ゲスト
(ka0000)
【碧剣】Snow-Scape1【王臨】
マスター:ムジカ・トラス

- シナリオ形態
- シリーズ(新規)
関連ユニオン
アム・シェリタ―揺籃館―- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,300
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2017/02/16 22:00
- リプレイ完成予定
- 2017/02/25 22:00
オープニング
●
二人っきりの演習場に、土煙が一つ、上がる。疾走するシュリに対して、ロシュは弓を構えた。
疾駆する姿を視界に収めて、呟いた。
――シュリ・エルキンズ。
貴族の子弟であるロシュにとって、騎士科で学ぶ事以外にも身に修めるべきものは多い。ロシュは十全にそれらを熟してきた。それ故に、その実力は、武技も座学双面で高い水準で修められている。
無能では、いられないのだ。今の――これからの、貴族とは。能力と成果を、示さなくてはいけない。
疾走しつづけるシュリへと矢を向ける。情けを掛けるつもりは、微塵もない。『シュリは、こと武技に於いてはロシュよりも強いことを、この数年で痛感し続けているから』だ。
尋常に、と言う口で馬を揃え鎧と得物を誂えたことを、シュリはどう思うだろうか。
一射目を放つが、避けられた。シュリは目が良い。半藏と対峙して、生き残れる程度には。だからこれは、ただの確認にすぎない。馬を外周沿いに走らせながら、二射目。今度は盾で阻まれた。ダメージは軽微。
「……っ!」
その時だ。シュリが、何かを地面に叩きつけた。同時に、朦々たる白煙が上がる。
――煙幕。
外套は、これを持っていることを隠すためか。誰かの入れ知恵か、と直感した。射撃は無駄と知り、下馬して、接近を待つ――までもない。来た。
「…………ァァッ!!」
気勢は、二つ同時。間合いの外からのなぎ払いを、シュリは身を低くしたまま突撃。斬撃は、盾で受けられた。下段に碧剣を構えながらの踏み込み。距離を外そうとすればするだけ、シュリも迫った。至近での斬撃の応酬。背筋が凍るほどの碧剣を受けながらのカウンターの一閃は、速度を味方に付けたシュリを捉えられない。なぎ払いに繋げて、ブレイク。間合いを取り直しながら――ロシュは堅牢さを重視した為に防御と火力で押し切るしかない、と悟る。
―・―
「…………」
しばらくの間、シュリは、何も、言えなかった。転倒して空を見上げるロシュの首元に碧剣を突きつけたまま、残心。剣は、引かなかった。引いてはいけないと、ハンター達に気付かされたから。
「……僕の、勝ちだ。ロシュ・フェイランド」
強張った舌を動かして、なんとかそう告げる。
シュリ以上に呼吸を荒らげているロシュは、剣と、シュリの顔を睨み返しながら――ふいに、その表情を緩めた。
「“俺”は、貴族だぞ」
「……でも、“同輩”だ」
かつてのロシュの言葉への、意趣返しのつもりで、そう応じると、ロシュの表情が、笑みに転じていき。
「――降参だ」
そう、言った。
●
「…………ということがありまして」
「ほー」
シュリ・エルキンズの会話相手が、何事かを書き留めていく。
狭くも寒い、シュリの自室でのことである。会話の相手は、チョビ髭を生やし、仕立てのよいスーツに身を包んだパルム、イェスパー。久方ぶりの訪問はやはり深夜に、突然行われた。
「ところで最近、身体の調子がオカシクなったり、とかは無かったか!」
「……いえ、特に……」
「フーーム」
ぽりぽり、と羽根ペンでキノコの傘――イェスパー曰く、髪型、らしい――を掻くと、イェスパーはくるり、とシュリを仰ぎ見た。
「そういえば」
「はい?」
「最近、歪虚の目撃情報がある地域があるようでな!」
「…………はぁ」
「人的被害は無いそうなんじゃが、山が不自然に荒れている、という狩人の証言があって、山狩りをしたそうでな! それによると……」
――嫌な予感がしてきて、シュリは頭を抑えたのだった。
●
「仕事に行くから、休みが欲しい、だと?」
「……うん」
ロシュの視線に、シュリは申し訳なさが募り、俯いた。
一つには、その理由。今回の一件は、学校の課外活動である“歪虚対策会議”とは全く別件の、『アルバイト』の一環である、ということ。
二つには、この、言葉遣いだ。“あの一戦”以来、ロシュは厳にシュリの言葉遣いから遠慮を無くせと正すようになった。結果として、ロシュ以外の子弟たちからは白い目で見られるようになっていることを、ロシュは知っているのだろうか。
「何をするのだ?」
「……その、歪虚退治……」
「ふむ……」
言葉と同時にちら、と向けられた視線に萎縮していると、「“私”も行く」、とのたもうた。
「はぁ……」
シュリはしばらくその意味を理解できなかった、が。ロシュは全く同じ表情のまま、繰り返す。
「私も行く」
「…………え?」
「出発は何時だ?」
「えと、あ、明朝、だけど……」
「承知した。……今からでは、準備の時間も心もとない、か。シュリ。対策会議には君から待機中の指示をだしておくように」
「………………は、はい」
「では」
足早に演習場を去っていくロシュの背を、黙って見送るしかなかった、が。
ひょこり、と。その背を這い登る影があった。スーツ姿のパルム、イェスパーである。
「アイツが、ロシュ・フェイランドか!」
「あ、そう、だけど……一人参加者が増えても、大丈夫なの?」
「……うーむ。不正規な参加になるからな。参加自体は問題無いにしても、この場合は、割り勘だな!」
「…………ぐ、ぅ…………」
痛恨の表情となるシュリだが、今更、参加は不可能とはいえず、呻くしか、無かった。
そんな少年の肩にたどり着いたイェスパーは、うむ、と意味もなく一つ頷いた直後――つと、小首を傾げた。
「…………フェイランド。どこかで、聞いたような…………?」
●
調査地は、グラムヘイズ王国北西部の、とある寒村から東へ進んだ森である。
秋から冬を迎えてすぐの鳥獣は肉質が良いとされているが、冬にも狩猟の需要は無いでもない。山の変化を確認する意味と、あわよくば小動物でも見つかれば、冬の暇つぶしにもなる、と山に入った狩人は、意外なものを目にした。
雪の積もった森の中に連なる、数多の足あとを。
如何せん数が多すぎるため、単一のものとして判別できるものの、鳥獣のものであることは間違いないように思われた。だが、しかし。
それにしては、その種類が、おかしい。熊のような大型のそれの隣を、野兎の足あとが跳ね回っている。
ぞぞりぞぞりと連なって進むその足あとは、獣達の行進にほかならないが、そんなこと、あり得ない。獣達が仲良く手を取り合って歩くなど。
幸い、村方向には向かってはいないが、由々しき事態には違いない。折しも、王国北西部では羊型歪虚たちの不審な動きも多いと聞こえている。
獣を追跡することには長けていた男ではあったが――この状況では、歪虚の関与が疑われ、ああ、そうに違いない、と尻尾を撒いて逃げ帰ったのであった。
男はこの時、動転していたのだろう。足あとを辿るべきであったかは別としても――少なくとも、目印の一つくらいは、残すべきだったのだ。
しんしんと降る雪が、その足あとを覆い隠していくことを、予見さえ出来ていれば。
後に来るハンター達の苦労を、減ずることができたかもしれないのに。
二人っきりの演習場に、土煙が一つ、上がる。疾走するシュリに対して、ロシュは弓を構えた。
疾駆する姿を視界に収めて、呟いた。
――シュリ・エルキンズ。
貴族の子弟であるロシュにとって、騎士科で学ぶ事以外にも身に修めるべきものは多い。ロシュは十全にそれらを熟してきた。それ故に、その実力は、武技も座学双面で高い水準で修められている。
無能では、いられないのだ。今の――これからの、貴族とは。能力と成果を、示さなくてはいけない。
疾走しつづけるシュリへと矢を向ける。情けを掛けるつもりは、微塵もない。『シュリは、こと武技に於いてはロシュよりも強いことを、この数年で痛感し続けているから』だ。
尋常に、と言う口で馬を揃え鎧と得物を誂えたことを、シュリはどう思うだろうか。
一射目を放つが、避けられた。シュリは目が良い。半藏と対峙して、生き残れる程度には。だからこれは、ただの確認にすぎない。馬を外周沿いに走らせながら、二射目。今度は盾で阻まれた。ダメージは軽微。
「……っ!」
その時だ。シュリが、何かを地面に叩きつけた。同時に、朦々たる白煙が上がる。
――煙幕。
外套は、これを持っていることを隠すためか。誰かの入れ知恵か、と直感した。射撃は無駄と知り、下馬して、接近を待つ――までもない。来た。
「…………ァァッ!!」
気勢は、二つ同時。間合いの外からのなぎ払いを、シュリは身を低くしたまま突撃。斬撃は、盾で受けられた。下段に碧剣を構えながらの踏み込み。距離を外そうとすればするだけ、シュリも迫った。至近での斬撃の応酬。背筋が凍るほどの碧剣を受けながらのカウンターの一閃は、速度を味方に付けたシュリを捉えられない。なぎ払いに繋げて、ブレイク。間合いを取り直しながら――ロシュは堅牢さを重視した為に防御と火力で押し切るしかない、と悟る。
―・―
「…………」
しばらくの間、シュリは、何も、言えなかった。転倒して空を見上げるロシュの首元に碧剣を突きつけたまま、残心。剣は、引かなかった。引いてはいけないと、ハンター達に気付かされたから。
「……僕の、勝ちだ。ロシュ・フェイランド」
強張った舌を動かして、なんとかそう告げる。
シュリ以上に呼吸を荒らげているロシュは、剣と、シュリの顔を睨み返しながら――ふいに、その表情を緩めた。
「“俺”は、貴族だぞ」
「……でも、“同輩”だ」
かつてのロシュの言葉への、意趣返しのつもりで、そう応じると、ロシュの表情が、笑みに転じていき。
「――降参だ」
そう、言った。
●
「…………ということがありまして」
「ほー」
シュリ・エルキンズの会話相手が、何事かを書き留めていく。
狭くも寒い、シュリの自室でのことである。会話の相手は、チョビ髭を生やし、仕立てのよいスーツに身を包んだパルム、イェスパー。久方ぶりの訪問はやはり深夜に、突然行われた。
「ところで最近、身体の調子がオカシクなったり、とかは無かったか!」
「……いえ、特に……」
「フーーム」
ぽりぽり、と羽根ペンでキノコの傘――イェスパー曰く、髪型、らしい――を掻くと、イェスパーはくるり、とシュリを仰ぎ見た。
「そういえば」
「はい?」
「最近、歪虚の目撃情報がある地域があるようでな!」
「…………はぁ」
「人的被害は無いそうなんじゃが、山が不自然に荒れている、という狩人の証言があって、山狩りをしたそうでな! それによると……」
――嫌な予感がしてきて、シュリは頭を抑えたのだった。
●
「仕事に行くから、休みが欲しい、だと?」
「……うん」
ロシュの視線に、シュリは申し訳なさが募り、俯いた。
一つには、その理由。今回の一件は、学校の課外活動である“歪虚対策会議”とは全く別件の、『アルバイト』の一環である、ということ。
二つには、この、言葉遣いだ。“あの一戦”以来、ロシュは厳にシュリの言葉遣いから遠慮を無くせと正すようになった。結果として、ロシュ以外の子弟たちからは白い目で見られるようになっていることを、ロシュは知っているのだろうか。
「何をするのだ?」
「……その、歪虚退治……」
「ふむ……」
言葉と同時にちら、と向けられた視線に萎縮していると、「“私”も行く」、とのたもうた。
「はぁ……」
シュリはしばらくその意味を理解できなかった、が。ロシュは全く同じ表情のまま、繰り返す。
「私も行く」
「…………え?」
「出発は何時だ?」
「えと、あ、明朝、だけど……」
「承知した。……今からでは、準備の時間も心もとない、か。シュリ。対策会議には君から待機中の指示をだしておくように」
「………………は、はい」
「では」
足早に演習場を去っていくロシュの背を、黙って見送るしかなかった、が。
ひょこり、と。その背を這い登る影があった。スーツ姿のパルム、イェスパーである。
「アイツが、ロシュ・フェイランドか!」
「あ、そう、だけど……一人参加者が増えても、大丈夫なの?」
「……うーむ。不正規な参加になるからな。参加自体は問題無いにしても、この場合は、割り勘だな!」
「…………ぐ、ぅ…………」
痛恨の表情となるシュリだが、今更、参加は不可能とはいえず、呻くしか、無かった。
そんな少年の肩にたどり着いたイェスパーは、うむ、と意味もなく一つ頷いた直後――つと、小首を傾げた。
「…………フェイランド。どこかで、聞いたような…………?」
●
調査地は、グラムヘイズ王国北西部の、とある寒村から東へ進んだ森である。
秋から冬を迎えてすぐの鳥獣は肉質が良いとされているが、冬にも狩猟の需要は無いでもない。山の変化を確認する意味と、あわよくば小動物でも見つかれば、冬の暇つぶしにもなる、と山に入った狩人は、意外なものを目にした。
雪の積もった森の中に連なる、数多の足あとを。
如何せん数が多すぎるため、単一のものとして判別できるものの、鳥獣のものであることは間違いないように思われた。だが、しかし。
それにしては、その種類が、おかしい。熊のような大型のそれの隣を、野兎の足あとが跳ね回っている。
ぞぞりぞぞりと連なって進むその足あとは、獣達の行進にほかならないが、そんなこと、あり得ない。獣達が仲良く手を取り合って歩くなど。
幸い、村方向には向かってはいないが、由々しき事態には違いない。折しも、王国北西部では羊型歪虚たちの不審な動きも多いと聞こえている。
獣を追跡することには長けていた男ではあったが――この状況では、歪虚の関与が疑われ、ああ、そうに違いない、と尻尾を撒いて逃げ帰ったのであった。
男はこの時、動転していたのだろう。足あとを辿るべきであったかは別としても――少なくとも、目印の一つくらいは、残すべきだったのだ。
しんしんと降る雪が、その足あとを覆い隠していくことを、予見さえ出来ていれば。
後に来るハンター達の苦労を、減ずることができたかもしれないのに。
解説
●目的
シュリ、ロシュと共に山狩りを行え
●解説
王国北西部とある寒村から東へ進んだ森の中に、足あとを見つけた――という証言がありました。
極めて不正確な証言ではあるのですが、足あとは無数の獣によって付けられたものであるとのことから、尋常ならざる状況として、歪虚の関与が想定されています。
状況の深刻さも不明ではありますが、何かの兆候の可能性もあり、調査をお願いします。
村から3kmほど行った先に森はあり、東西に10km、南北に7kmほどの大きさです。
北東部は山岳地帯へとつながっています。
付近にはこの寒村以外の集落はありません。
現在現地は森・山岳ともに雪に覆われております。夜間の野営は不可能ではありませんが、十全な装備が必要です。
期間は2日。森林内でキャンプを行う場合の物資を持ち込まない場合、一人当たり装備重量二十ほどの余裕があれば持ち込み可能。(ただし、移動力低下の場合は探索に不備がでるものとする)。村での宿泊も可能。
▼簡易マップ
←□森森森森森森森山岳地
←□□□森森森森森森森森
←村□□森森森森森森森森
←村□□森森森森森森森森
←村□□森森森森森森森森
←□□□森森森森森森森森
←□□□□□□□□森森森
至
平
地
●NPCについて
シュリ・エルキンズ:碧剣使いの闘狩人。レベル31。成長著しい剣+盾使い。高水準なバランス型。貯金を切り崩して冬準備OK。
ロシュ・フェイランド:大剣+弓使いの闘狩人。レベル27。高火力・高防御型。爺やの準備で冬準備OK。
イェスパー:作家系パルム。煩い。
狩人:参加拒否。目撃地点についての情報はあるが、参考程度。
●裏・解説
・調査の結果次第で、次回の展開が変わる、シリーズシナリオです。探索範囲、あるいは調査達成内容が寛容です。
・今回、戦闘が行われる可能性は殆どありませんが、登場するとしたら、然程強くはない歪虚が少数ぐらいです。
マスターより
お世話になっております。ムジカ・トラスです。
無事生き延びることが出来たシュリくんの、【碧剣】新シリーズです。多分2話構成です。長くて3話。
歪虚の目撃情報・交戦機会が増えつつある王国北西部で、奇怪な状況が確認されました。
雪の積もる現地の調査を行い、現在のこの状況が同地方の騒乱と関係があるのか、いないのか。はたまた、一体何が起こっているのか、を調査してください。
本依頼では、具体的な【調査】と【行動】をどうするか、と、どのように過ごすか、が重要なシナリオになっています。
次回のシナリオの難易度が大きく変わる行動もございますので、お楽しみいただけたら幸いです。
無事生き延びることが出来たシュリくんの、【碧剣】新シリーズです。多分2話構成です。長くて3話。
歪虚の目撃情報・交戦機会が増えつつある王国北西部で、奇怪な状況が確認されました。
雪の積もる現地の調査を行い、現在のこの状況が同地方の騒乱と関係があるのか、いないのか。はたまた、一体何が起こっているのか、を調査してください。
本依頼では、具体的な【調査】と【行動】をどうするか、と、どのように過ごすか、が重要なシナリオになっています。
次回のシナリオの難易度が大きく変わる行動もございますので、お楽しみいただけたら幸いです。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2017/02/26 20:22
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
教えてシュリくん(質問卓) ジュード・エアハート(ka0410) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2017/02/13 21:18:52 |
|
![]() |
相談卓 ジュード・エアハート(ka0410) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2017/02/16 21:31:41 |
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![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/02/13 01:10:26 |