ゲスト
(ka0000)
【陶曲】このこころ
マスター:月原みなみ

このシナリオは5日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2017/03/22 09:00
- リプレイ完成予定
- 2017/04/05 09:00
オープニング
●暗底の渓谷
天頂に差した太陽すらも渓谷の底を照らす事はない。
それほどに深く底の知れぬ大地の傷跡の周辺は、まるで谷の闇が辺りの生を吸い尽くしたかのように無機質な世界が広がっていた。
命と思しきものなど何一つ目にする事の出来ない、殺伐とした世界。
しかし、現在。
そこには大地の裂け目へと近付く男の姿があった。
カッツオ・ヴォイ――かつて殺人脚本家と呼ばれた人物だ。
規則正しい歩調と、首元にフリルを飾った黒のスーツ姿は、まるでこれから舞台に上がろうとする役者のように美麗。
しかし黒のシルクハットを目深に被った顔は不気味な仮面に覆われており、彼が目指すのは舞台などではなく眼前に広がる渓谷の『底』。
もしも見る者があれば声を上げる間もなかったであろう程に、彼は一瞬の躊躇いもなく谷へと身を投げた。
仮面の下の表情は伺い知れない。
声を上げる事もない。
無音と闇が支配する渓谷の奥底に、僅かに砂塵を舞い上げただけで着地してみせると、光すら届かぬ完全なる無視界を迷うことなく歩き始める。
そうしてしばらくの後に辿り着いた闇の虚空の、ただ一点を見つめて語りかける。
「ごきげんよう」
無音の世界に響く美しい声。
返す言葉はなく、それを彼自身も知りながら、尚。
「そろそろお目覚めになられてはいかがですかな? このままでは貴方一人が忘れられてしまいますよ」
静寂。
無。
それでも彼は。
「おそらく貴方も楽しめると思うのですが、ね」
尚も呟きかけるが、闇は一切の反応を示さない。
あえて滲ませた微かな感情にすら返されない手応えに、声の主は何年かぶりに付くため息とともに踵を返した。
声の主が去り、再び谷の奥底に静寂と無が訪れる。
――……ドクン……――。
地の奥底で何かが蠢き始めた。
●冒険都市リゼリオ
その日、リゼリオのハンターオフィスは早朝から上へ下への大騒ぎ。
消防士や海軍という組織からの依頼もあれば住民からの依頼もあり、そのどれもが工業都市フマーレと港湾都市ポルトワールからの緊急を要するものなのだ。
「す、すみませ……っ、私のお願いも聞いて……っう」
「ちょ、大丈夫ですか!?」
衣服のあちこちが黒く煤けている女性が、体を引き摺るようにして受付まで来たものの、辿り着いたことで気が抜けたのかそのまま崩れ落ちてしまった。
対応しようとしていた受付嬢が慌てて介抱すると、手に一枚の紙片を握りしめている事に気付く。
端が黒く焼け焦げているものの、工業都市フマーレで荷物を受け取った証明書の切れ端のようだった。
「……何か大事な荷物を紛失したのかしら」
此処まで来るくらいだ、なくしたことで人生を左右してしまうほど大切なものなのかもしれない。
「……一体、二つの都市で何が起こってるの」
いまだ平穏を保つリゼリオにいてなお感じずにはいられない異常事態。
更なる災厄の前兆でないことを願うばかりだが――……。
●そして願いは託されて
数時間後、女性はハンターオフィスの一室で目を覚ました。
咄嗟には自身の状況を理解出来ずに呆けていたが、職員に「フマーレから此処まで来たの? 一人で?」と尋ねられてようやく思い出したのだろう。
「お願いします! あの人を……っ、弟が母に送ってくれた荷物を運んでくれた人を見つけてください!」
「えっ、ちょっ」
職員に掴みかかるようにして大声を上げた彼女は、しかしまだ体力が戻っていないためにふらついて倒れそうになる。
「お願い……っ、あの人を助けてください……っ」
「分かったわ、分かったから落ち着いてちょうだい」
息が上がる女性を椅子に座らせ、職員は大きく深呼吸。
「ほら、一緒に」
すー……はー……すー……はー……、繰り返される深呼吸に、女性もやっと落ち着きを取り戻した。
申し訳なさそうに視線を落とし「ご迷惑をお掛けしました、……私はマイヤ・ラランと申します」と名乗った。
聞けば彼女の実家はリゼリオに近く、数年前に結婚しフマーレへ引っ越したのだという。
そして去年の秋に可愛がってくれていた祖母が亡くなり、祖母の家を片付けていた弟から形見分けの品が届いたのだ、と。
「その荷物が、いま起きている騒ぎが原因で行方不明になってしまったのね……?」
「……突然、辺りから火の手が上がって……あっという間に燃え広がりました。荷物を受け取ろうとしていたのに逃げなきゃいけなくなって、運んでくれていた人が火の向こうに見えなくなってしまって……っ、そしたら瓦礫がものすごい勢いでそちら側に……っ」
「じゃあその人は……」
マイヤは激しく左右に首を振った。
「判りません……っ、助けなきゃって思ったけど、体が動かなくなってしまって……! 逃げろって近所の人たちに引き摺られて……っ、助けてって叫んだけど、みんな逃げるのに必死で!」
あの大火の中、仕方のない事だと彼女も頭では分かっているのだろう。
それでも、――いや、だからこそ此処に駆け込んでくるしかなかった。
職員はマイヤの手を両手で包み込むと、力強いまなざしで見つめる。
「判った。フマーレの大火に関しては他の依頼もあって難しいかもしれないけど、でも、きっと助けてくれるハンター達がいるわ。信じましょう」
「はい……っ」
マイヤは自分の手を包んでくれた職員の手に涙を落とし、何度も何度も頷く。
念のために夫君はどうしているのか確認してみると、延焼を防ぐため前線で消火活動にあたっているという。
夫には頼れず、目の前で人が炎に巻かれ、この女性はどんな思いでここまで走ってきたのだろうか。
こうして一枚の依頼が張り出された。
フマーレにおける人命救助の依頼である――。
天頂に差した太陽すらも渓谷の底を照らす事はない。
それほどに深く底の知れぬ大地の傷跡の周辺は、まるで谷の闇が辺りの生を吸い尽くしたかのように無機質な世界が広がっていた。
命と思しきものなど何一つ目にする事の出来ない、殺伐とした世界。
しかし、現在。
そこには大地の裂け目へと近付く男の姿があった。
カッツオ・ヴォイ――かつて殺人脚本家と呼ばれた人物だ。
規則正しい歩調と、首元にフリルを飾った黒のスーツ姿は、まるでこれから舞台に上がろうとする役者のように美麗。
しかし黒のシルクハットを目深に被った顔は不気味な仮面に覆われており、彼が目指すのは舞台などではなく眼前に広がる渓谷の『底』。
もしも見る者があれば声を上げる間もなかったであろう程に、彼は一瞬の躊躇いもなく谷へと身を投げた。
仮面の下の表情は伺い知れない。
声を上げる事もない。
無音と闇が支配する渓谷の奥底に、僅かに砂塵を舞い上げただけで着地してみせると、光すら届かぬ完全なる無視界を迷うことなく歩き始める。
そうしてしばらくの後に辿り着いた闇の虚空の、ただ一点を見つめて語りかける。
「ごきげんよう」
無音の世界に響く美しい声。
返す言葉はなく、それを彼自身も知りながら、尚。
「そろそろお目覚めになられてはいかがですかな? このままでは貴方一人が忘れられてしまいますよ」
静寂。
無。
それでも彼は。
「おそらく貴方も楽しめると思うのですが、ね」
尚も呟きかけるが、闇は一切の反応を示さない。
あえて滲ませた微かな感情にすら返されない手応えに、声の主は何年かぶりに付くため息とともに踵を返した。
声の主が去り、再び谷の奥底に静寂と無が訪れる。
――……ドクン……――。
地の奥底で何かが蠢き始めた。
●冒険都市リゼリオ
その日、リゼリオのハンターオフィスは早朝から上へ下への大騒ぎ。
消防士や海軍という組織からの依頼もあれば住民からの依頼もあり、そのどれもが工業都市フマーレと港湾都市ポルトワールからの緊急を要するものなのだ。
「す、すみませ……っ、私のお願いも聞いて……っう」
「ちょ、大丈夫ですか!?」
衣服のあちこちが黒く煤けている女性が、体を引き摺るようにして受付まで来たものの、辿り着いたことで気が抜けたのかそのまま崩れ落ちてしまった。
対応しようとしていた受付嬢が慌てて介抱すると、手に一枚の紙片を握りしめている事に気付く。
端が黒く焼け焦げているものの、工業都市フマーレで荷物を受け取った証明書の切れ端のようだった。
「……何か大事な荷物を紛失したのかしら」
此処まで来るくらいだ、なくしたことで人生を左右してしまうほど大切なものなのかもしれない。
「……一体、二つの都市で何が起こってるの」
いまだ平穏を保つリゼリオにいてなお感じずにはいられない異常事態。
更なる災厄の前兆でないことを願うばかりだが――……。
●そして願いは託されて
数時間後、女性はハンターオフィスの一室で目を覚ました。
咄嗟には自身の状況を理解出来ずに呆けていたが、職員に「フマーレから此処まで来たの? 一人で?」と尋ねられてようやく思い出したのだろう。
「お願いします! あの人を……っ、弟が母に送ってくれた荷物を運んでくれた人を見つけてください!」
「えっ、ちょっ」
職員に掴みかかるようにして大声を上げた彼女は、しかしまだ体力が戻っていないためにふらついて倒れそうになる。
「お願い……っ、あの人を助けてください……っ」
「分かったわ、分かったから落ち着いてちょうだい」
息が上がる女性を椅子に座らせ、職員は大きく深呼吸。
「ほら、一緒に」
すー……はー……すー……はー……、繰り返される深呼吸に、女性もやっと落ち着きを取り戻した。
申し訳なさそうに視線を落とし「ご迷惑をお掛けしました、……私はマイヤ・ラランと申します」と名乗った。
聞けば彼女の実家はリゼリオに近く、数年前に結婚しフマーレへ引っ越したのだという。
そして去年の秋に可愛がってくれていた祖母が亡くなり、祖母の家を片付けていた弟から形見分けの品が届いたのだ、と。
「その荷物が、いま起きている騒ぎが原因で行方不明になってしまったのね……?」
「……突然、辺りから火の手が上がって……あっという間に燃え広がりました。荷物を受け取ろうとしていたのに逃げなきゃいけなくなって、運んでくれていた人が火の向こうに見えなくなってしまって……っ、そしたら瓦礫がものすごい勢いでそちら側に……っ」
「じゃあその人は……」
マイヤは激しく左右に首を振った。
「判りません……っ、助けなきゃって思ったけど、体が動かなくなってしまって……! 逃げろって近所の人たちに引き摺られて……っ、助けてって叫んだけど、みんな逃げるのに必死で!」
あの大火の中、仕方のない事だと彼女も頭では分かっているのだろう。
それでも、――いや、だからこそ此処に駆け込んでくるしかなかった。
職員はマイヤの手を両手で包み込むと、力強いまなざしで見つめる。
「判った。フマーレの大火に関しては他の依頼もあって難しいかもしれないけど、でも、きっと助けてくれるハンター達がいるわ。信じましょう」
「はい……っ」
マイヤは自分の手を包んでくれた職員の手に涙を落とし、何度も何度も頷く。
念のために夫君はどうしているのか確認してみると、延焼を防ぐため前線で消火活動にあたっているという。
夫には頼れず、目の前で人が炎に巻かれ、この女性はどんな思いでここまで走ってきたのだろうか。
こうして一枚の依頼が張り出された。
フマーレにおける人命救助の依頼である――。
解説
●依頼内容
現在、範囲不明の大火に襲われている蒸気工業都市フマーレで、人命救助を行います
依頼人マイヤ・ラランが救助を依頼しているのは、自身の自宅付近で大火に襲われ、瓦礫の下敷きになったと思われる荷物を運んできてくれた男性です
40代前半の一般人
配達の仕事をしており、マイヤの家だけでなく近所の人たちの荷物も届けていたので、顔見知りは多い
フマーレは原因不明の大火、更には爆発も起きています
くれぐれもご注意ください
救助して欲しいのは【配達の仕事をしている人物】です
人命救助に+アルファがあるといいかもしれません
現在、範囲不明の大火に襲われている蒸気工業都市フマーレで、人命救助を行います
依頼人マイヤ・ラランが救助を依頼しているのは、自身の自宅付近で大火に襲われ、瓦礫の下敷きになったと思われる荷物を運んできてくれた男性です
40代前半の一般人
配達の仕事をしており、マイヤの家だけでなく近所の人たちの荷物も届けていたので、顔見知りは多い
フマーレは原因不明の大火、更には爆発も起きています
くれぐれもご注意ください
救助して欲しいのは【配達の仕事をしている人物】です
人命救助に+アルファがあるといいかもしれません
マスターより
大変ご無沙汰しております。
初めまして、の方のほうが多い気がします。私自身久々過ぎてOPの申請方法すら忘れてました。そんなへっぽこですが数年振りに帰って参りました月原です。
本当に不安だらけですが、再び皆様と一緒に冒険出来るようになったいま、前向きなどきどきも確かにここにあります。
改めまして、どうぞよろしくお願い致します。
初めまして、の方のほうが多い気がします。私自身久々過ぎてOPの申請方法すら忘れてました。そんなへっぽこですが数年振りに帰って参りました月原です。
本当に不安だらけですが、再び皆様と一緒に冒険出来るようになったいま、前向きなどきどきも確かにここにあります。
改めまして、どうぞよろしくお願い致します。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2017/04/04 01:41
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 デスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013) 人間(リアルブルー)|34才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/03/20 11:25:20 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/03/18 10:13:22 |