ゲスト
(ka0000)
死がふたりを分かつとも
マスター:湖欄黒江

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2014/10/03 19:00
- リプレイ完成予定
- 2014/10/12 19:00
オープニング
●
「おい、兄ちゃんよ。ネタは上がってんだぞ、大人しくお嬢を渡すんだ」
「そうすりゃ命までは取らねぇ、ムショ送りもカンベンしてやる。
これも旦那様のお慈悲ってもんだ。分かったらさっさと――」
「嫌だ、彼女は渡さない!」
青年の声が、朽ちかけた屋敷の玄関ホールにこだまする。
革の棍棒を手にした便利屋ふたりはお互い顔を見合わせて、同時に肩をすぼめた。
「あのなぁ兄ちゃん。あんた自分が何やってんのか分かってっか?」
「ジェラルド、やっぱ無駄だぜ。コイツの頭がイカれてんのは承知の話だったろう?」
「……だな。紳士の時間は終わりだ」
玄関から上がろうとする便利屋に対し、腕を広げてその行く手を阻む青年。
青白い顔。こけた頬、黒い隈、血走った眼。
身体は痩せ細り、とてもではないが体格の良い便利屋たちへ立ち向かえる男には見えない。
だが青年は一歩も退かず、唇を噛み絞め、きっと相手を睨みつけた。
便利屋の片方、ジェラルドと呼ばれたほうは、躊躇なく棍棒を振るって青年を殴り倒す。
青年は埃まみれの床に這いつくばり、口から血と、折れた歯を吐きながら咳き込んだ。
「ヘラルド、お嬢を探せ。その間、俺はコイツのオツムを外科的に治療してやる」
「そいつぁ良い。運悪く手術が失敗したら、家ごと焼いちまえば世話ないぜ」
ヘラルドが家の奥へ進むのを見届けると、ジェラルドは青年の髪の毛を掴んで引き起こした。
青年が抵抗するも、便利屋の鍛え上げられた腕は簡単に彼を押さえ込んでしまう。
もう一発殴りつけようとジェラルドが拳を上げたところ、青年がか細い声で何事かを呟き始めた。
「僕は……」
「あ?」
「僕たちは……愛し合ってたんだ……誰にも……」
「けっ」
ジェラルドは固めた拳を顔面へ叩き込み、彼の鼻をへし折った。
そして流れ出した鼻血を擦りつけるように、青年の顔を掌で強く拭いながら、
「悪い血を流せば、少しは具合が良くなるかもな。え、この阿呆が」
「……誰にも……渡さない……アナベル」
「何をほざいてやがる。そのアナベルお嬢様に、テメェは何を――」
何をしたと思ってやがる、とジェラルドが言いかけた途端。
家の奥から悲鳴が上がり、顔面蒼白のヘラルドがこけつまろびつ、玄関ホールへ逃げ帰ってくる。
「じ、じ、ジェラルド! お、お嬢がいた……」
「だったらさっさと持って帰ってこい! 表の馬車に乗せるんだ! 今更死体くらいで何ビビって――」
ヘラルドが開け放しにしていた奥の扉から、ゆらり、とひとりの少女が現れる。
薄暗い家の中で、彼女の纏う白いドレスがぼんやりと光って見えた。
艶やかな長い黒髪と、驚くほど白い肌。整った目鼻立ちをしているが、眼は虚ろだ。
彼女はドレスの裾を引きずりながら、ふらふらとこちらへ歩いてくる。
ジェラルドは唖然とした。
「テメェ――」
思わず、自分の掌の下にあった青年の顔を覗き込む。青年は薄笑いを浮かべて、
「仕方ないな。人殺しは性に合わないんだけど」
「――お嬢に一体、何しやがった!」
●
「骨だ。骨を沢山集めて籠みたいに編んだ、デカいのが……いきなり天井から降って来やがった」
ヘラルドは、気つけにと渡されたショットグラスの中身を一口で呷ると、じっと俯いて自分の脚の間を見つめた。
逃げ帰ってきた便利屋の話に、仕事を依頼した執事長は鼻を鳴らしながらも手振りで続きを促した。
「……人間の骸骨だった。そいつはジェラルドを沢山の手で捕まえると……
ジェラルドは八つ裂きにされちまった。俺はビビっちまって、そのまま逃げて来た。
そうだよ、化け物だよ! あの野郎、用心棒代わりに化け物を飼ってやがったんだ! それに!」
「それに? 肝心の、お嬢様――のご遺体は、どうしたのですか?」
「それにお嬢だ! ……ホントに彼女、死んだんだよな?」
執事長が深々と頷き、答える。
肺病でした。医師ふたりが確かに立会い、死亡を確認し、葬儀を行って埋葬しました。
こともなげにそう言って、彼は自分の分の酒をグラスに注ぐ。
「きっとあの野郎はな、掘り返したお嬢の死体に魔法を使ったんだ! ありゃ、ゾンビってヤツだ……」
「エドガーの一族は代々、魔術師として有名な家系だったそうですからね。そういうこともあり得ましたか」
「魔術……あんた、そいつを知ってたなら何で、俺たちに……!」
「『化け物』を飼い馴らせるほど大した魔術師とは思わなかったものでね。
あの家の様子を見ても分かる通り、没落寸前というところでして。
大体、そのような術はどんなに優秀な魔術師でも危険で手に余るものとして、
個人で実行されることはまずない、と以前聞いたことがあります。
それが魔法生物を2体も……狂気の為せる業か、あるいは先祖が何か遺していたのかも分かりません。
しかし、我々の関心事はあくまで遺体を取り戻すことと、後の始末を綺麗につけること。
今度は化け物を相手出来るような専門家を、呼ぶこととしましょう」
執事長はズボンの皴を直して椅子から立ち上がると、卓上にあった鈴を鳴らして部下を呼んだ。
「御用ですか?」
「手空きの者に使いの用意をさせておけ。後で手紙を渡すから、それをハンターオフィスまで届けるようにな」
部下が下がると、俯いていたヘラルドが不意に顔を上げる。
「あんたら、化け物退治にハンターを使うのか。俺は……どうすりゃ良い?」
「何も。何もなさらずにいて結構です。
仕事は失敗しましたが、代金はご同僚のお見舞いとして約束通りお渡ししましょう」
「そりゃ、ありがたいが……あの野郎はジェラルドの仇だ。俺も――」
「お止しなさい。この事態は貴方の手には余る。ハンターに任せれば良い」
「れ、連中が仇を獲ってくれるのか?」
「あるいはね。ご同僚の遺体が回収出来れば、貴方にお渡しするよう手筈しますよ――
それではさようなら。くれぐれも他言は無用で」
ヘラルドは暇を出されてからもぐずぐずと居残っていたが、
執事長が彼に構わずハンターオフィスへの依頼状を書き始めたのを見ると、ようやく部屋を出ていった。
「おい、兄ちゃんよ。ネタは上がってんだぞ、大人しくお嬢を渡すんだ」
「そうすりゃ命までは取らねぇ、ムショ送りもカンベンしてやる。
これも旦那様のお慈悲ってもんだ。分かったらさっさと――」
「嫌だ、彼女は渡さない!」
青年の声が、朽ちかけた屋敷の玄関ホールにこだまする。
革の棍棒を手にした便利屋ふたりはお互い顔を見合わせて、同時に肩をすぼめた。
「あのなぁ兄ちゃん。あんた自分が何やってんのか分かってっか?」
「ジェラルド、やっぱ無駄だぜ。コイツの頭がイカれてんのは承知の話だったろう?」
「……だな。紳士の時間は終わりだ」
玄関から上がろうとする便利屋に対し、腕を広げてその行く手を阻む青年。
青白い顔。こけた頬、黒い隈、血走った眼。
身体は痩せ細り、とてもではないが体格の良い便利屋たちへ立ち向かえる男には見えない。
だが青年は一歩も退かず、唇を噛み絞め、きっと相手を睨みつけた。
便利屋の片方、ジェラルドと呼ばれたほうは、躊躇なく棍棒を振るって青年を殴り倒す。
青年は埃まみれの床に這いつくばり、口から血と、折れた歯を吐きながら咳き込んだ。
「ヘラルド、お嬢を探せ。その間、俺はコイツのオツムを外科的に治療してやる」
「そいつぁ良い。運悪く手術が失敗したら、家ごと焼いちまえば世話ないぜ」
ヘラルドが家の奥へ進むのを見届けると、ジェラルドは青年の髪の毛を掴んで引き起こした。
青年が抵抗するも、便利屋の鍛え上げられた腕は簡単に彼を押さえ込んでしまう。
もう一発殴りつけようとジェラルドが拳を上げたところ、青年がか細い声で何事かを呟き始めた。
「僕は……」
「あ?」
「僕たちは……愛し合ってたんだ……誰にも……」
「けっ」
ジェラルドは固めた拳を顔面へ叩き込み、彼の鼻をへし折った。
そして流れ出した鼻血を擦りつけるように、青年の顔を掌で強く拭いながら、
「悪い血を流せば、少しは具合が良くなるかもな。え、この阿呆が」
「……誰にも……渡さない……アナベル」
「何をほざいてやがる。そのアナベルお嬢様に、テメェは何を――」
何をしたと思ってやがる、とジェラルドが言いかけた途端。
家の奥から悲鳴が上がり、顔面蒼白のヘラルドがこけつまろびつ、玄関ホールへ逃げ帰ってくる。
「じ、じ、ジェラルド! お、お嬢がいた……」
「だったらさっさと持って帰ってこい! 表の馬車に乗せるんだ! 今更死体くらいで何ビビって――」
ヘラルドが開け放しにしていた奥の扉から、ゆらり、とひとりの少女が現れる。
薄暗い家の中で、彼女の纏う白いドレスがぼんやりと光って見えた。
艶やかな長い黒髪と、驚くほど白い肌。整った目鼻立ちをしているが、眼は虚ろだ。
彼女はドレスの裾を引きずりながら、ふらふらとこちらへ歩いてくる。
ジェラルドは唖然とした。
「テメェ――」
思わず、自分の掌の下にあった青年の顔を覗き込む。青年は薄笑いを浮かべて、
「仕方ないな。人殺しは性に合わないんだけど」
「――お嬢に一体、何しやがった!」
●
「骨だ。骨を沢山集めて籠みたいに編んだ、デカいのが……いきなり天井から降って来やがった」
ヘラルドは、気つけにと渡されたショットグラスの中身を一口で呷ると、じっと俯いて自分の脚の間を見つめた。
逃げ帰ってきた便利屋の話に、仕事を依頼した執事長は鼻を鳴らしながらも手振りで続きを促した。
「……人間の骸骨だった。そいつはジェラルドを沢山の手で捕まえると……
ジェラルドは八つ裂きにされちまった。俺はビビっちまって、そのまま逃げて来た。
そうだよ、化け物だよ! あの野郎、用心棒代わりに化け物を飼ってやがったんだ! それに!」
「それに? 肝心の、お嬢様――のご遺体は、どうしたのですか?」
「それにお嬢だ! ……ホントに彼女、死んだんだよな?」
執事長が深々と頷き、答える。
肺病でした。医師ふたりが確かに立会い、死亡を確認し、葬儀を行って埋葬しました。
こともなげにそう言って、彼は自分の分の酒をグラスに注ぐ。
「きっとあの野郎はな、掘り返したお嬢の死体に魔法を使ったんだ! ありゃ、ゾンビってヤツだ……」
「エドガーの一族は代々、魔術師として有名な家系だったそうですからね。そういうこともあり得ましたか」
「魔術……あんた、そいつを知ってたなら何で、俺たちに……!」
「『化け物』を飼い馴らせるほど大した魔術師とは思わなかったものでね。
あの家の様子を見ても分かる通り、没落寸前というところでして。
大体、そのような術はどんなに優秀な魔術師でも危険で手に余るものとして、
個人で実行されることはまずない、と以前聞いたことがあります。
それが魔法生物を2体も……狂気の為せる業か、あるいは先祖が何か遺していたのかも分かりません。
しかし、我々の関心事はあくまで遺体を取り戻すことと、後の始末を綺麗につけること。
今度は化け物を相手出来るような専門家を、呼ぶこととしましょう」
執事長はズボンの皴を直して椅子から立ち上がると、卓上にあった鈴を鳴らして部下を呼んだ。
「御用ですか?」
「手空きの者に使いの用意をさせておけ。後で手紙を渡すから、それをハンターオフィスまで届けるようにな」
部下が下がると、俯いていたヘラルドが不意に顔を上げる。
「あんたら、化け物退治にハンターを使うのか。俺は……どうすりゃ良い?」
「何も。何もなさらずにいて結構です。
仕事は失敗しましたが、代金はご同僚のお見舞いとして約束通りお渡ししましょう」
「そりゃ、ありがたいが……あの野郎はジェラルドの仇だ。俺も――」
「お止しなさい。この事態は貴方の手には余る。ハンターに任せれば良い」
「れ、連中が仇を獲ってくれるのか?」
「あるいはね。ご同僚の遺体が回収出来れば、貴方にお渡しするよう手筈しますよ――
それではさようなら。くれぐれも他言は無用で」
ヘラルドは暇を出されてからもぐずぐずと居残っていたが、
執事長が彼に構わずハンターオフィスへの依頼状を書き始めたのを見ると、ようやく部屋を出ていった。
解説
今回の依頼の目的は、生前の恋人・エドガーに盗難された少女アナベルの遺体を取り戻すことです。
エドガーは郊外のボロ屋敷に閉じ籠り、魔法生物として復活させたアナベルの遺体と同居しています。
依頼主は報酬を割り増しする代わり、『遺体を出来るだけ傷つけずに奪還すること』と、
『近隣住民を騒がせぬよう、荒事になったとしても余り人目に付かぬよう済ませること』を要求しています。
依頼達成の障害と成り得るのはエドガーと、彼が使役する合体スケルトン。
エドガーは魔術師(マギステル)のスキルを複数所持し、
アナベルの遺体を取り戻そうとする人間に対して激しく抵抗します。
合体スケルトンは5~6人の人骨を材料とした魔法生物であり、
数本の錆びた剣や槍、盾で武装しつつ、エドガーの命令に従って敵を攻撃します。
アナベルも概ねエドガーの命令に従って動きますが、動作は緩慢で腕力も乏しく、戦闘能力は持っていません。
また、どちらの魔法生物についても、エドガーが死亡する、あるいは、
彼の魔術の効果範囲(エドガーから約1キロ以内)を離れた時点で普通の死体に戻ります。
依頼の最優先事項はアナベルの遺体の奪還ですが、抵抗に遭った場合はエドガーを殺傷することが許可されます。
エドガーが死亡した場合、その遺体の処理は依頼主のほうで引き受けるそうです。
エドガーを生存状態で捕えた場合は、その身柄を依頼主に引き渡すことも求められています。
エドガーは郊外のボロ屋敷に閉じ籠り、魔法生物として復活させたアナベルの遺体と同居しています。
依頼主は報酬を割り増しする代わり、『遺体を出来るだけ傷つけずに奪還すること』と、
『近隣住民を騒がせぬよう、荒事になったとしても余り人目に付かぬよう済ませること』を要求しています。
依頼達成の障害と成り得るのはエドガーと、彼が使役する合体スケルトン。
エドガーは魔術師(マギステル)のスキルを複数所持し、
アナベルの遺体を取り戻そうとする人間に対して激しく抵抗します。
合体スケルトンは5~6人の人骨を材料とした魔法生物であり、
数本の錆びた剣や槍、盾で武装しつつ、エドガーの命令に従って敵を攻撃します。
アナベルも概ねエドガーの命令に従って動きますが、動作は緩慢で腕力も乏しく、戦闘能力は持っていません。
また、どちらの魔法生物についても、エドガーが死亡する、あるいは、
彼の魔術の効果範囲(エドガーから約1キロ以内)を離れた時点で普通の死体に戻ります。
依頼の最優先事項はアナベルの遺体の奪還ですが、抵抗に遭った場合はエドガーを殺傷することが許可されます。
エドガーが死亡した場合、その遺体の処理は依頼主のほうで引き受けるそうです。
エドガーを生存状態で捕えた場合は、その身柄を依頼主に引き渡すことも求められています。
マスターより
死んだ恋人を、禁断の魔法によって蘇らせる。
ファンタジーやオカルトの定番ネタですが、今回の敵であるエドガー君は厄介な用心棒を抱えています。
エドガー自身も魔法を使いますし、無理に穏便に済ませようとすると、
OPの便利屋のような恐ろしい目に遭うかも。
そも、「死人を蘇らせる」お話の大半はアンハッピーエンドと相場が決まっています。
あるいは力ずくでも恋人を諦めさせてやるのがエドガー君の為かも知れません。
ファンタジーやオカルトの定番ネタですが、今回の敵であるエドガー君は厄介な用心棒を抱えています。
エドガー自身も魔法を使いますし、無理に穏便に済ませようとすると、
OPの便利屋のような恐ろしい目に遭うかも。
そも、「死人を蘇らせる」お話の大半はアンハッピーエンドと相場が決まっています。
あるいは力ずくでも恋人を諦めさせてやるのがエドガー君の為かも知れません。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2014/10/07 23:58
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
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作戦相談 沢城 葵(ka3114) 人間(リアルブルー)|28才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2014/10/03 07:08:11 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/09/28 19:19:51 |