• 戦闘

クリスとマリー ダフィールドの地

マスター:柏木雄馬

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在8人 / 4~8人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2016/10/24 12:00
リプレイ完成予定
2016/11/02 12:00

オープニング

「この船に乗っていけば、大河ティベリスを下ってハルトフォートまで行けますから」
「うむ。世話になったの、オードラン家の娘、クリスティーヌよ」

 山間に大河の源流流れる王国北東部・フェルダー地方── 王国巡礼の旅の途上、行き掛かりでこの地を訪れることとなった貴族の娘クリスティーヌと若き侍女マリーは、船旅の途中で出会った『迷い彷徨えるドワーフたち』を船着き場から見送った。
 ユグディラ──二本足で歩く妖猫──を片腕に抱いて、ブンブンと元気よく手を振るマリー。その横でルーサーが──この『寄り道』の謂れとなった、大貴族ダフィールド侯爵家の四男坊──が、揺れる事のない大地のありがたさを噛み締めている。
「さて。これで問題の一つは片付きました」
 川船の見送りを終えて…… ホゥと息を吐きながら、クリスはマリーへ──正確には、成長途上のマリーの胸元、そこに両腕で抱かれた妖猫へ──視線をやった。
 クリスにジッと見つめられ、妖猫は怯えたような表情をした。ちょくちょく食べ物などを勝手に『拝借する』ユグディラという種は、地域や人によっては害獣として扱われることも多い。
 だが……
「あれ? お前、もしかしてリンダールの森で私が助けた子?」
 マリーは妖猫を目の高さまで抱え上げ、にっこり笑いながら尋ねた。彼女はユグディラが主人公のとあるおとぎ話のファンであり、妖猫に対する感情は悪くない。
 気づいてもらえて、ぱぁ……と満面の笑みを浮かべる妖猫。しかし、「恩返しに来てくれたの!?」と前のめりになるマリーの問いに対してはツイと視線を逸らし、あいまいな笑みに終始する。
「じゃあ、なんでこんな所まで? わざわざ船にまで潜り込んで……」
 クリスの問いに、ハッと我に返る妖猫(今の今まで自身の目的を失念していたらしい)。彼(或いは彼女)は身振り手振りで自分を下ろすようマリーに伝えると、ジェスチャーで己の旅の目的を表現するべく、その場でぐるぐると円を描くように走り始めた。
「マラソン?」
「ジョギング?」
「バターになるのが俺の夢?」
 まるで伝わらない。妖猫はがっくり肩を落とし…… ふとクリスとマリーの服に気付いて、裾を掴んで指を差す。
「巡礼者の装束…… あ、もしかして、さっきのは『巡礼』?」
 気付いたクリスをシュピッと指(短い)差し、笑顔でコクコク頷くユグディラ。そして、両手を垂直に上げ下げして柱を表現しつつ、その周囲に両手できらきらと光り輝く様子を渾身のジェスチャーで表し、見返す。
「花火?」
「花見?」
 伝わらない。悶絶するユグディラ。クリスとマリーは顔を見合わせた。
「……巡礼の旅をしている私たちについてきたいと言うのであれば、残念ながら今はコースから外れてますよ? ルーサーをご実家まで送っていく途中ですから」
 クリスの言葉に、ユグディラはガーン! と衝撃を受けた顔をした。そのままガクリと膝をつき…… やさぐれた表情でルーサーを見上げ、ケッと下顎を突き出し、舌を打つ。
 気付いたルーサーがそれを睥睨しつつ、指を差し下ろしつつマリーを振り返った。
「……おい、なんかこいつ性格悪いぞ」
「あんたといい勝負よね」


 船着き場を出て、道を下り…… クリスは護衛や同道者らと共に、真新しい標識の立てられた境界を越えてダフィールド領へと入った。
 ようやっとここまで辿り着いたが、未だ目的地は遠かった。800年の歴史を誇るダフィールド家の領地は広大だ。侯爵家の館のある町まではいまだ数日を要する。
 その日の宿を取る為に訪れた、とある小さな宿場町── 街は街道沿いにあるにも関わらず、人通りも少なく、寂しかった。
 有体に言えば、寂れていた。その事を宿の主人に尋ねてみると、彼は吐き捨てるようにこう言った。
「この辺りは元々、スフィルト子爵様のご領地だったんだ。それが先年、ダフィールドの領地ということになって……何から何まで税金を掛けられるようになった。元の町長は実権を失い、今は侯爵家から派遣されて来た徴税官が大手を振って歩いている。お陰で宿代もこのざまさ。旅人たちは少しでも費用を浮かせようと、先へ先へと足を延ばす」

 翌日── 幾台かの馬車に家財道具の一切を載せた数家族と同道することとなった。
 無理をして荷を載せたのだろう。馬車の歩みは遅かった。傍らを歩く大人たちの顔は一様に疲れ切っていて…… ただ、子供たちの表情は明るく、年上のマリーやルーサーに遊んでくれるようにせがみ、(ルーサーは嫌々ながらも)一緒に野原を走り回った。
「嫁に行った姉の伝手を頼って、スフィルト領に移住しようと思っている」
 道端の一本杉の袂で昼食を取りながら。数家族の大人たちがクリスに伝えた。農村部においても、侯爵家による税の取り立ては苛酷を極めていた。移住や逃散は禁じられてはいるが、最早、限界だと彼らは言った。
「しかし、なぜダフィールド侯爵家は自領の民にそこまでの仕打ちを……」
 クリスは眉をひそめた。増税によって一時的に税収は増えるだろうが、苛酷な統治は民の疲弊を招き、結果的には領地の衰退を招く。……その程度のことが分からぬ、侯爵家でもあるまいに。
「侯爵家が増税したのは旧スフィルト領だけだ。連中が欲しいのは『植民』する為の土地と資源で、そこに住んでいる人間は端から要らなかったんだ」
「まさか、侯爵家が逃散を誘発していると? でも、民の移動は禁止されているのですよね?」
「侯爵家は山賊紛いの連中に、逃散した者たちを取り締まる許可証を与えた。逃散を禁止しておいて逃散を誘発し、取り締まって全財産を没収した挙句、その『上がり』をも吸い上げようというんだ」
 クリスはゾッとした。彼らの言う事が本当であれば── なんと空恐ろしいことを考える統治者なのだろう。
「嘘だ」
 声変わり前の幼い声がして。クリスはハッと振り返った。子供たちと遊んでいたはずの、ルーサーがそこにいた。
「嘘だ。父上がそのような非道を働くはずがない」
「ルーサー!」
 ルーサーは飛び出した。誰もいない草原を、誰もいない方へと向かって。
 走って、走って、走り切って…… 息が上がった所で腰を折り、足を止めた。荒い呼吸を繰り返しながら、嘘だ、と声にならぬ声で呟くルーサー── 以前の彼であったら、平民が領主の為に尽くすのは当然の事と歯牙にも掛けなかった話だろう。だが、クリスやマリーと旅をして、同道するハンターたちと話をして…… 良きにしろ、悪しきにしろ、幾つかの出会いを経て、少年の価値観は変わり始めていた。
 その視界に影が落ちた。
 ルーサーは顔を上げた。
 馬に乗った野卑た男たちが、少年に剣先を向けつつ、言った。
「こんな所にガキが一人でいるわけがねぇ。逃散者だ。……よぅ、坊主。お前ぇの家族はどこにいる?」

解説

1.状況と目的
 PCは、旅する貴族の娘・クリスティーヌに雇われた護衛、或いは、個人的に同道しているハンターとなります。
 状況はOPの通り。若き侍女マリーと共に、ダフィールド家の四男坊ルーサーを実家に送り届ける途中、逃散民の家族と同道していたところ、逃散民狩りのごろつきたちに見つかり、襲われることとなります。
 今回のシナリオの目的は特に明示しません。皆さまで話し合い、何を達成するかを決定してください。


2.戦場
 草原の中の道。一本杉が立っている場所。3台の馬車が停車。その周りに非戦闘員の大人が6人+クリス(18)。少し離れた場所で遊んでいる子供が8人+マリー(14)。
 そこからだいぶ離れた場所に、走り去り、息の上がったルーサー(12)。彼の傍には馬に乗ったゴロツキ6騎。
 PCの初期配置は、以下の2つから選択してください。

 2a.状況『飛び出したルーサーを追いかけた』
  初期配置はルーサーから少し離れた場所となります。全力移動で一駆け程度の距離。即座に戦闘が可能。ルーサーに駆け寄る姿はゴロツキたちから丸見えです。

 2b.状況『一本杉の袂でクリスやマリーたちと共にいる』
  初期配置は『大人やクリスらと昼食とりながら話している』と『マリーと一緒に子供たちと遊んであげている』の2つ。
  ゴロツキ集団Aがルーサーと接触した頃、別のゴロツキ集団Bの姿を遠目に発見することとなります。


3.敵戦力
 ダフィールド侯爵家より許可証を受け、逃散民の取り締まりを委託されたゴロツキ集団。取り締まりとは名ばかりで、やることは山賊と変わらない。
 ルーサーを見つけた集団A(騎乗6人)と、昼食中の逃散民を見つけた別集団B(徒歩8人、弓あり)とがいる。
 ゴロツキ集団AとBの、両者の仲はあまり良くない。反目するか、黙殺するか、共闘するかはPCのプレイングによる。

マスターより

 最初に買ったソフトは『バン○リング・ベイ』── そういうものに、私はなりたい(←挨拶) 柏木雄馬です。
 いえ、一般的にク○ゲー扱いされてますけど、柏木は大好きですヨ? 微妙に存在している(気がする)戦略性とか、敵の工場の上に墜落できた時の快感とか。戦艦は沈めても沈めても復旧早すぎ&その間に母艦が空爆受けすぎとかありますけれど。子供心に脳内で『ぼくのかんがえたさいきょうのバン○リング・ベイ』とかを日々、妄想しちゃうくらいには。
 若い子を置いてきぼりにして何が言いたいのかと言えば、12月7日に胃のポリープ取ります(ぇ 既に盲腸も胆のうもなく。年は取りたくないなぁ、とか、そんなお話。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2016/10/31 18:05

参加者一覧

  • 流浪の剛力修道女
    シレークス(ka0752
    ドワーフ|20才|女性|闘狩人
  • 掲げた穂先に尊厳を
    ルーエル・ゼクシディア(ka2473
    人間(紅)|17才|男性|聖導士
  • 星を傾く者
    サクラ・エルフリード(ka2598
    人間(紅)|15才|女性|聖導士
  • 誓槍の騎士
    ヴァルナ=エリゴス(ka2651
    人間(紅)|18才|女性|闘狩人
  • いつも心に盾を
    ユナイテル・キングスコート(ka3458
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人
  • 千の符を散らして
    黒耀 (ka5677
    鬼|25才|女性|符術師
  • 紅の月を慈しむ乙女
    アリア・セリウス(ka6424
    人間(紅)|18才|女性|闘狩人
  • ドジッ子
    百々尻 うらら(ka6537
    人間(蒼)|17才|女性|闘狩人
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/10/22 02:59:23
アイコン 相談です・・・
サクラ・エルフリード(ka2598
人間(クリムゾンウェスト)|15才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2016/10/23 23:15:25