ゲスト
(ka0000)
あの指輪はどこかしら
マスター:KINUTA

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 4~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- プレイング締切
- 2016/11/13 19:00
- リプレイ完成予定
- 2016/11/22 19:00
オープニング
●世界の隙間から
帳の下りた部屋。
壁に沿ってずらりとベッドが並んでいる。
どのベッドにも幼い子供が眠っていた。皆ひどく似通った顔立ちをしている。
倦むことを知らない人工の声がどこからともなく囁き続ける。子供たちの眠りを覚まさせない絶妙な音量で。
『私はこの階級に生まれてきてとても幸せだ。ワーカーは労働をしなくてはいけないけどマゴイはそうではない。ソルジャーは戦わなくてはいけないけどマゴイはそうではない。ステーツマンは他の階級の面倒を見なければいけないけどマゴイはそうではない。私の階級は勉強をしているだけでいい。勉強は私の大好きなことだ。私は色々なことを学び、色々なことを考える。それは私の大好きなことだ。私の階級はマゴイだ。私はこの階級に生まれてきてとても幸せだ。ワーカーは労働をしなくてはいけないけど――』
社会の完全なる安定は完全なる分業があってこそ。完全なる分業は完全なる均等があってこそ。完全なる均等は完全なる出生によってこそ。
胎生生殖は不揃いな存在を生み出してしまう。出生は胎外生殖によるものでなければならない。
養育は階級に沿った最良のものが一律に公から与えられる。親子の関係、家庭の存在は、社会不安定の要因となるだけだ。そういうものは存在していてはならない。
男女問わず誰かを好きになるのはいい。関係を持つのもいい。性欲の発露は何らやましいことではない。
だが特定の相手と結びつき過ぎることは許されない。
市民、あなたがたは『たった一人の大事な人』が存在するなどという妄想を抱いてはならない。
皆は皆にとって大事だ。皆は皆のものだ。皆は皆のために生きるのだ。
だから出来るだけたくさんの人と関係を持たなければならない。たくさんの相手を持つのは、ちっとも嫌なことではない。むしろ愉快なことだ。
市民、あなたがたには最後まで楽しく人生を送る権利が保証されている。これは人類が、今までどの時代にもなしえなかったことだ。科学と魔法の融合がそれを可能にした。
どの階級にも十分な衣食住。どの階級にも幸福感。どの階級にも自負心。どの階級にも達成感。
必要なのは安定だ。凪いだ水面の安定だ。永久に続く緑のような――。
マゴイは薄く目を開いた。
色も形も定かならない空間が周囲に広がっているのを確認する。
「……随分昔のことを……夢に見たものね……」
呟いた彼女はしばらく思索の森に迷い込んだ。
そうしているうちにふと、思い出した。
「……そういえば指輪は……どうなったのかしら……」
持ち主に返すように伝えておいたが、ちゃんとそうしているだろうか。
ちょっとその点が気になってきたマゴイは、確認をしてみようかなという気になった。
しかし、そこでまた考え込んだ。
不定空間にリアルブルーへの穴を空けるまでは簡単なのだ。
しかし、この空間にいるのは自分だけではない。あちこちから落ちたり飛ばされたりしてきた様々な存在がいる。
彼らの中には元の場所に戻りたがっているものが多い。穴が空いたら先を争って殺到してくるだろう。この前みたいに。
「……そうなったら面倒……では……どうしようかしら……」
呟いた後彼女は、再度思索にふける。
しばらくしてから、また呟く。
「……ああ……そうだ……何も私が直に……向こうへ出現する必要はないんだったわ……」
●端末機きみに決めた。
夜半。とある家の物置小屋。
食べ物を求めネズミが動き回っている。
くんくん鼻を動かし壁沿いに移動していた1匹が、ぴたりと動きを止めた。
目の前にはひびの入った鏡が無造作に立て掛けられていたのだが、その中に女の顔が浮かんでいたのだ。
『……これがいいわね……数も多いから……』
直後ネズミの額に、目玉のような幾何学模様が浮かび上がる。
『……さあ……仲間を呼んできて……』
●捜索中……。
数知れないほどのネズミが建物の一棟全体を覆い尽くし、蠢いている。
それを目の前にした八橋杏子は全身に鳥肌を立てた――何を隠そう彼女、細かいものが大量にもぞもぞ動いているという光景が、この世で一番苦手なのである。
「……で、何が起きたんです?」
魔術師協会の性質上怪異現象には慣れているのか、職員は、冷静な受け答えをした。
「昨日の晩方から急にネズミが集まってきたんです。わたしたちも総力を挙げ侵入を極力排除しているのですが、次から次に押し寄せてきまして、どうにも追いつくものではなくて」
「こういう場合には駆除業者に連絡するものじゃないんですか?」
「いえ、これはハンター案件です。もっと近づいて、ネズミをよく見てください」
言われたとおり近づいてみたハンターたちは、ネズミ1匹1匹の額に奇妙な模様が浮き出しているのを見る。
職員が手に火球を作り出し、ネズミにぶつけた。
しかしネズミは燃える事なく平気で動き回っている。
「この通りです。どうやら何者かがこのネズミどもに、攻撃への耐性を付与し、操っているらしいのです」
「……操るって、これだけの数を一度に?」
どうも信じがたい話だ。しかし現実に起きていることなのだからして、認めなければなるまい。しかし一体誰が。
「さあ、そこは分かりませんが、とにかくあなたがたにお願いしたいのは地下庫資料の確保です。古今東西から集められた貴重なアイテムが盗まれたり壊されたりしようものなら、魔術界全体の、大きな損失となりますので」
帳の下りた部屋。
壁に沿ってずらりとベッドが並んでいる。
どのベッドにも幼い子供が眠っていた。皆ひどく似通った顔立ちをしている。
倦むことを知らない人工の声がどこからともなく囁き続ける。子供たちの眠りを覚まさせない絶妙な音量で。
『私はこの階級に生まれてきてとても幸せだ。ワーカーは労働をしなくてはいけないけどマゴイはそうではない。ソルジャーは戦わなくてはいけないけどマゴイはそうではない。ステーツマンは他の階級の面倒を見なければいけないけどマゴイはそうではない。私の階級は勉強をしているだけでいい。勉強は私の大好きなことだ。私は色々なことを学び、色々なことを考える。それは私の大好きなことだ。私の階級はマゴイだ。私はこの階級に生まれてきてとても幸せだ。ワーカーは労働をしなくてはいけないけど――』
社会の完全なる安定は完全なる分業があってこそ。完全なる分業は完全なる均等があってこそ。完全なる均等は完全なる出生によってこそ。
胎生生殖は不揃いな存在を生み出してしまう。出生は胎外生殖によるものでなければならない。
養育は階級に沿った最良のものが一律に公から与えられる。親子の関係、家庭の存在は、社会不安定の要因となるだけだ。そういうものは存在していてはならない。
男女問わず誰かを好きになるのはいい。関係を持つのもいい。性欲の発露は何らやましいことではない。
だが特定の相手と結びつき過ぎることは許されない。
市民、あなたがたは『たった一人の大事な人』が存在するなどという妄想を抱いてはならない。
皆は皆にとって大事だ。皆は皆のものだ。皆は皆のために生きるのだ。
だから出来るだけたくさんの人と関係を持たなければならない。たくさんの相手を持つのは、ちっとも嫌なことではない。むしろ愉快なことだ。
市民、あなたがたには最後まで楽しく人生を送る権利が保証されている。これは人類が、今までどの時代にもなしえなかったことだ。科学と魔法の融合がそれを可能にした。
どの階級にも十分な衣食住。どの階級にも幸福感。どの階級にも自負心。どの階級にも達成感。
必要なのは安定だ。凪いだ水面の安定だ。永久に続く緑のような――。
マゴイは薄く目を開いた。
色も形も定かならない空間が周囲に広がっているのを確認する。
「……随分昔のことを……夢に見たものね……」
呟いた彼女はしばらく思索の森に迷い込んだ。
そうしているうちにふと、思い出した。
「……そういえば指輪は……どうなったのかしら……」
持ち主に返すように伝えておいたが、ちゃんとそうしているだろうか。
ちょっとその点が気になってきたマゴイは、確認をしてみようかなという気になった。
しかし、そこでまた考え込んだ。
不定空間にリアルブルーへの穴を空けるまでは簡単なのだ。
しかし、この空間にいるのは自分だけではない。あちこちから落ちたり飛ばされたりしてきた様々な存在がいる。
彼らの中には元の場所に戻りたがっているものが多い。穴が空いたら先を争って殺到してくるだろう。この前みたいに。
「……そうなったら面倒……では……どうしようかしら……」
呟いた後彼女は、再度思索にふける。
しばらくしてから、また呟く。
「……ああ……そうだ……何も私が直に……向こうへ出現する必要はないんだったわ……」
●端末機きみに決めた。
夜半。とある家の物置小屋。
食べ物を求めネズミが動き回っている。
くんくん鼻を動かし壁沿いに移動していた1匹が、ぴたりと動きを止めた。
目の前にはひびの入った鏡が無造作に立て掛けられていたのだが、その中に女の顔が浮かんでいたのだ。
『……これがいいわね……数も多いから……』
直後ネズミの額に、目玉のような幾何学模様が浮かび上がる。
『……さあ……仲間を呼んできて……』
●捜索中……。
数知れないほどのネズミが建物の一棟全体を覆い尽くし、蠢いている。
それを目の前にした八橋杏子は全身に鳥肌を立てた――何を隠そう彼女、細かいものが大量にもぞもぞ動いているという光景が、この世で一番苦手なのである。
「……で、何が起きたんです?」
魔術師協会の性質上怪異現象には慣れているのか、職員は、冷静な受け答えをした。
「昨日の晩方から急にネズミが集まってきたんです。わたしたちも総力を挙げ侵入を極力排除しているのですが、次から次に押し寄せてきまして、どうにも追いつくものではなくて」
「こういう場合には駆除業者に連絡するものじゃないんですか?」
「いえ、これはハンター案件です。もっと近づいて、ネズミをよく見てください」
言われたとおり近づいてみたハンターたちは、ネズミ1匹1匹の額に奇妙な模様が浮き出しているのを見る。
職員が手に火球を作り出し、ネズミにぶつけた。
しかしネズミは燃える事なく平気で動き回っている。
「この通りです。どうやら何者かがこのネズミどもに、攻撃への耐性を付与し、操っているらしいのです」
「……操るって、これだけの数を一度に?」
どうも信じがたい話だ。しかし現実に起きていることなのだからして、認めなければなるまい。しかし一体誰が。
「さあ、そこは分かりませんが、とにかくあなたがたにお願いしたいのは地下庫資料の確保です。古今東西から集められた貴重なアイテムが盗まれたり壊されたりしようものなら、魔術界全体の、大きな損失となりますので」
解説
補足説明。
これは魔術師協会の地下保管庫に向かい、貴重品を確保するシナリオです。
敵はネズミの大群。魔法攻撃と物理攻撃、両方に対してある程度の耐性を持っています。
攻撃してくるわけではありませんが。数が数です。足元に纏わり付いてくるだけで十分進行の妨げになります。天井や壁にも張り付いていますので、時々頭の上から落ちてくるかも知れません。
ネズミは全てマゴイが遠隔操作しています。
ネズミに一定以上の負荷がかかると、マゴイとの連携は断ち切られます。額の模様が消え、ただのネズミに戻ります(素に戻ったネズミは普通に噛み付いてきたりしますのでご注意)。
マゴイは単に捜し物をしているだけです。特に悪意はありません。彼女とはネズミを通じて会話が可能です。説得次第でネズミを退散させてくれます。
とりあえず指輪を持ち主に戻すことだけは止めておけとお伝えください。
登場NPC
八橋 杏子:兼業画家の女ハンター
マゴイ:謎の白ワンピース女。
指輪所有者のスペットの件についてはより知りたい方は「Sについての調査依頼」 を、
マゴイの件についてより知りたい方は「呼ばれて飛び出て」をご参照くださいませ。
これは魔術師協会の地下保管庫に向かい、貴重品を確保するシナリオです。
敵はネズミの大群。魔法攻撃と物理攻撃、両方に対してある程度の耐性を持っています。
攻撃してくるわけではありませんが。数が数です。足元に纏わり付いてくるだけで十分進行の妨げになります。天井や壁にも張り付いていますので、時々頭の上から落ちてくるかも知れません。
ネズミは全てマゴイが遠隔操作しています。
ネズミに一定以上の負荷がかかると、マゴイとの連携は断ち切られます。額の模様が消え、ただのネズミに戻ります(素に戻ったネズミは普通に噛み付いてきたりしますのでご注意)。
マゴイは単に捜し物をしているだけです。特に悪意はありません。彼女とはネズミを通じて会話が可能です。説得次第でネズミを退散させてくれます。
とりあえず指輪を持ち主に戻すことだけは止めておけとお伝えください。
登場NPC
八橋 杏子:兼業画家の女ハンター
マゴイ:謎の白ワンピース女。
指輪所有者のスペットの件についてはより知りたい方は「Sについての調査依頼」 を、
マゴイの件についてより知りたい方は「呼ばれて飛び出て」をご参照くださいませ。
マスターより
KINUTAです。
マゴイは、指輪のことは忘れていないのでした。
マゴイは、指輪のことは忘れていないのでした。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2016/11/20 01:23
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/11/09 22:13:46 |
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相談卓だよ 天竜寺 詩(ka0396) 人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2016/11/13 17:47:16 |