ゲスト
(ka0000)
【碧剣】The watershed
マスター:ムジカ・トラス

- シナリオ形態
- ショート
関連ユニオン
アム・シェリタ―揺籃館―- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,500
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2017/01/24 19:00
- リプレイ完成予定
- 2017/02/02 19:00
オープニング
●
「……参った、なぁ」
夜の帳が落ちて、どれだけの時間が経っただろうか。
凍えるほどの冷気が、自室の中に横たわっている。シュリ・エルキンズ(kz0195)は毛布をたぐり寄せながら、ロウソクの灯りの中――仄明るく光を返す、愛剣を眺めている。
碧剣。銘も知らぬこの剣を、気鋭の鍛冶師は“魔剣”と呼んだ。ただし、“未完の魔剣”だと。
シュリにとっては、かつて騎士だった父が振るった、形見の剣だ。思い入れは、深い。
シュリが騎士を目指したのは、父のように誰かを護るためだった。務めのために晩年以外はほとんど家には居なかった。数少ない機会のなかで、遠い戦場に向かう父に、なんのために闘うのかを聞いたことがあった。
お前たちのためだよ、と、シュリの頭に手を置いた父は言った。
それから。 背が伸びたな、シュリ、と、心から嬉しそうに、笑ったのだった。
――父さんが居ないあいだ、リリィのことを護ってくれよ。
父は決まってそう言って、家を出ていった。そのことが、シュリの原点だった。
学生生活だけをしている間は、とにかく吸収することに必死だった。
戦場に立つようになってから。この剣のことで、助けてもらうようになってから、同じ問いにぶつかることが、増えてきた。
なんのために剣を振るうのかを、問われ続けた。
その答え、今も、昔も、変わらないままだ。
護りたい。それは、妹に限らず、自分自身の手が届く限りの誰か。だからこそ、父と同じ、騎士を目指した。
……けれど。どこかで、想いが、軋んでいることが解る。
声が、聞こえるのだ。頭の中で、響き続けているのだ。
『聞こえているんだろう、シュリ・エルキンズ!』
断末魔が、焼き付いて、離れない。
護りたい、という願いは、護ることができなかったとき、呪いに変わった。
護るために必要なもの。その茫漠さに、目が回る。
それらを端的に結べば――『力が、欲しい』と、なる。
一つ一つ、こなしていくしか無いことは、分かっている。だからこそ、もどかしいのだ。
「…………」
強さ。そんな、不確かなものに、振り回されていることを、この上なく自覚しながら――手を、握り締める。手に馴染んだ碧剣の硬い手応えを感じながら、胸中で、言葉にした。
――僕は、彼に……ロシュ・フェイランドに、勝てるだろうか。
●
先日の『半藏』討伐により、『歪虚対策会議』は多額の報奨金を得た。
「……えええ……」
にしても、だ。
眼前で、一演習場を占領して訓練に励む学生たちを見て、思わず感嘆の声が、零れた。
歪虚対策会議にあてがわれた土地は、一課外活動としては慮外の広さを誇る。装備品の類を置く倉庫は勿論のこと、刻令ゴーレム『Gnome』に、専用の厩まで揃えている。小市民のシュリには想像もできなかった。
覚醒者はそれぞれの得物を持ち、非覚醒者は銃を持つ。重装甲に調整したGnomeを盾にしつつ、拠点を構築し、陣をなして銃撃を放つ。
シュリが入り込む隙間がないくらい、徹底した後方火力に主軸を置いた戦術訓練だった。
「来たか、シュリ・エルキンズ」
「……ロシュ」
馬上から訓練の様子を眺めていたロシュ・フェイランドが満足げに頬をほころばせながら、近づいてきた。シュリは平民の出だ。対して、ロシュは尊き生まれであり――つまるところ、身分違いは甚だしいのだが、ロシュはなぜか、シュリから敬われるのを厭う傾向にある。
だからこそ、シュリは――周囲の学生たちに疎まれるのは承知の上で――そう呼んでいるのだが、流されるままにこういう付き合いをしている。
最近は極力ロシュを避けるように自主練に励んでいたので、実際のところ、会話をするのは久しぶりの事だった。
その理由は――。
「ところで、シュリ」
「は、はい?」
「金の使い道は決めたのか?」
「……ぅ」
これだ。
半藏討伐の報奨金は、ロシュを通じて、対策会議の面々に――特にあの日戦場に立った面々にも分配された。シュリも、そのオコボレに預かった。シュリにとっては目がくらむほどの大金だったこと以外は、有難いことこの上ない、のだが――。
それからというもの、用途を幾度となく聞いてくるロシュの意図が読めなくて、なんとなく、逃げ回っているのであった。
「――いえ、まだ、です」
「ふん……」
そう言うと、決まって不機嫌そうに鼻を鳴らすロシュが、不可解で、怖かったから。
「訓練は順調だな。十分な装備に、十分な教練。戦術――」
ロシュは不機嫌そうなまま、横目でこちらを見下ろした。
「その点、君は暇そうだな、シュリ・エルキンズ」
「…………ええ、まあ」
ぽり、と頬を掻いた。
「あの訓練に、僕の居場所は無いもので……」
強いて言えば、弾除けか、あるいは的か。どちらにしたって、幸せなものではない。
「……」
「……」
ふいに、沈黙が落ち込んできた。息を詰めるシュリに、ロシュは、こう言った。
「なら、一つ、仕合うか」
「…………へ?」
それは、至極、唐突な。
「一週間後に、此処で。条件は追って報せる」
宣戦布告、だった。
「……参った、なぁ」
夜の帳が落ちて、どれだけの時間が経っただろうか。
凍えるほどの冷気が、自室の中に横たわっている。シュリ・エルキンズ(kz0195)は毛布をたぐり寄せながら、ロウソクの灯りの中――仄明るく光を返す、愛剣を眺めている。
碧剣。銘も知らぬこの剣を、気鋭の鍛冶師は“魔剣”と呼んだ。ただし、“未完の魔剣”だと。
シュリにとっては、かつて騎士だった父が振るった、形見の剣だ。思い入れは、深い。
シュリが騎士を目指したのは、父のように誰かを護るためだった。務めのために晩年以外はほとんど家には居なかった。数少ない機会のなかで、遠い戦場に向かう父に、なんのために闘うのかを聞いたことがあった。
お前たちのためだよ、と、シュリの頭に手を置いた父は言った。
それから。 背が伸びたな、シュリ、と、心から嬉しそうに、笑ったのだった。
――父さんが居ないあいだ、リリィのことを護ってくれよ。
父は決まってそう言って、家を出ていった。そのことが、シュリの原点だった。
学生生活だけをしている間は、とにかく吸収することに必死だった。
戦場に立つようになってから。この剣のことで、助けてもらうようになってから、同じ問いにぶつかることが、増えてきた。
なんのために剣を振るうのかを、問われ続けた。
その答え、今も、昔も、変わらないままだ。
護りたい。それは、妹に限らず、自分自身の手が届く限りの誰か。だからこそ、父と同じ、騎士を目指した。
……けれど。どこかで、想いが、軋んでいることが解る。
声が、聞こえるのだ。頭の中で、響き続けているのだ。
『聞こえているんだろう、シュリ・エルキンズ!』
断末魔が、焼き付いて、離れない。
護りたい、という願いは、護ることができなかったとき、呪いに変わった。
護るために必要なもの。その茫漠さに、目が回る。
それらを端的に結べば――『力が、欲しい』と、なる。
一つ一つ、こなしていくしか無いことは、分かっている。だからこそ、もどかしいのだ。
「…………」
強さ。そんな、不確かなものに、振り回されていることを、この上なく自覚しながら――手を、握り締める。手に馴染んだ碧剣の硬い手応えを感じながら、胸中で、言葉にした。
――僕は、彼に……ロシュ・フェイランドに、勝てるだろうか。
●
先日の『半藏』討伐により、『歪虚対策会議』は多額の報奨金を得た。
「……えええ……」
にしても、だ。
眼前で、一演習場を占領して訓練に励む学生たちを見て、思わず感嘆の声が、零れた。
歪虚対策会議にあてがわれた土地は、一課外活動としては慮外の広さを誇る。装備品の類を置く倉庫は勿論のこと、刻令ゴーレム『Gnome』に、専用の厩まで揃えている。小市民のシュリには想像もできなかった。
覚醒者はそれぞれの得物を持ち、非覚醒者は銃を持つ。重装甲に調整したGnomeを盾にしつつ、拠点を構築し、陣をなして銃撃を放つ。
シュリが入り込む隙間がないくらい、徹底した後方火力に主軸を置いた戦術訓練だった。
「来たか、シュリ・エルキンズ」
「……ロシュ」
馬上から訓練の様子を眺めていたロシュ・フェイランドが満足げに頬をほころばせながら、近づいてきた。シュリは平民の出だ。対して、ロシュは尊き生まれであり――つまるところ、身分違いは甚だしいのだが、ロシュはなぜか、シュリから敬われるのを厭う傾向にある。
だからこそ、シュリは――周囲の学生たちに疎まれるのは承知の上で――そう呼んでいるのだが、流されるままにこういう付き合いをしている。
最近は極力ロシュを避けるように自主練に励んでいたので、実際のところ、会話をするのは久しぶりの事だった。
その理由は――。
「ところで、シュリ」
「は、はい?」
「金の使い道は決めたのか?」
「……ぅ」
これだ。
半藏討伐の報奨金は、ロシュを通じて、対策会議の面々に――特にあの日戦場に立った面々にも分配された。シュリも、そのオコボレに預かった。シュリにとっては目がくらむほどの大金だったこと以外は、有難いことこの上ない、のだが――。
それからというもの、用途を幾度となく聞いてくるロシュの意図が読めなくて、なんとなく、逃げ回っているのであった。
「――いえ、まだ、です」
「ふん……」
そう言うと、決まって不機嫌そうに鼻を鳴らすロシュが、不可解で、怖かったから。
「訓練は順調だな。十分な装備に、十分な教練。戦術――」
ロシュは不機嫌そうなまま、横目でこちらを見下ろした。
「その点、君は暇そうだな、シュリ・エルキンズ」
「…………ええ、まあ」
ぽり、と頬を掻いた。
「あの訓練に、僕の居場所は無いもので……」
強いて言えば、弾除けか、あるいは的か。どちらにしたって、幸せなものではない。
「……」
「……」
ふいに、沈黙が落ち込んできた。息を詰めるシュリに、ロシュは、こう言った。
「なら、一つ、仕合うか」
「…………へ?」
それは、至極、唐突な。
「一週間後に、此処で。条件は追って報せる」
宣戦布告、だった。
解説
●目的
シュリ・エルキンズの望む所を叶えよ
●解説
グラズヘイム王立学校騎士科の同級生、ロシュ・フェイランドに仕合いを申し込まれたシュリ・エルキンズからの依頼です。
▼内容
・ロシュから仕合を申し込まれた。
・仕合は一対一。戦場は日中、遮蔽のない平らな演習場。
・互いに恥じぬ“尋常なる勝負”を行うこと。
・勝敗条件はどちらが先に降参するか。
・これを踏まえて、訓練をつけてくれるハンターを募集。
●補足
建前上、シュリは「ロシュに勝利するための依頼」として出していますが、本心ではロシュとの勝負にさほど執着はしていません。
シュリ自身は現在、葛藤を抱いています。
それを払拭するために、様々な人に触れて答えを見出すべく、依頼を出しています。
シュリは、自分が強くなるには、地道な努力を続けるしかないことは痛いくらいに分かっています。
分かっているがゆえの葛藤であることを、特にご留意ください。
なお、訓練自体は一対一の実戦でも良し、問答でも良いです。
戦場や状況にご希望があれば一言添えてくだされば、よきように扱います。
●NPCについて
■シュリ・エルキンズ
闘狩人。レベル29相当。碧剣+盾を用いる、守勢に強い高水準なバランス型。習得可能なスキルは全て習得&強化済み。
■ロシュ・フェイランド
闘狩人。レベル26相当。大剣+弓使い。金満な装備により高火力、高防御型で、操馬も得意。スキルについてはシュリと同様。
●リプレイについて
・基本的には各個人ごとの描写がなされるため、時系列的には別々のものとして扱われます。
(なにかしらの希望があれば、別です)
・シュリとの戦闘訓練の場合、ルールに基づいて判定を行います。
・シュリとロシュの仕合については、本リプレイでは殆ど扱いません。
マスターより
いつもお世話になっております、ムジカ・トラスです。
先日は唐突な光の加護(仮)が降って湧いた【碧剣】ですが、今回は至極まっとうな雰囲気のシナリオです。
シュリを叩き伏せるも良し、程々にしごくもよし、意味不明なトレーニングでいじめ抜くも良し、しっぽり語るもよし、なんでもござれですが、一つ一つ、丁寧に判定させて頂くつもりです。
EXシナリオで、少しお高いですが、ご縁がありましたら、よろしくお願いいたします。
シナリオのタイトルは、『分水嶺』を意味していたりしますが、その行末を楽しむのもWTRPGの醍醐味、です。キャラクターの気持ちのゆくままに、遊んで頂けたらと思います。
先日は唐突な光の加護(仮)が降って湧いた【碧剣】ですが、今回は至極まっとうな雰囲気のシナリオです。
シュリを叩き伏せるも良し、程々にしごくもよし、意味不明なトレーニングでいじめ抜くも良し、しっぽり語るもよし、なんでもござれですが、一つ一つ、丁寧に判定させて頂くつもりです。
EXシナリオで、少しお高いですが、ご縁がありましたら、よろしくお願いいたします。
シナリオのタイトルは、『分水嶺』を意味していたりしますが、その行末を楽しむのもWTRPGの醍醐味、です。キャラクターの気持ちのゆくままに、遊んで頂けたらと思います。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2017/02/01 07:57
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
お仕事の前に ジュード・エアハート(ka0410) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2017/01/23 00:49:35 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/01/21 09:30:06 |