• 戦闘

リボンのかわりにほしいもの

マスター:紺堂 カヤ

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在7人 / 4~7人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2017/06/09 09:00
リプレイ完成予定
2017/06/18 09:00

オープニング

 地鳴りがしたかと思った、と、のちにクロスは語っている。
 その日はさっぱりと晴れた気持ちの良い日で、開け放した窓からはきらきらした青葉の輝きとともにさわやかな風が入り込んでいた。
 そんな、素晴らしい日に。

 ドドドドド……、バッコーン!!!

 衝撃音が、モンド邸に響き渡った。それに次いで、
「きゃあああああ、お嬢さま!!」
 というメイドの叫び声。
(あー、何が起こったか知りたくない……)
 クロスは痛み出した頭を押さえて音のした方へ向った。事件現場は、図書室だった。棚の中身でも盛大にぶちまけたのだろうか、と思いつつ。
「お嬢さま、今度はいったい何を……」
 いつもの嫌味たっぷりの声で図書室へ足を踏み入れたクロスは。
 ただの嫌味では済まされない光景を見て目を見開いた。ダイヤが、苦渋に表情で床にうずくまっている。クロスの顔から血の気が引いた。
「お嬢さま!!!」



 全治五日の、右足の捻挫と打撲。骨に異常がなかったことが、不幸中の幸いであったが、決して動かさず安静にしているように、と医者の命がくだった。痛みどめの薬を飲み、ベッドに押し込められたダイヤは、首をすくめてクロスを伺うように見上げる。
 クロスは当然、鬼の形相だった。
「もう少しお気を付けになってください!!」
「ご、ごめんなさい……」
 ダイヤは天井にまで届く高い本棚の、一番上の本を取るために梯子を使い、そこから足を踏み外して落下したのだった。あの高さから落ちてこの程度で済んだのは誠に運が良かったという他ないだろう。クロスは大きくため息をついた。
「これじゃあ、お誕生日パーティは中止ね」
「当然です」
 ダイヤは来週、誕生日を迎える。この一年余りで親しくなった人々を集めてパーティをしようと張り切っていたのだが、この怪我では中止せざるをえまい。
「ごめんなさい……。私、クロスに迷惑かけてばっかりだわ……」
「迷惑かけているという自覚はおありだったんですね」
「うん……、ごめんなさい」
 いつもなら噛みついてくるはずのクロスの嫌味にも、ムッとする様子すらなく謝罪を繰り返すダイヤ。クロスもさすがに可哀想になる。本当はもっと厳しく言いたいところだが、言葉よりもこの怪我自体が罰となっているようだ、と言葉を飲み込んだ。
「もうわかりましたから。しっかり怪我をなおしてください」
「うん」
 痛みどめが効いて来たのだろう、ダイヤはとろとろと眠そうな目をした。口から飛び出す言葉はまるで、うわごとのようになる。
「ごめんね、クロス……、迷惑だってことは……、わかってるの……」
「ですから、もう」
「わかってるけど……、わかってるけど私……」
 クロスは、息を飲んだ。ダイヤの言わんとすることを察して、目の前がくらりと揺らぐ。
「私……、クロスが好き……。ごめんね……、ごめんね……」
 眠りに落ちたダイヤのまなじりから、涙がひとしずく流れた。



 その、翌日。
 クロスは街へ出てきていた。王都からほど近い街道沿いに、ダイヤが贔屓にしているブランド「RINA'S STAR」が支店を出している。そこの限定品・星屑リボンを、ダイヤは欲しがっていたのだ。誕生日パーティーが開けなくなったダイヤのための、せめてものプレゼントのつもりだった。
 昨日、うわごとのように漏らしたダイヤの本音に、どう答えたらいいのか。その結論はまだ、出ていない。
 けれど。
 嬉しくないわけがなかった。だって、クロスにとって、ダイヤは。
「クロスさま、お待たせしてて申し訳ありません」
 ブティックの店長の声で、クロスはハッと顔を上げた。自分の思考の中に落ちてしまっていた意識を引き戻す。
「星屑リボン、すぐにご用意しますので。ちょっと、バックヤードの方へ行かないと在庫がないものですから……」
 申し訳なさそうにする店長に、クロスは微笑んで首をふった。
「よかったら、私が自分で取って来ましょう。お店は大混雑のようですし」
「いえ、お客様にそんなことをさせるわけには」
「いいんです、バックヤードはこちらですね」
 恐縮する店長を労って、クロスは店の奥へ入った。お屋敷の使用人であるクロスは、外へ出ると自分が客になる、という感覚がどうにも落ち着かなかったのだ。広いバックヤードで、目的の商品を見つけた、そのとき。

 バリーン!!! ドンドン……、きゃあああああああ!!!!!

 様々な音が立て続けにして、店の表の方が騒がしくなった。どうしたのだろう、とクロスがバックヤードから首だけを出して店の様子を伺うと。
「金だァ!!! 金を出せェ!!! おとなしく金を出せば命だけは許してやるぜぇ!!!」
 銃やナイフ、鉈のようなものを持った男たちが店長に迫っていた。
「お頭ぁ、宝石店に押し込む予定じゃなかったんですかあ?」
 来店客を縛り上げながらぼやく声に、髭面のお頭が怒鳴った。
「うるせえな、そっちは後だよ! まずはここで肩慣らしだ。モンド宝石店に押し入るとなれば大仕事だからなァ」
「なるほど、こっちは前試合ってわけっすね!」
 モンド宝石店、という言葉に、クロスは顔をしかめた。つまり。この強盗たちを逃がしてしまうと、次はダイヤの父親が経営する宝石店が襲われる、ということだ。
「き、金庫を開けて参ります」
 店長が、バックヤードへすっとんできた。クロスは素早く、彼の腕をつかんだ。クロスがいることをすっかり忘れていたらしい店長が驚く。
「く、クロスさま!」
「しーっ。僕に、良い考えがあります。このお店、裏口はありますね?」



 クロスは裏口を出て、ハンターオフィスへと駆けて行った。
「金庫は今、からっぽで、銀行へ行っている店員が一時間後に金を持って戻ってくるから、それを待っていて欲しい」
 強盗には、店長がそう説明していた。もちろん、嘘だ。時間を稼いでその間にクロスがハンターを呼びに行く、という、激高されれば命も危うい作戦だったが、幸い強盗はそれを信じた。
「一時間だとぉ? まあ、いい。待ってやろう。ただし、一時間経ってもそいつが戻らなかったらお前ら全員殺してやるからなァ!!!」
 強盗のお頭が、面白そうに笑った。
「待ってる間、酒でも飲むか! ッハハハァ!!」

解説

■成功条件
強盗を捕らえ、店長や買い物客を無事に保護する。

■強盗
男が五人。所持している武器は銃(お頭)、ナイフ×2人、鉈×2人。
全員が防弾チョッキを着用している模様である。
強盗は初めてではないようだが、手練れという様子もない。お頭は粗野なふるまいだが、部下の統率はよくとれているほか、冷静で鷹揚。

■店内の状況
店長、店員×2名、買い物客×5名
店長以外は縄で縛りあげられ、店のすみに座らされている。
店は五メートル四方。店の中央に大きなショーケースがあり、四方の壁はほぼすべてが商品棚。
バックヤードへ続く通路には扉がなく、誰でも入れるようになっているが、強盗たちは今のところそちらを調べるつもりはなさそうである(裏口の存在は知られていない)。

■クロス
モンド邸の使用人。
呼びに行ったハンターに同行して店に戻り、「銀行から金を持って帰ってくるブティック店員」を演じて協力しようと考えている。
戦闘行為以外はわりと何でも人並み以上にこなすことのできる優秀な青年。
なお、雇い主であるモンド氏およびダイヤは、(当然ではあるが)クロスがこの事件に巻き込まれていることを知らない。

※ハンターオフィスから店へは徒歩十分かかるものとする。

マスターより

皆さまごきげんいかがでしょうか、紺堂です。
ダイヤ嬢シリーズで、まさか、戦闘依頼を出すことになろうとは。
しかもダイヤお嬢さま、お誕生日なのに。
えー、ご覧のとおり、依頼の解決にはこれまでのダイヤ嬢シリーズをご存じでなくともまったく問題はありません。前半のくすぐったい部分はガン無視で大丈夫です。
強盗の生死は問いませんが、一般人が捕らえられていることをお忘れなきよう、作戦の計画をお願い致します。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2017/06/15 19:28

参加者一覧

  • 課せられた罰の先に
    クオン・サガラ(ka0018
    人間(蒼)|25才|男性|機導師
  • ヴェルナーの懐刀
    桜憐りるか(ka3748
    人間(蒼)|17才|女性|魔術師
  • 一瞬の狙撃者
    ヒズミ・クロフォード(ka4246
    人間(蒼)|26才|男性|猟撃士
  • 凛然奏する蒼礼の色
    イルム=ローレ・エーレ(ka5113
    人間(紅)|24才|女性|舞刀士
  • 忍者(自称)
    琴吹 琉那(ka6082
    人間(蒼)|16才|女性|格闘士
  • 孤独なる蹴撃手
    骸香(ka6223
    鬼|21才|女性|疾影士
  • 一肌脱ぐわんこ
    小宮・千秋(ka6272
    ドワーフ|6才|男性|格闘士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/06/05 21:41:37
アイコン 相談卓
骸香(ka6223
鬼|21才|女性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2017/06/09 00:42:22