• 冒険

聖導士学校――ポンコツ聖職者

マスター:馬車猪

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在8人 / 4~8人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2017/04/25 19:00
リプレイ完成予定
2017/05/04 19:00

オープニング

●大貴族から視察

 子供。
 アサルトライフル。
 荷台に機銃をとりつけたトラック。
 グラズヘイム王国の片隅に、地球の紛争地帯風の組み合わせがうまれていた。

「すみませーん、雑魔の駆除が終わってないから危ないですよー」

 少年が、人懐っこい笑みを浮かべて元気に呼びかける。
 年齢は11歳というところだろうか。
 皮の防具も下の服も汚れてはいるけれど、どれも造りがよくて頑丈そうだ。
 顔も艶々し肌には張りがある。
 特に印象的なのは目だ。
 大勢の、武装した男達を前にしているのに、卑屈にも高圧的にもならずに自然体の笑顔だ。

「ちょっと」

 荷台の上。
 隣の少女が少年の頬を引っ張った。
 痛いよ、と囁く少年が妙に可愛い。

「あの馬車見なさい」
「いい馬だよね」
「馬じゃなくて馬車、具体的には側面の紋章!」

 じっと見て、あっと驚く少年。
 馬車を護衛する男達は、微笑ましいものを見る表情を浮かべている。
 馬車の小さな窓が薄く開かれ、鋭い視線が少年少女に向けられていた。

「僕たち、この先にある学校の生徒です。どのようなご用向きでしょうか?」

 銃を背中に戻してきびきびと挨拶してくる。
 姿勢は美しく、声にも張りがあり、小さくても立派な聖堂戦士に見えた。

「馬車を走らせたまま失礼するよ」

 小さな窓が開く。
 顔に深い傷が刻まれた、渋い灰色髪の老人が姿を見せた。

「学校を見学したい。前触れなしで申し訳ないが、頼めるかな」

 上品に微笑む。
 しかし目に笑みはなく、相手を侮らず観察する冷えた光があった。

「見学! 校長先生、いつでも歓迎って言ってます!」

 少年はとにかく元気だ。
 彼と同時期に入学し、そろそろ卒業が見えて来た少女が小声で注意する。

「ちょっと……この人爵位持ちよ」
「え? でも召使いさんっぽい服装だよ?」
「爵位持ちを使いっぱに出来る高位貴族の用事ってことよ。ひとっ走りして司祭様に伝えてきなさい」

 なお、少年が貧乏法衣貴族の4男、少女が貧農出身の元文盲だ。
 最近では出身を逆に勘違いされることも多いが、執事風の老人は正確に2人の出身と能力を推測していた。

「先に行ってきます!」

 少年が走る。
 鎧と大型の銃を持っているのに、徐行する馬車より速く、しかも速度が全く落ちない。

 老人の口角が、愉快そうに吊り上がっていた。


●薄暗がり

 学校から見て西隣の地を支配する貴族が、傲岸な顔で苛立たしげに吐きすてた。

「細作を片付けろ」

「はい。例の学校の騒動が収まるまで身を隠すよう伝え」

 極寒の視線で見下ろされ、執事長が冷や汗を流す。

「片付けろと言った」

 絨毯に額がつくほど頭を下げて、領主の腹違いの弟が書斎から退出する。

「厄介なものを呼び込みおって。手筈が狂ったわ」

 本格的に圧力をかけることで、最終的に奪える物全てを奪うつもりだった。
 だが大貴族の使いが滞在している所へ手を出せば破滅するのはこちらだ。
 苛立たしげに机を叩き、もう1度吐きすててからペンを手に取る。

「下民は下民らしくすればよいのだ」

 光に満ちた部屋に、熱の無い言葉が響いた。


●光と影

「とつげーき!」
「勝手口からもとつげーき!」
「なんか出たっ」

 気楽なかけ声と、メイスが床や壁を撃つ轟音が同時に聞こえてくる。
 獰猛な音と、雑魔の動物じみた悲鳴が連続。すぐに音が小さくなった。

「1班いじょーなし!」
「2班う゛ぉいどとそうぐう、げきは!」
「3班っ、たすけ、これ離れなっ」

 メイスが皮鎧をかすめる音。
 歓声混じりの悲鳴に、ごめんごめんと謝る声ととヒールの気配。
 かつて富農の屋敷だった廃屋の屋根裏で、細作は気配を殺して明るい音を聞いていた。

 寒い。

 長年、体をすり減らすように使えた結果が、ごみを片付けるように振るわれた刃だ。
 包帯の下にある深い傷の痛みより、寒さの方がずっと堪える。

「ねぇ、血の臭いしない?」
「僕におう?」
「汗とほこりで鼻が馬鹿になってる。早く帰っておふろはいろ」

 2階に続く階段は、腐食したように見せかけて壊しておいた。
 おそらく未来が約束されているだろう子供たちは、無用な危険をおかさず、しっかり目印は残して細作の避難所から離れていった。


●困惑

「ゆっくり見ていって下さい」

 慣れていない挨拶を残し、学校の長が応接室から逃げ出した。
 護衛達が室内の安全確認を完了する。
 そしてようやく、爵位を持つ老人がティーカップに手を伸ばす。

 香りと色から財政状況と人材の質を把握する。
 今日見せられた一般教養授業や戦闘訓練と同様に、かなり高水準と判断できた。

「……様、ここの傭兵達は凄腕です。万一に備え、日の高いうちにここを出ることを進言します」

 覚醒者である護衛が緊張している。
 戦闘訓練担当教官として紹介された男達全員が、田舎の学校勤めとは思えない実力者だった。
 万一悪心を抱かれれば主もろとも闇から闇に消される可能性すらあった。

「いつも通り慎重だね」

 老人の目に微かな笑みが浮かぶ。
 護衛は謹厳な表情を崩さない。

「その程度の人を使う組織なら、私も主も楽なのだが」

 聖堂教会は甘い組織では無い。
 その中で生き残り続け、これだけ豪華な学校を運営する派閥も同様だ。

「私はしばらく休んでいる。君達も見物に行くとよい」

 今回連れてきたのは本来の彼の護衛ではない。
 本家の妾の子の護衛や、分家の三男三女以降の護衛が彼等の本来の仕事だ。

「あの、ありがとうございます」

 彼等は半分を残し、それぞれの主のため学校の敷地内に散って行った。
 老人は目を閉じ静かに考える。

 奇妙だ。
 今回の転入で大金が転がり込むのと引き替えに、マーロウ大公に近い貴族の影響を受けやすくのは彼等も分かっているはずだ。
 だが校長はそのことを全く理解していない。
 まるで、本来の責任者が急に消えてしまったかのようだ。
 学校を動かしているのがハンターという噂も、もしかしたら嘘でないかもしれない。

「よい学校だ」

 自力できずに潰れるようなら、聖堂教会色を抜いて引き取るつもりだった。


●へるぷっ!

 己の危機に気づかないから強かった少女が、知って怯えて弱くなった。
 普通の子供なら成長の一過程ですむが、彼女は司祭だった。

「躓いたか」

 ある派閥の幹部が一堂に会していた。

「これで立ち直れるかどうかで司祭止まりかそれ以上かが分かる」

「立ち直れよ」

「うむ。でないと」

 あくの強い面々の顔に、大量の冷や汗が浮かんだ。

「学校以外の事業も傾く」
「誰だ、あの子に案件任せまくったのは」
「主におぬしじゃ」
「だって毎回成功させるんだもん」
「若者言葉のつもりかこのジジイ」
「1月で泣きつくと思ってたのに2年もったからのぅ」
「いいから増援送ってやれ」
「増援があの子だよ。増援の増援なんてうちにいないの!」

 地味に、派閥崩壊の危機であった。


●依頼票

 求む。クルセイダー養成校の臨時教師
 付近の歪虚討伐、開拓、猫の相手など、それ以外の担当者も募集中です。

解説

今回、イコニアはポンコツ化しているため役に立ちません
適当に利用するか放置しましょう
頑張って復活させても問題はないです

教職員
 校長(司教)1人
 守備兵兼戦闘指導教官(覚醒者)8人。中堅ハンター相当。ハンターがいる間、4人ずつ休暇予定です。リストラ怖い
 教師5名(初等教育、中等教育、医師、薬師、看護
 植物園管理人2名
 司書1名。専門書の管理は問題なし。礼法の本を注文しました

開拓部門
 農業技術者3名
 元戦士団と元騎士団の入植者15名

在校生
(聖導士)
 2年生。10~12歳覚醒者計12名。専門書読解が出来る者も。戦闘力は初心者ハンター級
 1年生。8~10歳覚醒者計10名。新入生。基本的な読み書き可能。戦闘力は非覚醒者新米兵士級
(医療課程)
 12~16歳。6名。覚醒者は少数。座学が始まりました

滞在者
 司祭1。お付きの助祭1
 貴族1と護衛4(次々回の冒頭で帰還予定

施設
 校舎。武器庫。宿舎。見張り台。猫小屋

武装
 アサルトライフル30丁。機銃装備魔導トラック2両


●地図(1文字縦横1km
 abcdefgh
あ平平平道平平川□ □=未探索地域
い□平平道平平川□ 平=平地。低い木や放棄された畑や小屋があります。やや安全。演習場扱い
う荒平平学平平川川 学=学校が中心に建っています。緑豊か。安全
え□平畑麦麦麦畑□ 川=川があります
お□平畑畑畑畑平□ 麦=冬小麦が育っています
か□□□平平平平□ 畑=開墾済み。たまに野菜が植えられています
き□□□□□平平平 道=荒野。砂利道が北に向かっています。安全
く□□□□□果果果 荒=平地。負マテリアル濃度濃いめ
け□□□□□□果果 果=緩い丘陵。果樹園跡有り。柑橘系。希に立派な建物有り
こ□□□□□□□丘 丘=丘有り。気配が変? 負の気配では無い

 ・薬草園
   eい。専門家2人が拡張作業中。そろそろ小さな収入源になるかも。傷薬の原料の在庫有
 ・隣領開拓村
   北西数キロ

マスターより

 設定蓄積型依頼です
 以前の依頼を参考にせず行動しても、不利にも有利にもなりません

 疑問点があればイコニアへどうぞ
 ハンターが現地到着前に分かること限定で回答予定です

●予定
次回。入学金払込。第1弾3人入学
7月。イコニアが自力で復活
8月。学校財政健全化に失敗すると、イコニアが責任を負い身売り

●学校に対する態度
王国政府 興味なし(悪化予定
騎士団  少し興味あり
大公派閥 少し友好的(好転予定
(近隣領主
北西(近)中立
西(遠) 中立
(聖堂教会)
良識派 強引なやり方を敵視
一般層 興味なし
過激派 一応身内
戦士団 少し興味あり

●歪虚
スケルトン類(学校から離れるほど強大
迷彩動物(戦闘力は弱め。果樹園跡に潜む雑魔

関連NPC

  • 聖堂教会司祭
    イコニア・カーナボン(kz0040
    人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|聖導士(クルセイダー)
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2017/04/29 16:34

参加者一覧

  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • 冥土へと還す鎮魂歌
    日下 菜摘(ka0881
    人間(蒼)|24才|女性|聖導士
  • エルフ式療法士
    ソナ(ka1352
    エルフ|19才|女性|聖導士
  • イコニアの騎士
    宵待 サクラ(ka5561
    人間(蒼)|17才|女性|疾影士
  • 聖堂教会司祭
    エステル(ka5826
    人間(紅)|17才|女性|聖導士
  • 流浪の聖人
    鳳城 錬介(ka6053
    鬼|19才|男性|聖導士
  • 丘精霊の絆
    フィーナ・マギ・フィルム(ka6617
    エルフ|20才|女性|魔術師
依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
ボルディア・コンフラムス(ka0796
人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2017/04/25 00:59:18
アイコン 質問卓
ボルディア・コンフラムス(ka0796
人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2017/04/21 21:22:40
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/04/24 23:32:10