあげなくては。あなたを立派に……
更に1時間程、マウロに向かって話し続けた。そして。
さあ、話しはお終い。お茶にしましょう」
そう言って、祖母はにっこりと微笑み、2人をリビングへ招いた。
奥様、と呼ぶ若い声。メイドが顔を覗かせる。
「ええ、この子達にもケーキを用意して。お茶は、そうね……この前のアップルティーが美味しかったわ。それにしましょう――さあ、座って。2人ともよく来てくれたわね、リゼリオはどんな街だったのかしら?」
祖母はリゼリオでの話し、特にマウロがコボルトと遭遇した話しに目を輝かせた。
好奇心旺盛なところがティナと似ている。ゲストルームを借りたマウロは、久しぶりの柔らかなベッドに横たわり、これからのことを考えながら瞼を伏せた。
翌朝、ティナは先に起きてメイドと並んでキッチンに立っていた。
「お料理を習ったから披露してくれるんですって」
祖母は2人の様子を見守りながら、マウロにも椅子を勧めた。
ティナがフライパンを揺すって器用にオムレツを裏返して得意気に笑うと、不安そうにティナを見ていたメイドが拍手を送った。
朝食後、すぐに戻ってポルトワールへ向かう馬車を探すというと、祖母はある住所を書いたメモと小切手を差し出した。
若い頃に見付けた宝飾工房、小さな店だけど良い物を置いていた。一緒に見には行けないけれど、気に入る物を探しなさいと。
●
諸諸の礼を告げて祖母の家を辞した2人はメモの住所へ向かう。
巡回の馬車に乗って街道入り口の方へ走り、それを途中で降りると、メモに書かれた通りを見付けた。
入り組んだ路地に時計屋に薬屋、色色と揃っている。その影にひっそりと「宝飾工房コンフォート」の看板を見付けた。
ドアを叩くと小さな子供を背負った少女が鍵を開けた。
「いらっしゃいませ。でも、ごめんなさい、今、お祖父ちゃ、……オーナーが寝込んでいて」
「……ぴーのー。ねーね、もーか」
「ピノと、姉のモニカです、って、自己紹介してるの。お客さんが来た時はいつもそう」
子供と視線を合わせながらティナが名乗る。マウロも初めましてと会釈をした。
「てーな。まーろ、ろっ、まーま、ぱーぱ?」
「多分、ご夫婦ですか? って、聞いてると思うんだけど」
モニカは2人を見て肩を竦めた。そんなことを聞くのはまだ早いと背中のピノを揺らしながら。
ドアを開けて店内の椅子を勧める。祖母の紹介だと伝えると、それは先代のことだろうとモニカは笑った。
先代が亡くなり、建物としての店はオーナーが引き継いで片付ける予定だった。モニカは病床のオーナーの看病をしながら、偶に来る先代の頃の客の相手や修理の依頼を請け負っている。
「――売れる物は置いて無いんだけど、良かったらこれ着けてみて?」
先代のデザインを参考にしながら、習作で作ったペアのシルバーリング。
絡むように輪を重ねたレリーフ、2つ並べるとその流線が繋がりハートを描く。
「あら、ぴったり?」
モニカは嬉しげに言い、磨くから待っていてと椅子を勧めた。
作ったものの売れるような素材でも無く、出来は悪くなかったから捨てるのも惜しくてと、手元できらきらと銀を煌めかせながら言う。
「だから、合う人が来たらあげようって思ってたの」
●
2人はこれからポルトワールに向かうと言う。ここまで来たような、護衛のある乗り合いの馬車が有れば良いけれど、と溜息交じりに。
モニカは少し困ったように首を傾げた。
来るときも襲われているなら、気を付けた方が良い。安くてもお願い出来る人がいると思うからと。
自身も襲われたことがあるし、世話になっている薬屋の女性も、ジェオルジまでの道で遭遇している。
いずれもハンターに助けられて無事だったと。
「……そうですね、僕はまだ、コボルト1匹ろくに倒せませんし……」
「あら! コボルトなら、箒とかブラシとかの柄を思い切り振って吹っ飛ばすのが効果的よ」
探した安価な馬車は見付からず、直接ハンターオフィスに連絡を取る。
「予算が心許ないと言うことですね? 大丈夫です! それでもオーケイと言ってくれるハンターさんを探しますので!」
食い気味に依頼を受け付けた受付嬢が掲示板にぺたりと募集の依頼を貼り付けた。
●
互いの指に銀のリングを輝かせた2人を見送って、モニカは店のドアを閉める。祖父の体調は落ち付いているが、医者は冬を越すのは厳しいだろうと言っていた。ときどき不安になるが、悪化することも無く、穏やかに過ごしている。
思い出すのは、彼の愛する本当の孫娘、モニカが姉と慕うある若い女性のこと。
歪虚の起こした事件に巻き込まれて衰弱し、今は保護され静かに暮らしていると聞く。
せめて、会いに来てくれたらと、叶わぬことを祖父の皺の多い手を握って祈る。
どうかこの手の温もりの消えぬうちに、彼女の命の尽きて仕舞わぬことを。
ベッドに寝かせていたピノが、火の付いたように泣きわめいた。
解説
目的 依頼人をポルトワールへ届ける
●地形
ポルトワールへ向かう街道
道幅が有り、4人程度は横に並んで戦える。
●エネミー
ゴブリン×8~
襤褸を纏っており、基本的には棍棒で戦うが、弓を扱う技術を持つ者が少なからずいる。
統率が取れており、リーダーらしい個体がいる。
大柄なものも見られるが、リーダーと、弓を持つものは通常と変わらない。
●NPC
ティナ (ヴァレンティーナ・カッペリーニ)
ポルトワールの貴族令嬢、誕生日に客船からマウロを連れて逃避行
ハンター達の協力もあってリゼリオに到着し、お針子業に勤しんでいたが、
雇い主の勧めから帰宅を決意する
ヴァリオスに住む祖母に面会し、長時間のお説教を受けている
ハンターの指示には従うが、マウロの安全を最優先に行動する
マウロ(マウロ・モンテリーゾ)
ポルトワールの新興の商家の息子、ティナと共に逃避行
商店で働いていたが、同じく帰宅を決意
荷物の他にナイフを1本携帯している
ハンターの指示には従うが、ティナの安全を最優先に行動する
●地形
ポルトワールへ向かう街道
道幅が有り、4人程度は横に並んで戦える。
●エネミー
ゴブリン×8~
襤褸を纏っており、基本的には棍棒で戦うが、弓を扱う技術を持つ者が少なからずいる。
統率が取れており、リーダーらしい個体がいる。
大柄なものも見られるが、リーダーと、弓を持つものは通常と変わらない。
●NPC
ティナ (ヴァレンティーナ・カッペリーニ)
ポルトワールの貴族令嬢、誕生日に客船からマウロを連れて逃避行
ハンター達の協力もあってリゼリオに到着し、お針子業に勤しんでいたが、
雇い主の勧めから帰宅を決意する
ヴァリオスに住む祖母に面会し、長時間のお説教を受けている
ハンターの指示には従うが、マウロの安全を最優先に行動する
マウロ(マウロ・モンテリーゾ)
ポルトワールの新興の商家の息子、ティナと共に逃避行
商店で働いていたが、同じく帰宅を決意
荷物の他にナイフを1本携帯している
ハンターの指示には従うが、ティナの安全を最優先に行動する
マスターより
よろしくお願いします。
報酬が少なめなことにご注意下さい。
ゴブリンの生命力にはばらつきがあります。
(ハンターの攻撃力次第では誤差の範囲ですが)
ぎゅうぎゅうなオープニングですが、ティナとマウロを守りつつ道を突っ切ればクリアです。
モニカサイドが気になる方は、近日リリース予定の「彼等と配達(仮題)」をよろしくお願いします。
報酬が少なめなことにご注意下さい。
ゴブリンの生命力にはばらつきがあります。
(ハンターの攻撃力次第では誤差の範囲ですが)
ぎゅうぎゅうなオープニングですが、ティナとマウロを守りつつ道を突っ切ればクリアです。
モニカサイドが気になる方は、近日リリース予定の「彼等と配達(仮題)」をよろしくお願いします。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2016/10/18 00:13
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
作戦相談卓 ユルゲンス・クリューガー(ka2335) 人間(クリムゾンウェスト)|40才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2016/10/07 12:54:38 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/10/04 22:42:26 |