●とある山中、麦を売る商人たちの馬車
　獣の息遣いがいくつもいくつも聞こえてきた。
　馬車は足を止めた。
「おい、こ、こここ、こいつはまずいんじゃないか？」
　荷車からちんくしゃ顔の男が言う。
　御者の爬虫類顔の男は、振り向き、人差し指を口元にあて、沈黙を促した。
　爬虫類男は、大きな目をギョロギョロと動かして周りを見る。
　すると、近くの草むらが揺れた。
　刹那、馬がいななく。
「ちくしょう！　完全に狙われてる！　逃げるぞ！」
　爬虫類男は馬を走らせた。
　ちんくしゃ男の情けない声が荷車から聞こえる。
「おいおいおい！　待ってくれよ！　ここまで来てこれかよ！」
「ばかやろう！　そんなこと言ってる場合か！　逃げるぞ！」
　爬虫類男は声を荒げた。
　泣き言をいう暇があるならば、状況を切り抜ける方策を考える方が現実的だ。
　爬虫類男は頭の中で様々な想定を始めた。
　しかし、現実は非情だ。
　進路上に獣が現れ、道を変えるも、変えた先でも先回りされ、また道を変える。
　こんなことを繰り返していくうちに、男たちは獣たちにいいように誘導されていることに気付いた。
　気付いたまではいいが、それが男たちに焦りを与え、思考を鈍らせていく。
　その結果、爬虫類顔の男は方策という方策も思いつかず、ついに崖まで追い詰められてしまった。
　ちんくしゃ男は顔をくしゃくしゃにして、泣き出した。
　前方30秒距離には狼の群れ。背後には崖。
　爬虫類男は焦った声でちんくしゃ男を叱責する。
「ぴーぴー泣いてんじゃねぇよ！　さっさと積荷を……」
　爬虫類男は言いかけて、狼たちが目の前まで迫っていることに気づく。
　男たちは情けない声をあげて逃げていった。

●ハンターオフィスにて
「あそこが通れなきゃ、取引にいけねぇんだよ！」
　爬虫類男が大声で言う。
「お、お願いだ。ハ、ハンターにでも頼まなきゃ、む、麦の納期に間に合わないんだ」
　ちんくしゃ男は焦った様子でまくし立てる。
「あそこからの信用をなくしちまうのはまずい！　だから頼む！　一刻も早くあそこを安全にしてくれ！」
　男たちの言葉遣いは乱暴なものだ。しかし、その表情は懇願という言葉がぴったり合う。
　ハンターオフィスに、ひとつの依頼が舞い込んだ。

●目的
　狼の群れの全滅
　狼たちにはリーダーがいます。
　しかし、リーダーを倒したところでまた新たなリーダーが現れてしまうことが予想されます。
　依頼の主旨としては、脅威となる狼を全滅させることで、運搬ルートを安全にしてもらいたいというものです。

●狼について
　狼は最低でも5匹以上はいます。全体でどの程度いるかは不明です。
　彼らは猛烈な勢いで威力の高い攻撃スキルを仕掛けてきます。
　移動力の高さを利用して、接近攻撃をしてくるようです。

●求められるプレイング
　今回の狼たちは、戦術的に有利な位置取りで相手を襲う傾向にあります。
　詳しく述べるならば、戦闘におけるイニシアチブは敵側にボーナス修正が加えられており、敵の数も多く設定しているため、先制を取られて一度に襲いかかられるとかなりのダメージが予想されます。
　したがって、今回は以下のような作戦を考えてプレイングの提出をするとよいでしょう。

・先制を取られないような作戦
・一度にまとめて襲いかかられないようにする作戦
・戦闘に関するプレイング

　今回の依頼では、スキルに基づいた作戦行動や、作戦を援助するような行動は、状況を有利に持っていくこともできるでしょう。
　狼という動物の特徴や山間部という環境などを利用するのもよいかもしれません。
　なお上記した作戦は目安です。

●時間的猶予
　一般人には時間が少なく思えますが、ハンターならば作戦を行うのに十分な時間があるものとします。

●ちょこっとヒント
　実のところ、狼たちは、商品の麦を狙っていたのではなく、男たちが旅をするための食糧を狙っていたようです。
　したがって積荷の麦も無事です。
　もしも積荷を見つけて依頼人のもとに届けられれば、成功度が上昇します。

　初めまして！　吉田トムソンです！
　今回からファナティックブラッドのMSとして活動することになりました。
　今回の依頼は狼の群れの討伐です。
　あの手この手を使ってやっつけてしまいましょう！
　解説のちょこっとヒントには、依頼をさらに上手に成功させるヒントがあります。
　良ければ参考にしてみてくださいね！