• コメディ

その頃、大型ヒツジさんは……

マスター:柏木雄馬

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2016/11/30 22:00
リプレイ完成予定
2016/12/09 22:00

オープニング

 港町ガンナ・エントラータ郊外にて、王国軍とベリアル軍が激突している時。そこから遠く離れたリベルタース地方──

 一面に枯草の広がる、風荒ぶ草原に…… 巨大な大型ヒツジが、ポツンと。一人きりで立っていた。

 それは酷く、心に寂しい風景だった。
 『二階建ての大型バスを二台並べて、さらにそれぞれ一台ずつ乗っけた』くらいに大きな身体が、まるでネズミの様に小さく見えた。空にも厚い曇天が広がるばかり。自慢の金属製の巻き毛──スチールウールも、まるで艶をなくした様だ。

 全ては、決戦に先んじての前哨戦──このリベルタースに上陸後に彼、大型ヒツジがやらかした敗走が原因だった。
 今回の侵攻に際し、大型ヒツジは黒大公ベリアルから、人間たちがハルトフォートと呼ぶ砦に対する牽制攻撃を命じられていた。大型ヒツジにはその城壁を破壊できるだけの攻撃手段があったからだ。……決して、今回の黒大公の真の目的──『ユグディラの皮集め』には何の役にも立たないからとか、そういう理由ではない。……多分。
 まぁ、何にしろ、意気揚々と命じられた仕事を果たそうと砦に向かった大型ヒツジは、人間たちに──砲戦ゴーレムの実験隊に二度もその進軍を阻まれた。
 粘着弾による集中砲火を浴び、自慢の巻き毛をまるでポマードを塗ったくったかの様にべっちょりと台無しにされた挙句、怒って二本足で立ち上がったところを転されて。全身、土塗れ、泥まみれになって戦意を喪失。泣きながら帰ってしまったのだ。……二度も(←重要)
 報告を聞いたベリアルは激怒しかけた。うん、ちょっと平手(?)で叩いただけなので、激怒では決してない。
 そして、ベリアルは大型ヒツジに自分についてくる事を禁じ、この場に置き去りにした。ユグディラ狩りには邪魔だからとかそんな理由では(以下略)

「仕方がないメェ。ご自慢の毛並みがそんなことになってしまっては、お洒落に並々ならぬ矜持を持つ傲慢の歪虚としてはすぐに洗い落としたくなって当然だメェ」
 ズボッ、という音と共に、大型ヒツジの背中の毛の中から1体の、執事の格好をした羊が現れ、大型ヒツジを慰める様にポンポンと頭を撫でた。陽光が差したように、大型ヒツジの表情が明るくなった。
「仕方がないメェ。そんな理由で使命も果たせず、雪辱もせずに逃げ帰ったとあっては…… 誇り高き傲慢の歪虚の風上にもおけないメェ」
 もう一匹の執事羊がズボッと現れ、大型ヒツジを責める様にポンポンと頭を叩いた。大型ヒツジはガクリと肩を落とし、目に涙を溜めて身体を震わせた。

 日が落ちて、月が出た。どうせ曇天なので見えはしないが。
 大型ヒツジはその日も一歩も動くこともなく。外界の全てを遮断するかの様に、その場で涙に暮れながら丸くなった。


 日が落ちた。周囲に闇が訪れた。
 月明りも星明りもない闇の中、僅かに生えた草の中に、ひょこりと一対の耳が揺れた。
 カサカサという微かな草ずれの音の中に、同様の耳が現れ…… やがて、闇夜を見通す猫の目が。
「誰も……誰もいない、ニャね?」
 恐る恐るといった感じで頭を上げる猫の影──最初の1匹に続き、ひょこん、ひょこん、と次から次へと顔を出す。
 それは草間に潜んだユグディラたちの影だった。彼らは歪虚の多いこのリベルタースにおいて非常に珍しい、『地元』のユグディラたちだった。
 この地でベリアル配下の歪虚たちによるユグディラ狩りが始まった時、彼らは地元の地の利を活かし、見事にその魔の手から逃れることに成功していた。だが、そうこうしている内に、ベリアル本隊上陸に伴う歪虚の大量出現や、それを迎え撃つ為に武装した人間たちがわんさと現れ、挙句、動く岩の塊やらドカンドカンと轟音を発する筒やらまでもが出て来て、ここから一歩も動けなくなっていた。
 だが、それも、その日はひっそりと鳴りを潜めて、ここ数日の喧騒が嘘の様に静かになった。隠れ潜んでいたユグディラたちは、夜を待ってようやくこの場を離れることにしたのだった。
「さあ、ようやく誰もいなくなったニャ。今の内に安全な所へ逃げるニャ(お腹が空いたニャ)」
「……でも、安全な所ってどこニャ? 逃げた先でもあいつらがいたら……(お腹は空いたニャ)」
「こんな見晴らしの良い所…… 一旦、見つかったら、とても逃げきれないニャよ……? (お腹も空いてるし……)」
「ニャ…… ニャら、少しずつ移動して、隠れながら森へと向かうニャ(お腹が空いたし……)」
「あそこに丁度いい小山があるニャ。あそこで様子を窺って、行けるようニャら一気に逃げるニャ(お腹も空いたし……)」


 夜が明けた。周囲が明るくなったことに気付いて、大型ヒツジは顔を上げた。
 顔の表面に残った涙の跡(←気のせい)を前肢でそっと擦って、よっこらせと四つ足で立ち上がる。
 瞬間、背中の上の方で、ニャんだ!? とか、山が動いた! とか、ニャー、絡まったニャー! とか騒ぐ声がした。
 何事だろう、と思っていると、ズボッと執事羊たちが頭の上に現れた。
「なんか、知らない内に大量のユグディラたちを捕まえたみたいだメェ」
「大量メェ、大量メェ。これならベリアル様もきっと許して下さるメェ!」
 ホントに? と聞き返す大型ヒツジ。ホントに。と返す執事羊。
 大型ヒツジはパァ……! とその表情を輝かせた。それまでにない軽い足取りで、彼は南へと走り始めた。


 四半刻後。ハルトフォート砦──
 大型ヒツジが動いたとの報告が、警戒の為に張り付いていた一分隊からもたらされた。
「ようやく動いたか!」
 叫ぶ幕僚。憔悴し、落ち込んでいた1体の大型ヒツジは、ハルトフォートの注意を惹くという本来の任を奇しくも果たしていた。
「進路は!?」
 尋ねるもう一人。報告は、大型ヒツジがこちらにではなく、南へ移動していると報せていた。
 よしっ、と幕僚たちは叫んだ。こちらに来るなら迎撃しなければならないが、南へ向かうというのなら、わざわざ迎撃する必要はない。
「いや、ダメでしょう」
 また別の幕僚の一人が言った。南、ということは、ベリアル本隊と合流するつもりだろう。あんなデカブツが合流しては、戦の趨勢にも関わる。
「ダメかな?」
 ……このまま見なかったふりをするというのは?
「ダメでしょ」
 普通に考えて。
 最初の幕僚たちは大きく溜息を吐くと、未だ調整途中の砲戦ゴーレムたちに出撃の準備をさせるよう命じようとした。
 そこへ警戒班から続報が入った。曰く、大型ヒツジはその背に大量のユグディラを捕らえている模様──
 幕僚たちが、幕僚を見た。
「ユグディラたちごと吹き飛ばしてしまうというのは……?」
「えぇー……?」

解説

1.状況と目的
 状況はOP本文の通り。リベルタースにいる大型歪虚『大型ヒツジ』に捕らわれた(?)ユグディラたちを全員救出してください。
 今回、皆様の依頼参加理由は色々と自由です。
 砦に救出を依頼されたでもよし、たまたま見かけて助けにでもよし、ユグディラと同様、小山と思って寝ていたら、とかもアリです。

2.舞台
 グラズヘイム王国西部、リベルタース地方。枯草の草原だが、岩場の陰とか、隠れる所がまるでないわけではない。
 歪虚『大型ヒツジ』の背中の上。二階建てバス二つ分くらいは高所。
 大型ヒツジの体毛(巻き毛)であるスチールウールは、幅1cmくらいの薄い金属。ふわふわだが、踏み抜くと脚や手や全身に絡まって動けなくなる可能性。
 その端は鋭利で、抜け出ようともがいて暴れると下手な防具では簡単に切り裂かれる。だが、なぜか肌はあんまり切れない(ぇ
 金属防具なら切り裂かれることはないが、擦れる度にキィキィと甲高い嫌な音を立て、精神的ダメージが。
 スチールウールはふわふわだが丈夫。打撃と衝撃にめっぽう強い。切断等の手段が必要と判断した場合は単純な『攻撃』ではなく(プレイングでの)一工夫があると吉。

3.ユグディラ
 ふわふわスチールウールで寝ていたところ、びっくり慌てて暴れて絡め捕られた12匹。PCには総数不明。
 人語を解しますが、話せません(OPのはユグディラ語です)
 大型ヒツジのそこかしこで絡まってたり、ぶら下がってたり。人間が傍に寄っても暴れたり爪を立てたり色んな所を爪で引っ掛けたり(何
 助け上げると一転、傷口をぺろぺろ舐めてくれたりして懐きます。

4.大型ヒツジ
 今回、『敵』ではなく『地形』です。大きく身体を左右に振ったり、大きく背中を波打たせたり(転倒・落下の恐れ)
 更に、背中には2体の執事服を着た人型羊がいます。数ではPCたちに敵わないので、『地形』を利用した絡め手を使って邪魔してきます。

マスターより

 その頃、大型ヒツジさんはユグディラホイホイと化していました。こんにちわ、柏木雄馬です。
 ジャンル『コメディ』……コメディ!? そんなもの、柏木に書けるのか!? というわけで皆様、ご協力くださいませ(ぺこり
 柏木分類『戦術系』(目的達成最優先)かつ『描写系』(キャラクターの描写自体が目的)のシナリオとなります。
 繰り返しになりますが、下手な防具では簡単に以下略。ちなみに描写は少年誌(連載時)程度なのでご安心、もしくはご注意ください(プレイングに記述がある場合のみ)
 では、皆さま、よろしくお願いします。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2016/12/07 01:49

参加者一覧

  • 流浪の剛力修道女
    シレークス(ka0752
    ドワーフ|20才|女性|闘狩人
  • White Wolf
    ソレル・ユークレース(ka1693
    人間(紅)|25才|男性|闘狩人
  • 黒猫とパイルバンカー
    葛音 水月(ka1895
    人間(蒼)|19才|男性|疾影士
  • 星を傾く者
    サクラ・エルフリード(ka2598
    人間(紅)|15才|女性|聖導士
  • 甘苦スレイヴ
    葛音 ステラ(ka5122
    人間(蒼)|19才|女性|舞刀士
  • なにごとも楽しく♪
    シエル・ユークレース(ka6648
    人間(紅)|15才|男性|疾影士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/11/29 21:44:48
アイコン 相談です・・・
サクラ・エルフリード(ka2598
人間(クリムゾンウェスト)|15才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2016/11/30 08:04:01