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  • 調査

【黒祀】狂い咲く紅き徒花

マスター:ムジカ・トラス

シナリオ形態
ショート
難易度
不明
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
4日
プレイング締切
2014/10/22 19:00
リプレイ完成予定
2014/10/31 19:00

オープニング


 ハンター達は、王都の南方へと派遣される第三次調査隊として召集され、その道中にあった。
 目標地点が記された地図を手に、一同は暫くの間街道を進み、途中からは道を外れ、草原を往く。
 既に日は傾きつつある。じきに逢魔が刻に至ろうという頃合いだった。照りつける日差しを受けながら一同が南へと進んでいくと、肌寒さが強くなってきた。
 それでも進み、紅く枯れた木々が近づいてくると、比例するように寒気が増してきた。ハンター達は、大地に這うように冷気が滲む湿地に――そして沼地へと至る。

「――こ、この辺りが、しょ、所定の位置の筈ですが」
 ハンター達を引率してきた騎士――レヴィンという――が、どもりながら告げた。40も半ばを過ぎようという頃合いで、身分上は歴然とした騎士ではあるのだが、何処か頼りない。
「こ、この場所は既に一度調査がなされた、ば、場所です。ど、どういうわけか、そこで歪虚と思われる一団が発見された訳、ですが……」
 薄くなった頭が冷えるのだろうか。レヴィンはデリケートな部分を柔らかに撫でながら言う。
 レヴィンは見回し。
「へ?」
【それら】を見て。

「キィヤアアアアアッ!!」

 叫んだ。

「出たァァァァッ!!!!」

 ――中年の絹裂く悲鳴を背に、少し遡ろう。



 戦争とは言い切れず、さりとて騒乱というには言葉が足りぬ。
 王国で起きている一つ一つの事件は対応が可能な範疇であった。ただ、それが、あまりに多発していた。 同時多発的なそれは、対応が可能であるが故に決定的な破滅を予感させるものではない。
 しかし、王国にも思い切った攻勢に出れない事情があった。
 歪虚の動きが散発的なこともあるが――敵の目的が不明な以上、ハルトフォートやその他の要所の守りを疎かにはできない。

 畢竟、一部の者達は、既に了解していたのだ。
 王国の余力を根こそぎ引き出そうとするこれらの騒動が。

 ただの、陽動に過ぎない事を。



「調査隊は一次も二次も振るわなかったんだねえ」
 絢爛な造りの応接室に、ヘクス・シャルシェレット(kz0015)の声はいやに強く響いた。彼は部屋に据え置かれた革張りのソファにだらしなく身を埋め、見上げるようにして報告資料を眺めている。
 気安げな言葉だった。にも関わらず、対面に座すシスティーナ・グラハム(kz0020)の細い肩が微かに震えた。少女は、彼女の従者が注いだ紅茶で口元を湿らせる。舌先が張り付くほどに、緊張を感じていた。
「そう、ですね。皆さんも、尽力してくださっているのですが……」
「識者は多くとも、護衛に回せる騎士の数が頭打ちだ」
 王女の傍らに立つセドリック・マクファーソン(kz0026)が、言葉を継いだ。
「自然、捜索範囲が狭まっている」
 調査隊は。事ここに至るまでに見られた、歪虚達の奇妙な行動を調査するために組織された偵察隊である。歪虚達の一団が、かつて王都の西方で目撃されていた。その足跡を追跡可能な範囲でたどると、彼らは王都の南部へと移動していた、という。
 問題は。
 そこに、人型の歪虚の姿もあった、という点だ。
「そうだね。現状明らかにできた場所だって、決して十分とは言えない」
 へクスは相対するシスティーナを見つめ、柔らかく笑った。
 セドリックが再び口を開く。
「各地で頻発する事件。どれもこれも本格的な侵攻とは言い難い、が。
 ――それらが飽和してきていることは、兆候と言える」
 言葉に、システィーナの儚げな吐息が続く。それこそが、少女を重く縛るものだった。
「これだけの騒ぎが全て陽動ならば。敵の本陣の規模が、これらを下る事は有り得ん」
「だから、騎士団の本営は動かせない、か」
 いやはや、とヘクスは笑って。そうして、王女を再び見た。なしたいことと、すべきことの狭間に立つ少女の懊悩を見た。
「……それで、シャルシェレット。用向きは何だ」
 セドリックは、ヘクスが訪れた理由を理解していたのだろう。どこか不機嫌そうな声色から、その内情が僅かに窺い知れ、ヘクスは笑みと共にこう告げた。

「実は、ね。うちの子が情報を掴んだんだよ」

 転瞬。
 王女は驚きに両の眼を見開かせて、ヘクスの手を取っていた。

「ほ、本当ですか、ヘクス兄様!」
「未だに君は、僕のことを兄様、と言ってくれるんだなあ。感激しちゃうよ」
「えっ! いえ、ヘクス兄様は、ヘクス兄様ですから……じゃなくて!」
「はっはっは!」



 ヘクスが情報を伝えると、システィーナは即座に第三次調査隊の派遣を決定した。そうして、ヘクスは王城をあとにしようと部屋を出た、のだが。
「待て」
「なんだい?」
 廊下の只中で、セドリックが、ヘクスを呼び止めた。
「情報は、《第六商会》が掴んだのか」
「そうだよ。このご時世だと、商品よりもそっちの方が売れるからね」
 ヘクスの軽い口調に、セドリックは暫し、黙したままであった。
 沈黙の隙間から、緊迫が滲む。それは、相対する二人の男の間を浸し――そして。

「……その情報は、いつのものだ」

 溢れたのは、そんな言葉だった。
 射抜くような視線に、ヘクスは小さく笑う。
「何でそれを、聞くんだい?」
「答えろ」
「今更それを聞いた所で、信じないだろう?」
「……」
「それじゃあ、ね。大司教さま。君も忙しいはずだろ?」
 ヘクスは小さく笑い、会釈を返すと、軋んだ空気の中を緩やかに歩き、王城を後にした。セドリックは何も言わずに、その背を見送る他なかった。



 そして今。ハンター達の周囲が目まぐるしく変化していた。より正確には、その周りにあった『紅く枯れた木々』が。
「ここここここれは――傲慢の歪虚……! み、皆さん、気をつけて下さいッ!!」
 長剣を抜いたレヴィンが叫ぶ。
 木々は、みるみる内に紅い羊毛で身を包んだ半人半羊の歪虚へとその身を転じていた。植物から、荒々しく獰猛な生物への変転だ。其々の額には傲慢の眷属であることを示す、不吉に輝く紅玉。それが、三体。
「……さ、最悪よりは、マシ、でしょうか」
 レヴィンは見回した光景を、思い出す。
 周囲に散在する、『沢山の、赤い木々』を。

 ――即座に圧殺しに来ない所に、意図がありそう、ですが。
 黙考し。
 ――こちらをいたぶって殺すため、でないならいいなあ……。
「お、応戦を! 戦力を確認し……然る後……撤退します! い、いのちをだ、だだいじウワァッ!?」
 胸中で呟きながらの声は、動きだした赤羊の威容にいつしか悲鳴に変わっていた。

 そのまま、一息に戦闘へと雪崩れ込む。



 生まれた戦場を見下ろしながら、少女――クラベルは小さく呟いた。
「場所が露呈し、やってきたのは汚い騎士と下らないハンター達」
 紅の髪が憂鬱げに、揺れた。つと、その手がふらりと舞うが。
「ダメよ」
 もう片方の手で、その手を抑える。
「殺してはダメ」
 そうして、少女は心底儚げに、こう零した。

「……演出の為とはいえ。憂鬱だわ、フラベル」

解説

●目的・成功条件
 1)『傲慢の赤羊』三体との戦闘
 2)生存、撤退
 3)???

●状況
 時刻は一五三〇ごろ。天候はやや曇り空だが、視界は良好。
 ハンター達とその引率の騎士は、商人より寄せられた目撃情報を便りに王国より指定された地点へと派遣され、戦闘に雪崩こんだ。
 三体はそれぞれに五メートル程の間を開けて並び、ハンター達を中心に半径一〇メートル程の円周状に配置している。
 周囲は湿地帯〜沼地。足場は軽くぬかるんではいるが、覚醒者であれば足を取られるほどではない。
 戦闘している周囲や沼地には枯木が多数あり散在している以外は、特に妨げとなるようなものはない。

●味方情報
 青の隊所属の騎士:レヴィン(「シフトリーダーの悲哀」に登場)
 より薄くなった額を長い髪でごまかそうとしている疾影士。
 武器は長剣と盾。防具は固め。腕の程はそれなりだがいちいち五月蝿い。

●敵情報
『傲慢の赤羊』x4
 これまで目撃されている赤羊の強化版と推察される。傲慢の歪虚を象徴する宝石を額に宿している。
 傲慢の歪虚との戦闘情報からは、宝石が弱点というものは特に無し。
 二足歩行する半人半羊型の雑魔。
 2mほどの巨大な体躯。筋骨隆々な身体。真紅で染め上げられた硬い羊毛。
 手には長柄の大斧を掲げ野太い声で鳴く。
 回避は不得手だが火力・防御力共に高い様子。
 傲慢の歪虚となったことで、より強く頑丈になっている可能性が高い。

 ■推察される特技
 【突進】:5Sq直線の範囲攻撃
 【着火】:赤毛が燃える。意味は不明。
 【変容】:意図して何らかのものに変容することが出来る。

●補足
 ・冒頭システィーナ、ヘクス、セドリックのシーンはPL情報ですが、想像したり妄想したりするのは自由です。
 ・この依頼ではこれ以上の敵との戦闘はありません。
 ・皆様は調査隊ですので、何をして、どう撤退するかが肝要です。

●あまり役に立たない補足
 ・敵は『傲慢』の歪虚です。

マスターより

こんにちは、ムジカ・トラスです。ハンター達をいわれありまくる脅威が襲う!
敵がハンター達と騎士を殺すつもりなら百回は殺せそう状況ですが、不思議とそうはなっていません。
それを逆手に色々できると楽しいかもしれない、そんなシナリオです。諸々のハードルは低めです。
王国を包む状況を、世界を味わいながら、現場で世を儚む――そんなハンターズライフ感あふれるシナリオをお楽しみいただけると幸いです。


です、が。
主に状況的理由で、敵がとっても強めになりました。
戦い方には十全に注意をお払いください。

▼???
京乃SDと同じ時間帯の依頼です。
君は何かの予兆を感じてもいいし、感じなくてもいい……と、SDが仰っておりました。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2014/10/29 03:30

参加者一覧

  • 雄弁なる真紅の瞳
    エヴァ・A・カルブンクルス(ka0029
    人間(紅)|18才|女性|魔術師
  • 薔薇色の演奏者
    ベアトリス・ド・アヴェーヌ(ka0458
    人間(蒼)|19才|女性|機導師
  • 温かき姉
    落葉松 鶲(ka0588
    人間(蒼)|20才|女性|闘狩人
  • アルテミスの調べ
    メトロノーム・ソングライト(ka1267
    エルフ|14才|女性|魔術師
  • 狂戦士
    バルバロス(ka2119
    ドワーフ|75才|男性|霊闘士
  • 仄かなる慈意
    マーニ・フォーゲルクロウ(ka2439
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
依頼相談掲示板
アイコン 相談用スレッド
ベアトリス・ド・アヴェーヌ(ka0458
人間(リアルブルー)|19才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2014/10/22 17:57:11
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/10/19 14:06:02