ゲスト
(ka0000)
青空の値段
マスター:神宮寺飛鳥

- シナリオ形態
- ショート
関連ユニオン
APV- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 4~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2014/10/22 19:00
- リプレイ完成予定
- 2014/10/31 19:00
オープニング
帝都バルトアンデルスに聳え立つ建造物の中でも一際異質な塔、ワルプルギス練魔院。そこに併設する形でイルリヒト機関の宿舎は存在している。
優秀な覚醒者を育成する教育機関であると同時に錬魔院の実験兵装のテストを行う少年少女達も、先日の剣機騒動から漸く日常に回帰しようとしていた。
「……む。ハラーツァイか」
「ばんちょー、お出かけ?」
宿舎前でばったり顔を合わせたハラーツァイとエルガーが同時に足を止め、肩を並べて入口の戸を開ける。
「ああ……ベルフラウの事で少しな。そういうお前は買い出しか」
「育ちざかりなので配給食だけじゃ足りないんだべよ」
抱えた紙袋からパンを取り出し噛り付くハラーツァイ。行儀の悪さを指摘しようかと迷ったエルガーだが、そんな二人の前、開いた扉から上半身裸のゲルトが姿を見せた。
「ハラーツァイ、それにエルガーか」
「うわー、変態だー。変態がいるー」
ゲルトは上半身裸でびっしょりを汗を滴らせていた。首からかけたタオルで顔を拭い、スっと眼鏡を取り出す。
「ゲルトだったんだ。眼鏡がないから誰かと思ったべ」
「俺の存在を眼鏡の有無で認識するというイルリヒト内の風潮には物申したい」
「自主トレーニングか。相変わらず見上げた努力家だな」
エルガーの声に首を横に振る。そうしてゲルトは裸のまま腕を組み。
「剣機との戦いで俺は何も出来なかった。外部戦力であるハンターに助けられているようでは帝国軍人として申し訳が立たない。訓練メニューを増強するつもりだ」
「それはいいけどまず服着なよ」
「ハラーツァイ、よく見ろ。俺は下はきちんと穿いている」
「そういう問題じゃないべ」
ジト目でパンを齧るハラーツァイ。エルガーは目をつむりふっと笑みを浮かべる。
「ハラーツァイにも見習わせたいものだな。ああ、二人には伝えておこう。ベルフラウだが、既に退院したそうだ」
「その退院したベルフラウがあんたに同行していないというのは?」
「ん……ああ。お前達も知っての通り、ベルフラウは剣機との戦いで重傷を負った。そして軍病院に入院……退院後、直ぐ別の任務についたそうだ」
きょとんとする二人を前に苦々しくエルガーは息を吐く。
「あの傷ですぐ復帰って……だいじょーぶなの? 何かヤバい事されてないよね?」
「それはない筈だが、一応問い詰めてきた所だ。ただでさえ聖機剣という物騒な装備の試験をしているのだからな」
「最近組むようになったからよく知らないんだけど、ベルフラウってちょっと変わってるべな」
「そうか。ハラーツァイは確かに知らなくても当然かもしれんな。まあ、あれは少し問題児でな……」
難しい表情のエルガーに首を傾げるハラーツァイ。ゲルトは汗を拭き、眼鏡を持ち上げ。
「イルリヒトはエリートだけが入る事を許されている。その性質上、見た目や性格はどうあれ全員が実力者だ。ベルフラウもその例外ではない」
「まあそーだべな。ベルフラウが真面目に戦ってる所見た事ないけど」
「あれでも奴は入隊試験をトップクラスの成績で通過している。俺と奴は同期で同じ会場だったのでな、少しだけ様子を見た」
ゲルトが目撃したのは試験終了後。最終項目の一対一での候補生同士の決闘が終わった直後の事だ。
会場は騒めいていて、複数の試験官がベルフラウを囲んでいた。その両手は血に染まり、少女の足元にはぼろぼろになった対戦相手の姿があった。
「え……そんなやばい子だったの?」
「わからん。が、あいつはその時も、自分が死にそうな時も何故か笑っていた。俺達とは少し死生観が違うのかもしれない」
「全然そうは見えないけどなぁ。へらへらして、おどおどしてて」
パンくずのついた指先を舐めながら目を細めるハラーツァイ。エルガーは神妙な面持ちでベルフラウを見舞った時の事を思い出していた。
「昔の錬魔院にはよくいたのだ。ああいう生徒がな」
「ああいうって?」
「生きていても死んでいてもどっちでもいい――そういう、危なっかしい目をした奴だ」
機械の剣を背負い、少女はリゼリオの街を歩いていた。
傷は完治したわけではないが、戦闘に支障はない。剣機ともう一度戦えというのならば話は別だが、あれはすでに撃滅されている。
剣機との戦いでは多くの人が傷ついた。自分はその間ベッドで寝ていたという事がどうにも腑に落ちず、簡単な依頼に志願申請をしたのが数日前。
「ハンターさんは親切な人が多いから、きっと今回も何とかなるよね!」
今回の任務は火事場泥棒を働く盗賊の始末。剣機を退けた帝国は選挙と剣機騒動で炙り出された反政府組織、犯罪者の把握と拿捕に動き出そうとしていた。ベルフラウも簡単ながらその流れに乗って仕事をするわけだ。
「犯罪者といえども命は大切なものだから、絶対に殺したりしないようにしなきゃ」
怪我をした人がいたら治療もしてあげよう。それが善行だ。
悪い人は捕まえて罪を償わせてあげよう。第二の人生を与える、それが善行。
善い行いは全て祈りだ。果てしなく積み重ねた祈りの先に、ようやく罪は赦される。
「この世界がいつかいい人だけになれば、きっと誰も傷つかないで済むよね」
足を止め見上げた空は今日も青い。青空の下を歩く人々の心もきっと澄み渡っているに違いない。
「強くならなきゃ。強くなって誰にも心配されなくなって、皆いい人にしてあげなきゃ……ね」
ぱきりと指を片手で鳴らし、少女は歩き出す。一瞬だけ浮かべた鋭い笑みはまるで別人のように、しかし雑踏の中に溶けて消えていった。
優秀な覚醒者を育成する教育機関であると同時に錬魔院の実験兵装のテストを行う少年少女達も、先日の剣機騒動から漸く日常に回帰しようとしていた。
「……む。ハラーツァイか」
「ばんちょー、お出かけ?」
宿舎前でばったり顔を合わせたハラーツァイとエルガーが同時に足を止め、肩を並べて入口の戸を開ける。
「ああ……ベルフラウの事で少しな。そういうお前は買い出しか」
「育ちざかりなので配給食だけじゃ足りないんだべよ」
抱えた紙袋からパンを取り出し噛り付くハラーツァイ。行儀の悪さを指摘しようかと迷ったエルガーだが、そんな二人の前、開いた扉から上半身裸のゲルトが姿を見せた。
「ハラーツァイ、それにエルガーか」
「うわー、変態だー。変態がいるー」
ゲルトは上半身裸でびっしょりを汗を滴らせていた。首からかけたタオルで顔を拭い、スっと眼鏡を取り出す。
「ゲルトだったんだ。眼鏡がないから誰かと思ったべ」
「俺の存在を眼鏡の有無で認識するというイルリヒト内の風潮には物申したい」
「自主トレーニングか。相変わらず見上げた努力家だな」
エルガーの声に首を横に振る。そうしてゲルトは裸のまま腕を組み。
「剣機との戦いで俺は何も出来なかった。外部戦力であるハンターに助けられているようでは帝国軍人として申し訳が立たない。訓練メニューを増強するつもりだ」
「それはいいけどまず服着なよ」
「ハラーツァイ、よく見ろ。俺は下はきちんと穿いている」
「そういう問題じゃないべ」
ジト目でパンを齧るハラーツァイ。エルガーは目をつむりふっと笑みを浮かべる。
「ハラーツァイにも見習わせたいものだな。ああ、二人には伝えておこう。ベルフラウだが、既に退院したそうだ」
「その退院したベルフラウがあんたに同行していないというのは?」
「ん……ああ。お前達も知っての通り、ベルフラウは剣機との戦いで重傷を負った。そして軍病院に入院……退院後、直ぐ別の任務についたそうだ」
きょとんとする二人を前に苦々しくエルガーは息を吐く。
「あの傷ですぐ復帰って……だいじょーぶなの? 何かヤバい事されてないよね?」
「それはない筈だが、一応問い詰めてきた所だ。ただでさえ聖機剣という物騒な装備の試験をしているのだからな」
「最近組むようになったからよく知らないんだけど、ベルフラウってちょっと変わってるべな」
「そうか。ハラーツァイは確かに知らなくても当然かもしれんな。まあ、あれは少し問題児でな……」
難しい表情のエルガーに首を傾げるハラーツァイ。ゲルトは汗を拭き、眼鏡を持ち上げ。
「イルリヒトはエリートだけが入る事を許されている。その性質上、見た目や性格はどうあれ全員が実力者だ。ベルフラウもその例外ではない」
「まあそーだべな。ベルフラウが真面目に戦ってる所見た事ないけど」
「あれでも奴は入隊試験をトップクラスの成績で通過している。俺と奴は同期で同じ会場だったのでな、少しだけ様子を見た」
ゲルトが目撃したのは試験終了後。最終項目の一対一での候補生同士の決闘が終わった直後の事だ。
会場は騒めいていて、複数の試験官がベルフラウを囲んでいた。その両手は血に染まり、少女の足元にはぼろぼろになった対戦相手の姿があった。
「え……そんなやばい子だったの?」
「わからん。が、あいつはその時も、自分が死にそうな時も何故か笑っていた。俺達とは少し死生観が違うのかもしれない」
「全然そうは見えないけどなぁ。へらへらして、おどおどしてて」
パンくずのついた指先を舐めながら目を細めるハラーツァイ。エルガーは神妙な面持ちでベルフラウを見舞った時の事を思い出していた。
「昔の錬魔院にはよくいたのだ。ああいう生徒がな」
「ああいうって?」
「生きていても死んでいてもどっちでもいい――そういう、危なっかしい目をした奴だ」
機械の剣を背負い、少女はリゼリオの街を歩いていた。
傷は完治したわけではないが、戦闘に支障はない。剣機ともう一度戦えというのならば話は別だが、あれはすでに撃滅されている。
剣機との戦いでは多くの人が傷ついた。自分はその間ベッドで寝ていたという事がどうにも腑に落ちず、簡単な依頼に志願申請をしたのが数日前。
「ハンターさんは親切な人が多いから、きっと今回も何とかなるよね!」
今回の任務は火事場泥棒を働く盗賊の始末。剣機を退けた帝国は選挙と剣機騒動で炙り出された反政府組織、犯罪者の把握と拿捕に動き出そうとしていた。ベルフラウも簡単ながらその流れに乗って仕事をするわけだ。
「犯罪者といえども命は大切なものだから、絶対に殺したりしないようにしなきゃ」
怪我をした人がいたら治療もしてあげよう。それが善行だ。
悪い人は捕まえて罪を償わせてあげよう。第二の人生を与える、それが善行。
善い行いは全て祈りだ。果てしなく積み重ねた祈りの先に、ようやく罪は赦される。
「この世界がいつかいい人だけになれば、きっと誰も傷つかないで済むよね」
足を止め見上げた空は今日も青い。青空の下を歩く人々の心もきっと澄み渡っているに違いない。
「強くならなきゃ。強くなって誰にも心配されなくなって、皆いい人にしてあげなきゃ……ね」
ぱきりと指を片手で鳴らし、少女は歩き出す。一瞬だけ浮かべた鋭い笑みはまるで別人のように、しかし雑踏の中に溶けて消えていった。
解説
●目的
盗賊の拿捕と盗品の奪回。
●概要
剣機騒動からの復興を邪魔する盗賊達を拿捕する。
剣機リンドヴルム襲来により地方民は最寄りの師団都市などに避難を行った。
コンテナ爆撃による無差別攻撃から安全と呼べる場所は少なく、それは必要な措置であったが、結果人気のなくなった町での火事場泥棒が横行している。
各地の安全確認や歪虚被害を受けた町の復興が優先され、これらの細々したトラブルは軍の対応がやや遅れているようだ。
今回の依頼はそのカバーを兼ねている。とある村から奪われた食料の備蓄と一部高級調度品の奪回、そして品々を奪った盗賊の拿捕を依頼したい。
盗賊は今回の剣機騒動に関係なく、以前の歪虚被害で無人になった廃村に住み着いて悪事を働いている事がわかっている。
アジト内では盗賊の抵抗も想定されるが、所詮はただの盗賊なので覚醒者ならそう手こずる事もないだろう。
激しく抵抗された場合は現場の判断に任せるが、可能ならば殺さず拿捕して欲しい。
●敵情報
『盗賊』
短剣や弓などで武装した盗賊。
さして戦闘力もない。廃村では畑を耕したり近くの森で狩猟をしたりして細々生活している模様。
大人、老人、子供まで様々。とても覚醒者をどうにかできる強さではない。
●特筆
イルリヒト機関よりベルフラウ二等兵が同行。クラスは聖導師。
一度も真価を発揮した事のないポンコツ試作兵器、聖機剣を扱うポンコツ兵士見習い。
PCが盗賊を殺害しようとした場合止めに入る。
盗賊の拿捕と盗品の奪回。
●概要
剣機騒動からの復興を邪魔する盗賊達を拿捕する。
剣機リンドヴルム襲来により地方民は最寄りの師団都市などに避難を行った。
コンテナ爆撃による無差別攻撃から安全と呼べる場所は少なく、それは必要な措置であったが、結果人気のなくなった町での火事場泥棒が横行している。
各地の安全確認や歪虚被害を受けた町の復興が優先され、これらの細々したトラブルは軍の対応がやや遅れているようだ。
今回の依頼はそのカバーを兼ねている。とある村から奪われた食料の備蓄と一部高級調度品の奪回、そして品々を奪った盗賊の拿捕を依頼したい。
盗賊は今回の剣機騒動に関係なく、以前の歪虚被害で無人になった廃村に住み着いて悪事を働いている事がわかっている。
アジト内では盗賊の抵抗も想定されるが、所詮はただの盗賊なので覚醒者ならそう手こずる事もないだろう。
激しく抵抗された場合は現場の判断に任せるが、可能ならば殺さず拿捕して欲しい。
●敵情報
『盗賊』
短剣や弓などで武装した盗賊。
さして戦闘力もない。廃村では畑を耕したり近くの森で狩猟をしたりして細々生活している模様。
大人、老人、子供まで様々。とても覚醒者をどうにかできる強さではない。
●特筆
イルリヒト機関よりベルフラウ二等兵が同行。クラスは聖導師。
一度も真価を発揮した事のないポンコツ試作兵器、聖機剣を扱うポンコツ兵士見習い。
PCが盗賊を殺害しようとした場合止めに入る。
マスターより
お世話になっております、神宮寺でございます。
なんだか久々に依頼を出すようなそうでないような……。
イルリヒト機関という帝国の兵士要請学校に関連づいたお話ですが、剣機のアフターでもあります。
元々廃村だった村とそこで暮らす火事場泥棒の盗賊達。できれば殺さない方が望ましいです。
なぜなら帝国では犯罪者は殺さず、捕まえたら強制労働をさせたりするからです。無論、償えばムショからは出てこれますが。
ベルフラウはポンコツですが、さすがに一般人よりは強いです。
それではよろしくお願い致します。
なんだか久々に依頼を出すようなそうでないような……。
イルリヒト機関という帝国の兵士要請学校に関連づいたお話ですが、剣機のアフターでもあります。
元々廃村だった村とそこで暮らす火事場泥棒の盗賊達。できれば殺さない方が望ましいです。
なぜなら帝国では犯罪者は殺さず、捕まえたら強制労働をさせたりするからです。無論、償えばムショからは出てこれますが。
ベルフラウはポンコツですが、さすがに一般人よりは強いです。
それではよろしくお願い致します。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2014/10/30 05:43
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 鳴神 真吾(ka2626) 人間(リアルブルー)|22才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2014/10/22 08:32:51 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/10/21 20:59:27 |