ゲスト
(ka0000)
大きな少女と大きな狼
マスター:春野紅葉

このシナリオは5日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 4~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2017/01/18 07:30
- リプレイ完成予定
- 2017/02/01 07:30
オープニング
●それは、少女には重いかもしれないけれど
「結局……私は、何も変えることが出来なかったってことですね」
ユリアは、何度目になるか分からない呟きを漏らした。ただでさえ身長と顔立ちもあって年齢よりも大人びて見えるというのに、愁いを帯びてやや俯いたようになった表情が、より一層その印象を強める。
目を閉じれば数日前のことを思い出す。雑魔の増産を行なう同郷の人々を捕えて、ハンターの方々と共に帰還したユリアがハンターオフィスに彼らを連れていくと、そこで待っていたのは10人ほどの帝国軍人だった。
その中で一番の上官に当たるという男性、トビアスはユリアにこう告げたのだ。
「ご苦労様でした。ハンターの皆さま。おかげでヴァルツァライヒの作戦を最悪な状況になる前に防ぐことが出来ました」
そう言った後、すぐにユリアたちが連れてきた3人もつれて、彼はどこか別の町へと移動していった。
そして今日、ユリアは再びこの町に来たトビアスから町の一角、祭りで使った跡地をそのままカフェに変えた店に呼び出されていた。
「もう、あの時にいた人は5人にも満たないんだ……」
待ちながら思い出されるのは、故郷から一緒に来た10人にも満たぬ大切な人達のこと。指折り数えればユリアを抜けば片手で足りてしまえる人数は、ユリアに何のためにここまで旅をしてきたのかと考えさせた。
「もう着てらっしゃいましたか、ユリアさん」
声に反応して立ち上がる。茶髪がかった20代後半の男性と、その隣に立つそれよりもやや若い女性。
「はっ、はい!トビアスさん」
「あっ、別に立ち上がらなくていいですよ……どうぞ、お座りください」
自らは椅子に座りながら、人懐っこく見える笑みを浮かべてトビアスが言う。その眼が笑っていないことに、ユリアは気付いていた。
「ユリアさん。うちの企画に賛同してこの町に来てくれて本当にありがとう。今回の一連の流れは君にはかわいそうな事をしたとこちらも思っているよ」
店員にコーヒーを頼みながら続けたトビアスは斜め後ろに立つ女性に何やら言葉をかける。女性がカバンから取り出した紙を受け取ると、それをユリアに向けて差し出してきた。「前の秘書はどうにも君達の話をどこかで聞きつけてから、今回の作戦を思いついて色々と策動したらしくてね? 分かりやすく言うと、君達は今回の事件の元凶だった」
数枚の紙をユリアに見せながら彼は笑みを絶やすことなく語り続ける。ユリアは視線を紙に落として読み進めながら、彼の言わんとすることを何となく理解しつつあった。
「まぁ、でも、今回の事件で君に責任を負わせるつもりはないんだ。君もどちらかというと被害者だからね。でも、今なお森にいるあの歪虚は潰さないといけない」
店員が持ってきたコーヒーに舌鼓をうって一呼吸置いたトビアスは、不意に笑みをおさめた。
「この町に関係する帝国の諸部署は総合してこう判断した。できることなら内々に済ませたい。分かるよね、意味」
「……私があの歪虚を討てと言う事ですね」
「まぁ、そういうことだよ。もちろん、君だけじゃなくてハンターの方々に協力を仰ぐべきだろうけど。アレを討つ仕事は君に委ねたい。君が討て。君がまいた種は、君が狩るべきだ。君は歪虚崇拝者ではないなら――出来るよね?」
「……はい」
歪虚崇拝者、その言葉を聞いた時、ユリアの胸に一瞬、ツェザールの事が思い出される。俯きそうになる顔を、崩れそうになる表情を、必死に整えて、声を出す。
「それで、あの大型歪虚を討伐したら、君達の歪虚崇拝の可能性は一切なしと見て僕たちは君達に対する一切の監視なんかをしないつもりでいる。君達は自由だ」
「自由……ですか?」
「そう、何をしてもいい。この町で暮らすのに限っては、だけどね。町長は代わる。その際には新しい町長に君のことを心配する必要はないと言っておくよ」
「ありがとう、ございます」
「乗ってくれるかい?」
小さく、ユリアは頷いた。トビアスが軽い調子で笑う声がして、立ち上がる音がした。
「ハンターオフィスにはこちらから討伐依頼を出しておくよ」
立ち去って行くトビアスらを見ながら、ユリアはその場で頭を下げ続けた。
●覚悟は決められたから
ユリアは家に帰ると、自室の机の上にずっと持ってきていた片手剣を置き、目を閉じて椅子に座り、剣に語り掛けていた。
「叔父さん……私、頑張ってみるね。怖いけど、ハンターの皆さんもいてくれるだろうから、きっと大丈夫だから」
思えば、何度死にかけただろう。その度に多くのハンターの人達に助けられた。何かが変わったとか、そう言ったことは特にない。けれど、何度も助けられた命で、為すべき責任があるならしないといけない。それは何となく思う。もうただの子供ではいられない。
「今度は、本当に死んじゃうかも……だけど」
思い出すのは荒野であったあの巨大な狼の雄叫び。あれを間近に感じながら倒さないといけない。想像するだけでゾッとした。
「力を貸してください。叔父さん」
そっと剣身を撫でる。手入れはしていても、ボロボロになっているように見える剣は、大切な形見だ。冷たい剣身を撫でていると、叔父に笑い掛けられたことを思い出せる。献身と対照的な温かい手。それを思い出すと、行ってこいと背中を押されるような気がした。
「もう、行かなきゃだよね」
剣を鞘に収めて、ひとつ深呼吸する。胸の奥がキュッとするような感覚。怖いというのとは少し違う。緊張しているような感覚に戸惑いながらも立ち上がった。
部屋を出ると、心配そうにこちらを見る母がいた。
「ユリアちゃん」
震える声でユリアの名を呼ぶ母をぎょっと抱きしめる。こんなに小さいなと、思った。まだ村を出てから数年も経っていない。どれだけこの人に無理をさせてしまったのだろうと思うと、胸がいっぱいになる。
「お母さん。行ってきます。きっと帰ってきます」
ユリアは出来る限り声を柔らかくして、詰まりそうになるのを必死にこらえながら、そう言い切った。
●戦いの幕を開こう
「今までの情報から、あの大型歪虚の咆哮にはある程度の影響力を持って小型の歪虚を従える能力があると思います。とはいえ、雑魔化した狼なんかの増殖は未然に防いだはずですから、咆哮に他の効果でもない限りは、ただの声です」
ユリアはハンターオフィスで集まったハンター達に解説をしていた。
「脚力は非常に強いですが、ハンターの方の射撃で恐らく、後ろ脚が傷ついているはずです。癒えてる可能性もなくはないですけど……多分、弱点になるでしょう。森であることも考慮すれば、逃げられる心配はあまりないと思います」
地図を広げながら、大型歪虚の代わりに用意した普通の狼の画像を使って、知っている限りの情報を提供する。
「私の知る限りの情報はここまでです。よろしくお願いします」
全ての解説を終えて、ユリアは一度、息を吐いた。
「結局……私は、何も変えることが出来なかったってことですね」
ユリアは、何度目になるか分からない呟きを漏らした。ただでさえ身長と顔立ちもあって年齢よりも大人びて見えるというのに、愁いを帯びてやや俯いたようになった表情が、より一層その印象を強める。
目を閉じれば数日前のことを思い出す。雑魔の増産を行なう同郷の人々を捕えて、ハンターの方々と共に帰還したユリアがハンターオフィスに彼らを連れていくと、そこで待っていたのは10人ほどの帝国軍人だった。
その中で一番の上官に当たるという男性、トビアスはユリアにこう告げたのだ。
「ご苦労様でした。ハンターの皆さま。おかげでヴァルツァライヒの作戦を最悪な状況になる前に防ぐことが出来ました」
そう言った後、すぐにユリアたちが連れてきた3人もつれて、彼はどこか別の町へと移動していった。
そして今日、ユリアは再びこの町に来たトビアスから町の一角、祭りで使った跡地をそのままカフェに変えた店に呼び出されていた。
「もう、あの時にいた人は5人にも満たないんだ……」
待ちながら思い出されるのは、故郷から一緒に来た10人にも満たぬ大切な人達のこと。指折り数えればユリアを抜けば片手で足りてしまえる人数は、ユリアに何のためにここまで旅をしてきたのかと考えさせた。
「もう着てらっしゃいましたか、ユリアさん」
声に反応して立ち上がる。茶髪がかった20代後半の男性と、その隣に立つそれよりもやや若い女性。
「はっ、はい!トビアスさん」
「あっ、別に立ち上がらなくていいですよ……どうぞ、お座りください」
自らは椅子に座りながら、人懐っこく見える笑みを浮かべてトビアスが言う。その眼が笑っていないことに、ユリアは気付いていた。
「ユリアさん。うちの企画に賛同してこの町に来てくれて本当にありがとう。今回の一連の流れは君にはかわいそうな事をしたとこちらも思っているよ」
店員にコーヒーを頼みながら続けたトビアスは斜め後ろに立つ女性に何やら言葉をかける。女性がカバンから取り出した紙を受け取ると、それをユリアに向けて差し出してきた。「前の秘書はどうにも君達の話をどこかで聞きつけてから、今回の作戦を思いついて色々と策動したらしくてね? 分かりやすく言うと、君達は今回の事件の元凶だった」
数枚の紙をユリアに見せながら彼は笑みを絶やすことなく語り続ける。ユリアは視線を紙に落として読み進めながら、彼の言わんとすることを何となく理解しつつあった。
「まぁ、でも、今回の事件で君に責任を負わせるつもりはないんだ。君もどちらかというと被害者だからね。でも、今なお森にいるあの歪虚は潰さないといけない」
店員が持ってきたコーヒーに舌鼓をうって一呼吸置いたトビアスは、不意に笑みをおさめた。
「この町に関係する帝国の諸部署は総合してこう判断した。できることなら内々に済ませたい。分かるよね、意味」
「……私があの歪虚を討てと言う事ですね」
「まぁ、そういうことだよ。もちろん、君だけじゃなくてハンターの方々に協力を仰ぐべきだろうけど。アレを討つ仕事は君に委ねたい。君が討て。君がまいた種は、君が狩るべきだ。君は歪虚崇拝者ではないなら――出来るよね?」
「……はい」
歪虚崇拝者、その言葉を聞いた時、ユリアの胸に一瞬、ツェザールの事が思い出される。俯きそうになる顔を、崩れそうになる表情を、必死に整えて、声を出す。
「それで、あの大型歪虚を討伐したら、君達の歪虚崇拝の可能性は一切なしと見て僕たちは君達に対する一切の監視なんかをしないつもりでいる。君達は自由だ」
「自由……ですか?」
「そう、何をしてもいい。この町で暮らすのに限っては、だけどね。町長は代わる。その際には新しい町長に君のことを心配する必要はないと言っておくよ」
「ありがとう、ございます」
「乗ってくれるかい?」
小さく、ユリアは頷いた。トビアスが軽い調子で笑う声がして、立ち上がる音がした。
「ハンターオフィスにはこちらから討伐依頼を出しておくよ」
立ち去って行くトビアスらを見ながら、ユリアはその場で頭を下げ続けた。
●覚悟は決められたから
ユリアは家に帰ると、自室の机の上にずっと持ってきていた片手剣を置き、目を閉じて椅子に座り、剣に語り掛けていた。
「叔父さん……私、頑張ってみるね。怖いけど、ハンターの皆さんもいてくれるだろうから、きっと大丈夫だから」
思えば、何度死にかけただろう。その度に多くのハンターの人達に助けられた。何かが変わったとか、そう言ったことは特にない。けれど、何度も助けられた命で、為すべき責任があるならしないといけない。それは何となく思う。もうただの子供ではいられない。
「今度は、本当に死んじゃうかも……だけど」
思い出すのは荒野であったあの巨大な狼の雄叫び。あれを間近に感じながら倒さないといけない。想像するだけでゾッとした。
「力を貸してください。叔父さん」
そっと剣身を撫でる。手入れはしていても、ボロボロになっているように見える剣は、大切な形見だ。冷たい剣身を撫でていると、叔父に笑い掛けられたことを思い出せる。献身と対照的な温かい手。それを思い出すと、行ってこいと背中を押されるような気がした。
「もう、行かなきゃだよね」
剣を鞘に収めて、ひとつ深呼吸する。胸の奥がキュッとするような感覚。怖いというのとは少し違う。緊張しているような感覚に戸惑いながらも立ち上がった。
部屋を出ると、心配そうにこちらを見る母がいた。
「ユリアちゃん」
震える声でユリアの名を呼ぶ母をぎょっと抱きしめる。こんなに小さいなと、思った。まだ村を出てから数年も経っていない。どれだけこの人に無理をさせてしまったのだろうと思うと、胸がいっぱいになる。
「お母さん。行ってきます。きっと帰ってきます」
ユリアは出来る限り声を柔らかくして、詰まりそうになるのを必死にこらえながら、そう言い切った。
●戦いの幕を開こう
「今までの情報から、あの大型歪虚の咆哮にはある程度の影響力を持って小型の歪虚を従える能力があると思います。とはいえ、雑魔化した狼なんかの増殖は未然に防いだはずですから、咆哮に他の効果でもない限りは、ただの声です」
ユリアはハンターオフィスで集まったハンター達に解説をしていた。
「脚力は非常に強いですが、ハンターの方の射撃で恐らく、後ろ脚が傷ついているはずです。癒えてる可能性もなくはないですけど……多分、弱点になるでしょう。森であることも考慮すれば、逃げられる心配はあまりないと思います」
地図を広げながら、大型歪虚の代わりに用意した普通の狼の画像を使って、知っている限りの情報を提供する。
「私の知る限りの情報はここまでです。よろしくお願いします」
全ての解説を終えて、ユリアは一度、息を吐いた。
解説
よろしくお願いします。
今回は純戦戦闘依頼です。
みなさんの活躍により、取り巻きの雑魔などはいません。
たった一匹、サイズでいうところの3サイズぐらいの巨大な狼型歪虚を倒していただきます。
以下はPL情報です
大型狼歪虚の攻撃として、突進と噛みつきに加え、咆哮があります。
この咆哮には『負のマテリアルを声に伝えて吠えることで、自分の顔の正面横3スクエアに衝撃を与え動きをたじろがせる』効果があります。
判定に失敗した場合、隙として生じてしまうので装備を整えたりプレイングでの工夫が必要になります。
この咆哮は戦闘中に最大2回、使ってきます。
なお、この咆哮はこの敵の特殊ルールです。
他のマスター様とは関係がなく、もし同じような効果が出ても同じ対処法が通じるかは不明となりますのでご了承ください。
今回は純戦戦闘依頼です。
みなさんの活躍により、取り巻きの雑魔などはいません。
たった一匹、サイズでいうところの3サイズぐらいの巨大な狼型歪虚を倒していただきます。
以下はPL情報です
大型狼歪虚の攻撃として、突進と噛みつきに加え、咆哮があります。
この咆哮には『負のマテリアルを声に伝えて吠えることで、自分の顔の正面横3スクエアに衝撃を与え動きをたじろがせる』効果があります。
判定に失敗した場合、隙として生じてしまうので装備を整えたりプレイングでの工夫が必要になります。
この咆哮は戦闘中に最大2回、使ってきます。
なお、この咆哮はこの敵の特殊ルールです。
他のマスター様とは関係がなく、もし同じような効果が出ても同じ対処法が通じるかは不明となりますのでご了承ください。
マスターより
初めまして、こんにちは。
春野紅葉にございます。
ユリアちゃんの物語としては一旦、最終章となるかもしれないお話となります。
皆様のご活躍を命一杯書かせていただきますので、よろしくお願いします。
春野紅葉にございます。
ユリアちゃんの物語としては一旦、最終章となるかもしれないお話となります。
皆様のご活躍を命一杯書かせていただきますので、よろしくお願いします。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2017/01/31 23:10
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/01/12 20:18:15 |
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作戦相談卓 玉兎 小夜(ka6009) 人間(リアルブルー)|17才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2017/01/17 13:36:33 |