ゲスト
(ka0000)
【王臨】【空の研究】輝く嵐が通る道
マスター:紺堂 カヤ

このシナリオは3日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- サポート
- 現在0人 / 0~4人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2017/02/19 22:00
- リプレイ完成予定
- 2017/03/03 22:00
オープニング
毎日着ている、黒いローブが近頃妙に重く感じる。
アメリア・マティーナ(kz0179)は研究所の屋上にしつらえられた計測室で空を見上げながらそう思った。
雲の流れが遅い。風が少ないのだ。王都の気候はおそらく、しばらくの間穏やかであろう。しかし。
「雨雲が停滞している地域が、ありそうですねーえ」
この季節にしては珍しいことと言える。アメリアが、空から視線を外して帳簿に記録を取っていると。階下から足音が聞こえた。
「所長。ただいま戻りました」
「ああ、スバルさん、ご苦労さまでしたねーえ。どうでした」
アメリアがスバルと呼んだのは長身の青年だった。まだあどけなさを残しつつ精悍さを身に着け始めた十八歳のこの青年は、現在「空の研究所」にいる唯一の職員である。ただし、「職員」ではあるが「研究員」ではない。
「ご本人にはお会いできませんでしたが、妹さんが帰ってきました。なんでも、友人の結婚式のために遠方へ行っていたそうで、数日家を空けていたそうです」
「そうですか。それで、彼……“本人”もその結婚式に?」
「いえ。違うようです。妹さんの話によると、三か月ほど家を空けているそうです。実験、だとかなんとか言っていたような気がするけれど詳しいことはわからない、と言ってました」
「ははあ。実験ねーえ。なるほど」
アメリアが、深くかぶったフードの下で笑った。
アメリアはこのところ、王都に居をかまえる、とある人物に会うため何度もその邸宅に足を運んでいた。しかし、留守ばかりで一向に会うことができない。そのため、スバルに行方を探させていたのだ。
「それで、どこへ行っているかはわからないのですかねーえ?」
「それが……」
スバルが言いにくそうに顔を曇らせた。
「どうやら、リベルタースの方にいらっしゃると」
リベルタース地方。
これはまた厄介なところに、とアメリアは思って、その心中の言葉とは裏腹にほくそ笑んだ。
アメリアが設立した「空の研究所」は、現在、研究員を募集していた。しかし、闇雲に人数を増やせばいいというわけではない。一般公募はせず、まずはアメリア自身が「協力してくれそうな人物」に声をかけるところから始めていた。それが、「とある人物」である。
「研究所に来る意志はあるとのことですが、ふむ、これは困ったことになりましたねーえ」
彼の所在がわかってすぐ、アメリアは手紙を出していた。正直なところ、その手紙が届くかどうかも危ぶんでいたのだが、上手く流通経路に乗れたらしい。まだそこまでの混乱はないとみるべきか、はたまた運が良かったのか。ともかく、手紙は無事その人物へと届き、返事も戻ってきた。
「現在、リベルタース中部のカント村という小さな村にいる……。ふむ、だいぶ西寄りの村ですね……。人の出入りが制限されつつある……? ははあ……。これはまたタイミングの悪い」
アメリアは手紙を読んで苦笑した。カント村周辺を不穏な影がうろついているらしい。影、という表現は抽象的すぎるが、明らかに好意を持っていない武装集団であるようだ。その正体について明言はされていなかったが、おそらくは。
「ベリアルの手の者ですかねーえ」
こちらへ攻め入ってくる様子は今のところないが、下手に動くことはできない、と手紙にはあった。
「まあ、目立ちますからねーえ、あの男は。ひとりでこっそり抜け出してくることは容易でない。それにしても相変わらず運がないですね、キランは」
アメリアは笑った。とある人物、とは、もともとは医者だ。買い物に出れば店はすべて臨時休業、ハイキングに行けば突然の土砂崩れで通行止め、と、運のなさは天下一品だ。アメリアにとって、友人と呼べるほどの間柄ではないが、決して浅くはない縁を持つ男であった。キラン、という不思議な響きを持つ名前は「輝嵐」と書くらしい。嵐の文字にふさわしく、というべきか、破天荒な外見をしている。
「しかしまあ、今回、天候についての運は持ち合わせているようですねーえ」
空の研究所の研究員に誘われた人物にふさわしく、彼は手紙にカント村周辺の天候について事細かに書き記していた。雨が続いているらしい。停滞した雨雲の所為で、しばらくは晴れそうにない、おかげで実験に使う草がなかなか手に入れられない、と愚痴まで書いてよこしていた。
雨。
それも、長く降り続く雨。
ぴったりの魔法を、アメリアは有している。
「スバルさん。これを持ってハンターオフィスへお願いします」
アメリアは旅支度を整えた姿で、スバルに書状を差し出した。
「は。所長は、どちらに……?」
「一足先にハルトフォートへ向かいます。ラーズスヴァン殿に挨拶しておいた方がいいでしょうからねーえ。マーロウに連なる者、もしくはマーロウとも一線を画した第三勢力と誤解されては困りますし」
後半は独り言のように、アメリアは呟いた。アメリアは政治に詳しくない。だが、詳しくはなくても身の振り方を考えねばならない立場になったという自覚はあった。スバルが、表情に乏しい顔を、それでも心配そうにする。
「あちらは危険と聞き及びます。本当に、行かれるのですか」
「ええ。キランを連れ帰ります。しかしまあ、私一人では無理ですからねーえ、そのためにハンターに協力を頼みたいのですよーお。詳細は、そこに書きましたが、できれば、楽器の演奏ができる方、もしくは歌える方を、と強調してください」
「はい。……楽器、ですか」
不思議そうに首を傾げるスバルに、アメリアは頷いた。
「優しい雨の睡魔を、呼び寄せましょうねーえ」
アメリアの声は、多少の緊張をはらみつつも楽しげであった。
アメリア・マティーナ(kz0179)は研究所の屋上にしつらえられた計測室で空を見上げながらそう思った。
雲の流れが遅い。風が少ないのだ。王都の気候はおそらく、しばらくの間穏やかであろう。しかし。
「雨雲が停滞している地域が、ありそうですねーえ」
この季節にしては珍しいことと言える。アメリアが、空から視線を外して帳簿に記録を取っていると。階下から足音が聞こえた。
「所長。ただいま戻りました」
「ああ、スバルさん、ご苦労さまでしたねーえ。どうでした」
アメリアがスバルと呼んだのは長身の青年だった。まだあどけなさを残しつつ精悍さを身に着け始めた十八歳のこの青年は、現在「空の研究所」にいる唯一の職員である。ただし、「職員」ではあるが「研究員」ではない。
「ご本人にはお会いできませんでしたが、妹さんが帰ってきました。なんでも、友人の結婚式のために遠方へ行っていたそうで、数日家を空けていたそうです」
「そうですか。それで、彼……“本人”もその結婚式に?」
「いえ。違うようです。妹さんの話によると、三か月ほど家を空けているそうです。実験、だとかなんとか言っていたような気がするけれど詳しいことはわからない、と言ってました」
「ははあ。実験ねーえ。なるほど」
アメリアが、深くかぶったフードの下で笑った。
アメリアはこのところ、王都に居をかまえる、とある人物に会うため何度もその邸宅に足を運んでいた。しかし、留守ばかりで一向に会うことができない。そのため、スバルに行方を探させていたのだ。
「それで、どこへ行っているかはわからないのですかねーえ?」
「それが……」
スバルが言いにくそうに顔を曇らせた。
「どうやら、リベルタースの方にいらっしゃると」
リベルタース地方。
これはまた厄介なところに、とアメリアは思って、その心中の言葉とは裏腹にほくそ笑んだ。
アメリアが設立した「空の研究所」は、現在、研究員を募集していた。しかし、闇雲に人数を増やせばいいというわけではない。一般公募はせず、まずはアメリア自身が「協力してくれそうな人物」に声をかけるところから始めていた。それが、「とある人物」である。
「研究所に来る意志はあるとのことですが、ふむ、これは困ったことになりましたねーえ」
彼の所在がわかってすぐ、アメリアは手紙を出していた。正直なところ、その手紙が届くかどうかも危ぶんでいたのだが、上手く流通経路に乗れたらしい。まだそこまでの混乱はないとみるべきか、はたまた運が良かったのか。ともかく、手紙は無事その人物へと届き、返事も戻ってきた。
「現在、リベルタース中部のカント村という小さな村にいる……。ふむ、だいぶ西寄りの村ですね……。人の出入りが制限されつつある……? ははあ……。これはまたタイミングの悪い」
アメリアは手紙を読んで苦笑した。カント村周辺を不穏な影がうろついているらしい。影、という表現は抽象的すぎるが、明らかに好意を持っていない武装集団であるようだ。その正体について明言はされていなかったが、おそらくは。
「ベリアルの手の者ですかねーえ」
こちらへ攻め入ってくる様子は今のところないが、下手に動くことはできない、と手紙にはあった。
「まあ、目立ちますからねーえ、あの男は。ひとりでこっそり抜け出してくることは容易でない。それにしても相変わらず運がないですね、キランは」
アメリアは笑った。とある人物、とは、もともとは医者だ。買い物に出れば店はすべて臨時休業、ハイキングに行けば突然の土砂崩れで通行止め、と、運のなさは天下一品だ。アメリアにとって、友人と呼べるほどの間柄ではないが、決して浅くはない縁を持つ男であった。キラン、という不思議な響きを持つ名前は「輝嵐」と書くらしい。嵐の文字にふさわしく、というべきか、破天荒な外見をしている。
「しかしまあ、今回、天候についての運は持ち合わせているようですねーえ」
空の研究所の研究員に誘われた人物にふさわしく、彼は手紙にカント村周辺の天候について事細かに書き記していた。雨が続いているらしい。停滞した雨雲の所為で、しばらくは晴れそうにない、おかげで実験に使う草がなかなか手に入れられない、と愚痴まで書いてよこしていた。
雨。
それも、長く降り続く雨。
ぴったりの魔法を、アメリアは有している。
「スバルさん。これを持ってハンターオフィスへお願いします」
アメリアは旅支度を整えた姿で、スバルに書状を差し出した。
「は。所長は、どちらに……?」
「一足先にハルトフォートへ向かいます。ラーズスヴァン殿に挨拶しておいた方がいいでしょうからねーえ。マーロウに連なる者、もしくはマーロウとも一線を画した第三勢力と誤解されては困りますし」
後半は独り言のように、アメリアは呟いた。アメリアは政治に詳しくない。だが、詳しくはなくても身の振り方を考えねばならない立場になったという自覚はあった。スバルが、表情に乏しい顔を、それでも心配そうにする。
「あちらは危険と聞き及びます。本当に、行かれるのですか」
「ええ。キランを連れ帰ります。しかしまあ、私一人では無理ですからねーえ、そのためにハンターに協力を頼みたいのですよーお。詳細は、そこに書きましたが、できれば、楽器の演奏ができる方、もしくは歌える方を、と強調してください」
「はい。……楽器、ですか」
不思議そうに首を傾げるスバルに、アメリアは頷いた。
「優しい雨の睡魔を、呼び寄せましょうねーえ」
アメリアの声は、多少の緊張をはらみつつも楽しげであった。
解説
■成功条件
リベルタース地方中部西域に位置するカント村より、空の研究所・所員(予定)の「輝嵐(キラン)」を王都へ連れ帰る
■カント村周囲の脅威
五日ほど前から林を五~七人ほどと見られる小隊がうろついている。姿についてははっきりと確認できていない。
しかし、王国関係者とはとても思われず、ベリアル軍所属の一隊であると考えられる。戦闘力・攻撃方法等は不明。接触者なし。被害者なし。
村では、警戒を強め、隊を刺激しないよう、村への出入りを制限している。
村には出入り口が二つある。
出入り口1:ハルトフォート砦へ向かう街道にまっすぐ繋がっている
出入り口2:花畑が丘という小さな丘に向いている。丘の先は谷になっている。
※丘をまわり込むことはできず、出口2から出ても、砦へ行くには出口1の目の前の街道へ出なければならない。
図解は下の通り
林 〇←小隊がよく現れるポイント
^^^^^^^^^^^^^^
^^^^^^^^^^^^^^
□□□□□□□□□□□□
□■←見張り台 □
□ □
□ □
□ 村の出口1 →ハルトフォート砦方面へ
□ カント村 □
□ □
□ 出口2 □
□□□□□↓□□□□□□
花畑が丘へ
^^^^^^^^^^^^^
^^^^^^^^^^^^^
花畑が丘
↓
谷
■雨の子守唄
『【空の研究】レイニィ・ララバイ』にて登場した魔法。
雨と音楽を融合させ、万物を眠らせる力を持つ。フルート、バイオリン、ピアノの三重奏だが、雨の強さによってはどれかひとつの楽器でも発動。もしくは人の歌声でも代用できる。
演奏者以外は、音楽を耳にしたものすべてが眠ってしまう。
楽譜はアメリアが所持しているほか、コピーをスバルに持たせ、ハンターオフィスに届けている。
リベルタース地方中部西域に位置するカント村より、空の研究所・所員(予定)の「輝嵐(キラン)」を王都へ連れ帰る
■カント村周囲の脅威
五日ほど前から林を五~七人ほどと見られる小隊がうろついている。姿についてははっきりと確認できていない。
しかし、王国関係者とはとても思われず、ベリアル軍所属の一隊であると考えられる。戦闘力・攻撃方法等は不明。接触者なし。被害者なし。
村では、警戒を強め、隊を刺激しないよう、村への出入りを制限している。
村には出入り口が二つある。
出入り口1:ハルトフォート砦へ向かう街道にまっすぐ繋がっている
出入り口2:花畑が丘という小さな丘に向いている。丘の先は谷になっている。
※丘をまわり込むことはできず、出口2から出ても、砦へ行くには出口1の目の前の街道へ出なければならない。
図解は下の通り
林 〇←小隊がよく現れるポイント
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□□□□□□□□□□□□
□■←見張り台 □
□ □
□ □
□ 村の出口1 →ハルトフォート砦方面へ
□ カント村 □
□ □
□ 出口2 □
□□□□□↓□□□□□□
花畑が丘へ
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花畑が丘
↓
谷
■雨の子守唄
『【空の研究】レイニィ・ララバイ』にて登場した魔法。
雨と音楽を融合させ、万物を眠らせる力を持つ。フルート、バイオリン、ピアノの三重奏だが、雨の強さによってはどれかひとつの楽器でも発動。もしくは人の歌声でも代用できる。
演奏者以外は、音楽を耳にしたものすべてが眠ってしまう。
楽譜はアメリアが所持しているほか、コピーをスバルに持たせ、ハンターオフィスに届けている。
マスターより
ごきげんいかがでしょうか。紺堂です。
空の研究所、初の魔法実用任務でございます。
初なのにかなり大きなお仕事にぶち当たってしまいました。
任務は「目的の人物と共に無事に王都へ帰ってくること」なので、小隊との戦闘は必要ありません。
ただ、その小隊の正体(ダジャレじゃありません)を探ることくらいはしろ、とラーズスヴァン殿に言われちゃうような気がしますが……。
「雨の子守唄」はすでに別シナリオで紹介されている魔法ですが、ご存じのない方でも問題ありませんので、是非ご協力ください!
演奏について、自分はできないけど、という場合の、サポート枠をご用意いたしましたのでよろしければご利用ください。
空の研究所、初の魔法実用任務でございます。
初なのにかなり大きなお仕事にぶち当たってしまいました。
任務は「目的の人物と共に無事に王都へ帰ってくること」なので、小隊との戦闘は必要ありません。
ただ、その小隊の正体(ダジャレじゃありません)を探ることくらいはしろ、とラーズスヴァン殿に言われちゃうような気がしますが……。
「雨の子守唄」はすでに別シナリオで紹介されている魔法ですが、ご存じのない方でも問題ありませんので、是非ご協力ください!
演奏について、自分はできないけど、という場合の、サポート枠をご用意いたしましたのでよろしければご利用ください。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2017/02/26 21:26
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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【相談卓】雨に唄えば メトロノーム・ソングライト(ka1267) エルフ|14才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2017/02/19 21:58:45 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/02/19 20:29:16 |