●店主の憂鬱

　ポルトワールは、王国と帝国への海の玄関口として機能する港湾都市である。
　同盟最大・最強といわれる海軍が駐留する一方、観光業や漁業も盛んで、ヴァリオスの洗練はみられないにせよ、活気では勝るとも劣らない。
　一方で中央を外れた辺りには、あまり治安のよくないダウンタウンが広がっているという、まさに表と裏の顔を持つ都市だ。

　そのポルトワールも冬本番。
　酷寒という気候ではないが、それなりに冷たい風が吹き付け、暖かそうな窓辺の灯が恋しく思える。
　そんなある夜、地元民が好んで集まる通りにある店を、メリンダ・ドナーティ（kz0041）が訪れた。
「あ～らメリンダ！　ご無沙汰じゃなあい」
　野太い声が明るく呼びかけた。
　みれば、派手なエプロンをつけた三十前と思しき男だ。
　ウェーブのかかった金髪をみつあみにして背中に垂らし、真っ赤なリボンを結んでいる。
「ハァイ、ジャン。お久しぶり」
　メリンダはカウンターの席に腰を落ち着ける。
「なんだか顔がお疲れよ？　大丈夫？」
「あははは………………はぁ」
　メリンダはカウンターに突っ伏した。

　長らく派遣されていた連合軍の任務には一区切りがついたが、戻ってみれば同盟軍の仕事が山積み。
　今日もポルトワールの駐留軍司令部へ呼び出され、長い長い会議からようやく解放されたところなのだった。

「とりあえず……食前酒と、あと、魚介の煮込みが食べたいわ」
　メリンダのオーダーに、ジャンと呼ばれた男は顔を曇らせる。
「うーん、今日は魚介はイマイチなんだけど……」
「え？」
　メリンダが意外そうな声を出す。
　ポルトワールの名物といえば新鮮な魚介類だ。それがイマイチとはどういうことなのか。
「実はね、ここ数日、不漁なのよ。顔見知りの漁師さんが言うには、バケモノが出て困ってるんですって」
「……化け物？？？」
　ジャンはふう、とため息をつく。
「そうなのよ。魚も貝も食い荒らす暴れん坊。海軍さんはこういうときは動けないのよねえ」
「うー……ん……」
　メリンダが言葉を濁した。
　軍艦が襲われたとか、商船が航行できないとか、相当な被害がなければ難しいだろう。
　ジャンは全て分かっているというように頷く。
「ま、色々あるわよね。だからアタシが一肌脱いじゃおうと思うんだけど」
「えっ」
　思わず身を引くメリンダ。
「やあねえ、何を想像したのよお」
　うふふと流し目で笑う男。何ってナニ。
「ほら、お店も食材がないと困っちゃうしね！　あ、でもひとりじゃ難しいから、あなた、うまく人を集めてくれないかしら？」
　バチンとウィンクし、ジャンが付け加える。
「美味しいお料理、サービスしちゃうわよ？」
「えー……」
　またこの展開か！
　もうすでに、嫌な予感しかしないメリンダであった……。

●この依頼について。
　大事なことですがコメディです。
　蛸は歪虚ではありませんが、だいたいOP画像の感じです。

●依頼内容
　メリンダ行きつけのお店の店主、ジャンが依頼主になります。
　本人曰く「本業は酒場のマスター」ですが、ハンターでもあります。
　ジャンが用意した船に乗って、一緒に大蛸を退治してください。

　ただしジャンがめんどくさい条件を付けました。
「せっかくだからお料理してみたいわ！」
　……というわけで、生け捕りでお願いします。
　要するに、殺さないことが依頼内容に入っています。蛸は歪虚ではありませんので、ハンターが本気で攻撃すれば死にます。
「ちゃんと処理する前に死んじゃうと、臭くなるのよ！」
　……だそうです。

　船は全員が乗れます。希望があればもう一艘だけは借りられますが、漕ぎ手はいません。借りる場合はハンターで何とかしてください。
　ジャンの船に全員が乗る場合は、ジャンに任せて構いませんし、漕ぎたい人が漕いでもOKです。
　船の数で行動の有利不利はなく、全員が普通に動けます。ただし船が分かれた場合は、互いの連絡には工夫が必要かもしれません。

●NPC
メリンダ：同盟軍広報官。とはいえ一般人なので、陸でお留守番です。質問などがあればお答えします。

ジャン：ポルトワールで酒場を切り盛りしている派手な格好のごついお兄さん。ハンター。綺麗なものや可愛い物が好きなだけで「れっきとした男」だそうです。でも愛は海より深く広いらしいです。

●他
　繰り返しますがコメディです。大蛸にどう挑むか、魅せたもの勝ちのシナリオです。
　原則として負傷はありませんが、愉快な理由で重体になりたい方はその旨プレイングでお知らせください。面白ければ（そしてえらい人に止められなければ）採用させていただくかもしれません。
　また、後で美味しくいただくプレイングも、ご希望があればOKです。なるべく相談卓でのすり合わせをお願いします。

なるべく戦いたくないでござる。樹シロカです。

その昔、友人たちと海へ遊びに行ったところ、銛持参で参加した海育ちの男子が、捕まえた蛸をやおら岩場に叩きつけてびっくりしたことがあります。
逃げないように、鮮度が落ちないようにらしいです。ご参考までに。

尚、ハンターが用意することが難しいアイテムで必要なものは、質問卓で確認していただければ可不可を先にお答えします。
さすがに「大蛸がそのまま入る網」なんかは無理ですが。

では真冬の海で蛸とたわむれる猛者のご参加、心よりお待ちしております！