• 戦闘

Dirty Green

マスター:楠々蛙

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2017/02/11 22:00
リプレイ完成予定
2017/02/20 22:00

オープニング

 エチル臭と紫煙を孕んだ、退廃とした空気。
 そこは、うらぶれた酒場。店内に屯す数人の男達もまた、到底堅気とも思えぬ雰囲気を纏っている。
 時は夕暮れ。光源と言えば、窓から差し込む夕陽のみ。
 オレンジ色に照らされる店内で、男達はカード遊びに興じていた。
 だが、軋みを上げてスウィングドアが開かれるや否や、彼らは一様に、開閉を繰り返すドアへと視線を集中させる。いや正確には、スウィングドアを通り抜けて、店内へと足を踏み入れた男──バリー=ランズダウンを、だ。
 突き刺さる視線。険の籠められたそれを無視して、バリーは店の奥へと進む。暗緑色のダスターコート、その裾端が歩調に合わせてひらり、また、ひらりと揺れる。
 彼は、店の最奥に位置する丸テーブル、その席に着く男の前へ辿り着くと、歩みを止めた。天板の上に置かれているのは、空になった酒瓶。
 バリーは天版に突っ伏しイビキを掻く男を一瞥すると、彼が腰掛けている椅子の足を蹴った。椅子が男の尻の下から失せ、必然、男は床板に尻餅を突く羽目になる。
「な、なんだぁ、地面が落っこちやがった……?」
 出来上がった酔っ払いも、これには堪らず眼を覚ました。バリーは、朧げな視線を巡らす男に鼻を鳴らすと、彼の襟首を掴み上げた。
「な、なにしや──ガッ……!?」
「……聞きたい事がある」
 喚く酔っ払いの背を壁に叩き付け、バリーは問うた。
「ここいらで銃を扱ってるのはどいつだ? 何処に行けば会える」
 肺の空気を押し出され、喘ぐ酔っ払い。代わりとばかりに、他に酒場に屯す男達が、バリーへと応じる。無論、見た目通りの無法者である彼らは、問答よりも簡単で安易な手法で以って応えようとした。
 すなわち言葉ではなく、銃声を以ってして。

 BAANG!

 店内に響き渡った銃声は、しかし男達のパーカッションリボルバーから発せられた物ではなかった。
 一筋の硝煙を上げるのは、バリーの右手に握られたデリンジャー。手首を直角に曲げる独特の動作の後に、スリーブガンギミックによってダスターコートの袖口から飛び出した、上下二連の中折れ式デリンジャーである。
 放たれた弾丸は、最も早く抜銃を果たした男の肩口を貫いた。男は銃を取り落し、苦鳴を上げて蹲る。それを見た他の男達は、銃把に手を掛けこそしたものの、二の轍を踏むまいと抜銃を躊躇い、二の足を踏む。その気配をすかさず読み取ったバリーは、銃口を動かし、酔っ払いへ突き付けようとして、ふと──手を止めた。

 ──これが、あなたを守ってくれますように
 脳裏を過ったのは、とある少女が口にした祈りの言葉。
 
 動きを止めたのは一秒にも満たない間。バリーは再び手首を曲げて、デリンジャーを袖内に仕舞うと、銃把の台尻を前にして左ホルスターに納まる、ブレイクオープンリボルバーを引き抜いた。
「……手早く答えろ。その方が、弾代も浮いてこっちも助かる」
「ち、チクショウが……」
 顎元に添えられた凍える鉄の感触に、酒気も飛んだ男は忌々し気に舌打ちを漏らした。
「テメェ、一体なにモンだ……! 軍の人間には見えねえ、だとすっと雇われハンターか……?」
 男が返したのは、尋問への応答ではなく、誰何の問い。生殺与奪を握られた上で張った、精一杯の虚勢を鼻で哂い、バリーはコッキングによる最後通告を告げながら、答えた。
「どうしようもない、ただの男さ」



 土壁作りの家屋が林立する、坂の町。
 夕陽に背を向けてバリーが歩くのは、この町の中でも一等治安の悪い区画だった。通りの左右に並ぶ家屋からは、生活感が感じられない。が、何者かの気配だけは、先程から常に纏わり続けている。この区画に足を踏み入れたばかりの時は、まだしも慎みがあったが、今や隠すつもりはないらしい。寧ろ、縄張りに足を踏み入れたバリーに対して、威圧している節さえ感じられた。
「……そろそろ、か」
 肌に突き刺さる敵意が飽和するまでに濃くなったのを見計らって、バリーは足を止め、右手を外套の左前身頃へと差し入れた。とその時──
「──それは、オススメしないな」
 前方に立つ建物の陰から現れた男が、銃把に手を掛けようとしたバリーを制する。
 彼を見下ろすのは、然したる特徴のない東洋系の男。雑踏に紛れれば誰も興味を示さない、そんな印象の男である。その手は、空手。銃どころか、ナイフの一本も持ってはいなかった。
 しかしバリーは男の言葉に従い、五指を開いたまま右手を外套から引き抜いて、両手を挙げる。
 建物の玄関、屋上、そこかしこから向けられた銃口の群れの真っ只中に立つ彼に、他に取り得る術はなかった。酒場に屯していた男達とは、質も量も桁が違う。仮に指一本でも、ホルスターから突き出た紫檀(ローズウッド)の木目に触れようものなら、その瞬間にダスターコートは蜂の巣にされていた事だろう。
「さて、どうやらオレの事を探っていたようだが、用件を聞こうか?」
 ホールドアップするバリーを値踏みするように眺めると、東洋系の男はそう切り出した。
「……聞きたい事がある。答えてさえ貰えれば、すぐに立ち去ろう」
「内容次第、だな。何でも喋るわけにはいかない。わかるだろう?」
 肩を竦める男。別段、同調を求めたわけではないだろう。バリーは肯定も否定もせず、ただ問いの言葉を吐き出した。
「ギャレット=コルトハート。その名に聞き覚えはあるか」
 男の瞳が、僅かながらに揺れ動いた。やがて彼はかぶりを振る。
「……残念だ。答えるわけにはいかない問いだ。そして更に残念な事に、見送りもできそうにない」
 男が手を振り上げると同時、周囲から、コッキングの音が響き渡った。舌打ちを漏らす、バリー。
「こっちも残念だよ。……できれば、穏便に事を運びたかった」
「なにを──」
 眉を顰める、東洋系。構わずバリーは、右手の手首を直角に曲げた。直後──

 BAANG……!

 バリーの右方に立ち、カービンライフルを握る男のこめかみから、紅い飛沫が弾ける。銃声の発生源は、バリーの右手に納まるデリンジャーではない。別地点からの狙撃だ。
 周囲を取り囲む男達の注意が逸れるのを見るや、バリーはデリンジャーを手近な男の下肢に向けて銃爪を絞り、包囲を突破する。
 手狭な路地を駆け抜け、建物の陰に身を隠すと、外套の内から通信機を取り出した。


『おい、あの東洋人は殺すなよ!』
「わぁーってるよ」
 鉄火場から離れた地点にある貯水塔。錆びたキャットウォークに座し、硝煙上げるリボルビングライフルの銃身を突き出した左肘に乗せ、アイアンサイトを覗き込むキャロル=クルックシャンクは、傍らに置いた通信機から発せられる相棒の声に、舌打ちを返す。
「クソッ、狙撃はガラじゃ──っと、妙な連中が向かって来てんぞ」
 悪態を吐こうとしたキャロルは、鉄火場に近付いて行く集団を見咎め、照星から目を離した。
『まさか、新手か?』
「いや、あいつらは──」

解説

・目的
銃器密売組織の捕縛。全滅させない限り、多少の殺傷は可。

・フィールド
夕暮れ時の廃墟。傾斜のある通り、左右には土壁づくりの家屋。旧時代メキシコ風の街並み。
狙撃点として、廃墟の屋上に設置された、老朽化している貯水塔がある。

・敵
銃器密売組織メンバー
十数人。各種銃器にて武装。

東洋系のリーダー
基本的に後方に控えている。拳銃を忍ばせてはいるものの、終盤まで戦闘には不参加。

・味方
バリー=ランズダウン
今回初めての主軸NPC。やっぱ、何処ぞの火薬バカと違ってイカすね。
ブレイクオープンリボルバーと、スリーブガンギミックのデリンジャーを装備。

キャロル=クルックシャンク
今回、モブ役。狙撃します。
リボルビングライフルを装備。

・備考
今回、PCは正規に軍から雇われたハンターとして動いているが、バリー達は個人的な私用として同じ相手を追っている。ハンター達は、彼らとは別ルートで組織の情報を得て、現場に向かったところ、OPの鉄火場に行き合った模様。

また、リプレイ終盤に強制イベント発生、不可避。PCが負傷、損害を被る事はないが、東洋系の捕縛、尋問などは不可能。基本的に、序盤中盤の活躍を見込んでプレイングを組む事。

今リプレイでは、心情よりも戦闘重視。荒事に際しても、単なる仕事として処理できるPCの方が向いているだろう。

マスターより

 もう、異世界モノとは思えんよ。

 今更ですが、あまりゲームシナリオと構えない方が良いです。映画の中の、ワンカットワンシーンみたいなものだと考えた方が、色々とやり易いかと。
 文体に関しては、たぶんこのスタイルに落ち着くかと思われます。と言っても、OPと同密度でリプレイ書いてたら、六千文字なんてあっという間に消し飛びますけどね。なんならOPだけで六千文字イケるからね。

 ちなみに、このシナリオはバリーの描写をしたいが為だけに出したようなものです。前シナリオで、カットしたシーンを使いたいかった、ただそれだけなのですよ。それでも構わないというかたは、どうぞ御参加くださいませ。

関連NPC

  • Mr.Safety
    バリー=ランズダウン(kz0161
    人間(リアルブルー)|21才|男性|猟撃士(イェーガー)
  • TriggerHappy
    キャロル=クルックシャンク(kz0160
    人間(リアルブルー)|21才|男性|猟撃士(イェーガー)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2017/02/19 01:15

参加者一覧

  • 愛憐の明断
    霧島 キララ(ka2263
    人間(蒼)|26才|女性|猟撃士
  • 感謝のうた
    霧雨 悠月(ka4130
    人間(蒼)|15才|男性|霊闘士
  • 三千世界の鴉を殺し
    連城 壮介(ka4765
    人間(紅)|18才|男性|舞刀士
  • クールガイ
    エリミネーター(ka5158
    人間(蒼)|35才|男性|猟撃士
  • イコニアの騎士
    宵待 サクラ(ka5561
    人間(蒼)|17才|女性|疾影士
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
依頼相談掲示板
アイコン ブリーフィング
エリミネーター(ka5158
人間(リアルブルー)|35才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2017/02/09 07:38:07
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/02/08 06:51:53