ゲスト
(ka0000)
【初心】Clean for donuts
マスター:紺堂 カヤ

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2017/03/10 09:00
- リプレイ完成予定
- 2017/03/19 09:00
オープニング
それは、まったく漫画チックな出来事だった。
道端で、買い物袋が破れてしまって困っているおばあさんに出会う、なんてそんなベタな展開は、そうそうあるものではない。何かの罠か、と思わぬことはなかったが、こんな一匹狼のハンターひとりを罠にかけて得られるものなどたかが知れているだろう、と思い直した。
(ちょっと警戒しすぎているかな。このところ、世情が落ち着かないものだからね)
ミリィは内心でそう呟いて苦笑した。王国は今、変動の時を迎えている。ミリィのように単独行動を旨とするハンターにとっても、無関係ではいられないほどの大きなうねりだ。
(ま、それに乗じてお仕事もらおうって言うんだから、業が深い商売よね、ハンターってやつも)
肩をすくめつつ、重たい包みを担ぎ上げる。
「悪いわねえ、お嬢さん」
「いいのよお、ちょっとした寄り道よ」
一匹オオカミを気取っているミリィだが、根がお節介なのか、困っている人、自分より立場が弱い者には手を差し伸べてしまう癖があった。こうした行きずりの人もそうだが、後輩ハンターについてもそうだ。なりゆきであってもついつい、面倒をみてしまう。おかげでソサエティからは最近「そういう役目のハンター」とみなされてしまった節がある。
(なあんか、今度は「研修」でも組んでくれ、って言ってたなあ。あー、面倒だなあ)
ちょうど仕事がひとつ終わったところではあるし、何にせよ一度オフィスへ行かなければならないな、と思いつつ、ミリィは荷物を運んだ。これが、驚くほど重い。
「これをひとりで運ぼうとしてたなんて無茶もいいところだわ、おばあさん……。いったい何を買ったの?」
「小麦粉と、チョコレートと、生クリームよ」
「へええ?」
(美味しそうな気配がするじゃない)
ミリィの足取りは自然と軽くなった。
「台所へ運んでもらえるかしらねえ」
「はーい」
荷物を抱えておばあさんの家までやってきたミリィは、屋内に一歩足を踏み入れて絶句した。
と、いうのも。
天井には蜘蛛の巣。窓枠にはこんもり綿埃。棚の戸はねじが外れて傾いているし、引き出しにも取っ手がない。
「ごめんなさいねえ、とんだあばら家で」
おばあさんが恥ずかしそうに眉を下げる。ミリィは引きつった笑いで誤魔化しつつ、案内されるままに奥の台所へ向かった。歩くたびに床がきしむ。
「ずっと一人暮らしでねえ。足腰が悪いものだから掃除も修理もままならなくて。台所を綺麗にしておくだけで精一杯。ああ、荷物はそこへ置いて頂戴」
おばあさんが台所だけは、と言うように、通り抜けてきた部屋とは打って変わって、台所は清潔そのものだった。食器も調理台も、良く使いこまれていてあたたかみがある。
「そうなの。ひとりで……。大変ね」
「慣れれば平気ですよ。ありがとうね、助かったわ」
おばあさんはにっこり嬉しそうにして、荷物の中からチョコレートを一枚取り出してミリィにくれようとした。
「ちょ、ちょっと待っておばあさん」
ミリィは、気が付いたらそう言っていた。
「おや、チョコレートはお嫌い?」
「いえ、大好きよ。そうじゃなくて。ねえ、おばあさん、そのチョコレートで何か作ろうと思ってたんじゃないの?」
そう尋ねながら、ミリィの頭はフル回転をしていた。
自分はこれからハンターオフィスに行くところだ。
後輩研修についても考えなくてはならない。
だから何日もここに滞在することはできない。
だけどこの家をこのままにして去るのは後味が悪い。
でもこの家の修理や掃除はひとりじゃ絶対何日もかかるし、おばあさんも遠慮しそう……。
「ええ、ドーナツでも作ろうかと思っていたの。ちょっと自信があるのよ、わたし」
「ドーナツ!」
ミリィの目が輝いた。
そして妙案も閃いた。
「ねえ、おばあさん。あたしとちょっと競争しない?」
「競争?」
「そう。あたし、今から後輩……いや、友だちをこの家に呼ぼうと思うの。あたしとその友だちが、この家を綺麗に掃除するのと、おばあさんがドーナツを三十個作るのと、どっちが早いか競争。あたしたちが買ったら、そのドーナツをご馳走して頂戴。あたしたちが負けたら、おばあさんが買い物に行くときこれからずーっと必ずお供するわ。どう?」
ミリィの突然の申し出に、おばあさんはきょとん、としていたが、やがてくすくすと笑い始めた。
「面白いことを考えるお嬢さんねえ」
「でしょ? あたしはスイーツ・ギャンブラーのミリィ。ちょっと有名なんだから」
もちろん、「有名」は「自称」である。
「ね、どうする?」
「いいですとも、受けて立ちましょう」
おばあさんは嬉しそうににこにこ笑った。
「いいこと!? よーく聞くのよ? ハンターのお仕事ってのは何も、強い敵と戦うだけじゃないの」
集まった後輩ハンターたちの前で、ミリィはもっともらしく説明した。
「市民の役に立つことも立派なハンターの役目なのよ。特に、積極的になるべきなのは、こうした身近に助けてくれる人のいないお年寄りの力になることね。オーケー?」
後輩ハンターたちは、はあ、と一応頷く。
「ただ力になるだけじゃなくて、相手に気を使わせないことも大事ね。だからこうして、ゲーム仕立てにしたってわけよ」
言い訳もせず、ただ黙って頷く後輩たちに、さすがに後ろめたいものを感じたのか、ミリィはそれ以上喋ることをやめて、ごほん、と咳払いした。
「さあ! 頑張ってお掃除するわよ!」
そして、誰よりも早く、掃除に取り掛かった。
ドーナツ欲しさに、というのも否定はできないが、それでもミリィの「おばあさんの役に立ちたい」という気持ちは、本物であるのだ。
道端で、買い物袋が破れてしまって困っているおばあさんに出会う、なんてそんなベタな展開は、そうそうあるものではない。何かの罠か、と思わぬことはなかったが、こんな一匹狼のハンターひとりを罠にかけて得られるものなどたかが知れているだろう、と思い直した。
(ちょっと警戒しすぎているかな。このところ、世情が落ち着かないものだからね)
ミリィは内心でそう呟いて苦笑した。王国は今、変動の時を迎えている。ミリィのように単独行動を旨とするハンターにとっても、無関係ではいられないほどの大きなうねりだ。
(ま、それに乗じてお仕事もらおうって言うんだから、業が深い商売よね、ハンターってやつも)
肩をすくめつつ、重たい包みを担ぎ上げる。
「悪いわねえ、お嬢さん」
「いいのよお、ちょっとした寄り道よ」
一匹オオカミを気取っているミリィだが、根がお節介なのか、困っている人、自分より立場が弱い者には手を差し伸べてしまう癖があった。こうした行きずりの人もそうだが、後輩ハンターについてもそうだ。なりゆきであってもついつい、面倒をみてしまう。おかげでソサエティからは最近「そういう役目のハンター」とみなされてしまった節がある。
(なあんか、今度は「研修」でも組んでくれ、って言ってたなあ。あー、面倒だなあ)
ちょうど仕事がひとつ終わったところではあるし、何にせよ一度オフィスへ行かなければならないな、と思いつつ、ミリィは荷物を運んだ。これが、驚くほど重い。
「これをひとりで運ぼうとしてたなんて無茶もいいところだわ、おばあさん……。いったい何を買ったの?」
「小麦粉と、チョコレートと、生クリームよ」
「へええ?」
(美味しそうな気配がするじゃない)
ミリィの足取りは自然と軽くなった。
「台所へ運んでもらえるかしらねえ」
「はーい」
荷物を抱えておばあさんの家までやってきたミリィは、屋内に一歩足を踏み入れて絶句した。
と、いうのも。
天井には蜘蛛の巣。窓枠にはこんもり綿埃。棚の戸はねじが外れて傾いているし、引き出しにも取っ手がない。
「ごめんなさいねえ、とんだあばら家で」
おばあさんが恥ずかしそうに眉を下げる。ミリィは引きつった笑いで誤魔化しつつ、案内されるままに奥の台所へ向かった。歩くたびに床がきしむ。
「ずっと一人暮らしでねえ。足腰が悪いものだから掃除も修理もままならなくて。台所を綺麗にしておくだけで精一杯。ああ、荷物はそこへ置いて頂戴」
おばあさんが台所だけは、と言うように、通り抜けてきた部屋とは打って変わって、台所は清潔そのものだった。食器も調理台も、良く使いこまれていてあたたかみがある。
「そうなの。ひとりで……。大変ね」
「慣れれば平気ですよ。ありがとうね、助かったわ」
おばあさんはにっこり嬉しそうにして、荷物の中からチョコレートを一枚取り出してミリィにくれようとした。
「ちょ、ちょっと待っておばあさん」
ミリィは、気が付いたらそう言っていた。
「おや、チョコレートはお嫌い?」
「いえ、大好きよ。そうじゃなくて。ねえ、おばあさん、そのチョコレートで何か作ろうと思ってたんじゃないの?」
そう尋ねながら、ミリィの頭はフル回転をしていた。
自分はこれからハンターオフィスに行くところだ。
後輩研修についても考えなくてはならない。
だから何日もここに滞在することはできない。
だけどこの家をこのままにして去るのは後味が悪い。
でもこの家の修理や掃除はひとりじゃ絶対何日もかかるし、おばあさんも遠慮しそう……。
「ええ、ドーナツでも作ろうかと思っていたの。ちょっと自信があるのよ、わたし」
「ドーナツ!」
ミリィの目が輝いた。
そして妙案も閃いた。
「ねえ、おばあさん。あたしとちょっと競争しない?」
「競争?」
「そう。あたし、今から後輩……いや、友だちをこの家に呼ぼうと思うの。あたしとその友だちが、この家を綺麗に掃除するのと、おばあさんがドーナツを三十個作るのと、どっちが早いか競争。あたしたちが買ったら、そのドーナツをご馳走して頂戴。あたしたちが負けたら、おばあさんが買い物に行くときこれからずーっと必ずお供するわ。どう?」
ミリィの突然の申し出に、おばあさんはきょとん、としていたが、やがてくすくすと笑い始めた。
「面白いことを考えるお嬢さんねえ」
「でしょ? あたしはスイーツ・ギャンブラーのミリィ。ちょっと有名なんだから」
もちろん、「有名」は「自称」である。
「ね、どうする?」
「いいですとも、受けて立ちましょう」
おばあさんは嬉しそうににこにこ笑った。
「いいこと!? よーく聞くのよ? ハンターのお仕事ってのは何も、強い敵と戦うだけじゃないの」
集まった後輩ハンターたちの前で、ミリィはもっともらしく説明した。
「市民の役に立つことも立派なハンターの役目なのよ。特に、積極的になるべきなのは、こうした身近に助けてくれる人のいないお年寄りの力になることね。オーケー?」
後輩ハンターたちは、はあ、と一応頷く。
「ただ力になるだけじゃなくて、相手に気を使わせないことも大事ね。だからこうして、ゲーム仕立てにしたってわけよ」
言い訳もせず、ただ黙って頷く後輩たちに、さすがに後ろめたいものを感じたのか、ミリィはそれ以上喋ることをやめて、ごほん、と咳払いした。
「さあ! 頑張ってお掃除するわよ!」
そして、誰よりも早く、掃除に取り掛かった。
ドーナツ欲しさに、というのも否定はできないが、それでもミリィの「おばあさんの役に立ちたい」という気持ちは、本物であるのだ。
解説
■成功条件
およそ三時間以内におばあさんのお家を修理・掃除
■修理・掃除ポイント
・蜘蛛の巣と埃だらけの天井
・汚れきった窓ガラス
・戸が傾き、引き出しの取っ手が取れている棚
・きしむ床
(脚立・箒・雑巾・バケツ等の掃除道具、金槌・釘・ドライバー等の工具は用意がある)
■ミリィ
射撃の腕は一流だが、掃除に関しては疑問。
とにかくスイーツに弱いので台所から美味しい匂いがしてくるとそちらに気を取られてしまう可能性大。
およそ三時間以内におばあさんのお家を修理・掃除
■修理・掃除ポイント
・蜘蛛の巣と埃だらけの天井
・汚れきった窓ガラス
・戸が傾き、引き出しの取っ手が取れている棚
・きしむ床
(脚立・箒・雑巾・バケツ等の掃除道具、金槌・釘・ドライバー等の工具は用意がある)
■ミリィ
射撃の腕は一流だが、掃除に関しては疑問。
とにかくスイーツに弱いので台所から美味しい匂いがしてくるとそちらに気を取られてしまう可能性大。
マスターより
ごきげんいかがでしょうか。紺堂でございます。
タイトルで「ドーナツのために掃除しろ」と言っておきながらなんですが……研修です!ええ!ミリィは決して後輩をこきつかってドーナツを手に入れようと思っているわけではありませんよ!……たぶん。
きっとおばあさんはわざとでも負けてくれるだろう、とか思ってはいけません。
なんてったって、勝てば永遠の荷物持ちをゲットできるのですから!!
頑張ってくださいませ!
タイトルで「ドーナツのために掃除しろ」と言っておきながらなんですが……研修です!ええ!ミリィは決して後輩をこきつかってドーナツを手に入れようと思っているわけではありませんよ!……たぶん。
きっとおばあさんはわざとでも負けてくれるだろう、とか思ってはいけません。
なんてったって、勝てば永遠の荷物持ちをゲットできるのですから!!
頑張ってくださいませ!
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2017/03/14 20:54
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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お掃除vsドーナツ! アレクシス・ラッセル(ka6748) 人間(リアルブルー)|23才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/03/07 21:59:26 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/03/05 16:43:19 |