• 無し

廃工場のファンタズマ

マスター:のどか

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2014/10/23 07:30
リプレイ完成予定
2014/11/01 07:30

オープニング

 蒸気工場都市「フマーレ」に、とある怪談話があった。

 ――月明かりの綺麗な夜、とある廃工場に幽霊が出る。
 噂によれば、この工場では過酷な労働環境に耐えきれず命を落とす者が居たそうで、そういった者たちの怨念が出現しているのだと。

「……っていう話なんだけれども」
 月明かりに横顔を照らされながら、一人の少年がそんな怪談話を仲間たちへと語り聞かせていた。彼の傍にはほかに3人の少年たち。4人はフマーレの労働者家庭に生まれた仲の良い友人であった。
「なんだ、よくある怪談話じゃないか」
 小太りの少年がふふんと鼻を鳴らしながら答える。彼らはこの夜、噂の真相を確かめに件の廃工場を訪れていた。親の目を盗んで夜中に外に出かける事は容易では無かったが、好奇心の強い年代の少年たちにとってはそのスリルや背徳感もまた胸を掻き立てるもので、こうして肝試しに訪れる事にも躊躇いはなかった。
「どうせ、単純にいろんな廃材があって危ないから近づくなって大人たちが考えた作り話だろ」
 ひょろりとした長身の少年はそう言って夜霧で曇ったメガネを拭く。
「や、やっぱりやめようよ……」
 4人の中では一番幼い少年は、少し肩を震わせながら絞り出すように言った。
「でも、お前だってこうして来たじゃないか」
 怪談話を語って聞かせたリーダー格の少年が答える。年少の子に限らず、他の少年たちだって怖く無いと言えばウソである。しかしそれよりも好奇心が勝っているだけ。それだけのことだった。
「よし、じゃあ行くぞ」
 そう腕を振って歩き出したリーダーの少年の後に続いて、少年たちは廃工場へと足を踏み入れていった。

 廃工場の中は当然明かりは無く、中は暗闇に包まれている。窓や穴の開いた天井・壁から差し込む月明かりだけがぼうっと部分部分を照らし出した。
 少年たちは持っていたランタンに火を灯すとその頼りない光を元に散策を開始する。この工場は日用品を作っていたのだろう、様々な工具や蒸気機械がごろごろと犇めいていた。鉄を熱して柔らかくするのであろう大きな釜が立ち並んでいたり、曲げて形を整えるのであろう加工台。形の整った製品を磨き上げる台など。作った製品を並べて置く背の高い棚や、プレス機のような大型の蒸気機械。作りかけの製品らしきものなども散らばっており、廃業し閉鎖された時の状況がありのままに広まっていた。
 リーダーの少年が足元に転がっていた工具をけっ飛ばす。カランカランと金属質な音を響かせ、工具は暗闇の奥へと転がって行った。
「おーい、幽霊の野郎! 居るんだったら出てきやがれ!」
 小太りの少年が大声で叫んぶ。しかし、それでも反響の後に残るのは、外の草木を揺らす風の音だけであった。
「何も反応が無いな」
「やっぱり、ウワサはウワサだったって事か……つまらないな」
 メガネの少年がぽつりと呟く。
「だったら、もう帰ろうよ……」
 その呟きに賛同するように、年少の子は震える声で意見した。しかしその言葉は聞き遂げられる事は無く、彼自身も一人だけ帰るわけにもいかず、廃工場の探索は続けられて行く。
 不意に、ぞくりと冷たい感覚が少年たちの背中を襲う。それは背中を撫でられるような感覚のソレではなく、確かに冷たい何かが背中を通ったような、そんな感覚であった。
「な、何かそこに居ないか……?」
 小太りの少年が蒸気機械の影をそっと指さす。皆が慌ててその方向を振り向く……が特に何もない。
「おかしいな……なんか、黒い霧みたいなのが居たような気がしたんだけど」
 そう思って自身のランタンを別の方向に向けた瞬間、彼は目の前に炎に照らされ光る何かを目にする。が、それが何かを皆に伝えられる事は無く、彼の視線は不意に低く冷たい床の上を転がったのであった。
 廃工場に少年達の叫びが響く。その叫び声の中で赤く輝く液体を首から吹き散らしながら、小太りの少年はその場に崩れ落ちてしまった。
「だからボクは帰ろうって言ったんだよ……もうイヤだ!」
 不安と恐怖が爆発したのか、意を決したように年少の子がその場を駆け出す。
「お、おい!」
 メガネの少年が発したその制止の声は聴き遂げられる事は無く、彼の背中は暗い闇の中へと消え去って行ってしまった。
「や、やばいって、僕たちも逃げないと!」
 目の前で友達が倒れたというのにやや平静を保って居られたのはそもそも死という感覚に疎い幼さゆえであっただろうか、メガネの少年は必至の形相でリーダーの少年を諭す。
「あ、ああ、そうだな」
 リーダーの少年も我を取り戻したように頷くとランタンを握る手に力を込め出口を目指して駆け出した。鍋を、フォークを蹴飛ばしながら、ただ必死に出口を目指す2人。しかし、その先の天井から差し込む月明かりの中に、彼らは先ほどは暗がりで見る事が出来なかった「死」を目の当たりにする事になる。
 思わず漏れた2度目の叫び。いや、叫びにすらなっていない声。それはもはやどちらが上げたのかも分からない。彼らの目の前には何かで縦に真っ二つに切り裂かれた年少の子の「死」が転がっていたのだ。
「ちくしょう、キミがここに来ようって言ったからだ! だからこんな事に!」
 メガネの少年はただその惨状から目を反らすように、リーダーの胸ぐらへと掴み掛った。しかし、その行動が彼にとっては文字通り致命的となった事に気づくことは無い。その様子をリーダーの少年だけは見てしまった。メガネの少年の背後から、忍び寄るというには素早い速度で迫りくる黒い「霧」。そしてその「モヤ」の一端が差し込む月明かりに触れた時……まるで飛び散っていた破片が集まるように霧が収縮し、巨大な鎌のような腕へと変わって行くのを。
 それを目にした一瞬の後、胸ぐらを掴む手からふっと力が抜け、どさりと音を立ててメガネの少年は床へと崩れ落ちた。震える視線で足元を見ると、そこには年少の子と対象的に、体を上下に2分されたメガネの少年の姿があった。

「その後の事は覚えていないそうです。ただ、無我夢中で逃げて来たそうで……その事件があってから息子は口も利かなくなってしまい、毎日布団を頭からかぶって震える日々なのです」
 オフィスの応接室で、リーダーの少年の母を名乗る女性はそう語ると静かに視線を落とした。
 受付嬢のルミ・ヘヴンズドアは母親の証言を纏めると小さな溜息をつく。
「うぅん……情報が少ないですね。これじゃあいったい何者だったのかも分からないですよ……」
「しかし、息子はそれ以上何も見ていないと……」
「ああ、ごめんなさいっ。責めてるわけじゃないんですよ?」
 ルミは慌てて母親をなだめる。
「とりあえずありったけの情報を書いて、依頼として張り出しますね。大丈夫、ハンターさん達なら何とかしてくれますよ……たぶん☆」
 そうして、依頼主による少年の証言と共に廃工場の幽霊退治の依頼がオフィスへと張り出されたのであった。

解説

心に大きな傷を負った少年を見かねた母親からの依頼です。
フマーレの廃工場で起きた子供たちの惨殺事件を解決してください。

この噂に対し今までに犠牲者の報告はなく(もしくは気づかれていないだけかもしれませんが)、被害届のあった事件は今回が初めてです。
そのため過去の事件資料などは一切存在しておらず、情報は依頼主が少年から聞いたとされるOPの内容のみとなります。
ハンターズソサエティの出した結論としては、おそらく雑魔の仕業ではあるだろうがその能力までは断定できない、と言うものです。
少ない情報とはなりますが、対策を考え事件の解決を目指してください。

マスターより

おはようございます。
体調を崩してしまい、一か月ぶりの依頼となります。
スタ○ドバイミーしていた少年たちが悲劇に巻き込まれてしまいました。
事件を解決したことで少年の心の傷が癒えるのかは分かりませんが、放置できない案件であることは確かです。
皆さまの勇気と知恵を持って事件を解決していただけることを切に望みます。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2014/11/02 01:14

参加者一覧

  • アックスブレード「ツヴァイシュトースツァーン」マイスター
    ティーア・ズィルバーン(ka0122
    人間(蒼)|22才|男性|疾影士
  • 虹の橋へ
    龍崎・カズマ(ka0178
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • 龍奏の蒼姫
    ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239
    エルフ|15才|女性|闘狩人
  • 不屈の鬼神
    白神 霧華(ka0915
    人間(蒼)|17才|女性|闘狩人
  • ノブレス・オブリージュ
    ジャック・J・グリーヴ(ka1305
    人間(紅)|24才|男性|闘狩人
  • 救いを果たせし者
    ソフィア・シャリフ(ka2274
    ドワーフ|20才|女性|霊闘士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/10/20 00:08:10
アイコン 依頼相談テーブル
ティーア・ズィルバーン(ka0122
人間(リアルブルー)|22才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2014/10/22 23:39:58