• 日常

Death laugh

マスター:楠々蛙

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加人数
現在6人 / 4~6人
マテリアルリンク
報酬
無し
相談期間
3日
プレイング締切
2017/06/19 19:00
リプレイ完成予定
2017/06/28 19:00

オープニング

※このシナリオは原則として戦闘が発生しない日常的なシナリオとして設定されています。

 澄み渡った晴天の下、祭りの喧噪が溢れ返る。
 常ならば、轍の音を響かせながら馬車が行き交うメインストリートを、仮装に身を包んだ人々が同じ方向を目指してパレードする様子は、見ているだけでも非日常の世界へと足を踏み入れたかのような感慨を覚えさせる。
 パレードに参加する街の住人達や、踊り子に楽団のメンバー──それら全ての顔に共通する一点が、更に輪を掛けて、観る者を異世界へと迷い込んだような心地にさせた。
 骸骨。
 彼らは皆一様に、しゃれこうべの化粧を身に付けているのである。いやそれは参加者のみならず、列の途中にちらほらと見られるオブジェ、それを牽く馬の被り物に至るまで、にっかりと笑みを拡げる白骨がモチーフになっていた。
 聞くところによれば、それは死者の魂を慰めると同時に、“死”という概念そのものを奉る祝祭なのだという。
 どうあっても避け得ぬ“死”を謳い踊る骸骨のパレード。何故彼らは皆、この世の憂いなど知らぬとばかりに笑みを広げているのか。
「人ばっかり。こんなの初めてだわ」
 そんな風俗の妙に思い耽る事もなく、ラウラ=フアネーレはただ目新しい光景へ、年相応に見入るのみである。旅に出てからこっち、雑踏にも慣れて来た彼女ではあるが、これほど規模の大きい祭事に出くわしたのは初めてで、何もかもが目新しい。
 パレードのみならず、祭り一色に染め上げられた街の至るところで骸骨を見る事ができた。
 例えば、この辺り一帯で住人達が好んで被る帽子を、観光客向けに売っている出店などは、商品を骸骨の上に被せて陳列している。
「変わった帽子ね」
 内側に反り返った広い庇に、高いクラウン──俗にテンガロンハットと呼ばれるその帽子を手に取り、試しに頭に乗せるラウラ。彼女の小さな赤い頭には、傍目に見てもサイズが合っていないのだが、そこはそれ、祭りの昂揚に幾らか浮かれているのだろう。
「どう、似合うかしら」
 彼女は後ろを振り返り、足許に付き添う一匹の黒猫──ルーナを見下ろした。黒猫は、ラウラに一瞥こそ寄越したものの、すぐに関心を失った様子でそっぽを向き、ただ尻尾をゆらりと揺らすばかり。
 この反応に、むむと顔をしかめたラウラは、右手でピストルの形を作り、仮初の銃口をルーナへと向けた。
「命が惜しくば、こっちを向くんだな」
 そればかりでなく、声音を低くして脅し文句を口にする始末である。無礼講とはいえ、些か羽目を外し過ぎではなかろうか。──或は、努めてそう振る舞っているのか。
 なぁう。これには流石に思うところがあったのか、仕方なくといった調子で、ルーナが視線を戻す。だけでなく、彼女はその蒼月の瞳をラウラの翠玉の瞳へ、ジッ──と合わせた。
「あう」その眼差しを遮ったのは、ラウラの赤毛からずり落ちたテンガロンハットの庇である。
 ルーナは呆れたような素振りで視線を切ると、今度こそ我関せずといった調子で顔を洗い、身だしなみを整える作業に没頭し始めた。
 ラウラはと言えば、決まり悪そうにピストルの手真似を解くと、頭の帽子を取ろうとする。──その時だった。

 見ぃつけた♪

 ラウラの背中に、そう声を掛ける者があったのは。その声は、何処か稚気を感じさせるモノだった。
 声に振り返ったラウラが見たのは、一人の青年である。
 シャツはうっすらと青く、紺色のスラックスはベルトではなく、マリンブルーのサスペンダーで留めている。
「あれぇ?」
 青年は、腰を折って顔を下げながらラウラの顔を覗き込んだかと思えば、首を傾げてみせた。やはり稚気めいたその仕草と共に、背中から首筋へ、一房に纏めたブロンドが流れ落ちる。後背まで伸ばした後ろ髪を低位置で纏め、ビーズを束ねた髪留めを巻いて結わっているらしい。
「あの。あなたはどちらさま?」
 青年に釣られてというわけでもなかったが、ラウラも小首を傾け返した。
「あっちゃぁ、ごめんねぇ。どうも、人を間違えちまったみたいでさぁ」
 誰何には応えず、青年は身を起こして頭を書きながら、言い訳がましく言った。
「人を探してるの?」
「そうなんだよ。ボクの連れなんだけどねぇ、この人だかりではぐれちゃって。君とおんなじ年頃で、丁度そんな感じの帽子を被ってるもんだから、間違えちゃったよ」
「それじゃあ、迷子の子を探してるの? 大変じゃない」
「いやいや、ボクなんかと違って、しっかりした子だからねぇ。あの子にしてみれば、寧ろはぐれたのはボクの方だと思ってるかもしんないなぁ」
 確かにこの青年、これまでの言動を聞く限り、眼を離せばふらりと飛んで行きそうな人となりをしている。このまま放っておくと、その連れの子供と再会を果たすのは難儀であるように思われた。
「それじゃあ、わたしも手伝ってあげようか?」
 そう考えた末に申し出る。勿論ラウラとて、この不審を煮詰めて出来上がったかのような青年に何も思わなかったわけではない。それでも同行を申し出たのは、彼からは、悪意が感じられなかったからある。
 旅の道すがら、悪党を目にし、その為すところを一度ならず被りさえした彼女は、生来の直感の高さもあって、悪意というモノを感覚的に察するようになっていた。
 肌を焙るような冷気として、或は血を凍らせるような熱気として。だがこの青年からは、そのどちらも感じないのだ。
「ううん、でもなぁ、せっかくのお祭りなのに、付き合わせるのもいかがなものかなぁ」
 なにやら考え込む素振りで、青年は腰と額に手を添える。その時、男の左脇に吊ってあるホルスターに気が付いたラウラは、ふと疑問を発した。
「あなたも、ガンマンなの?」
「うん? ああ、そうだよ。今は空っぽだけどね」
 台詞の通り、空のホルスターを右手で撫でた青年は、不意に「あれぇ?」と再び首を傾げた。
「ていうことは、お嬢ちゃん。他にガンマンのお知り合いがいるのかい?」
「ええ、そうだけど」
 頷くラウラに、「ふぅん、そっかそっか」と思わせ振りに相槌を打つ青年。
「やっぱりお願いしようかなぁ、人探し」
 やがて彼は、「袖振り合うも、なんとやらって言うからね」などと付け加えつつ、ラウラに向けて手を差し伸べた。 
「ミハイル=フェルメールっていうんだ。以後、お見知りおきを」
「わたしは、ラウラ。ラウラ=フアネーレよ」
 相手の名乗りに応じながら、ラウラが手を握り返そうとした時──
 にゃぁう。青年──ミハイルとラウラの間に、黒猫が割って入った。
「君は──なんてお名前かな?」
 自分をジッと見上げる蒼月の瞳を受けて、囁くように問うミハイル。
「この子はルーナって言うの」
「ふぅん、そっかそっか」
 ミハイルはその口許に浮かべる笑みの毛色を僅かに変え、一人の少女と一匹の猫に微笑み掛ける。
「それじゃあ、僕なんかがお相手じゃ不満だろうけど、お伴願おうかな?」

解説

・目的
“死”を奉る祭り(モデルは、メキシコの『死者の日』)に参加する。
或は、ラウラ、ルーナと共に、ミハイルの連れを探す。

・フィールド
祭事一色染まった街。至るところに、笑う骸骨をモチーフにした飾りがある。土産なども、骸骨を模している物が多い。
モデルの『死者の日』は、マリーゴールドの花を供えたりもするらしいが、今回はなしの方向で。OPで描写を入れる余裕がなかったというのもありますが、多少の差がないと、世界観的にアレなんで。

・NPC
ラウラ=フアネーレ
赤毛の少女。別にお祭りに一人なのが寂しいからって、ほいほいと怪しい男について行ったわけではない。お団子頭という設定だったのに、なんか帽子被ったりしてる。きっと今日は髪を解いてるんでしょう。……というか、途中で思い出した。

ルーナ
黒猫。おそらくきっと、ただの猫。

ミハイル=フェルメール
怪しい青年。常に笑みを浮かべている。
一応ガンマンらしいが、ホルスターに銃を差していない。


ミハイルの連れ
ラウラと同じ年頃、同じ背丈の女の子。テンガロンハットを被っているらしい。
それ以上の詳細は不明。ミハイルに訊いても、はぐらかされる。

・備考
今回はただ普通に祭りに参加する事も可能ですが、OPから察せられる通り、西部劇シリーズのストーリー進行という側面が強いです。
リプレイの最後にNPC絡みの強制イベントが発生します。

マスターより

 思わせぶりっていうか、言外に全てをぶっちゃけてるOPとなっております。もしも、過去シナリオ『Dirty Green』のリプレイをお読みの方が居れば、この青年が何者なのか、考えるまでもないでしょう。
 直接的な表現よりも、持って回った描写を好んで多用するくせに、謎めかすのが苦手なんですな、僕は。

 ちなみに『死者の日』は、日本でいうところのお盆に当たるイベントみたいですね。ハロウィンなんかも、起源は鎮魂にあるらしいですが、色合いの差にお国柄というか、そもそも死生観が違うのかなと思ったり。西部劇と時代劇を見比べてみると、やっぱりその辺違いますからね。

関連NPC

  • Senorita
    ラウラ=フアネーレ(kz0162
    人間(クリムゾンウェスト)|12才|女性|一般人
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2017/07/02 01:43

参加者一覧

  • 交渉人
    J・D(ka3351
    エルフ|26才|男性|猟撃士
  • クールガイ
    エリミネーター(ka5158
    人間(蒼)|35才|男性|猟撃士
  • この手で救えるものの為に
    カッツ・ランツクネヒト(ka5177
    人間(紅)|17才|男性|疾影士
  • 義惡の剣
    イッカク(ka5625
    鬼|26才|男性|舞刀士
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • 金色のもふもふ
    パトリシア=K=ポラリス(ka5996
    人間(蒼)|19才|女性|符術師
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2017/06/19 16:04:29
アイコン お話しましょ♪
パトリシア=K=ポラリス(ka5996
人間(リアルブルー)|19才|女性|符術師(カードマスター)
最終発言
2017/06/17 15:23:03