ゲスト
(ka0000)
ビッグダディ・ザ・画家
マスター:瀬川綱彦

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 4~8人
- サポート
- 現在0人 / 0~2人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2014/09/24 07:30
- リプレイ完成予定
- 2014/10/03 07:30
オープニング
●人型の悪夢
最初は気の迷いだった。と、その画家――アルベールは証言する。
気の迷いであった。だが、それを見た瞬間、彼はこう思ったのだ。
美しいと。
ある日、アルベールが新しい絵のモチーフを探して街の外へと散策に出たときのことである。
彼は盗賊に囲まれた。
思えば、人気のない小さな山の麓まで足を伸ばしたのがよくなかった。街道から少し外れた所にあるこの山は、盗賊たちの根城だったのだ。
山の手前の森林で、アルベールは盗賊の歩哨に見つかった。そこから先は早いもので、あっという間に仲間を呼ばれてこの有様である。
気分転換がてらいつもならば絶対に訪れぬ場所へと立ち寄ったのは拙かったな、と思ったときには既に何もかも手遅れだったわけである。
幸か不幸か、アルベールは今、少量の食糧と絵の具や木炭などの画材、あとはキャンパスとイーゼル程度しか手元にはなかった。それらは代替が利くという点で共通しており、取られて困る物ではないと言って良い。
そして不幸なのは、つまり命の他に差し出すものがないという事実である。
ああ、ついに命運つきたかと画家が他人事のように天を仰いだとき、運命の足音がした。
比喩ではなく、本当に枯れ枝や落ち葉をミシミシと踏みしめる足音が遠方から、しかしハッキリと聞こえてきたのだ。
盗賊たちがざわつく。
「誰だ?」
しめた、とアルベールは希望を抱いた。この盗賊を討伐しようとやってきた集団かもしれない。そうとなれば、きっと盗賊たちから逃げ出す隙が生まれるかもしれないぞ、と。
などと思考を巡らせていられたのは、それが木々の合間から顔を出すまでのことだった。
アルベールは、その顔を見上げた。
木々から顔を出したそれの足は確かに地についている。だがアルベールたちを見下ろす頭は、彼らからさらに人一人分以上高い位置にあった。
木々の合間から差し込んでいた陽光を遮り、逆光の中で黒く浮かび上がるシルエットは――巨人。しかし人のシルエットにしては直線的なその姿に、盗賊たちが叫ぶ。
「い、岩の化け物だ!」
身長三メートルを超す、岩から削り出されたかのような不格好なその姿は、ゴーレムと呼ぶにふさわしい。
「う、撃て! 撃て!」
形は出来そこのないの彫刻のようですらあったが、それは巨大であり、顔に作られた目とおぼしき一対のくぼみに見つめられるだけで、盗賊たちは震え上がってしまった。
盗賊の親玉らしき者の号令によって、盗賊たちの猟銃が火を噴いた。
弾丸はデタラメに撃たれ、或いは樹を抉り、或いはアルベールの頬をかすめていき、そして大多数はゴーレムの躯にたたきつけられた。
だが、ゴーレムの躯はよろめきすらしなかった。
――ッッッ!!!
それは声なきゴーレムの咆吼だったのか。
ゴーレムの両拳が地面を殴りつけ、大地は縦に鳴動し、土は津波のように巻き上がった。
蜘蛛の子を散らすとはこのことか、盗賊たちは一声で戦意を喪失して逃げ出していく。こんなところに、どうして、何故。そう口々に悲鳴をあげながら駆け出す盗賊たちの中には、武器を投げ出してしまう者もいた。
だが戦意を喪失した盗賊たちにも関わらず、ゴーレムは手近な盗賊たちへと乱暴に拳を振り回す。
顔の一対の目――いや、よく見ると実際はただの空洞で、躯の中に続いているようだったが、真っ暗なその二つの虚は不格好だからこそ、人にジワジワと恐怖を呼び起こさせた。
腕をたったの一振りで数人の盗賊たちが吹き飛ぶ。耳の奥にこびりつくような鈍い異音を鳴らしながら、盗賊たちは物言わぬ屍として転がっていった
悪夢のような惨状を、アルベールはただただ呆然と眺めているしかなかった。
そして、震えながらぽつりと呟いたのだ。
「……ふつくしい」
●そして時間軸は現在
「――というわけなのだよ!」
どういうわけだよ。
ギルドにて舌を振るっていた画家・アルベールの言葉に、おそらく集まったハンターの幾人かがそんな感想を抱いただろう。
アルベールは鷹揚に頷いてマントをひるがえしながら腕を開いた。彼のかけた丸眼鏡越しに目が意気揚々と輝いているのが見て取れる。近視用レンズの歪みで小さく見えるはずの目は、それでも強い意志の力を微塵も衰えさせてはいなかった。
「わたしがゴーレムに出会ったのは、先に話した通りだ。さて、わたしはあの巨人の美しさの虜になったのだ! わかるか、あの適当に作っていて途中で飽きて放り出された彫刻のような中途半端な造形! 不格好な姿! なのにあの膂力!」
それは褒めているのだろうか。
「ああ、つまりだね、直近で小規模なコンクールがあるのだが、それにゴーレムとハンターの戦いを見ながら描いた絵で挑戦したいのだよ。そのため、君たちにはわたしの絵の題材兼護衛をしてもらいたいのだ」
アルベールは真摯な瞳をハンターである君たちに向けてくる。
「いい加減、王国内で絵描きとしてチャレンジしてみたい。わたしには時間がないんだ」
そう言って彼は鎮痛な面持ちで自分の胸を押さえた。
「頼む。賞金が出なければわたしは飢え死にだ」
働け。
「とにかく! 直に戦いを見て描けば臨場感は十二分にでるはず。だから君たちはゴーレムの退治がてら、わたしを護衛してくれるだけで構わない。依頼を受けてはくれないか?」
アルベールはにやりと笑う。
「戦いが命懸けであるのは重々理解している。しかし、芸術も常に命懸けなのだ。その点において、我々は戦友と言っても過言ではないだろう。どうだ、誰か共に戦ってはくれまいか? 当然、報酬も通常通り用意してある」
先ほどまでふざけてるようにしか思えなかった彼は、真剣な表情で君たちを見回すと、最後にこう告げた。
「なにせ食費を削ったからな」
それまでずっと黙っていた眼鏡をかけた無愛想な受付嬢が、ため息をつきながらハンターたちに告げた。
「……それでは、なにとぞよろしくお願いします」
あ、これは匙を投げたな。と、投げやりになった受付嬢の心情を察するのは、まああまりにも容易いのだった。
最初は気の迷いだった。と、その画家――アルベールは証言する。
気の迷いであった。だが、それを見た瞬間、彼はこう思ったのだ。
美しいと。
ある日、アルベールが新しい絵のモチーフを探して街の外へと散策に出たときのことである。
彼は盗賊に囲まれた。
思えば、人気のない小さな山の麓まで足を伸ばしたのがよくなかった。街道から少し外れた所にあるこの山は、盗賊たちの根城だったのだ。
山の手前の森林で、アルベールは盗賊の歩哨に見つかった。そこから先は早いもので、あっという間に仲間を呼ばれてこの有様である。
気分転換がてらいつもならば絶対に訪れぬ場所へと立ち寄ったのは拙かったな、と思ったときには既に何もかも手遅れだったわけである。
幸か不幸か、アルベールは今、少量の食糧と絵の具や木炭などの画材、あとはキャンパスとイーゼル程度しか手元にはなかった。それらは代替が利くという点で共通しており、取られて困る物ではないと言って良い。
そして不幸なのは、つまり命の他に差し出すものがないという事実である。
ああ、ついに命運つきたかと画家が他人事のように天を仰いだとき、運命の足音がした。
比喩ではなく、本当に枯れ枝や落ち葉をミシミシと踏みしめる足音が遠方から、しかしハッキリと聞こえてきたのだ。
盗賊たちがざわつく。
「誰だ?」
しめた、とアルベールは希望を抱いた。この盗賊を討伐しようとやってきた集団かもしれない。そうとなれば、きっと盗賊たちから逃げ出す隙が生まれるかもしれないぞ、と。
などと思考を巡らせていられたのは、それが木々の合間から顔を出すまでのことだった。
アルベールは、その顔を見上げた。
木々から顔を出したそれの足は確かに地についている。だがアルベールたちを見下ろす頭は、彼らからさらに人一人分以上高い位置にあった。
木々の合間から差し込んでいた陽光を遮り、逆光の中で黒く浮かび上がるシルエットは――巨人。しかし人のシルエットにしては直線的なその姿に、盗賊たちが叫ぶ。
「い、岩の化け物だ!」
身長三メートルを超す、岩から削り出されたかのような不格好なその姿は、ゴーレムと呼ぶにふさわしい。
「う、撃て! 撃て!」
形は出来そこのないの彫刻のようですらあったが、それは巨大であり、顔に作られた目とおぼしき一対のくぼみに見つめられるだけで、盗賊たちは震え上がってしまった。
盗賊の親玉らしき者の号令によって、盗賊たちの猟銃が火を噴いた。
弾丸はデタラメに撃たれ、或いは樹を抉り、或いはアルベールの頬をかすめていき、そして大多数はゴーレムの躯にたたきつけられた。
だが、ゴーレムの躯はよろめきすらしなかった。
――ッッッ!!!
それは声なきゴーレムの咆吼だったのか。
ゴーレムの両拳が地面を殴りつけ、大地は縦に鳴動し、土は津波のように巻き上がった。
蜘蛛の子を散らすとはこのことか、盗賊たちは一声で戦意を喪失して逃げ出していく。こんなところに、どうして、何故。そう口々に悲鳴をあげながら駆け出す盗賊たちの中には、武器を投げ出してしまう者もいた。
だが戦意を喪失した盗賊たちにも関わらず、ゴーレムは手近な盗賊たちへと乱暴に拳を振り回す。
顔の一対の目――いや、よく見ると実際はただの空洞で、躯の中に続いているようだったが、真っ暗なその二つの虚は不格好だからこそ、人にジワジワと恐怖を呼び起こさせた。
腕をたったの一振りで数人の盗賊たちが吹き飛ぶ。耳の奥にこびりつくような鈍い異音を鳴らしながら、盗賊たちは物言わぬ屍として転がっていった
悪夢のような惨状を、アルベールはただただ呆然と眺めているしかなかった。
そして、震えながらぽつりと呟いたのだ。
「……ふつくしい」
●そして時間軸は現在
「――というわけなのだよ!」
どういうわけだよ。
ギルドにて舌を振るっていた画家・アルベールの言葉に、おそらく集まったハンターの幾人かがそんな感想を抱いただろう。
アルベールは鷹揚に頷いてマントをひるがえしながら腕を開いた。彼のかけた丸眼鏡越しに目が意気揚々と輝いているのが見て取れる。近視用レンズの歪みで小さく見えるはずの目は、それでも強い意志の力を微塵も衰えさせてはいなかった。
「わたしがゴーレムに出会ったのは、先に話した通りだ。さて、わたしはあの巨人の美しさの虜になったのだ! わかるか、あの適当に作っていて途中で飽きて放り出された彫刻のような中途半端な造形! 不格好な姿! なのにあの膂力!」
それは褒めているのだろうか。
「ああ、つまりだね、直近で小規模なコンクールがあるのだが、それにゴーレムとハンターの戦いを見ながら描いた絵で挑戦したいのだよ。そのため、君たちにはわたしの絵の題材兼護衛をしてもらいたいのだ」
アルベールは真摯な瞳をハンターである君たちに向けてくる。
「いい加減、王国内で絵描きとしてチャレンジしてみたい。わたしには時間がないんだ」
そう言って彼は鎮痛な面持ちで自分の胸を押さえた。
「頼む。賞金が出なければわたしは飢え死にだ」
働け。
「とにかく! 直に戦いを見て描けば臨場感は十二分にでるはず。だから君たちはゴーレムの退治がてら、わたしを護衛してくれるだけで構わない。依頼を受けてはくれないか?」
アルベールはにやりと笑う。
「戦いが命懸けであるのは重々理解している。しかし、芸術も常に命懸けなのだ。その点において、我々は戦友と言っても過言ではないだろう。どうだ、誰か共に戦ってはくれまいか? 当然、報酬も通常通り用意してある」
先ほどまでふざけてるようにしか思えなかった彼は、真剣な表情で君たちを見回すと、最後にこう告げた。
「なにせ食費を削ったからな」
それまでずっと黙っていた眼鏡をかけた無愛想な受付嬢が、ため息をつきながらハンターたちに告げた。
「……それでは、なにとぞよろしくお願いします」
あ、これは匙を投げたな。と、投げやりになった受付嬢の心情を察するのは、まああまりにも容易いのだった。
解説
勝利条件:ゴーレムの撃破。
敗北条件:上記を満たせなかった場合、アルベール氏が行動不能に陥った場合。
補足:皆様の戦い方が絵の出来映えに影響を与えます。コンクールに入賞した暁には賞金を使って報酬を上乗せしてくれるとのお達しです。また、仮に絵が完成せずとも報酬は支払うとのことです。
●情報
ゴーレムは街道外れの平野を徘徊しているのが確認されています。
●周辺情報
・平野
特筆すべき障害物はありません。ここを戦闘地点とするのは容易いでしょう。
アルベール氏がゴーレムを視認するのも容易であると推測されます。
・森林
盗賊たちが襲われた森林です。相手は巨大なため、木々を障害物として利用することで有利に戦闘が運べるでしょう。
アルベール氏もゴーレムを視認するのは難しくなるでしょう。
・山の麓
木々が何本もなぎ倒されています。傾斜もついており、地面も踏み固められています。上手くすると身長差を誤魔化せるかもしれません。
アルベール氏によるゴーレムの視認性も良好です。
・このゴーレムの特徴:視界に入っている人間を優先的に、かつ見境無く攻撃する習性を、このゴーレムは持っているようです。見えなくなった相手より見えている相手を優先するそうで、アルベール氏もこの特徴を利用して逃げ切ったとのこと。人の姿を見れば遠方からでもやってくるでしょう。
・アルベール氏の行動:イーゼルにキャンパスを置き、腰を据えて執筆するようです。即座に移動させるのは難しいかと思われます。一発でも攻撃されれば重傷、二発も食らうとまず再起不能になり、絵の完成は不可能になります。
以上です。
それでは、ご健闘を祈ります。
――無愛想な眼鏡の受付嬢より。
敗北条件:上記を満たせなかった場合、アルベール氏が行動不能に陥った場合。
補足:皆様の戦い方が絵の出来映えに影響を与えます。コンクールに入賞した暁には賞金を使って報酬を上乗せしてくれるとのお達しです。また、仮に絵が完成せずとも報酬は支払うとのことです。
●情報
ゴーレムは街道外れの平野を徘徊しているのが確認されています。
●周辺情報
・平野
特筆すべき障害物はありません。ここを戦闘地点とするのは容易いでしょう。
アルベール氏がゴーレムを視認するのも容易であると推測されます。
・森林
盗賊たちが襲われた森林です。相手は巨大なため、木々を障害物として利用することで有利に戦闘が運べるでしょう。
アルベール氏もゴーレムを視認するのは難しくなるでしょう。
・山の麓
木々が何本もなぎ倒されています。傾斜もついており、地面も踏み固められています。上手くすると身長差を誤魔化せるかもしれません。
アルベール氏によるゴーレムの視認性も良好です。
・このゴーレムの特徴:視界に入っている人間を優先的に、かつ見境無く攻撃する習性を、このゴーレムは持っているようです。見えなくなった相手より見えている相手を優先するそうで、アルベール氏もこの特徴を利用して逃げ切ったとのこと。人の姿を見れば遠方からでもやってくるでしょう。
・アルベール氏の行動:イーゼルにキャンパスを置き、腰を据えて執筆するようです。即座に移動させるのは難しいかと思われます。一発でも攻撃されれば重傷、二発も食らうとまず再起不能になり、絵の完成は不可能になります。
以上です。
それでは、ご健闘を祈ります。
――無愛想な眼鏡の受付嬢より。
マスターより
王国での初依頼がこれでいいのか。いいのか。いいんだ。
と、脱・新人ということで王国での初依頼となります。
戦闘も大事ですが如何に自分たちをかっこよく、或いはかわいく戦うか。そういった事を考えてみると絵に反映されているかもしれません。
それでは、よろしくお願いします。
と、脱・新人ということで王国での初依頼となります。
戦闘も大事ですが如何に自分たちをかっこよく、或いはかわいく戦うか。そういった事を考えてみると絵に反映されているかもしれません。
それでは、よろしくお願いします。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2014/09/27 15:48
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談用掲示板 ルナ・クリストファー(ka2140) エルフ|13才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2014/09/23 20:48:05 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/09/22 16:40:50 |