ゲスト
(ka0000)
飢える喉に不覚悟の蜜
マスター:鹿野やいと

- シナリオ形態
- イベント
関連ユニオン
アム・シェリタ―揺籃館―- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加人数
- 現在25人 / 1~25人
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2016/10/27 12:00
- リプレイ完成予定
- 2016/11/05 12:00
オープニング
※このシナリオは原則として戦闘が発生しない日常的なシナリオとして設定されています。
夜の酒場は既に収集のつかない喧騒に包まれていた。こんな雰囲気は苦手だ。酒を飲んだ男は誰も彼も品性と節操が無い。国境を越えても世界を越えても同じと、前園晶子はこの1年で思い知っていた。
赤の隊主催の懇親会で周囲は騎士ばかりというのに、状況は欠片も変わらない。幸運な事に今回は混沌から彼女を引き上げてくれた人がいた。前園と同じアジア系の彼女、阮妙純(グェン・ジェウ・トゥアン)は同じ女性と思えない強引さで手を引き、男達の間を縫って店の端まで彼女を連れていく。そこで待っていたのは同じサルヴァトーレ・ロッソの転移組である白崎陸人だった。
白崎は長身で細身の優しい顔立ちの青年だ。赤の隊の騎士に比べても背丈は負けていないが、童顔に見える風貌と相まって随分と若く見えた。
この席は周囲から隔離されているかのように誰も近寄らない。それも彼の雰囲気か、あるいは人徳の為せる業なのだろうか。安全地帯と化したテーブルに阮は強引に座らせた。
「ほらよ。嬢ちゃんはウロウロしてねえでここにじっとしてろ」
「阮さん……。ありがとうございます」
「礼は要らねえから白崎はもっとちゃんと面倒見てやれ。
どこの誰かわからん連中に連れていかれるところだったんだぞ」
阮の言うとおり、彼女が居なければ強引にどこかに連れていかれてたかもしれなかった。覚醒を使えば命の危険は無いだろうけども、それでも何をされるかわかったものではない。
「それよかアーノルドがどこ行ったか知らねえか?」
アーノルドは切れ長な面立ちが印象的な赤の隊の若い騎士である。よく阮とつるんでいるのを前園も見ていた。
「さっき明石達と抜け出していきましたよ」
明石は同じくロッソ転移組の人間で、スポーツ系の大学に通っていたという純粋な体育会系男子だ。ノリが近いせいか赤の隊とは波長が合い、飲み会が始まってすぐに溶け込んでしまっていた。行った先には予想がつく、というよりもパターンだ。ここには悪い遊びを教える大人と同年代が多すぎる。アーノルドも明石もその仲間も、夜遊びが生きがいのような人間である。
「ちっ。またか。見かけたら貸した金返せつっとけ」
「わかりました」
「……ったく」
男同士のこの手の忠告はだいたい届かないだろう。トゥアンはこれみよがしに舌打ちすると、机の上からひったくるように未開封のワインボトルを掴みその場を立ち去った。風のように過ぎ去った彼女を見送り、2人から同時に苦笑が漏れた。
白崎は前園の為に金属製のワイングラスに王国産の赤ワインを注いだ。フラスコのような形状のワインボトルだが、この形状にも見慣れてしまった。
「もう3年になるね」
「……そうですね」
サルヴァトーレ・ロッソがこちらの世界に来てもう3年だ。 異世界に飛ばされたあの日から、わけもわからないまま死にたくない一心であがいてきた。覚醒者になったのも公共への奉仕とかそういう崇高な思いは一切なく、その方が死ににくいという安直な理由からだった。
今はただいつになったらこんな戦いが終わるのかと、先を思う度に憂鬱になる。帰る家があればまだ少しは生きて戦う動機にもなるかもしれないが、生憎とそれも歪虚の襲撃で大地であるコロニーごと失ってしまった。抱きしめてくれる父母もおらず、愛する人もいない。このまま野垂れ死んでも、おそらく誰も自分を省みはしないだろう
「…………」
変わらない泰然とした顔で白崎もワインに口をつける。チーズやハムにはあまり手をつけず、アルコールを楽しんでいた。
結局前園は彼ほどの泰然とした心を身につける事ができなかった。それが表面的に過ぎないとしてもである。
確かにハンターの地位は恵まれていて、望みどおり自身の死から遠ざかった。けれども死の気配は消えることはない。覚醒者で無い人々の脆さを思い知るはめになった。3年の間に多くを助けた。けれども多くを取りこぼした。気づけばたくさんの死と向き合い、精神が摩耗に後から気づくはめになった。
異性に心を委ねる者の気持ちもわからなくはない。この寂しさを埋められるなら、容易に心は傾ぐだろう。それをしないのは、それらの行為が根本的に解決でないと拒否しているからだ。
物思いに沈んだまま、前園はワイングラスに反射するロウソクの火をぼんやりと眺めていた。
「あら、リクトはまだ飲んでたの? 意外ね」
テーブルに声が掛かり、前園と白崎は揃って声の主を見上げた。立っていたのは肩で切り揃えた金の髪が印象的な女性だ。彼女は騎士グラディス。年齢は少し上ぐらいのはずだが、落ち着き払った口調でもっと年長者にも見えた。着ているのは何の変哲もない白基調のサーコートだが、彼女が纏うだけで華やかに映る。
彼女も騎士には違いないが、サーコートの色が表すように所属は白の隊になる。彼女と同じように紛れ込んでいる非番の騎士は少なくない。
「ところでリクト。私との約束覚えてる?」
グラディスは陸人の頭を抱え込むように背後から腕を回す。ゆったりとした仕草は隠しようのない艶が潜んでいた。陸人は慌てるが振りほどくことはしない。
「覚えてますけど、これからですか?」
「ええ。困る?」
グラディスの顔が更に白崎へと近づく。正面で見ていた前園は直視できずに目を逸した。
「リクトを借りて行って良い?」
「いや、それは……」
「構いませんよ」
前園は努めて突き放すように言い放つ。視線はそらしたままだ。
何に対して怒っているかもわからないままだが、目の前の彼女には気づかれているという直感があった。
「私は1人で帰れます。白崎さんはお好きにどうぞ」
満足そうに頷いたグラディスは陸人を立たせると、腕を組みながら店の出口へと引きずっていく。周囲は囃し立てると思われたが、この2人の関係に驚愕するばかりで、誰もが呆然としたまま2人を見送ってしまう。前園は2人が視界から消えてから、ようやくため息を吐いた。
そうだった。彼はいつでも誰でもすぐに仲良くなる。理解はしているのだ。誰もが阮のように平気でなど居られない。足りないところを補いあって生きている。
死の恐怖を乗り越えるのならば、恋人を作るのが一番手っ取り早い。訳もわからぬままに彼を頼っていた自分が悪いのだ。
「…………はあ……。バカみたい」
机に突っ伏したまま、前園は誰にも聞こえない悪態を吐き出した。注がれた酒を飲み干したら宿舎に戻ろう。
前園はそう決意しながらも、しばらく赤ワインを飲み干せずにいた。いつもよりも余計に、夜の長さが疎ましく感じられた。
夜の酒場は既に収集のつかない喧騒に包まれていた。こんな雰囲気は苦手だ。酒を飲んだ男は誰も彼も品性と節操が無い。国境を越えても世界を越えても同じと、前園晶子はこの1年で思い知っていた。
赤の隊主催の懇親会で周囲は騎士ばかりというのに、状況は欠片も変わらない。幸運な事に今回は混沌から彼女を引き上げてくれた人がいた。前園と同じアジア系の彼女、阮妙純(グェン・ジェウ・トゥアン)は同じ女性と思えない強引さで手を引き、男達の間を縫って店の端まで彼女を連れていく。そこで待っていたのは同じサルヴァトーレ・ロッソの転移組である白崎陸人だった。
白崎は長身で細身の優しい顔立ちの青年だ。赤の隊の騎士に比べても背丈は負けていないが、童顔に見える風貌と相まって随分と若く見えた。
この席は周囲から隔離されているかのように誰も近寄らない。それも彼の雰囲気か、あるいは人徳の為せる業なのだろうか。安全地帯と化したテーブルに阮は強引に座らせた。
「ほらよ。嬢ちゃんはウロウロしてねえでここにじっとしてろ」
「阮さん……。ありがとうございます」
「礼は要らねえから白崎はもっとちゃんと面倒見てやれ。
どこの誰かわからん連中に連れていかれるところだったんだぞ」
阮の言うとおり、彼女が居なければ強引にどこかに連れていかれてたかもしれなかった。覚醒を使えば命の危険は無いだろうけども、それでも何をされるかわかったものではない。
「それよかアーノルドがどこ行ったか知らねえか?」
アーノルドは切れ長な面立ちが印象的な赤の隊の若い騎士である。よく阮とつるんでいるのを前園も見ていた。
「さっき明石達と抜け出していきましたよ」
明石は同じくロッソ転移組の人間で、スポーツ系の大学に通っていたという純粋な体育会系男子だ。ノリが近いせいか赤の隊とは波長が合い、飲み会が始まってすぐに溶け込んでしまっていた。行った先には予想がつく、というよりもパターンだ。ここには悪い遊びを教える大人と同年代が多すぎる。アーノルドも明石もその仲間も、夜遊びが生きがいのような人間である。
「ちっ。またか。見かけたら貸した金返せつっとけ」
「わかりました」
「……ったく」
男同士のこの手の忠告はだいたい届かないだろう。トゥアンはこれみよがしに舌打ちすると、机の上からひったくるように未開封のワインボトルを掴みその場を立ち去った。風のように過ぎ去った彼女を見送り、2人から同時に苦笑が漏れた。
白崎は前園の為に金属製のワイングラスに王国産の赤ワインを注いだ。フラスコのような形状のワインボトルだが、この形状にも見慣れてしまった。
「もう3年になるね」
「……そうですね」
サルヴァトーレ・ロッソがこちらの世界に来てもう3年だ。 異世界に飛ばされたあの日から、わけもわからないまま死にたくない一心であがいてきた。覚醒者になったのも公共への奉仕とかそういう崇高な思いは一切なく、その方が死ににくいという安直な理由からだった。
今はただいつになったらこんな戦いが終わるのかと、先を思う度に憂鬱になる。帰る家があればまだ少しは生きて戦う動機にもなるかもしれないが、生憎とそれも歪虚の襲撃で大地であるコロニーごと失ってしまった。抱きしめてくれる父母もおらず、愛する人もいない。このまま野垂れ死んでも、おそらく誰も自分を省みはしないだろう
「…………」
変わらない泰然とした顔で白崎もワインに口をつける。チーズやハムにはあまり手をつけず、アルコールを楽しんでいた。
結局前園は彼ほどの泰然とした心を身につける事ができなかった。それが表面的に過ぎないとしてもである。
確かにハンターの地位は恵まれていて、望みどおり自身の死から遠ざかった。けれども死の気配は消えることはない。覚醒者で無い人々の脆さを思い知るはめになった。3年の間に多くを助けた。けれども多くを取りこぼした。気づけばたくさんの死と向き合い、精神が摩耗に後から気づくはめになった。
異性に心を委ねる者の気持ちもわからなくはない。この寂しさを埋められるなら、容易に心は傾ぐだろう。それをしないのは、それらの行為が根本的に解決でないと拒否しているからだ。
物思いに沈んだまま、前園はワイングラスに反射するロウソクの火をぼんやりと眺めていた。
「あら、リクトはまだ飲んでたの? 意外ね」
テーブルに声が掛かり、前園と白崎は揃って声の主を見上げた。立っていたのは肩で切り揃えた金の髪が印象的な女性だ。彼女は騎士グラディス。年齢は少し上ぐらいのはずだが、落ち着き払った口調でもっと年長者にも見えた。着ているのは何の変哲もない白基調のサーコートだが、彼女が纏うだけで華やかに映る。
彼女も騎士には違いないが、サーコートの色が表すように所属は白の隊になる。彼女と同じように紛れ込んでいる非番の騎士は少なくない。
「ところでリクト。私との約束覚えてる?」
グラディスは陸人の頭を抱え込むように背後から腕を回す。ゆったりとした仕草は隠しようのない艶が潜んでいた。陸人は慌てるが振りほどくことはしない。
「覚えてますけど、これからですか?」
「ええ。困る?」
グラディスの顔が更に白崎へと近づく。正面で見ていた前園は直視できずに目を逸した。
「リクトを借りて行って良い?」
「いや、それは……」
「構いませんよ」
前園は努めて突き放すように言い放つ。視線はそらしたままだ。
何に対して怒っているかもわからないままだが、目の前の彼女には気づかれているという直感があった。
「私は1人で帰れます。白崎さんはお好きにどうぞ」
満足そうに頷いたグラディスは陸人を立たせると、腕を組みながら店の出口へと引きずっていく。周囲は囃し立てると思われたが、この2人の関係に驚愕するばかりで、誰もが呆然としたまま2人を見送ってしまう。前園は2人が視界から消えてから、ようやくため息を吐いた。
そうだった。彼はいつでも誰でもすぐに仲良くなる。理解はしているのだ。誰もが阮のように平気でなど居られない。足りないところを補いあって生きている。
死の恐怖を乗り越えるのならば、恋人を作るのが一番手っ取り早い。訳もわからぬままに彼を頼っていた自分が悪いのだ。
「…………はあ……。バカみたい」
机に突っ伏したまま、前園は誰にも聞こえない悪態を吐き出した。注がれた酒を飲み干したら宿舎に戻ろう。
前園はそう決意しながらも、しばらく赤ワインを飲み干せずにいた。いつもよりも余計に、夜の長さが疎ましく感じられた。
解説
■状況:
何も無い非番の日です
何も無い王国の夜を自由に過ごしてください
■PCの出来そうな事の例
・明るく騒ぐ
赤の隊主催のタダ飯・タダ酒ですので遠慮なくどうぞ
吐くまで飲んでもかまいませんが自己責任です
・静かに過ごす
湿っぽい人はこちらにどうぞ
OPの彼女のように郷愁に浸ったり、喧噪を眺めたり、
恐怖をごまかしながら酒飲んだり。
場所はこの酒場でなくても可能です
・こんな時も仕事
巡回警備する兵士、武具を修繕する鍛冶、あるいは諸々の事務手続き
大規模を控えた今ならすべき事を残した人も多いでしょう
忙しさに身を浸したい人の選択肢です
・「夜はこれからだぜー!!」
何人かは歓楽街に飛び出していきました
悪い遊びも楽しいと思います
何が起こるかはみなさまのプレイング次第です
その他思いつく範囲でご自由にどうぞ
翌日の朝ぐらいまでは描写します
■PCの設定に関して
王都に居る、という設定のみ共通です
滞在の理由が仕事か個人的な用事かは自由に決定してください
大規模他との時系列の整合性は気にしないでも大丈夫です
■他
文字数制限の都合上、
・原則1PC1場面の描写とします
・1PC単独の場面は文字数を圧縮します
・類似の行動を行うPCは同じ場面で描写します
以上、ご容赦ください
質疑応答は最大限行いますが、早め早めでお願いします
■NPC紹介
NPCはプレイングで呼ばれるか、描写の必要があるまでは背景です
・阮妙純と騎士アーノルド(「【虚動】Silver Bullet」他2本)
口の悪いベトナム系の女性と、脳筋万歳の若い騎士のコンビ
阮もRBからの転移組ですがCWに上手く合わせています
・前園晶子、白崎陸人、騎士グラディス、明石某氏
全員初出です。OP以上の情報はありません
何も無い非番の日です
何も無い王国の夜を自由に過ごしてください
■PCの出来そうな事の例
・明るく騒ぐ
赤の隊主催のタダ飯・タダ酒ですので遠慮なくどうぞ
吐くまで飲んでもかまいませんが自己責任です
・静かに過ごす
湿っぽい人はこちらにどうぞ
OPの彼女のように郷愁に浸ったり、喧噪を眺めたり、
恐怖をごまかしながら酒飲んだり。
場所はこの酒場でなくても可能です
・こんな時も仕事
巡回警備する兵士、武具を修繕する鍛冶、あるいは諸々の事務手続き
大規模を控えた今ならすべき事を残した人も多いでしょう
忙しさに身を浸したい人の選択肢です
・「夜はこれからだぜー!!」
何人かは歓楽街に飛び出していきました
悪い遊びも楽しいと思います
何が起こるかはみなさまのプレイング次第です
その他思いつく範囲でご自由にどうぞ
翌日の朝ぐらいまでは描写します
■PCの設定に関して
王都に居る、という設定のみ共通です
滞在の理由が仕事か個人的な用事かは自由に決定してください
大規模他との時系列の整合性は気にしないでも大丈夫です
■他
文字数制限の都合上、
・原則1PC1場面の描写とします
・1PC単独の場面は文字数を圧縮します
・類似の行動を行うPCは同じ場面で描写します
以上、ご容赦ください
質疑応答は最大限行いますが、早め早めでお願いします
■NPC紹介
NPCはプレイングで呼ばれるか、描写の必要があるまでは背景です
・阮妙純と騎士アーノルド(「【虚動】Silver Bullet」他2本)
口の悪いベトナム系の女性と、脳筋万歳の若い騎士のコンビ
阮もRBからの転移組ですがCWに上手く合わせています
・前園晶子、白崎陸人、騎士グラディス、明石某氏
全員初出です。OP以上の情報はありません
マスターより
「他人の金で焼肉食べたい」という思いで書きました。
嘘です。すみません。
うっかり猫譚に参加しそびれたら大規模にかぶってましたので
今回は判定無しのイベントシナリオです
ロッソ転移から3年。今日までを振り返るには良い節目かと思います
大規模の合間の息抜きに、気軽に御参加ください
嘘です。すみません。
うっかり猫譚に参加しそびれたら大規模にかぶってましたので
今回は判定無しのイベントシナリオです
ロッソ転移から3年。今日までを振り返るには良い節目かと思います
大規模の合間の息抜きに、気軽に御参加ください
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2016/11/05 15:22
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/10/26 07:42:11 |
|
![]() |
射光:夜更かし交流卓 神代 誠一(ka2086) 人間(リアルブルー)|32才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2016/10/27 01:44:26 |