• 戦闘

廃墟に潜む黒猫少女

マスター:ことね桃

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在8人 / 4~8人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2017/06/02 19:00
リプレイ完成予定
2017/06/11 19:00

オープニング

 ある街の郊外に廃墟がある。
 そこはかつてある裕福な商人の別邸だったもので、主に彼の妻が余暇を過ごすために利用していた。
 当時は白亜の壁が美しく、堂々とした佇まいから街の人々が「お城のお屋敷」と呼んでいたという。
 しかし夫人がある事情から心を病み、ある年の初夏の黄昏時に自らここで命を絶った。
 それ以来ここは夫人の亡霊が出て、屋敷に足を踏み入れたものを尽く呪うという物騒な噂が流れている。
 もはや誰も立ち入ることのなくなった「お城のお屋敷」。
 そこに命知らずの盗賊が訪れたのは何の因果によるものなのか……。

 日が翳り、1時間程度で暗闇に包まれようかという黄昏時。
「兄貴、ここは穴場っすね」
 盗賊の少年ジーンが目を輝かせ、兄貴分のウェインに報告した。その手にはカメオのブローチや銀のゴブレットが握られている。
「俺、廃墟だけに何もかも盗られつくしてると思ってたんですよ。幽霊の噂で誰も近づかなかったんでしょうかね? まあ、ホールにある大量の人形だけはさすがの俺もビビりましたけど。案外あれを見て誰も入れなくなったのかもしんないっすねー」
「そうだな。まあ、その辺の事情は俺にもわからん」
 ウェインは弟分の興奮した声に生返事をし、夢中で物色を続ける。
(……絵や服の類が雨風にやられているのが惜しいな。でも貴金属や工芸品は売れるか)
 気を抜けばほころびそうになる口元を引き締め、ジーンとともに大きな背嚢に宝飾品を詰め込む。
 その時ふと、物音がした。とん、という小さな音。二人が振り返ると、床に見覚えのない人形がちょこんと座っていた。
「なんだ、これ。さっきまでこんなのあったか?」
「さあ……。この部屋は暗いから気づかなかったんでしょう。それより兄貴、これってアレでしょ? ビスクドールとかいう、お高い人形」
「ああ、街では愛好家が少なくないらしいな」
「じゃあ、こいつも持っていきましょうよ。金持ちのガキに喜ばれますよ」
 嬉々として人形を抱き上げるジーン。少女の姿をしたそれは愛らしい笑みを浮かべており、レースをあしらった『汚れひとつない』ワインレッドの美しいドレスがよく似合う。金の髪がしっとりと纏まったままくるくると螺旋を描き、胸まで垂れている。
 ジーンが特に気に入ったのは、この人形に黒い猫の耳と尻尾がついていることだ。製作者はどうしてこのような意匠にしたのだろう。
 楽しそうに人形を眺める暢気な弟分に、ウェインが苛立ちを露わにする。
「……おい、こいつをおかしいと思わないのか」
「え?」
「ゆうに十年は放置されていた物件になんでこんな小奇麗な人形があるんだ。ここは誰も近づかない呪われた屋敷なんだぞ」
「あ、ああ……。もしかしたらどっかのガキが肝試しに入って忘れたのかも……」
「これが持ち歩きできるものかよ。こいつは『小さなガキぐらいの背丈』があるんだぞ!」
 ジーンから手荒く人形を取り上げて床に放り投げ、周りに睨みをきかせるウェイン。ナイフを握り、声を張り上げた。
「誰だか知らんが、姿を見せろ! 今すぐ出てくるなら命だけは助けてやる!!」
 すると、倒れ伏したはずの人形が微かな音を立て、ゆるゆると立ち上がった。
「え、何だよ、これ……!」
 ジーンが声を震わせる。
 人形は先ほどまでの愛らしい笑みを消し、代わりに何とも形容しがたい不気味な表情を浮かべていた。そして。
『ギチ……ギチ……ギチ……』
 金属が擦れあう、不快な音。ふんわりと広がったドレスの裾から小柄な人形には不釣合いな大鎌が露出し、2人に向けられる。
(これは、人形なんかじゃない!!)
 咄嗟にウェインが震えるジーンを庇うように前に出た。そして振り返らず、言う。冷や汗が流れて強張った顔を弟分に見せるわけにはいかない。
「……街に逃げろ」
「えっ?」
「多分、こいつは歪虚ってやつだ。ハンターでないと、おそらく太刀打ち出来ない」
「兄貴はどうするんスか」
「こういう手合いの相手をしたことはないが、俺はお前よりずっと足が速いからな。お前が外に出たのを確認したら俺もすぐに逃げる。さ、早く!」
「でも……」
「馬鹿を言うな! お前がいても共倒れになるだけだ。それよりもハンターを呼んで来い!」
「わかった……。兄貴、絶対逃げてくれよ!!」
 肩越しに謝り、ドアを蹴破るようにして駆け出すジーン。必死で走るさなか、視界の隅に黒猫のような小さな影がいくつも見えた気がした。もっとも、彼は助けを呼ぶことで頭がいっぱいになっていて、それが何かを確認することなく走り去る。
「にゃあ」
 ジーンの背を見送るように物影から次々と姿を現す『黒猫の姿をしている別の何か』。彼らは体を大きく伸ばすと、人形の姿をした雑魔のいる部屋へゆっくりと向かっていった。

 ジーンが最寄のハンターオフィスに駆けつけたのは陽が落ちて間もない頃だった。
 蜘蛛の巣と埃まみれの姿に街の人々は不思議そうな顔をしたが、ジーンは気にかけることなく、オフィスの受付嬢に事情を早口で告げる。
「兄貴は行き場のない俺を拾ってくれたんだ。俺が死んだ弟に似てるからって……。俺、兄貴が助かるなら何でもする。一生かけても今までの償いをする。だから、どうか兄貴を助けてくれ!」
 受付嬢は絶望的な状況を察しながらも、彼の切実な願いに「わかりました。いち早く対応しましょう」と表情を崩さず深く頷くのだった。

解説

■目的
 廃墟に潜伏する雑魔の殲滅

■戦場
 到着時点で陽が暮れてから2時間程度経過しており、明かり無しでは足元がおぼつかない状況になっています。
 戦場は廃墟内のホールと、そこに繋がっている中庭一帯。
 ホールは10スクエア×10スクエア程度の広さがあり、人形が多数散乱しているため、足元が不安定です。
 中庭は15スクエア×15スクエア程度。今は枯れ木が数本立っている程度で、明確な障害となるものはありません。
 なお、人形や廃墟は火系の無差別範囲魔法を使った場合炎上する可能性があります。戦闘中はご注意くださいね。

■敵
●黒猫雑魔:15体
 それほど強くありません。体力低め、瞬発は心持ち高め。
 攻撃は爪での斬撃のみ。
 ただしサイズが普通の猫と変わらず、全身が真っ黒なので戦場が暗い場合は目視するのが難しいです。
 例え明るくしても物陰に隠れて不意打ちを狙う狡猾さがあります。

●人形型雑魔:1体
 8歳程度の少女を模した人形の姿をしています。身長は1m程度と小柄。
 今回は近隣の街に移動する前にたまたまこの屋敷に立ち寄った模様。
 攻撃は鋭い爪による2連撃(威力軽め)と、ドレスの裾から飛び出す大鎌による近接攻撃(やや強力)と、鎌を全周囲1スクエア分振り回す範囲攻撃。
 体力が3分の1以下まで低下すると自棄になり、ハンターの他に廃墟も巻き込んで無差別攻撃を始めます。
 廃墟そのものは滅多なことでは倒れない程度の強度がありますが、あまりにもダメージが蓄積すると、天井が落ちるなど予想外の事態に進展する恐れがあります。

マスターより

 こんにちは、新人マスターのことね桃です。
 今回は見た目に反してエグい攻撃を放つ人形型雑魔ならびに黒猫雑魔の集団と戦うシナリオをお届けします。
 地味にいやらしい状況での戦いとなりますが、よろしくお願いします!
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2017/06/10 23:14

参加者一覧

  • 亜竜殺し
    榊 兵庫(ka0010
    人間(蒼)|26才|男性|闘狩人
  • 戦神の加護
    アデリシア・R・時音(ka0746
    人間(紅)|26才|女性|聖導士
  • 世界の北方で愛を叫ぶ
    樹導 鈴蘭(ka2851
    人間(紅)|14才|男性|機導師
  • ヒトとして生きるもの
    蜜鈴=カメーリア・ルージュ(ka4009
    エルフ|22才|女性|魔術師
  • 侮辱の盾
    西空 晴香(ka4087
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • 疾風の癒し手
    十色 乃梛(ka5902
    人間(蒼)|14才|女性|聖導士
  • 白狼は焔と戯る
    ソティス=アストライア(ka6538
    人間(蒼)|17才|女性|魔術師
依頼相談掲示板
アイコン 【相談卓】
ソティス=アストライア(ka6538
人間(リアルブルー)|17才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2017/06/01 01:17:18
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/05/29 20:07:04