ゲスト
(ka0000)
嘘つきの境界線
マスター:音無奏

このシナリオは5日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2017/03/19 19:00
- リプレイ完成予定
- 2017/04/02 19:00
オープニング
―――行かないで、行ったら戻ってこれない気がするの。
―――ちゃんと戻ってくる、助けを呼びに行ってくるから、ここで隠れてるんだ。
ちゃんと戻ってくるって言ったのに。
私を一人にしたりしないって言ったのに。
助けが来なかった事よりも、自分が助からない事よりも、あなたがたどり着けなかったと悟ってしまった絶望の方が遥かに心を蝕んだ。
ちゃんと戻ってくるって言ったのに! 嘘つき!
…………。
シャリール地方には幾つか荒廃した地域が存在する。
それは300年以上前、帝国がまだ成立していなくて、歪虚が南下を仕掛けてきた頃の名残だ。
シャリール地方は当時から存在していたが、その生活は厳しく、途轍もなく綱渡りなものだったらしい。
山岳と峡谷の狭間に人里が存在し、過酷な地形故に人手が行き渡らない。主な食料源は牧畜で、しかし歪虚が活発となるとそれも命がけになる。
少しでも強力な歪虚が湧くと、それだけで集落が一つ消える。北部辺境領が成立してからは随分と楽になったようだが、だからといって犠牲の歴史がなくなる訳でもない。
生活が一息ついた頃に、生き残った住民たちは見つかるだけの遺骨を拾い集め、慰霊堂を作った。
収納出来なかった人はかなりいると思う。その時手が届く範囲は、それほど広くなかったのだ。
+
「慰霊堂に発生した歪虚を討伐して欲しい、……そうだな、心の強い奴が望ましい」
そうハンター達に切り出したのは、見た目が15歳ほどの、自称25歳の男だった。
おかっぱに切りそろえた金の髪、世界を見放したような冷ややかな視線は銀の色で、片手に杖をついている。
シャルル・シュルヴィーヴル、同盟領北西部に存在するシャリール地方の領主近衛。それを証明するように、提示された紋章はシャリール地方を象徴する雪の結晶に似た銀の歯車だった。
「我がシャリール地方には慰霊堂が幾つかある、遥か昔にあった歪虚南下の名残なんだが、毎週近隣の教会に勤める神父が訪れ、祈りを捧げる事になっている」
慰霊堂は一階が聖堂になっていて、実際に墓所となっているのは地下部分だ。納骨壇が壁一面に広がり、中央の慰霊碑には命を落としたと思わしき人々の名前が刻まれていたが、その記録はかなりあやふやで、遺体があって身元も確かなものに至っては数えるほどしか存在しない。
「墓所から女の泣き声が聞こえるって神父が駆け込んで来たのが先日の話だ、たまたま当直外だったので私が直接行って確認した」
危険だという心配はない、シャルルは覚醒者だし、元々傭兵の出らしい。
墓所には確かにすすり泣く声が響いていた、それも普通の泣き声ではなく、やけに精神を揺さぶる、精神汚染にも似た慟哭だ。
「地下の墓所が歪虚に乗っ取られていた、スケルトンだらけで軽い亡霊軍団みたいになってたが、最奥に一体だけ少女のヒトガタがいた……多分、あれが本体だな」
多数のスケルトンを見た時点で深入りは無用と悟り、シャルルは情報だけ集めて撤退してきた。
スケルトンは脆く、銃で撃って二発もあれば砕く事が出来るらしい。だが攻撃は鋭く、放置するには不安がある。
そしてスケルトンは時間経過ごとに増える、シャルルが幾つか減らしたが、ハンター達が出向く頃には元通りになっているだろう。
「少女の方は……バンシーか? 精神を揺さぶる慟哭と、地面から腕のような影を伸ばして触れてくる。この腕の効果は触られるまでわからない、体力奪取と動きを止める二種類だけ確認した」
慟哭は耳栓では止まらないだろう、とシャルルは言う、聴覚からどうこうではなく、頭に直接悲嘆の感情をぶちこまれる感じらしい。
彼女の悲嘆は自分の事じゃない、そんな事はわかっている。それでも尚大切な人に置いて行かれて、そのまま終幕を迎える絶望は息が詰まる。
言うかどうか迷う素振りを見せて、きっと伝えておくべきなのだろうと、シャルルはため息混じりに言葉を続けた。
「嘘つき、って言っていた。なんで行ってしまったのって、まぁ……当時の状況を考えれば大体想像はつくが」
少し強力な歪虚が発生しただけで集落が一つ消える過酷な時代、中央まで逃げ込めば助かるかもしれないが、山岳部という過酷な地形ではそれも命がけになる。
女子供では歪虚を撒いて山を超えられない、男でも賭けになるだろう、でも何もしなければどの道助かる道はない、ならば助けを呼ぶ事に望みをかけるしか―――。
あの叫びから察するに、きっと二人の結末は共に暗黒に飲まれるようなものだった。
「凄く多い訳ではなかったが、300年前では稀にあるような事だった」
今では歪虚も北部に押し込まれ、転送門によってハンター達が迅速に駆けつけてくれるようになっている。
この事を伝えるのはハンター達に心の準備をさせるためだ、予備知識があれば動揺も少なくなるだろう。
「その……一つ聞きたいんだが」
「なんだ」
死体が動いたのか? とハンター達は尋ねた。どの道消滅させるにしても、その意味合いは随分と違う。
「いや、違う。遺体は残らず火葬されている、だから、あのヒトガタは遺体そのものではない、あくまで“遺体から生まれた歪虚”だ」
それは少女が召喚するスケルトンにも言えるという。
「……だからな、遺体の無念が歪虚化したからって、その歪虚が本人だとは限らない。
何しろ本人は“既に死んでいる”、歪虚になったとして、その口から喋る事が本人の意志かなんて永遠の空論だ」
考え方はきっと色々あるのだろう、シャルルに対して非友好的な目線もあるかもしれない、だがそれを真っ向から跳ね返して、シャルルは締めの言葉を口にした。
「考え方は好きにしろ、だが墓所は眠りの地であるべきだ、それを果たして欲しい」
―――ちゃんと戻ってくる、助けを呼びに行ってくるから、ここで隠れてるんだ。
ちゃんと戻ってくるって言ったのに。
私を一人にしたりしないって言ったのに。
助けが来なかった事よりも、自分が助からない事よりも、あなたがたどり着けなかったと悟ってしまった絶望の方が遥かに心を蝕んだ。
ちゃんと戻ってくるって言ったのに! 嘘つき!
…………。
シャリール地方には幾つか荒廃した地域が存在する。
それは300年以上前、帝国がまだ成立していなくて、歪虚が南下を仕掛けてきた頃の名残だ。
シャリール地方は当時から存在していたが、その生活は厳しく、途轍もなく綱渡りなものだったらしい。
山岳と峡谷の狭間に人里が存在し、過酷な地形故に人手が行き渡らない。主な食料源は牧畜で、しかし歪虚が活発となるとそれも命がけになる。
少しでも強力な歪虚が湧くと、それだけで集落が一つ消える。北部辺境領が成立してからは随分と楽になったようだが、だからといって犠牲の歴史がなくなる訳でもない。
生活が一息ついた頃に、生き残った住民たちは見つかるだけの遺骨を拾い集め、慰霊堂を作った。
収納出来なかった人はかなりいると思う。その時手が届く範囲は、それほど広くなかったのだ。
+
「慰霊堂に発生した歪虚を討伐して欲しい、……そうだな、心の強い奴が望ましい」
そうハンター達に切り出したのは、見た目が15歳ほどの、自称25歳の男だった。
おかっぱに切りそろえた金の髪、世界を見放したような冷ややかな視線は銀の色で、片手に杖をついている。
シャルル・シュルヴィーヴル、同盟領北西部に存在するシャリール地方の領主近衛。それを証明するように、提示された紋章はシャリール地方を象徴する雪の結晶に似た銀の歯車だった。
「我がシャリール地方には慰霊堂が幾つかある、遥か昔にあった歪虚南下の名残なんだが、毎週近隣の教会に勤める神父が訪れ、祈りを捧げる事になっている」
慰霊堂は一階が聖堂になっていて、実際に墓所となっているのは地下部分だ。納骨壇が壁一面に広がり、中央の慰霊碑には命を落としたと思わしき人々の名前が刻まれていたが、その記録はかなりあやふやで、遺体があって身元も確かなものに至っては数えるほどしか存在しない。
「墓所から女の泣き声が聞こえるって神父が駆け込んで来たのが先日の話だ、たまたま当直外だったので私が直接行って確認した」
危険だという心配はない、シャルルは覚醒者だし、元々傭兵の出らしい。
墓所には確かにすすり泣く声が響いていた、それも普通の泣き声ではなく、やけに精神を揺さぶる、精神汚染にも似た慟哭だ。
「地下の墓所が歪虚に乗っ取られていた、スケルトンだらけで軽い亡霊軍団みたいになってたが、最奥に一体だけ少女のヒトガタがいた……多分、あれが本体だな」
多数のスケルトンを見た時点で深入りは無用と悟り、シャルルは情報だけ集めて撤退してきた。
スケルトンは脆く、銃で撃って二発もあれば砕く事が出来るらしい。だが攻撃は鋭く、放置するには不安がある。
そしてスケルトンは時間経過ごとに増える、シャルルが幾つか減らしたが、ハンター達が出向く頃には元通りになっているだろう。
「少女の方は……バンシーか? 精神を揺さぶる慟哭と、地面から腕のような影を伸ばして触れてくる。この腕の効果は触られるまでわからない、体力奪取と動きを止める二種類だけ確認した」
慟哭は耳栓では止まらないだろう、とシャルルは言う、聴覚からどうこうではなく、頭に直接悲嘆の感情をぶちこまれる感じらしい。
彼女の悲嘆は自分の事じゃない、そんな事はわかっている。それでも尚大切な人に置いて行かれて、そのまま終幕を迎える絶望は息が詰まる。
言うかどうか迷う素振りを見せて、きっと伝えておくべきなのだろうと、シャルルはため息混じりに言葉を続けた。
「嘘つき、って言っていた。なんで行ってしまったのって、まぁ……当時の状況を考えれば大体想像はつくが」
少し強力な歪虚が発生しただけで集落が一つ消える過酷な時代、中央まで逃げ込めば助かるかもしれないが、山岳部という過酷な地形ではそれも命がけになる。
女子供では歪虚を撒いて山を超えられない、男でも賭けになるだろう、でも何もしなければどの道助かる道はない、ならば助けを呼ぶ事に望みをかけるしか―――。
あの叫びから察するに、きっと二人の結末は共に暗黒に飲まれるようなものだった。
「凄く多い訳ではなかったが、300年前では稀にあるような事だった」
今では歪虚も北部に押し込まれ、転送門によってハンター達が迅速に駆けつけてくれるようになっている。
この事を伝えるのはハンター達に心の準備をさせるためだ、予備知識があれば動揺も少なくなるだろう。
「その……一つ聞きたいんだが」
「なんだ」
死体が動いたのか? とハンター達は尋ねた。どの道消滅させるにしても、その意味合いは随分と違う。
「いや、違う。遺体は残らず火葬されている、だから、あのヒトガタは遺体そのものではない、あくまで“遺体から生まれた歪虚”だ」
それは少女が召喚するスケルトンにも言えるという。
「……だからな、遺体の無念が歪虚化したからって、その歪虚が本人だとは限らない。
何しろ本人は“既に死んでいる”、歪虚になったとして、その口から喋る事が本人の意志かなんて永遠の空論だ」
考え方はきっと色々あるのだろう、シャルルに対して非友好的な目線もあるかもしれない、だがそれを真っ向から跳ね返して、シャルルは締めの言葉を口にした。
「考え方は好きにしろ、だが墓所は眠りの地であるべきだ、それを果たして欲しい」
解説
+概要
慰霊堂を乗っ取った歪虚の一掃。
+敵:悲嘆の亡霊
最奥に泣きじゃくる少女の姿をした歪虚。
開始時点でスケルトン8体、毎ターンスケルトンを1体召喚させます。
スケルトンは単純な“強打”しか行いません。
スケルトンは攻撃力やや上の耐久力低め、少女のHPが半分切ったら毎ターン3体。
遺体そのものではなく、遺体を媒体にして召喚された歪虚です。
ボスの行動内容
→地底からの腕(遠隔・効果ランダム?) ※体力吸収と動作阻害を確認
→悲嘆の叫び(ほぼ全域・効果範囲に判定ペナルティ)
→攻撃指令(サブアクション)
タッチと叫びはランダム間隔で飛んできます。
攻撃指令はボスが指定したPCを集中攻撃する指令。
+地形:墓所
火葬ののち、遺灰を壁の納骨壇に収める形式になっています。
通路はスケルトンが3体、PCなら2人並んで戦えます。
開けた場所では射線確保した上で四人くらい同時にいけるかなーとか。
暴れすぎると納骨壇に被害が出るかもしれません。
武器や魔法が壁面にかすった程度なら大丈夫、納骨壇が粉砕されて減点レベルです。
+ボーナス
心情寄りのシナリオなので任務的にひねるところはありません、トラップもないです。
純粋な戦闘陣形及び心情プレイングにて判定させていただきます。
+シャルル
同行しません、仕事の説明と言いにくい事をポンポン言うのが仕事です。
慰霊堂を乗っ取った歪虚の一掃。
+敵:悲嘆の亡霊
最奥に泣きじゃくる少女の姿をした歪虚。
開始時点でスケルトン8体、毎ターンスケルトンを1体召喚させます。
スケルトンは単純な“強打”しか行いません。
スケルトンは攻撃力やや上の耐久力低め、少女のHPが半分切ったら毎ターン3体。
遺体そのものではなく、遺体を媒体にして召喚された歪虚です。
ボスの行動内容
→地底からの腕(遠隔・効果ランダム?) ※体力吸収と動作阻害を確認
→悲嘆の叫び(ほぼ全域・効果範囲に判定ペナルティ)
→攻撃指令(サブアクション)
タッチと叫びはランダム間隔で飛んできます。
攻撃指令はボスが指定したPCを集中攻撃する指令。
+地形:墓所
火葬ののち、遺灰を壁の納骨壇に収める形式になっています。
通路はスケルトンが3体、PCなら2人並んで戦えます。
開けた場所では射線確保した上で四人くらい同時にいけるかなーとか。
暴れすぎると納骨壇に被害が出るかもしれません。
武器や魔法が壁面にかすった程度なら大丈夫、納骨壇が粉砕されて減点レベルです。
+ボーナス
心情寄りのシナリオなので任務的にひねるところはありません、トラップもないです。
純粋な戦闘陣形及び心情プレイングにて判定させていただきます。
+シャルル
同行しません、仕事の説明と言いにくい事をポンポン言うのが仕事です。
マスターより
音無です、生前の恨み(っぽい何か)を抱えて生まれた歪虚は果たして本人と言えるかどうか。
相手を想ってつく嘘は果たして救いなのかどうか。
シャルルのスタンスはあの通りですが、きっと違う意見もあるのでしょう。
このシナリオで答えを出す気はありません、全ては個人がどう思うかです。
ではご縁がありましたら宜しくお願いします、音無でした。
相手を想ってつく嘘は果たして救いなのかどうか。
シャルルのスタンスはあの通りですが、きっと違う意見もあるのでしょう。
このシナリオで答えを出す気はありません、全ては個人がどう思うかです。
ではご縁がありましたら宜しくお願いします、音無でした。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2017/11/20 17:43
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 ラウィーヤ・マクトゥーム(ka0457) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2017/03/19 16:46:20 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/03/16 01:40:13 |