ゲスト
(ka0000)
路地裏工房コンフォートとブローチ
マスター:佐倉眸

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2017/02/08 09:00
- リプレイ完成予定
- 2017/02/17 09:00
オープニング
●
冷たい水で顔を洗う、梳かした髪を天辺できつく括って、ぱんと頬を叩いて気合を入れる。
目を覚ました小さな弟が泣き出す前に負ぶって、背負い紐は確りと結んで。
「いつまでも泣いてちゃ、ご飯食べられないからね」
店主を亡くした店の前。住み込みの職人、モニカはドアに貼り付けた喪中を報せる紙を一息に剥がした。
古くからの客や、修理の依頼を持ち込む客がちらほらと、店主が残した蓄えも合わせれば、2人の糧にすぐに困ることは無い。
工房の再開を喜んだ商店街からの応援も、店主の生前から続いている。
古い指輪の石止めを直した礼にと一抱え程の干し肉を分けて貰ったこともあった。
柔らかくなるまで煮込んだスープは店主も気に入っていたが、干し肉はまだ半分も残っている。
今夜もスープを作ろう。そんなことを考えながら、モニカは工房の道具を磨く。
この工房を開いたのは店主の義理の父親だったという。
彼亡き後、店の片付けのために老いた体を押して住み込んでいたらしいが、モニカが依頼を受けている内に、すっかりその気も無くなったらしく、道具の管理や店の彼是を任されていた。
それは住み着いてしまったモニカへの諦念か、或いは技術を買った信頼か。
どっちだったろう。店主の複雑そうな表情を思い出しては微笑みながら、埃の入った目を押さえて眦を拭った。
●
からん、とドアに吊したベルが鳴る。
店のガラス戸を開けて所在なく佇むのは、白いコートを来た上品そうな妙齢の女性。
カウンターから顔を覗かせたモニカに安堵したように近付くと、天鵞絨のトレイに割れたブローチを乗せた。
直りませんかと女性は尋ねる。
ブローチは打ち抜きで量産したプレートにメッキを施し、質の良いとは言い難い石を置いた簡単な作りの物。
プレートの裏には地名と日付の刻印が有り、パズルのようになったそれを組み合わせれば星を頂くツリーの形になった。
祭の土産だろうか。
しかし、見れば石にも傷が付いて、割れ方も酷い。以前、馬車に踏まれたカメオを見たことがあるが、プレートだけならそれよりも酷い状態だろう。
難しいなあと、モニカは顔を隠すように女性から目を逸らし、溜息を吐く。
プレートを継ぐ同じ合金とメッキの調達は無理だろうし、傷も深い上磨けば割れてしまいそうな石はどう扱ったものだろう。
「無理とは言いませんけど、時間掛かりますよ。……何か意外ですね。こういうものって縁遠いでしょ?」
結った髪を飾っているのも、ストールに刺しているのも、カウンター越しにも美しさと煌めきの覗える宝石。
土産物の安価なブローチに拘りそうには見えないと早口に尋ねた。
「好きな人……から、頂いた物なの」
好きな人、とは、女性の家の庭師の息子だという。
同じ年に生まれ、幼い頃から親しくしており、学校へ通っていない彼に読み書きを教えたのは彼女だった。
互いに恋心を抱きながらも、立場の違いに阻まれて諦めていた。
そんなある冬に休暇を取った彼が買ってきたのがそのブローチだった。
――とても綺麗な祭だったから、お嬢様も連れ出して差し上げたかった――
戯けたようにそう言って、見上げる程のツリーや、温かなグリューワインの話しを広げた。
折角だからと、その日一日付けていたブローチだが、それ以降は宝石箱にしまっていたはずだった。
「でもね、壊されてしまった」
破片を1つ摘まんで彼女は目を伏せる。
宝石箱を曝いた婚約者に誰からの贈り物だと詰られ、そのまま口論になると、止めに入った彼の目の前で砕かれ、踏みつけられて。
投げ捨てられた石は、庭に転がっていたのを彼が拾ってきてくれた。
まだ持っていて下さったんですね。そう、嬉しそうに笑って。
「……彼、来週にフマーレに行ってしまうの。だから、その時これを着けて見送りに行きたいのよ」
●
フマーレまでの簡単な護衛依頼で集められたハンター達を、荷物を抱えた青年と、年頃の変わらない鋭い目つきの貴族らしい風貌の若い男、同じく貴族らしいが穏やかな顔つきで恰幅の良い壮年の男が待っていた。
馬車の支度を進める青年を睨む様に、若い男は肩を聳やかす。
こんな護衛までと、ハンター達を見回して鼻で笑う。
壮年の男がそれを窘め、青年は気にする素振りも無く支度を続けている。
最後の荷を積み終えて塵避けの帆布を被せると、青年がハンター達にお待たせしましたと声を掛けた。
出発。馬車が進み始めると、ヴァリオスを発つ街道へ続く道を古い商店街から一台の馬車が疾走してきた。馭者が1人、荷台は空で助手席にしがみつく様に妙齢の女性が乗っている。
馬車に揺られてふらつきながら下りた女性は、壮年の男に支えられながら青年の馬車に近付いた。
手綱を握る青年の手を掴むと、じっとその目を見詰めた。
「――フマーレ、とても素敵なところなんですって。どうか、気を付けて。いってらしゃい……」
細い指が解かれ、馬車が街道を進んでいく。
一度振り返った青年は、彼女の胸に燦めいたブローチを見付け、懐かしそうに微笑んだ。
冷たい水で顔を洗う、梳かした髪を天辺できつく括って、ぱんと頬を叩いて気合を入れる。
目を覚ました小さな弟が泣き出す前に負ぶって、背負い紐は確りと結んで。
「いつまでも泣いてちゃ、ご飯食べられないからね」
店主を亡くした店の前。住み込みの職人、モニカはドアに貼り付けた喪中を報せる紙を一息に剥がした。
古くからの客や、修理の依頼を持ち込む客がちらほらと、店主が残した蓄えも合わせれば、2人の糧にすぐに困ることは無い。
工房の再開を喜んだ商店街からの応援も、店主の生前から続いている。
古い指輪の石止めを直した礼にと一抱え程の干し肉を分けて貰ったこともあった。
柔らかくなるまで煮込んだスープは店主も気に入っていたが、干し肉はまだ半分も残っている。
今夜もスープを作ろう。そんなことを考えながら、モニカは工房の道具を磨く。
この工房を開いたのは店主の義理の父親だったという。
彼亡き後、店の片付けのために老いた体を押して住み込んでいたらしいが、モニカが依頼を受けている内に、すっかりその気も無くなったらしく、道具の管理や店の彼是を任されていた。
それは住み着いてしまったモニカへの諦念か、或いは技術を買った信頼か。
どっちだったろう。店主の複雑そうな表情を思い出しては微笑みながら、埃の入った目を押さえて眦を拭った。
●
からん、とドアに吊したベルが鳴る。
店のガラス戸を開けて所在なく佇むのは、白いコートを来た上品そうな妙齢の女性。
カウンターから顔を覗かせたモニカに安堵したように近付くと、天鵞絨のトレイに割れたブローチを乗せた。
直りませんかと女性は尋ねる。
ブローチは打ち抜きで量産したプレートにメッキを施し、質の良いとは言い難い石を置いた簡単な作りの物。
プレートの裏には地名と日付の刻印が有り、パズルのようになったそれを組み合わせれば星を頂くツリーの形になった。
祭の土産だろうか。
しかし、見れば石にも傷が付いて、割れ方も酷い。以前、馬車に踏まれたカメオを見たことがあるが、プレートだけならそれよりも酷い状態だろう。
難しいなあと、モニカは顔を隠すように女性から目を逸らし、溜息を吐く。
プレートを継ぐ同じ合金とメッキの調達は無理だろうし、傷も深い上磨けば割れてしまいそうな石はどう扱ったものだろう。
「無理とは言いませんけど、時間掛かりますよ。……何か意外ですね。こういうものって縁遠いでしょ?」
結った髪を飾っているのも、ストールに刺しているのも、カウンター越しにも美しさと煌めきの覗える宝石。
土産物の安価なブローチに拘りそうには見えないと早口に尋ねた。
「好きな人……から、頂いた物なの」
好きな人、とは、女性の家の庭師の息子だという。
同じ年に生まれ、幼い頃から親しくしており、学校へ通っていない彼に読み書きを教えたのは彼女だった。
互いに恋心を抱きながらも、立場の違いに阻まれて諦めていた。
そんなある冬に休暇を取った彼が買ってきたのがそのブローチだった。
――とても綺麗な祭だったから、お嬢様も連れ出して差し上げたかった――
戯けたようにそう言って、見上げる程のツリーや、温かなグリューワインの話しを広げた。
折角だからと、その日一日付けていたブローチだが、それ以降は宝石箱にしまっていたはずだった。
「でもね、壊されてしまった」
破片を1つ摘まんで彼女は目を伏せる。
宝石箱を曝いた婚約者に誰からの贈り物だと詰られ、そのまま口論になると、止めに入った彼の目の前で砕かれ、踏みつけられて。
投げ捨てられた石は、庭に転がっていたのを彼が拾ってきてくれた。
まだ持っていて下さったんですね。そう、嬉しそうに笑って。
「……彼、来週にフマーレに行ってしまうの。だから、その時これを着けて見送りに行きたいのよ」
●
フマーレまでの簡単な護衛依頼で集められたハンター達を、荷物を抱えた青年と、年頃の変わらない鋭い目つきの貴族らしい風貌の若い男、同じく貴族らしいが穏やかな顔つきで恰幅の良い壮年の男が待っていた。
馬車の支度を進める青年を睨む様に、若い男は肩を聳やかす。
こんな護衛までと、ハンター達を見回して鼻で笑う。
壮年の男がそれを窘め、青年は気にする素振りも無く支度を続けている。
最後の荷を積み終えて塵避けの帆布を被せると、青年がハンター達にお待たせしましたと声を掛けた。
出発。馬車が進み始めると、ヴァリオスを発つ街道へ続く道を古い商店街から一台の馬車が疾走してきた。馭者が1人、荷台は空で助手席にしがみつく様に妙齢の女性が乗っている。
馬車に揺られてふらつきながら下りた女性は、壮年の男に支えられながら青年の馬車に近付いた。
手綱を握る青年の手を掴むと、じっとその目を見詰めた。
「――フマーレ、とても素敵なところなんですって。どうか、気を付けて。いってらしゃい……」
細い指が解かれ、馬車が街道を進んでいく。
一度振り返った青年は、彼女の胸に燦めいたブローチを見付け、懐かしそうに微笑んだ。
解説
目的 依頼人をフマーレに送りとどける。
●エネミー
ゴブリン×8~
統率の取れていないものが茂みや木陰から飛び出してくる。
襤褸を纏っており、基本的には棍棒で戦うが、石等を投げることもある。
全体数は不明。
●地形
フマーレへ向かう街道、緩やかなカーブで見通しは良い。
幅は3スクエア程度、両端は茂みや木で陰になっている。
道は轍が通っており歩きやすい。
●NPC
青年 依頼人
フマーレで鍛冶職人に弟子入りが決まっている
荷物を積んだ一頭立ての馬車に乗っている
(助手席にも荷物が載っているので、馬等必要な場合は持参をお願いします)
指示があれば従うが、非武装で戦闘は不得意
女性 青年の思い人
フマーレの話しは工房の職人から聞いた
若い男 女性の婚約者
壮年の男 女性の父親
モニカ 工房の職人
●エネミー
ゴブリン×8~
統率の取れていないものが茂みや木陰から飛び出してくる。
襤褸を纏っており、基本的には棍棒で戦うが、石等を投げることもある。
全体数は不明。
●地形
フマーレへ向かう街道、緩やかなカーブで見通しは良い。
幅は3スクエア程度、両端は茂みや木で陰になっている。
道は轍が通っており歩きやすい。
●NPC
青年 依頼人
フマーレで鍛冶職人に弟子入りが決まっている
荷物を積んだ一頭立ての馬車に乗っている
(助手席にも荷物が載っているので、馬等必要な場合は持参をお願いします)
指示があれば従うが、非武装で戦闘は不得意
女性 青年の思い人
フマーレの話しは工房の職人から聞いた
若い男 女性の婚約者
壮年の男 女性の父親
モニカ 工房の職人
マスターより
よろしくお願いします。
綺麗な思い出にした2人と、挟まれて苛立つ若人。
オープニング中で触れているお祭りは数年前の事なので、
去年の聖輝節には興味を持つかも知れません。
綺麗な思い出にした2人と、挟まれて苛立つ若人。
オープニング中で触れているお祭りは数年前の事なので、
去年の聖輝節には興味を持つかも知れません。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2017/02/16 20:46
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談。 カリアナ・ノート(ka3733) 人間(クリムゾンウェスト)|10才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2017/02/08 00:20:12 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/02/07 03:07:36 |