ゲスト
(ka0000)
【陶曲】捻子の反乱、壱の陣
マスター:佐倉眸

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2017/03/22 07:30
- リプレイ完成予定
- 2017/03/31 07:30
オープニング
●
フマーレの東の外れには、嘗てお化け屋敷と噂された廃工場を改装し、巨大な水車を動力に使う紡績工場がある。
阪井紡績有限会社、リアルブルーで大工場の跡取りだった阪井輔が青年時代にこちらへ渡り、数十年を経て設立した工場。
阪井と、彼に雇われた社員一号、エンリコ・アモーレ、そして、ある冬の日に工場の機械の隙間から保護された狐のブルーム。2人と1匹がかたかたと賑やかな機械に囲まれ、忙しない日々を過ごしている。
工場の多いフマーレの中でも、あまり大きく無いこの一角、人々は時に競い、時に協力しながら暮らし、彼等もその一員となって1年、2年、その商売は漸く軌道に乗り始めていた。
その日も、阪井は綿から引き延ばされて撚りを掛けられ、紡がれ続けていく糸が切れぬ様に見張り、エンリコは紡がれた糸を倉庫に運んで綿を掛け替え、ブルームは日当たりの良い床で丸くなり揺らす尻尾を綿埃に塗れさせながら昼寝に勤しんでいた。
おや、と阪井が機械を止める。
溜息を吐くと、ドライバーを手に隙間に手を伸ばした。
捻子が緩んでいるらしい。
「また不調ですか?」
エンリコが綿を抱えて声を掛けた。
「ああ……捻子だけだと思ったら、奥の歯車も曲がっているね。本体が歪んではいないから、手が空いたときにでも換えておこう」
今はこの台だけ糸を外しておけばいい。
「1度全部調べた方が良いかも知れないっすね、機械が壊れるって最近よく聞きますし……まあ、この辺、古い工場ばっかりですからね」
寿命だろう、と笑う。
しかし、ここで使っている物は稼働に合わせて組み立てたものだ。流石に寿命は無いだろうと、阪井は首を捻る。
捻子や歯車が緩む。錆だろうかと見てもそんな様子は無く、気付けばぽとりと落ちて、台が傾いている。
もしかしたら、それを打ち込んでいる木の土台や支柱が痛んでいるのかも知れない。
エンリコの言う通り、よく調べた方が良いだろう。
「――今夜から、一台ずつやっていこうか。まずはこれからだな」
阪井は、今止めた台を一瞥して作業に戻った。
●
通りに面して植えられた庭木の蕾が綻び甘い香りを零す朝、ブルームを肩に乗せて出勤したエンリコは庭でその足を止めた。
工場の鉄扉は開かれて、その傍らに阪井が立ち尽くしている。
肩から身体を伝い下りて、阪井の傍に走るブルームを追って声を掛けた。
「おはようございます、どうしたんすか?」
近付くと目に入る工場の中、倒れた機械と、散らかる部品。
昨晩掛けっぱなしにした真白い綿が、下敷きになって汚れている。
「……なん、すか。これ……」
昨晩機械の稼働を止め、2人で施錠を確かめてから帰ったはずだ。
「……困ったねえ」
深々と溜息を吐く阪井の声に、いつもの覇気は無い。眉間を抑えて俯き、肩を震わせて歯を噛んでいる。
ブルームが阪井の足に擦り寄って、励ます様に尻尾で叩く。くん、と小さな鳴き声にエンリコはその首根を掴んで阪井の肩に上らせた。
「片付けないと、何にも出来無いっすから。柱は重いし、釘も散らかっててブルームが踏むといけないんで、阪井さんはブルームと待ってて下さい……あの辺とか、倒れてるだけで、直せば多分動くと思うっすから」
エンリコが工場の中に向かう。阪井も否と首を横に揺らし、釘を拾うくらい手伝えると屈んだ。
踏み込んだ瞬間、ぞっと怖気が走る。
工場の木と綿の温かい匂いとは違う、生ぬるい錆の、湿気って不快な異臭を感じた。
何か、また野生動物でも迷い込んだのだろうかと見回す。
きぃん、と耳鳴りの様な音と頭痛に足がふらついてしゃがみ込んだ。
「――危ない、エンリコ君」
「……ひぃいい」
阪井の声に振り返ると、その直前までエンリコの首が有った辺りをぎらりと黒光りする捻子が飛んでいった。
捻子が床に落ちたかと安堵すると、その捻子に弾かれた様に歯車が跳んでエンリコの額を襲う。
「いてっ……うわ、ちょ、待って」
飛んでくる歯車を捻子を、釘を避けて躱して、エンリコは工場の外へと向かう。
弾かれてきた鋭い捻子の切っ先に目玉を突かれそうになる寸前、飛び上がって身を翻すブルーム尾がそれを叩き落とし、横から伸びてきた阪井の腕がエンリコの上着を掴んで工場の外へ引きずり出した。
尚襲ってくる部品を鉄扉を盾にしながら閉ざすと、2人は座り込んで空を仰いだ。
●
『工場で荒れている部品を止めて下さい。歪虚の可能性有り。注意』
依頼に応じて集まったハンター達が地理に明るく案内人を自称する受付嬢に連れられて阪井紡績に向かう。
道中の説明では、紡績機械に使っていた釘や歯車がぶつかり合いながら襲ってきたということのみ。
小さな部品を弾いて襲ってきたにしては、目とか首とか、急所を的確に狙われたと、震えながら話していた。
「……あの工場は、開くときのお掃除とか、動力源の水車を運んだりとか……仕入れに行って帰れなくなったエンリコさんを迎えに行ったりとか、ブルームさんを助けたりとか……何度もハンターさんを頼ってくれているんです。だから、今回も、きっと助けられるって、私、そう信じてるんです。ハンターさんは、すごい人達だから。強くて優しくて、格好いいんです!」
工場に到着した。
鉄扉を開けると、薄暗い工場の中には人影があった。
しかし、それは、人では無く。
暗い影を帯びた部品の、恐らく工場で使われていたであろう歯車や捻子を人型に寄せ集めた、固まり。
金属のぶつかり合う音を響かせて、ゆらりと動くと上肢のような部分を擡げ、部品を置き換えて五指を象る。
――おいで、おいで――
そう言って誘うかの様に、その手を揺らした。
フマーレの東の外れには、嘗てお化け屋敷と噂された廃工場を改装し、巨大な水車を動力に使う紡績工場がある。
阪井紡績有限会社、リアルブルーで大工場の跡取りだった阪井輔が青年時代にこちらへ渡り、数十年を経て設立した工場。
阪井と、彼に雇われた社員一号、エンリコ・アモーレ、そして、ある冬の日に工場の機械の隙間から保護された狐のブルーム。2人と1匹がかたかたと賑やかな機械に囲まれ、忙しない日々を過ごしている。
工場の多いフマーレの中でも、あまり大きく無いこの一角、人々は時に競い、時に協力しながら暮らし、彼等もその一員となって1年、2年、その商売は漸く軌道に乗り始めていた。
その日も、阪井は綿から引き延ばされて撚りを掛けられ、紡がれ続けていく糸が切れぬ様に見張り、エンリコは紡がれた糸を倉庫に運んで綿を掛け替え、ブルームは日当たりの良い床で丸くなり揺らす尻尾を綿埃に塗れさせながら昼寝に勤しんでいた。
おや、と阪井が機械を止める。
溜息を吐くと、ドライバーを手に隙間に手を伸ばした。
捻子が緩んでいるらしい。
「また不調ですか?」
エンリコが綿を抱えて声を掛けた。
「ああ……捻子だけだと思ったら、奥の歯車も曲がっているね。本体が歪んではいないから、手が空いたときにでも換えておこう」
今はこの台だけ糸を外しておけばいい。
「1度全部調べた方が良いかも知れないっすね、機械が壊れるって最近よく聞きますし……まあ、この辺、古い工場ばっかりですからね」
寿命だろう、と笑う。
しかし、ここで使っている物は稼働に合わせて組み立てたものだ。流石に寿命は無いだろうと、阪井は首を捻る。
捻子や歯車が緩む。錆だろうかと見てもそんな様子は無く、気付けばぽとりと落ちて、台が傾いている。
もしかしたら、それを打ち込んでいる木の土台や支柱が痛んでいるのかも知れない。
エンリコの言う通り、よく調べた方が良いだろう。
「――今夜から、一台ずつやっていこうか。まずはこれからだな」
阪井は、今止めた台を一瞥して作業に戻った。
●
通りに面して植えられた庭木の蕾が綻び甘い香りを零す朝、ブルームを肩に乗せて出勤したエンリコは庭でその足を止めた。
工場の鉄扉は開かれて、その傍らに阪井が立ち尽くしている。
肩から身体を伝い下りて、阪井の傍に走るブルームを追って声を掛けた。
「おはようございます、どうしたんすか?」
近付くと目に入る工場の中、倒れた機械と、散らかる部品。
昨晩掛けっぱなしにした真白い綿が、下敷きになって汚れている。
「……なん、すか。これ……」
昨晩機械の稼働を止め、2人で施錠を確かめてから帰ったはずだ。
「……困ったねえ」
深々と溜息を吐く阪井の声に、いつもの覇気は無い。眉間を抑えて俯き、肩を震わせて歯を噛んでいる。
ブルームが阪井の足に擦り寄って、励ます様に尻尾で叩く。くん、と小さな鳴き声にエンリコはその首根を掴んで阪井の肩に上らせた。
「片付けないと、何にも出来無いっすから。柱は重いし、釘も散らかっててブルームが踏むといけないんで、阪井さんはブルームと待ってて下さい……あの辺とか、倒れてるだけで、直せば多分動くと思うっすから」
エンリコが工場の中に向かう。阪井も否と首を横に揺らし、釘を拾うくらい手伝えると屈んだ。
踏み込んだ瞬間、ぞっと怖気が走る。
工場の木と綿の温かい匂いとは違う、生ぬるい錆の、湿気って不快な異臭を感じた。
何か、また野生動物でも迷い込んだのだろうかと見回す。
きぃん、と耳鳴りの様な音と頭痛に足がふらついてしゃがみ込んだ。
「――危ない、エンリコ君」
「……ひぃいい」
阪井の声に振り返ると、その直前までエンリコの首が有った辺りをぎらりと黒光りする捻子が飛んでいった。
捻子が床に落ちたかと安堵すると、その捻子に弾かれた様に歯車が跳んでエンリコの額を襲う。
「いてっ……うわ、ちょ、待って」
飛んでくる歯車を捻子を、釘を避けて躱して、エンリコは工場の外へと向かう。
弾かれてきた鋭い捻子の切っ先に目玉を突かれそうになる寸前、飛び上がって身を翻すブルーム尾がそれを叩き落とし、横から伸びてきた阪井の腕がエンリコの上着を掴んで工場の外へ引きずり出した。
尚襲ってくる部品を鉄扉を盾にしながら閉ざすと、2人は座り込んで空を仰いだ。
●
『工場で荒れている部品を止めて下さい。歪虚の可能性有り。注意』
依頼に応じて集まったハンター達が地理に明るく案内人を自称する受付嬢に連れられて阪井紡績に向かう。
道中の説明では、紡績機械に使っていた釘や歯車がぶつかり合いながら襲ってきたということのみ。
小さな部品を弾いて襲ってきたにしては、目とか首とか、急所を的確に狙われたと、震えながら話していた。
「……あの工場は、開くときのお掃除とか、動力源の水車を運んだりとか……仕入れに行って帰れなくなったエンリコさんを迎えに行ったりとか、ブルームさんを助けたりとか……何度もハンターさんを頼ってくれているんです。だから、今回も、きっと助けられるって、私、そう信じてるんです。ハンターさんは、すごい人達だから。強くて優しくて、格好いいんです!」
工場に到着した。
鉄扉を開けると、薄暗い工場の中には人影があった。
しかし、それは、人では無く。
暗い影を帯びた部品の、恐らく工場で使われていたであろう歯車や捻子を人型に寄せ集めた、固まり。
金属のぶつかり合う音を響かせて、ゆらりと動くと上肢のような部分を擡げ、部品を置き換えて五指を象る。
――おいで、おいで――
そう言って誘うかの様に、その手を揺らした。
解説
目的 歪虚を倒す(撤退させる)
●エネミー
金属部品の固まり(歪虚)×1
自身を構成する釘や捻子、歯車を自在に操り、
1箇所に集めたり、弾き飛ばしたり等の、防御や攻撃を行う。
基本的に子供程度の大きさの人型を成しているが、
戦闘時はその限りでは無く、四肢を増やしたり、伸ばしたりする。
一定以上のダメージを受けると撤退する場合がある。
●工場
煉瓦造りの円形の建物
中央に歪虚。
広がって戦える程度の広さはあるが、長射程を生かせるほどでは無い。
(※直径10スクエア程度)
床に支柱や制御に使われていた木材、材料の綿が散らかっている。
その為、移動や回避に制限が掛かる場合がある。
また、これらを避けたり、退けたりする場合は行動を消費する場合がある。
(※これらは今のところ無傷です)
●NPC
案内人「皆さん、敵はあの1体……え? え? 1体?」
鉄扉の影で震えている。
指示があれば従うが非武装で、戦闘力は無い。
阪井「……困ったねえ、明日からどうしようか(溜息)」
庭の隅で座っている。
エンリコ「ブルーム、そっち行っちゃだめっす――――」
庭で待機している。
指示があれば従うが非武装。
戦闘に加わりそうにしている狐を抑えている。
●エネミー
金属部品の固まり(歪虚)×1
自身を構成する釘や捻子、歯車を自在に操り、
1箇所に集めたり、弾き飛ばしたり等の、防御や攻撃を行う。
基本的に子供程度の大きさの人型を成しているが、
戦闘時はその限りでは無く、四肢を増やしたり、伸ばしたりする。
一定以上のダメージを受けると撤退する場合がある。
●工場
煉瓦造りの円形の建物
中央に歪虚。
広がって戦える程度の広さはあるが、長射程を生かせるほどでは無い。
(※直径10スクエア程度)
床に支柱や制御に使われていた木材、材料の綿が散らかっている。
その為、移動や回避に制限が掛かる場合がある。
また、これらを避けたり、退けたりする場合は行動を消費する場合がある。
(※これらは今のところ無傷です)
●NPC
案内人「皆さん、敵はあの1体……え? え? 1体?」
鉄扉の影で震えている。
指示があれば従うが非武装で、戦闘力は無い。
阪井「……困ったねえ、明日からどうしようか(溜息)」
庭の隅で座っている。
エンリコ「ブルーム、そっち行っちゃだめっす――――」
庭で待機している。
指示があれば従うが非武装。
戦闘に加わりそうにしている狐を抑えている。
マスターより
よろしくお願いします。
初めまして、お久しぶりです。
阪井紡績リミテッド、一年以上ぶりの登場です。
久しぶりに出てきたら、工場が壊滅しているという悲惨な状況ですが、
諸々の部品製歪虚を撃退して頂ければと。
初めまして、お久しぶりです。
阪井紡績リミテッド、一年以上ぶりの登場です。
久しぶりに出てきたら、工場が壊滅しているという悲惨な状況ですが、
諸々の部品製歪虚を撃退して頂ければと。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2017/03/27 21:55
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
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捻子制圧!【相談卓】 カリン(ka5456) エルフ|17才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2017/03/20 17:15:12 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/03/18 19:09:25 |