ゲスト
(ka0000)
大きな少女と一大決心
マスター:春野紅葉

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在7人 / 4~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2016/12/09 12:00
- リプレイ完成予定
- 2016/12/18 12:00
オープニング
●
ある日、ユリアは町の入り口あたりに設置されている椅子に座って空を眺めていた。時刻は午前の4時ごろであろうか。もうすぐしたらいつものユリアなら仕事をすべく家を出ている頃だ。
「誰が……どうして。あんな思いを私はしたくないのに。誰かはあんな生活をしたいって思ってるの……?」
つい最近分かった、自分の故郷で行なわれていた歪虚崇拝が、また行われている。それと同時に、同じ村出身の人たちが頻繁に外に出ているらしい事実。
もしこの町に来なければ、この町の人たちに迷惑を掛けなかったのではないか。信じたいけれど怪しいとしか言えない事実は、不安で仕方がなかった。だから夜が眠れなくなって、自然と外に出てしまう。そのせいで、仕事も身が入らず、ここ数日は休みがちだった。
「うん……やっぱり誰も来ないんだ。やっぱり噂は嘘……だったのかな」
今いる入り口は、普段ユリアが町の外に仕事に行く出入り口とは正反対に位置している。普段使っている道のほうへは、ここ数日を見る限り、村の出身者たちは出入りしていなかった。
誰も来ないことに安堵しつつ、立ち上がろうとしたその時だった。ふと、ユリアは視線の先に人影を見た。人数にして、4人ほどであろうか。1つの目的を目指しているかのようにまっすぐにこちらに歩いてきている。ユリアは思わず椅子の陰に身体を隠した。
「あれは……ツェザールさんと……それに他の人もみんな村の……」
息を殺して4人を待っていると、彼らは町の外へと歩いて行った。放牧の仕事をしているわけでも、外に畑があるわけでもなさそうだった。彼らの装備は仕事をしに行くにしてはどこまでも軽装であり、それでいてどこか襟を正しているような印象を受けた。
一緒に行くべきか、止めておくべきか。ユリアはごくりと唾をのんだ。ただ外に出て行っているだけかもしれない。そんな思いがもたげる。それなら、良い。けれど追った結果、彼らが歪虚を崇拝している現場など見たら、ユリアは冷静でいられる自信がなかった。
落ち着こうと、深呼吸する。ふと様子を見ると、ツェザールが門をくぐって戻ってきていた。彼はそのまま門の縁に体を預けて少したたずむ。すると、やがて一人の男が姿を現した。
見覚えは、ばっちりある。あれは――町長の秘書だ。
「おはようございます。南にある森での進捗のほうはいかがですか?」
「はい。先日、何体か増えているのを見ました。ありがとうございます」
「これからですよ。私どもとしても、あなた方の崇めているアレが増えてくれれば良い」
「秘書さんのおかげで私はもちろん、同志の心も休まります。本当にありがとうございます」
「いいえ。私どもとしてはユリア嬢の首を獲れなかったことは心残りですが。まぁ仕方ありません。大型の眠りを妨げぬよう気を付けながら、獣の遺体を放り込むのです。以前と同じであれば、あれは日中に眠り、夜に動く生き物ですから」
ユリアは息を潜め、じっと小さくなってその会話を聞いていた。秘書の言う大型とは、前に仕留め損ねてしまった例の大型歪虚なのだろうか。
もしそうなら――そうやって敢えて歪虚の下にあんな地下室を作って、雑魔を増やす速度を上げていたのなら、垂れ流される負のマテリアルを地下室に籠らせていたのなら。ぽとりと、雫がひとつ手に落ちてくる。それが涙だと気づいた時、ユリアは嗚咽を必死にこらえようと口をふさぐ。
「ユリアは、我々を必死に導こうとしてくれた子です。もしも討った時は」
「ええ、分かっておりますよ。あなた方のおっしゃっていた通り、大切に地下室に安置してご神体として崇めればよろしい」
「ありがとうございます」
「ぇっ……」
思わず、堪えようとしていた口からそんな声が漏れた。一瞬、何を言っているのか分からなかった。何を言っているのかと聞き直そうと身体が動くのを咄嗟に抑え込む。
「では、行ってらっしゃいませ」
秘書が言うと、ツェザールは礼を言ってどうやら門の外に向けて歩き出したようだった。
「……私を殺す理由は、ご神体にするため……? 私も、あんなのになるの?」
気付いた時にはユリアは吐瀉していた。げほげほと咳き込み、口いっぱいに広がった酸っぱさと虚しいのか悲しいのか怖いのかよく分からない感情を抱えたまま、ふらふらと歩き出す。
●
どうやって家まで帰って来たのか分からなかった。気付いた時には自分の部屋でぼうっと天井を見ていた。何度も吐いたのか、酸っぱい臭いが部屋中に充満し、捨てられている袋にはその痕跡が見受けられる。
「なんで……私。直接感謝された事なんかなかったから知らなかった。でも、なんで? なんで殺さないといけないの?」
震える声で呟くと、再び涙があふれてきた。
「ユリアちゃん……起きましたか?」
小さな悲鳴と共に扉から離れようと自然に体が後ろへ下がって行き、壁にぶつかって壁のひんやりとした冷たさに少し我を取り戻す。
「お母さん……?」
「晩御飯、食べれますか?」
「うっ、うん」
ベッドから降りようとした瞬間、ふらりと身体が倒れた。バシッと言う強い音とともに床に倒れ込む。母の悲鳴混じりの心配そうな声がする。それにか細くなる声で何とか答えて、這うように扉の前まで進む。
「今……行くから」
「……そうですか。悩みでもあるの? お母さんじゃあ力になれないだろうけど、お母さん、お話だけは聞くから」
「ううん。良いの」
扉にもたれかかるようにして言うと、深く息をひとつ吐いて、扉を背で押すようにしてよろよろと立ちあがり、扉を開けた。
扉の先で待っていた母に何とか笑いかけながら、そろそろと扉の外へと足を踏み出した。
●
その日の早朝、ユリアは居並ぶハンター達の前に立っていた。
「皆さん。お願いします。村の人達を説得する――いいえ。止める手伝いをしてください」
そう言ってユリアは頭を下げた。
「追跡は難しくないと思います。ただ、あるのは草原ばかりなので工夫は必要だと思います」
小さな地図を広げて、地図の南方方向を指で指し示しながらユリアは告げる。
「私も、村の人達が本当に歪虚を崇めているなんて思いたくないんです。だから――本当にそうなんだって知るまで、耐えてください」
顔を地図に落としながら、ユリアは縋るように語っていた。少女の目から一筋の涙がこぼれて地図に落ちる。
ある日、ユリアは町の入り口あたりに設置されている椅子に座って空を眺めていた。時刻は午前の4時ごろであろうか。もうすぐしたらいつものユリアなら仕事をすべく家を出ている頃だ。
「誰が……どうして。あんな思いを私はしたくないのに。誰かはあんな生活をしたいって思ってるの……?」
つい最近分かった、自分の故郷で行なわれていた歪虚崇拝が、また行われている。それと同時に、同じ村出身の人たちが頻繁に外に出ているらしい事実。
もしこの町に来なければ、この町の人たちに迷惑を掛けなかったのではないか。信じたいけれど怪しいとしか言えない事実は、不安で仕方がなかった。だから夜が眠れなくなって、自然と外に出てしまう。そのせいで、仕事も身が入らず、ここ数日は休みがちだった。
「うん……やっぱり誰も来ないんだ。やっぱり噂は嘘……だったのかな」
今いる入り口は、普段ユリアが町の外に仕事に行く出入り口とは正反対に位置している。普段使っている道のほうへは、ここ数日を見る限り、村の出身者たちは出入りしていなかった。
誰も来ないことに安堵しつつ、立ち上がろうとしたその時だった。ふと、ユリアは視線の先に人影を見た。人数にして、4人ほどであろうか。1つの目的を目指しているかのようにまっすぐにこちらに歩いてきている。ユリアは思わず椅子の陰に身体を隠した。
「あれは……ツェザールさんと……それに他の人もみんな村の……」
息を殺して4人を待っていると、彼らは町の外へと歩いて行った。放牧の仕事をしているわけでも、外に畑があるわけでもなさそうだった。彼らの装備は仕事をしに行くにしてはどこまでも軽装であり、それでいてどこか襟を正しているような印象を受けた。
一緒に行くべきか、止めておくべきか。ユリアはごくりと唾をのんだ。ただ外に出て行っているだけかもしれない。そんな思いがもたげる。それなら、良い。けれど追った結果、彼らが歪虚を崇拝している現場など見たら、ユリアは冷静でいられる自信がなかった。
落ち着こうと、深呼吸する。ふと様子を見ると、ツェザールが門をくぐって戻ってきていた。彼はそのまま門の縁に体を預けて少したたずむ。すると、やがて一人の男が姿を現した。
見覚えは、ばっちりある。あれは――町長の秘書だ。
「おはようございます。南にある森での進捗のほうはいかがですか?」
「はい。先日、何体か増えているのを見ました。ありがとうございます」
「これからですよ。私どもとしても、あなた方の崇めているアレが増えてくれれば良い」
「秘書さんのおかげで私はもちろん、同志の心も休まります。本当にありがとうございます」
「いいえ。私どもとしてはユリア嬢の首を獲れなかったことは心残りですが。まぁ仕方ありません。大型の眠りを妨げぬよう気を付けながら、獣の遺体を放り込むのです。以前と同じであれば、あれは日中に眠り、夜に動く生き物ですから」
ユリアは息を潜め、じっと小さくなってその会話を聞いていた。秘書の言う大型とは、前に仕留め損ねてしまった例の大型歪虚なのだろうか。
もしそうなら――そうやって敢えて歪虚の下にあんな地下室を作って、雑魔を増やす速度を上げていたのなら、垂れ流される負のマテリアルを地下室に籠らせていたのなら。ぽとりと、雫がひとつ手に落ちてくる。それが涙だと気づいた時、ユリアは嗚咽を必死にこらえようと口をふさぐ。
「ユリアは、我々を必死に導こうとしてくれた子です。もしも討った時は」
「ええ、分かっておりますよ。あなた方のおっしゃっていた通り、大切に地下室に安置してご神体として崇めればよろしい」
「ありがとうございます」
「ぇっ……」
思わず、堪えようとしていた口からそんな声が漏れた。一瞬、何を言っているのか分からなかった。何を言っているのかと聞き直そうと身体が動くのを咄嗟に抑え込む。
「では、行ってらっしゃいませ」
秘書が言うと、ツェザールは礼を言ってどうやら門の外に向けて歩き出したようだった。
「……私を殺す理由は、ご神体にするため……? 私も、あんなのになるの?」
気付いた時にはユリアは吐瀉していた。げほげほと咳き込み、口いっぱいに広がった酸っぱさと虚しいのか悲しいのか怖いのかよく分からない感情を抱えたまま、ふらふらと歩き出す。
●
どうやって家まで帰って来たのか分からなかった。気付いた時には自分の部屋でぼうっと天井を見ていた。何度も吐いたのか、酸っぱい臭いが部屋中に充満し、捨てられている袋にはその痕跡が見受けられる。
「なんで……私。直接感謝された事なんかなかったから知らなかった。でも、なんで? なんで殺さないといけないの?」
震える声で呟くと、再び涙があふれてきた。
「ユリアちゃん……起きましたか?」
小さな悲鳴と共に扉から離れようと自然に体が後ろへ下がって行き、壁にぶつかって壁のひんやりとした冷たさに少し我を取り戻す。
「お母さん……?」
「晩御飯、食べれますか?」
「うっ、うん」
ベッドから降りようとした瞬間、ふらりと身体が倒れた。バシッと言う強い音とともに床に倒れ込む。母の悲鳴混じりの心配そうな声がする。それにか細くなる声で何とか答えて、這うように扉の前まで進む。
「今……行くから」
「……そうですか。悩みでもあるの? お母さんじゃあ力になれないだろうけど、お母さん、お話だけは聞くから」
「ううん。良いの」
扉にもたれかかるようにして言うと、深く息をひとつ吐いて、扉を背で押すようにしてよろよろと立ちあがり、扉を開けた。
扉の先で待っていた母に何とか笑いかけながら、そろそろと扉の外へと足を踏み出した。
●
その日の早朝、ユリアは居並ぶハンター達の前に立っていた。
「皆さん。お願いします。村の人達を説得する――いいえ。止める手伝いをしてください」
そう言ってユリアは頭を下げた。
「追跡は難しくないと思います。ただ、あるのは草原ばかりなので工夫は必要だと思います」
小さな地図を広げて、地図の南方方向を指で指し示しながらユリアは告げる。
「私も、村の人達が本当に歪虚を崇めているなんて思いたくないんです。だから――本当にそうなんだって知るまで、耐えてください」
顔を地図に落としながら、ユリアは縋るように語っていた。少女の目から一筋の涙がこぼれて地図に落ちる。
解説
よろしくお願いします。
今回の依頼は冒険というより追跡依頼です。
村人達を追跡し、彼らが何をやっているのかの動かぬ証拠を捉え
彼らのお縄を頂戴する、或いは説得して彼らの改宗を目指してください。
戦闘としては皆様のプレイングの成果によっては狼が10匹登場いたします。
今回の依頼は冒険というより追跡依頼です。
村人達を追跡し、彼らが何をやっているのかの動かぬ証拠を捉え
彼らのお縄を頂戴する、或いは説得して彼らの改宗を目指してください。
戦闘としては皆様のプレイングの成果によっては狼が10匹登場いたします。
マスターより
初めまして、こんにちはが定型文のようになってきた今日この頃。
春野紅葉にございます。
オープニングを公開する瞬間がリプレイを公開する瞬間以上に緊張します。
それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
春野紅葉にございます。
オープニングを公開する瞬間がリプレイを公開する瞬間以上に緊張します。
それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2016/12/18 19:11
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/12/08 19:06:56 |
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作戦相談場 銀(ka6662) 鬼|30才|男性|符術師(カードマスター) |
最終発言 2016/12/09 06:44:05 |