ゲスト
(ka0000)
輝け! 理想のお兄さん、妹コンテスト!
マスター:みみずく

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~15人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 寸志
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2016/12/03 09:00
- リプレイ完成予定
- 2016/12/12 09:00
オープニング
どこのどいつだ。妹がかわいいなんて言ったやつは。
「おにい!」
勢いよく扉が開かれる。もちろんノックなどされない。入り口に立ち塞がるのは、女性にしては長身の影、間違ってもツインテールの幼顔、思わずきゅんとなる甘い声ではなく、頭半分刈り上げの前衛的な髪形に釣り目が今日も鋭角的、思わず心臓がぎゅんっと痛くなる世にも恐ろしい胴間声、妹だ。
「なんだよ!」
ノックぐらいしろ、と言いたいところだが、一つ言い返すごとに100倍ぐらい反撃を食らうので、口にできない。
「ナニコレ」
丸まった靴下を手に、低い声が響く。
「く、靴下」
「なんで玄関で脱ぎ散らかすのよ! 洗濯カゴまで何歩でもないでしょ! つか、はっきりいって臭いんだけど! うちの洗濯物と一緒にしないでよね、洗うんなら自分で洗いな!」
言い終わるが早いか、顔面に件の靴下がヒットした。
「ふぎゃ!」
ひどい、洗ってない靴下顔に投げた、臭いって言った。兄虐待だ。自分の靴下だけど、たしかに玄関で脱ぎ散らかしたのは悪かったけども。
「あ、どうせ買い物出るよね、お菓子買ってきて、慰謝料、10分以内」
冷徹な言葉とともに、ガチャンと大きな音を立て、扉が閉まる。
「……すげぇな、お前の妹」
横から友人がボソッとつぶやいた。
「お前の家、妹いたっけ」
「や、姉貴」
「いいな……おねえさん、優しそうだな」
脳裏に微笑みながら優しそうに振り返る年上の女性が浮かぶ。きっとお姉さんは、靴下脱ぎ散らかしたごとき、こんなに理不尽に怒鳴ったりしない。洗濯物だって一緒でいいよって言ってくれる。臭いなんて差別しない。
「お前、なに姉貴に夢見てんだよ。弟なんてな、はっきり言って下僕だよ」
友人は沈痛な面持ちで、胸元のポケットからメモ紙を取りだした。食料の名前がずらりと書いてある。買い物メモだとしたらずいぶんな量だ。
「それ、全部買って帰るのか」
「男の子だものねって、言い方優しいけど、目がいっつも笑ってねんだよ。怖いんだよ」
男って、悲しい。そう思った瞬間、薄い壁の向こうで、妹とそのお友達の爆笑が轟いた。
「えー! かわいいじゃん! いいなぁ弟」
「良くないよ。顔がよければいいけどさぁ、ぶっさいくなんだもん。誰に似たんだかさぁ」
「顔はねぇ、不細工直しようもないよねぇ」
「ねぇ」
同じ家族なんだから、そんなに違いはないくせに、人の事ばっかり……二人は瞬間的に、会ったこともないその弟に同情した。
「あ、お菓子ちょっと待ってね、今兄貴に買いに行かせてるから」
「お兄さん優しい!」
「おにぃ! 早くしてー!」
壁の向こうから理不尽な声が聞こえる。兄は唇をぐっとかみしめた。
「ここで屈したら、兄の威厳は地に落ちる」
彼の呟きに、友人が立ち上がった。
「そうだ、ここで負けたら男じゃない」
「いざ、決戦の時」
二人は意を決し、隣の部屋の扉を叩いた。
「なに、お菓子、早くして」
戸口に立った妹が凍てつく波動を放つ。心の防御は鍋の蓋、しかし、今は負けられない。
「お、お前、なんなんだよ、いつも、俺をパシリに使いやがって」
「はぁ? なんなのいきなり。そっちこそ、いつもいつも洗濯物脱ぎ散らかして、年中脱皮してないと気が済まないの? 虫か?」
「お、お、お前だって、便所でマンガ読むのやめろよ! 長……いてぇ!」
妹のスリッパアタックが火を噴いた。
「どんっだけデリカシーないの! それ言うんだったら、そっちだって、風上でおならするのやめてよ!」
「しょうがないだろ! 自然現象なんだから!」
「空気よめ!」
「小さくなれ!」
「お前が育て!」
それは長きにわたる戦いであった。果てしなく続く、罵詈雑言。湧き上がる、日頃の不満。そして。
「輝け、理想のお兄さん、妹コンテスト……」
ハンターオフィスで対応に出た女性職員は半眼になりながら、手書きのポスターを音読した。
抑揚の乏しい声色であった。
「ハンターの皆さんって、素敵じゃないですか」
兄がきらきらと目を輝かせ、力説する。
「強きをくじき弱きを助く。俺は、いや、俺たちは、ハンターの皆さんに、妹かくあるべし、という理想を見出したいんです!」
「はぁ」
「イケメン紹介、じゃなくて、うちのおにいに、兄とは、ってところをバシッと見せてほしいんですよね。お前みたいなへっぽこ兄貴ばっかじゃないぞって」
兄と妹、二人の間に、目には見えない火花が散る。時まさに平日の昼下がり、どこかの町の町民会館にて、コンテストに名を借りた二人の仁義なき兄妹戦争の幕が切って落とされる。
「そういうわけで、参加してくださる皆さんを募集します! もちろん、一緒に審査してくださるハンターさんも大歓迎! 我こそは理想の兄、妹、または兄妹論には一家言あるという、あなたの鋭い一言もお待ちしています」
「おにい!」
勢いよく扉が開かれる。もちろんノックなどされない。入り口に立ち塞がるのは、女性にしては長身の影、間違ってもツインテールの幼顔、思わずきゅんとなる甘い声ではなく、頭半分刈り上げの前衛的な髪形に釣り目が今日も鋭角的、思わず心臓がぎゅんっと痛くなる世にも恐ろしい胴間声、妹だ。
「なんだよ!」
ノックぐらいしろ、と言いたいところだが、一つ言い返すごとに100倍ぐらい反撃を食らうので、口にできない。
「ナニコレ」
丸まった靴下を手に、低い声が響く。
「く、靴下」
「なんで玄関で脱ぎ散らかすのよ! 洗濯カゴまで何歩でもないでしょ! つか、はっきりいって臭いんだけど! うちの洗濯物と一緒にしないでよね、洗うんなら自分で洗いな!」
言い終わるが早いか、顔面に件の靴下がヒットした。
「ふぎゃ!」
ひどい、洗ってない靴下顔に投げた、臭いって言った。兄虐待だ。自分の靴下だけど、たしかに玄関で脱ぎ散らかしたのは悪かったけども。
「あ、どうせ買い物出るよね、お菓子買ってきて、慰謝料、10分以内」
冷徹な言葉とともに、ガチャンと大きな音を立て、扉が閉まる。
「……すげぇな、お前の妹」
横から友人がボソッとつぶやいた。
「お前の家、妹いたっけ」
「や、姉貴」
「いいな……おねえさん、優しそうだな」
脳裏に微笑みながら優しそうに振り返る年上の女性が浮かぶ。きっとお姉さんは、靴下脱ぎ散らかしたごとき、こんなに理不尽に怒鳴ったりしない。洗濯物だって一緒でいいよって言ってくれる。臭いなんて差別しない。
「お前、なに姉貴に夢見てんだよ。弟なんてな、はっきり言って下僕だよ」
友人は沈痛な面持ちで、胸元のポケットからメモ紙を取りだした。食料の名前がずらりと書いてある。買い物メモだとしたらずいぶんな量だ。
「それ、全部買って帰るのか」
「男の子だものねって、言い方優しいけど、目がいっつも笑ってねんだよ。怖いんだよ」
男って、悲しい。そう思った瞬間、薄い壁の向こうで、妹とそのお友達の爆笑が轟いた。
「えー! かわいいじゃん! いいなぁ弟」
「良くないよ。顔がよければいいけどさぁ、ぶっさいくなんだもん。誰に似たんだかさぁ」
「顔はねぇ、不細工直しようもないよねぇ」
「ねぇ」
同じ家族なんだから、そんなに違いはないくせに、人の事ばっかり……二人は瞬間的に、会ったこともないその弟に同情した。
「あ、お菓子ちょっと待ってね、今兄貴に買いに行かせてるから」
「お兄さん優しい!」
「おにぃ! 早くしてー!」
壁の向こうから理不尽な声が聞こえる。兄は唇をぐっとかみしめた。
「ここで屈したら、兄の威厳は地に落ちる」
彼の呟きに、友人が立ち上がった。
「そうだ、ここで負けたら男じゃない」
「いざ、決戦の時」
二人は意を決し、隣の部屋の扉を叩いた。
「なに、お菓子、早くして」
戸口に立った妹が凍てつく波動を放つ。心の防御は鍋の蓋、しかし、今は負けられない。
「お、お前、なんなんだよ、いつも、俺をパシリに使いやがって」
「はぁ? なんなのいきなり。そっちこそ、いつもいつも洗濯物脱ぎ散らかして、年中脱皮してないと気が済まないの? 虫か?」
「お、お、お前だって、便所でマンガ読むのやめろよ! 長……いてぇ!」
妹のスリッパアタックが火を噴いた。
「どんっだけデリカシーないの! それ言うんだったら、そっちだって、風上でおならするのやめてよ!」
「しょうがないだろ! 自然現象なんだから!」
「空気よめ!」
「小さくなれ!」
「お前が育て!」
それは長きにわたる戦いであった。果てしなく続く、罵詈雑言。湧き上がる、日頃の不満。そして。
「輝け、理想のお兄さん、妹コンテスト……」
ハンターオフィスで対応に出た女性職員は半眼になりながら、手書きのポスターを音読した。
抑揚の乏しい声色であった。
「ハンターの皆さんって、素敵じゃないですか」
兄がきらきらと目を輝かせ、力説する。
「強きをくじき弱きを助く。俺は、いや、俺たちは、ハンターの皆さんに、妹かくあるべし、という理想を見出したいんです!」
「はぁ」
「イケメン紹介、じゃなくて、うちのおにいに、兄とは、ってところをバシッと見せてほしいんですよね。お前みたいなへっぽこ兄貴ばっかじゃないぞって」
兄と妹、二人の間に、目には見えない火花が散る。時まさに平日の昼下がり、どこかの町の町民会館にて、コンテストに名を借りた二人の仁義なき兄妹戦争の幕が切って落とされる。
「そういうわけで、参加してくださる皆さんを募集します! もちろん、一緒に審査してくださるハンターさんも大歓迎! 我こそは理想の兄、妹、または兄妹論には一家言あるという、あなたの鋭い一言もお待ちしています」
解説
乱闘は起こりますが戦闘の起こらない日常シナリオです。
特に武器を持って戦うわけではなく命にはかかわりませんが、ケンカには巻き込まれます。
HPが減ることはありませんがライフはゼロになるやもしれません。
兄は追い詰められると『逆ギレ』を使うことができます。特に攻撃力はありません。
暴れることもなく『気まずい空気』を生み出します。それだけです。
兄に与する親友は戦闘時でも常に『同情』の状態です。
『優しさ』でほんのちょっとだけ回復させてくれますが、防御力も攻撃力もありません。
妹は必殺『毒舌』を繰り出します。兄の傷をえぐり、傷口には塩を塗ります。大変な破壊力です。無双です。
妹を援護する友達は、大体傍観しているか面白がっています。たまに『裏の顔』を見せます。
敵をなぎ倒し、見方すらも慄かせます。
参加に際し配られる、『ご参加ありがとう予算』は妹が出しています。兄は今のところ資金力がありません。
将来に期待しましょう。
因みに、おねえさん、弟ちゃんの乱入も可能です。
一人っ子または実際の兄弟関係とは異なっても、理想に近ければ、特に四人とも気にしません。
特に武器を持って戦うわけではなく命にはかかわりませんが、ケンカには巻き込まれます。
HPが減ることはありませんがライフはゼロになるやもしれません。
兄は追い詰められると『逆ギレ』を使うことができます。特に攻撃力はありません。
暴れることもなく『気まずい空気』を生み出します。それだけです。
兄に与する親友は戦闘時でも常に『同情』の状態です。
『優しさ』でほんのちょっとだけ回復させてくれますが、防御力も攻撃力もありません。
妹は必殺『毒舌』を繰り出します。兄の傷をえぐり、傷口には塩を塗ります。大変な破壊力です。無双です。
妹を援護する友達は、大体傍観しているか面白がっています。たまに『裏の顔』を見せます。
敵をなぎ倒し、見方すらも慄かせます。
参加に際し配られる、『ご参加ありがとう予算』は妹が出しています。兄は今のところ資金力がありません。
将来に期待しましょう。
因みに、おねえさん、弟ちゃんの乱入も可能です。
一人っ子または実際の兄弟関係とは異なっても、理想に近ければ、特に四人とも気にしません。
マスターより
こんにちは、初めまして、または今日も今日とてありがとう、みみずくです。
全力で暴れるもよし、はっちゃけるもよし、傍で笑うもよし、やぁやぁ遠からんものは音に聞け、近くば寄って目にも見よと、どうぞ名乗りを上げて楽しんでください。
全力で暴れるもよし、はっちゃけるもよし、傍で笑うもよし、やぁやぁ遠からんものは音に聞け、近くば寄って目にも見よと、どうぞ名乗りを上げて楽しんでください。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2016/12/12 04:38