●村人たちの夜
　夜の帳がとっぷりと降りた頃。
　ある村で村人たちが顔を付きあわせていた。
　皆、一様にしかめっ面でうんうん唸っている。
「誰がやるんだ」
　ある男とが声を出す。
　他の者達は、誰かが名乗りを上げないか、互いに牽制しあう。
　しばしの重い沈黙。しかし誰も名乗り出ない。
　先刻から人々はずっと同じことを繰り返していた。だが、事態は一向に進展しない。
　やがて、最も上座に座る男が重い口を開いた。
「しきたりを破ることになるが……仕方ない。ハンター達に頼むか」

●依頼としきたり
「依頼です」
　ハンターオフィスの受付嬢であるモア・プリマクラッセは、依頼を受けたハンター達に内容を説明していく。
「村長祭に向けて、ある物を運んでいただきます。運ぶものはムラサキダイコンと呼ばれる野菜です。これを狙う賊などを警戒しつつ、ジェオルジ中心部まで運んでください」
　野菜を狙う賊。あまり考えられない説明に、モアは補足を付け加える。
「ムラサキダイコンという野菜は、この村と隣の村でしか採れません。希少な物は価格が上がる。これは商売の常識です」
　さらに、と言葉を続ける。
「隣村のムラサキダイコンは今年全滅しました。つまり、例年に比べて収穫量が半分になっています。そのため、野盗が狙うに足る価値が出来てしまいました」
　状況を説明したところで、注意点を話すモア。
「それから一つ、村から強いお願いがあります。死者は出さないでください」
　ハンターオフィスがざわめく。野盗がそんなに強いのか？　言葉に出さないが、そう考えた者による緊張感が支配する。その緊張感を破るようにモアは理由を説明する。
「皆さんが野盗に遅れを取るとは思っていません。しかし、無謀な野盗が命を落とすことも避けてください。村長祭の間、一切の殺生を禁ずる――これが村のしきたりなのだそうです。これに例外はありません」
　細かい注文を説明し終えたところで、モアは最後に一つ付け加えた。
「いえ、例外がありました。ゴブリンや歪虚は、討伐しても結構です」

※この依頼は「ムラサキダイコンを守れ！」の後日談に当たりますが、元のリプレイを読む必要はありません。

●目標
　ムラサキダイコンを村長祭に運んでください。

●依頼内容
　ムラサキダイコンをこの村から村長祭が行われるジェオルジ中心部まで運んでください。
　距離は馬車に乗って朝出発し、夜に到着する程度の距離です。なお馬車はお貸しします。

●ＰＬ情報
　今回の運搬中、敵襲は２回発生します。

▼野盗×８
　一般人の盗賊団です。
　所詮一般人なので、皆さんの敵ではありませんが、うっかりスキルを使った攻撃などを繰りだそうものなら命を奪いかねません。上手に生きたまま拘束してください。
　また、捕らえた後の処置も考える必要があります。

▼ゴブリン×６
　雑魔化しています。ですので、全力で大暴れしていただいて結構です。攻撃は主に武器を持っての突撃と、遠距離から投石を行ってきます。
　なお、雑魔であることはひと目見ればわかりますので、特に相手が歪虚か否かを調べる必要はありません。

　こんにちは、ｃｒです。
　ただの護衛と運搬なのですが……ちょっと厄介な注文がついています。しきたりというのはなぜそうなったのか、わからないものが多いですが、だからといって無碍にするわけにもいきません。
　皆さんのご参加、お待ちしております。