ゲスト
(ka0000)
鎌倉クラスタ偵察
マスター:凪池シリル

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 4~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2017/06/25 09:00
- リプレイ完成予定
- 2017/07/04 09:00
オープニング
顔を上げて景色を見回して、伊佐美透は溜息をつく。
精悍、という言葉が似合う青年である。日本人離れはしていないが彫りの深い顔立ち、長身の体躯はしっかりした筋肉でおおわれている。真白のシャツにデニムのボトム、それに剣帯ベルトに日本刀を佩いているだけの無造作な出で立ちが却って様になるようではある。
彼が初めてクリムゾンウェストの地へと転移させられたときは、こんな理不尽なことがこの世界にあっていいのか、と強く思ったものだ。
……それが今。こうして、かつて居た世界であるリアルブルーの大地を踏みしめて。思うのはこうだ──こんな理不尽な世界が、よくぞまあ自分が生まれて二十数年間も、平和の皮をかぶり続けていたものである。
見上げた白い四角い建物、そこに掲げられた文字を読む。大船駅。たった今飛ばされてきた場所の名。
役者になるために上京してからというもの、駅というのは常に人の存在がある場所という感覚だった。こうして日も高いころから無人の気配を強烈に発する駅というのは、もうそこが、彼がこの地を離れている間に彼が知るものとは別の何かになってしまったように思わせるには十分だった。
……今更ではある。リアルブルーの現状にしたところで。
大船駅から伸びる路線の一つ、横須賀線をなぞるようにして視線を、最終的な目標、鶴岡八幡宮があった方へと向けていく。
今は遠すぎてわからない。が、クラスタに押しつぶされたその周辺は、ここなどよりよほど悲惨な光景が待っていることは覚悟しなければなるまい。
分かっていてなお気が滅入る、その度に透は自分に思い知らせておく。この世界は理不尽に満ちているのだ。二十二年間、日本で平和に暮らしていたことが奇跡だっただけで。
理不尽なんてものにはいくらでもぶつかるようにできているのだ。
例えばいきなり異世界に飛ばされるだとか。
例えば戻るはずの故郷はもうかつて知るものだとは思わない方がいいだとか。
例えば──
「透のあにぃ、おひけえなすってぇ! 久方にご一緒出来て光栄でさあ! 手前ども、あにぃの役に立てるよう頑張りますんで!」
……例えば、転移先の異世界でなんか妙なのに懐かれるとかになったりとか、だ。
●
とりあえず早急に指摘すべきことは何だ。思い浮かべ順番付けをしながら、透は声をかけてきたクリムゾンウェスト出身の青年、チイ=ズヴォーを見た。
美丈夫、という形容が似合う青年である。長い髪に中性的な顔立ち。透と同じ程度の長身だが肩幅含め全体のシルエットは細く、手足が長い。部族の標準的な──ついでに言うと特徴的な口調や一人称もそうである──貫頭衣にゆったりとしたボトム、そこに、透と同じような日本刀が佩かれている。
紅と蒼の世界のの交流が活発化するに伴って目にする機会の増えた日本刀というものにすっかり魅せられた、とチイは言う。そこまでは透にも理解できる。祖国発祥のひいき目を抜きにしても、刀は美術的価値も高いだろうとは思う。
解せないのは、同じハンター同士何度か任務を共にするうちに、何故か透がリアルブルーの刀使いとしてすっかり気に入られてしまったことである。もっとましな使い手はいくらでもいるだろうに。
「……とりあえずだ」
思考がまとまる。ああそうだ。何はともあれ火急速やかに是正しなければならないことがある。
「あにぃはやめろと言ったよな?」
チイはズヴォー族としてごく普通に話しているのだとしても、こちらの感覚からすればその口調でそう呼ばれるのは傍目完全にチンピラである──実際、透の体格から、駆け出しのころはそういう役柄が多かった。
「あっ、そうっした! 手前どもとしたことが久しぶりでちょいと浮かれちまいましたねえ! 気を付けまさあ、透殿!」
出来れば気を付けずに自然に呼べるようになってほしい。多分これはこれからも何度か呼ばれるやつだと半ば理解しつつ、それでも素直に従おうとはしてくれてるので嘆息しつつ一度これで妥協することにする。
「で……今回の依頼、ちゃんと把握してるよな?」
「はっ! 狂気どもが巣食うかのクラスタをぶっ潰すべく、手前どもで周辺を探索して攻略の足掛かりを見つけてくるってことっすね! 何でも、テーサツキ? とやらじゃ、上手く近寄れねえとかいう話で?」
続く問いに張り切って答えるチイに、困惑気味ながらも透は頷いた。一応、概ねあってはいる。
今回、ハンターたちに課せられたのは鎌倉クラスタの周辺を探ることである。……かのクラスタの周辺には、特殊な電波が放出されており、機械類の動きを妨害するのだという。兵器が近寄れないのであれば、生身で事態に対応しうるものが偵察に行くよりない。
「そう。偵察だ。交戦は主目的じゃない。……もう少し静かにしないか」
生暖かい気持ちで無駄に優しい声になるのを感じながら、諭すように透は言った。
「成程。気を付けやす」
頷くチイの声は、小声とは言い難いがやはり多少の改善はあった。まあいいだろうと思う事にする。どの道完全に敵を避けて通れるとは思えないのだ。暫くは街並みと言えるものもあるだろうが、近づけば周辺はほぼ瓦礫だらけの場所と化すだろう。必要以上に声と気配を抑えようとしても疲れるだけかもしれない。だからと言ってわざと目立って戦闘を増やす必要は何処にもないというだけで。
また、ふう、と溜息が零れた。
「……任せてくだせえ、透殿」
その溜息を何だと思ったのか。チイがやけに真面目くさった顔で言った。
「リアルブルーに巣食う敵とはいえ、手前どもには大して問題ねえなんぞ思ってねえです。歪虚は敵、それを抜きにしても手前どもが透殿の役に立ちてえのは本気でさあ。透殿の故郷を救うため、手前どもはいつも以上に本気でやらせてもらいまさあ!」
………………。
ああまったく、どう反応しろと言うのか。何もかもがズレまくっている。日本というくくりで考えればここは透の故郷と言えなくもないが、ここ自体はそれほど馴染みのある地ではない──が、かといって、荒れ果てた状態に胸が痛まない景色でもないのだ。
「……まあ。お前の戦士としての腕前は、信頼はしてるが」
そこは偽りなく、事実である。チイは戦士だ。初めから歪虚の存在が認識されていた世界で、部族の戦士として初めから鍛え上げられていた者。
──だから解せない。そんな使い手が、何故見世物の剣である自分の剣技を気に入ったのか。
「へへ……がんばりまさぁ! 透のあに……、あ、透殿」
透の言葉に、チイがにへらっと笑みを浮かべる。調子に乗ってまた間違えそうになった部分は、強めに視線を送って辛うじて阻止した。
ああ。結局こうやって、己は納得のいかない理不尽にそれでも地道に対応していくのだ。……抗う意思と、それから力があるのだから。
──覚醒者となった今、見せかけの剣でも全くの張りぼてとは思っていない。
精悍、という言葉が似合う青年である。日本人離れはしていないが彫りの深い顔立ち、長身の体躯はしっかりした筋肉でおおわれている。真白のシャツにデニムのボトム、それに剣帯ベルトに日本刀を佩いているだけの無造作な出で立ちが却って様になるようではある。
彼が初めてクリムゾンウェストの地へと転移させられたときは、こんな理不尽なことがこの世界にあっていいのか、と強く思ったものだ。
……それが今。こうして、かつて居た世界であるリアルブルーの大地を踏みしめて。思うのはこうだ──こんな理不尽な世界が、よくぞまあ自分が生まれて二十数年間も、平和の皮をかぶり続けていたものである。
見上げた白い四角い建物、そこに掲げられた文字を読む。大船駅。たった今飛ばされてきた場所の名。
役者になるために上京してからというもの、駅というのは常に人の存在がある場所という感覚だった。こうして日も高いころから無人の気配を強烈に発する駅というのは、もうそこが、彼がこの地を離れている間に彼が知るものとは別の何かになってしまったように思わせるには十分だった。
……今更ではある。リアルブルーの現状にしたところで。
大船駅から伸びる路線の一つ、横須賀線をなぞるようにして視線を、最終的な目標、鶴岡八幡宮があった方へと向けていく。
今は遠すぎてわからない。が、クラスタに押しつぶされたその周辺は、ここなどよりよほど悲惨な光景が待っていることは覚悟しなければなるまい。
分かっていてなお気が滅入る、その度に透は自分に思い知らせておく。この世界は理不尽に満ちているのだ。二十二年間、日本で平和に暮らしていたことが奇跡だっただけで。
理不尽なんてものにはいくらでもぶつかるようにできているのだ。
例えばいきなり異世界に飛ばされるだとか。
例えば戻るはずの故郷はもうかつて知るものだとは思わない方がいいだとか。
例えば──
「透のあにぃ、おひけえなすってぇ! 久方にご一緒出来て光栄でさあ! 手前ども、あにぃの役に立てるよう頑張りますんで!」
……例えば、転移先の異世界でなんか妙なのに懐かれるとかになったりとか、だ。
●
とりあえず早急に指摘すべきことは何だ。思い浮かべ順番付けをしながら、透は声をかけてきたクリムゾンウェスト出身の青年、チイ=ズヴォーを見た。
美丈夫、という形容が似合う青年である。長い髪に中性的な顔立ち。透と同じ程度の長身だが肩幅含め全体のシルエットは細く、手足が長い。部族の標準的な──ついでに言うと特徴的な口調や一人称もそうである──貫頭衣にゆったりとしたボトム、そこに、透と同じような日本刀が佩かれている。
紅と蒼の世界のの交流が活発化するに伴って目にする機会の増えた日本刀というものにすっかり魅せられた、とチイは言う。そこまでは透にも理解できる。祖国発祥のひいき目を抜きにしても、刀は美術的価値も高いだろうとは思う。
解せないのは、同じハンター同士何度か任務を共にするうちに、何故か透がリアルブルーの刀使いとしてすっかり気に入られてしまったことである。もっとましな使い手はいくらでもいるだろうに。
「……とりあえずだ」
思考がまとまる。ああそうだ。何はともあれ火急速やかに是正しなければならないことがある。
「あにぃはやめろと言ったよな?」
チイはズヴォー族としてごく普通に話しているのだとしても、こちらの感覚からすればその口調でそう呼ばれるのは傍目完全にチンピラである──実際、透の体格から、駆け出しのころはそういう役柄が多かった。
「あっ、そうっした! 手前どもとしたことが久しぶりでちょいと浮かれちまいましたねえ! 気を付けまさあ、透殿!」
出来れば気を付けずに自然に呼べるようになってほしい。多分これはこれからも何度か呼ばれるやつだと半ば理解しつつ、それでも素直に従おうとはしてくれてるので嘆息しつつ一度これで妥協することにする。
「で……今回の依頼、ちゃんと把握してるよな?」
「はっ! 狂気どもが巣食うかのクラスタをぶっ潰すべく、手前どもで周辺を探索して攻略の足掛かりを見つけてくるってことっすね! 何でも、テーサツキ? とやらじゃ、上手く近寄れねえとかいう話で?」
続く問いに張り切って答えるチイに、困惑気味ながらも透は頷いた。一応、概ねあってはいる。
今回、ハンターたちに課せられたのは鎌倉クラスタの周辺を探ることである。……かのクラスタの周辺には、特殊な電波が放出されており、機械類の動きを妨害するのだという。兵器が近寄れないのであれば、生身で事態に対応しうるものが偵察に行くよりない。
「そう。偵察だ。交戦は主目的じゃない。……もう少し静かにしないか」
生暖かい気持ちで無駄に優しい声になるのを感じながら、諭すように透は言った。
「成程。気を付けやす」
頷くチイの声は、小声とは言い難いがやはり多少の改善はあった。まあいいだろうと思う事にする。どの道完全に敵を避けて通れるとは思えないのだ。暫くは街並みと言えるものもあるだろうが、近づけば周辺はほぼ瓦礫だらけの場所と化すだろう。必要以上に声と気配を抑えようとしても疲れるだけかもしれない。だからと言ってわざと目立って戦闘を増やす必要は何処にもないというだけで。
また、ふう、と溜息が零れた。
「……任せてくだせえ、透殿」
その溜息を何だと思ったのか。チイがやけに真面目くさった顔で言った。
「リアルブルーに巣食う敵とはいえ、手前どもには大して問題ねえなんぞ思ってねえです。歪虚は敵、それを抜きにしても手前どもが透殿の役に立ちてえのは本気でさあ。透殿の故郷を救うため、手前どもはいつも以上に本気でやらせてもらいまさあ!」
………………。
ああまったく、どう反応しろと言うのか。何もかもがズレまくっている。日本というくくりで考えればここは透の故郷と言えなくもないが、ここ自体はそれほど馴染みのある地ではない──が、かといって、荒れ果てた状態に胸が痛まない景色でもないのだ。
「……まあ。お前の戦士としての腕前は、信頼はしてるが」
そこは偽りなく、事実である。チイは戦士だ。初めから歪虚の存在が認識されていた世界で、部族の戦士として初めから鍛え上げられていた者。
──だから解せない。そんな使い手が、何故見世物の剣である自分の剣技を気に入ったのか。
「へへ……がんばりまさぁ! 透のあに……、あ、透殿」
透の言葉に、チイがにへらっと笑みを浮かべる。調子に乗ってまた間違えそうになった部分は、強めに視線を送って辛うじて阻止した。
ああ。結局こうやって、己は納得のいかない理不尽にそれでも地道に対応していくのだ。……抗う意思と、それから力があるのだから。
──覚醒者となった今、見せかけの剣でも全くの張りぼてとは思っていない。
解説
鎌倉クラスタを攻略すべく、偵察を行います。
現状、鎌倉クラスタ周辺には強烈な妨害電波が発せられており、CAMおよびあらゆる機器が使用できず、そのため攻略が困難とされています。
この状況を打破すべく、生身で周囲を探り、何らかの情報を持ち帰ってください。
開始地点は大船駅となります。
周囲には、狂気の眷族がそれなりに徘徊しています。現状では、以下のようなものが確認されています。
・小型狂気(浮遊型)
リアルブルーで最もよく見られるVOIDで、サイズ1。
大きな眼球を持った虫とクラゲが融合したような外見。
ゆったりとした速度で浮遊・飛行する。触手の他、目からのレーザーで攻撃します。
・小型狂気(人型)
サイズ1~2。
浮遊型歪虚が複数集まって人型を形成したもの。
なぜ人型を真似ているのかは不明ですが、浮遊型の持つ能力の他に手持ちの武器を持ちます。
武器として最も多いのはリアルブルーの銃であるようです。
OPに登場したNPC二名はそこそこの腕前の闘狩人です。勝手に適切に判断し戦いますので、放置して状況が悪化したり判定結果が悪くなることはありません。
単純に、凪池シリルというマスターがどのような文章を書くのかの参考に登場しています。
PCからの絡みがない限りはリプレイには一切登場しない予定ですが、興味をお持ちなら話しかけたり連携を試みても構いません。上手く彼らを利用したプレイングは他PCとの連携と同様に評価の対象にはなり得ます。
リプレイが完全シリアスになるもコメディとなるもプレイングからの判断とさせていただきますので、そこを含めお話しあい下さいませ。
現状、鎌倉クラスタ周辺には強烈な妨害電波が発せられており、CAMおよびあらゆる機器が使用できず、そのため攻略が困難とされています。
この状況を打破すべく、生身で周囲を探り、何らかの情報を持ち帰ってください。
開始地点は大船駅となります。
周囲には、狂気の眷族がそれなりに徘徊しています。現状では、以下のようなものが確認されています。
・小型狂気(浮遊型)
リアルブルーで最もよく見られるVOIDで、サイズ1。
大きな眼球を持った虫とクラゲが融合したような外見。
ゆったりとした速度で浮遊・飛行する。触手の他、目からのレーザーで攻撃します。
・小型狂気(人型)
サイズ1~2。
浮遊型歪虚が複数集まって人型を形成したもの。
なぜ人型を真似ているのかは不明ですが、浮遊型の持つ能力の他に手持ちの武器を持ちます。
武器として最も多いのはリアルブルーの銃であるようです。
OPに登場したNPC二名はそこそこの腕前の闘狩人です。勝手に適切に判断し戦いますので、放置して状況が悪化したり判定結果が悪くなることはありません。
単純に、凪池シリルというマスターがどのような文章を書くのかの参考に登場しています。
PCからの絡みがない限りはリプレイには一切登場しない予定ですが、興味をお持ちなら話しかけたり連携を試みても構いません。上手く彼らを利用したプレイングは他PCとの連携と同様に評価の対象にはなり得ます。
リプレイが完全シリアスになるもコメディとなるもプレイングからの判断とさせていただきますので、そこを含めお話しあい下さいませ。
マスターより
はじめまして。新参マスターの凪池シリルと申します。
と言いつつ、鎌倉攻略がいよいよ開始するかもしれないというその前哨戦にいきなり参加させていただきドキドキなのですが。
とはいえ、新参マスターの出す依頼です。やることは結構単純な強行偵察ですので、簡単な戦闘依頼くらいのイメージでお気軽にどうぞです。勿論、調査、戦闘両面での優れたプレイングは高評価です。
と言いつつ、鎌倉攻略がいよいよ開始するかもしれないというその前哨戦にいきなり参加させていただきドキドキなのですが。
とはいえ、新参マスターの出す依頼です。やることは結構単純な強行偵察ですので、簡単な戦闘依頼くらいのイメージでお気軽にどうぞです。勿論、調査、戦闘両面での優れたプレイングは高評価です。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2017/06/26 00:50
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
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【相談卓】 道元 ガンジ(ka6005) 人間(リアルブルー)|15才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2017/06/25 03:47:10 |
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★質問卓★ 道元 ガンジ(ka6005) 人間(リアルブルー)|15才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2017/06/20 13:05:56 |
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![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/06/20 12:10:16 |