• 戦闘

黒い獣

マスター:まれのぞみ

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2016/11/21 19:00
リプレイ完成予定
2016/11/30 19:00

オープニング

 街――とだけ呼ばれる土地がある。
 故郷には住みつづけることができなくなった者たちが集まりできた土地である。
 根無し草が集まって、いつのまにか草原ができあがっていたと言っていい。だからであろう。そこに愛情をもつ者がいなかったからこそ、そこはただ街とだけ呼ばれていた。
 その外見も中も異様で、まるで木でできた城塞都市のヘタな模倣品のようだ。設計もないまま、接ぎ木、接ぎ木で伸びている未完の都市は迷宮のようでもある。
 そのどこかで、空気が動いた。
 空気がゆらめき、オーロラのように空間がいっとき輝くと大気の狭間から、ぽとりと産み落とされたものがある。
 かがやく物体だ。
「なんだこりゃあ?」
 酒気をおびた男がやってきて、それを拾った。
 まずしい身なりをした男は、きらきらとしたものをまじまじとのぞき込んで、仰天した。
「こりゃあ宝石だぁ!?」
 これを元手に飲める酒のことを想像して、男は驚喜した。そして、一転、あわてて周囲を用心するような目で見回し、一安心。他者に見られたら何をされるか、わかったものではない。こんな物騒なものをさっさと売ってしまうに限る。
 何かが指先に当たった。
「なんだ?」
 あわてて見直すと、みるみるうちに黒い霧のようなものが宝石からあふれ出してきて、男の目の前でぐにゃぐにゃとなりながら、やがて形をなした。
 闇をまとう一体の獣となった。
「ひぃぃぃ」
 余りの怪異に男は宝石を投げ捨てた。
 ころころ――
 ちょうど橋のようになっていたので、かがやく石は、そのまま転がって街のどこかへと落ちていった。
 背中でなにかがうごめいて、黒い猛獣がうなり声をあげる。
 まるで主を見失った動物のように悲鳴に似た叫び声をあげて、それは怒りの矛先を、不幸な被害者へと向けたのであった。

 ●

「巡察官殿、いかがなさいましたか?」
「うん……あいかわらずイヤな臭いがする街だと思ってな」
「血の臭いですかね?」
 小太りの従者が鼻をくんくんとする。
「いやなことを言うな……といっても、ここではそれが日常か」
 髪をかきながら、青年たちは街を踏み入れた。
 いまさら住んでいる者たちをすべて追放することもできず――やってみたところで、近隣の町々へ分散して流入してきて現在以上に面倒である――だからこそ、目をつぶっているわけだが、だからといって何も手をつけないようでは世間体は悪いし、あからさまな悪党の巣窟になることも避けねばならなかった。
 それゆえ、形のうえでも巡察官が派遣される。
 言い換えれば、外部には、最低限の仕事をしていることを示すべく定期的に生け贄が街へ放り込まれていたということになる。そして、ここしばらくその難役を押しつけられているのが、この見た目も麗しくも、美しくもない青年だったわけである。
 なんにしろ、こんなところに長居は無用とばかりに、二人は足早に守衛たちのいる宿へと向かった。
 そこで報告を聞けば仕事は終わりだ。
 数人が横に並ぶこともできないような狭い路地を行く。
 やはり、異臭が鼻につく。
(なんだ?)
 ふだんから死体が転がっていても、子供すら道ばたの石ころのように踏み越えていく街ではあるにしても、きょうはやけに血の臭いが満ちている。
(なにか抗争でもあったか?)
 ふと、疑問が浮かんだ。
 と、そのとき、幼い子供が、青年にぶつかって、そのまま走り去っていった。
 はっとして胸にやれば、
「やれらた……」
 財布をとられた。
 しかも恋人に送るつもりで手にいれた宝石が入っている!?
 ここでは子供すら用心しなくてはいけないということか。
 あわてて振り返ると、まだ半身だけ角を曲がっているのが見えた。
「追うぞ!」
「はいですだ」
 とりあえず幾つかの角を曲がって追いかけっこをすると、街の深いところまで来てしまったか――見失った!?
 五本にわかれた小道が目の前にある。
 さすがに、ここで引くべきだろうか。
 そう思った時、子供の甲高い悲鳴がした。
(見つけた!)
 角を曲がった。
 追いつい――うッ――!?
 子供が腰を抜かしている。
 眼前にいたのは巨大な黒猫だ。
 それも、人よりも大きな黒猫で、背中でうごめく鞭のような複数の触手がただの動物でないことを告げている。
 まずい――
 本能が叫ぶ。
「ど、どうします?」
「どうしますってな、決まっているだろ!」
「どうするんですか!?
「逃げるんだよぉ!?」
 知らず、子供の手をとって青年は従者とともに一目さん、逃げ出した。

 ところで、この青年を領主が巡察官に選んだのには理由がある。

 それは運がよいのである――。

 ●

 くっ――

 青年たちは走り続けた。
 運命の同伴者となった子供が案内してくれるのが幸いした。
 こんな迷宮、案内人がなければ迷子になってしまう。
「腹でも空かせているのかよ!?」
 振り返ると、黒かったはずの獣の姿から色が消えかかっていて、いまでは白……というよりも透明に近い色になっている。
(なんだ?)
 疑問が頭をよぎったが、それも一時。なんにしろ、生涯で、これほどまじめにかけっこをしたことはないのだ。
 なかば消えかかった獣が、それでも追いかけている。
「見て!」
 あそこは――
 街と外の境界だ。
 だからなんだと――ふだんならば言うだろうが、いまではそこに救いがあるような気がする。
 その時、なにかに足を取られてしまった。
 子供に盗まれた財布からこぼれ落ちた宝石だ!
 転がる。
 そのまま回転しながら、身体は街の外へと出た。
 しかし、それどころではない。
 立ち上がろうと顔をあげたとき、獣の開いた口が目の前あった。
 終わった――
「えッ?」
 青年の寸前で、獣の姿は完全に消えた。
 街の外へ、文字どおり一歩でたとたん、黒い魔物は、まるで姿を消したのだ。
「大丈夫?」
 子供が聞く。
 なにが起きたのかわからなかった。
 ぜぇぜぇと肩で息をしながらうなづく。
 まだ街の中にいた従者が、安心したように主人に向かって手をふりあげ――体が腹からまっぷたつに裂かれた。
 血しぶきがあがる。
 巡察官は、反射的に子供の目元に手をあてていた。
 目の前に、あの姿が再び顕われた。
 刃のように変わった、その化け物の半身が、従者の半身を切り裂いたのだ。
 そして、血と肉をすする。
 人の身たる巡察官は、なにもすることができず、ただ見ているだけであった
 やがて食欲を満たしたのか、うなり声をあげると、その黒い獣は背中の黒い鞭を宝石へ向かって弦を鳴らすようにふるったが、やがて向きを変えると、主人をさがしに街の中へと向かうのだった。

解説

 一言でいえば「クローズドサークルで殺人鬼を追え」というシナリオとなります。
 非協力的な市民たちの被害をいかにおさえながら殺人鬼(殺人獣?)を追いつめ、それを仕留めるか、ヴォイドの主人を倒すとシナリオは完了となります。また、このシナリオにおいてはヴォイドならび主人には通常の攻撃もダメージを与えるものとします。

 ところで、このヴォイドは主人を捜しているようですが、主人とはなんでしょうか?

 さあ、化物を倒す勇者はおらぬか!? 

マスターより

 いつもお世話になります。
 急に寒くなってきましたが、いかがお過ごしでしょうか?
 すっかり日本の季節も、冬と夏、そして、その間の短い変わり目といった感じで、四季というよりも二季という感じになってしまいました。二週間前までは半袖で過ごしていたのに、今晩は暖房が部屋についているわけですから季節の移り変わりの激しさにはあぜんとするしかありません。
 みなさまも寒暖の差には注意して、お体にはお気をつけくださいませ。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2016/11/30 01:12

参加者一覧

  • all-rounder
    ラスティ(ka1400
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • いつも心に盾を
    ユナイテル・キングスコート(ka3458
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人
  • 兜の奥の、青い光
    No.0(ka4640
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 鉄壁の機兵操者
    ディヤー・A・バトロス(ka5743
    人間(紅)|11才|男性|魔術師
  • 守護ドワーフ
    ユウキ(ka5861
    ドワーフ|14才|女性|闘狩人
  • 狂乱の貴婦人
    エリ・ヲーヴェン(ka6159
    人間(紅)|15才|女性|闘狩人
依頼相談掲示板
アイコン 作戦相談場
No.0(ka4640
人間(リアルブルー)|20才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2016/11/21 18:18:54
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/11/17 07:28:22