ゲスト
(ka0000)
【繭国】火の玉の系譜
マスター:鹿野やいと

- シナリオ形態
- ショート
関連ユニオン
アム・シェリタ―揺籃館―- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在7人 / 4~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 3日
- プレイング締切
- 2017/07/05 19:00
- リプレイ完成予定
- 2017/07/14 19:00
オープニング
王国騎士団副団長ダンテ・バルカザール(kz0153)が品行方正な騎士であった時はない。少なくとも本人は覚えていないし、彼の来歴を知るゲオルギウス・グラニフ・グランフェルトにしてもそれらしい記憶は皆無だろう。だが彼が正真正銘の「騎士」である事は疑いない。それは彼の肩書きがそう言わせる訳ではなく、彼自身の行いがそう言わせるのだ。
「俺だって最初から人間出来てたわけじゃねえ。若いころの俺なんざ、武器の扱いが上手いだけのクソガキだ」
謙遜の気配もなく事実としてダンテは語る。その頃の彼は今ほどに世の中の仕組みも理解できず、理解出来ないことを棚に上げて仕組みを天賦の膂力で押し切った。彼の直情な有り様を小気味良いとする者もいたが、同時に直情すぎる青年に味方する者も少なかっただろう。ダンテが幸運だったのは、その数少ない味方の一人に若き日の前国王アレクシウス・グラハムが居たことだった。
アレクシウスは年少の頃より聡明で、国内外の諸問題に心を痛めていた。歪虚という共通の敵相手に一致団結出来ない様を見るにつけ、強い苛立ちも抱えてもいた。
ダンテはそれら貴族の派閥や権力にまるで頓着しなかった。彼の無知がそうさせていた事もあったが、アレクシウスにとってこれほど心の躍る働きをする者もそうそういなかった。同時に彼が暴力的なだけではなく、善性や義侠心を持つ事もアレクシウスは見抜いていた。
年近い二人は階級を気にせずよく遊び、よく暴れ、よく叱られていた。一時重責を忘れるために放埓を演じるアレクシウスと、根っから粗暴なダンテではその意味は大きく異なるが、年近い二人が良き友人であった事には疑いようがない。
この二人の関係は制御不能と思われたダンテの心象にも大きな変化を与えた。国王を通じて見識を広げたダンテは粗暴さを収める術を覚え、人を率いる難しさを知り、人を護りたいという思いをより強くする。そして彼は街を歩く義賊ではなく、街を守る騎士となった。ダンテにとってアレクシウスとは単なる首長ではなく、彼自身を騎士たらしめる要石でもあった。
二人の良好な関係が終わりを迎えたのはホロウレイドの負け戦。国王アレクシウスは戦の前夜、国でも民でもなく「娘を頼む」とだけダンテに託して死地に赴いた。良き国王であり続けたアレクシウスの、極めて個人的な願いだった。
その頃には中年に差し掛かって背負うものが膨れ上がり、昔ほど粗暴にも放埓にもなり切れず、それでも互いに最善と信じた道を歩いてきた。その人生の果てに迎えた危機の中、アレクシウスは遠い昔の夢を共にした友人に、小さな未来を託して死んでいった。ダンテが王国騎士団の副団長及び赤の隊の隊長となったのはこの後の事である。
●
ダンテを始めとする赤の隊の者達は悩みを抱えていた。戦場で主体となる戦術が変化し、自分達が骨董品となりつつあることだ。以前からはその傾向はあったが国家間の調整不足から王国のみで歪虚に対応する場合もおおく、王国の技術レベルの中では十分必要な部隊であった。それがサルヴァトーレロッソの漂着以後、急速に人類の結束は進んだ。更にはロッソの技術が流入することで技術進歩は目覚ましく、既存のシステムは陳腐化が進んだ。同様に戦術より外れつつあると聖堂戦士団も嘆いてはいるが、彼らは前線で戦闘可能な衛生兵として自身を再定義すれば、むしろ現状のままでも需要は大きい。ヒールを使えば10秒で応急処置が出来る為、リアルブルーの衛生兵よりも対応力は高い場面もあるだろう。
では赤の隊はどうすればいいのか。明日から銃を持って隊列を組めばいいかと言えばそうはならない。歪虚の攻勢も激しくなる昨今、ベテランの武器を挿げ替えて新兵に戻してしまうわけにはいかないのだ。今ある技術はいかしつつ、新しい技術の要素を取り込む必要がある。
「というわけで、これが新装備です!!」
ジェフリー・ブラックバーン(kz0092)が居並ぶ赤の隊の騎士と模擬戦に参加するハンター達に示したのは砲戦用刻令ゴーレム「Volcanius」。これまで後方支援を外部に委託するしかなかった赤の隊だが、砲兵を随伴させる事により連携の取れた部隊を連れていく事が可能になる。
問題はーー。
「すまねえ。俺、数学は苦手なんだ」
弱り顔のダンテが正直に告白する。勿論そんな事は先刻承知であるが、ジェフリーは逆に安心した。砲兵が数学で動いていると理解してくれている。どのみち砲兵は新規編成である。使う側が数学まで意識する必要は余り無い。
「では予定通り模擬戦でも一回やってみましょうか」
「なあおい」
「砲弾は訓練用に砂が降ってくるだけなのでちょっと痛いぐらいです」
「なあおいって!」
ジェフリーは笑顔でダンテの呼びかけを無視する。弱ろうがどうしようが、導入自体を決めたのは自分ではない。そして決定事項なのだ。
「安心してください。ダンテ隊長の仕事は砲弾をかわすだけの簡単な仕事ですよ」
「的じゃねえか!!!」
「では、私に代わって砲兵の指揮をしますか?」
思わず席を立ったダンテだったが、固まったまま表情のままゆっくりと席についた。
「任せるぜ」
ニカッと笑顔で仕事を快諾してくれるダンテ。単純明快で有り難い。
今回の模擬戦自体の手順は簡単だ。普通にぶつかってもらうだけである。この模擬戦で問題があるのは新装備組だ。戦術がほぼ確立している旧装備組に対して、新装備組は連携訓練が済んでいるとはいいがたい。既に準備からもたついている様子があり先が思いやられる。天幕の中まで慌ただしさが伝わってくるようだった。
「しっかしまあ、ほんの数年で戦争が変わっちまったなあ」
ゴーレムを見上げるようダンテは呆れたな感心したような、捉えにくい声でそうつぶやいた。
「王女殿下が女王陛下になるぐらいまでは、あのベリアルのクソ野郎に掛かり切りのつもりだったのに、あれよあれよという間に豚野郎討伐か。ホロウレイドは運が良かったな。ベリアルにこの前みたいな変身をされてたらもっとひでえ事になってたろうなあ」
「そういえば、隊長からホロウレイド以前の話を聞いたことはありませんでしたね」
「へ。そうだったか?」
「はい、全く」
教育としては何度も聞かされる話だが、ダンテ本人が語ることはなかった。戦史として語るには彼の視点は主観的に過ぎ、戦術の知識として語るには彼は言葉が拙い。誰も彼にその役割を求めることなく、彼自身も特に語る事は無かった。
「そうか。なら準備が出来るまでの時間つぶしにでもするか」
ダンテは天幕の下の椅子に深く腰掛けると、騎士達にとってなじみの薄い前国王の話から始めた。彼の話は軍事的には学ぶべき内容がそれほどなかったが、国を守る決意に至る部分では多くの騎士と同じ感情を伴っていた。話下手ゆえに短い話ではあったが、騎士とハンター達は黙ってダンテの語りを聞いていた。
「俺だって最初から人間出来てたわけじゃねえ。若いころの俺なんざ、武器の扱いが上手いだけのクソガキだ」
謙遜の気配もなく事実としてダンテは語る。その頃の彼は今ほどに世の中の仕組みも理解できず、理解出来ないことを棚に上げて仕組みを天賦の膂力で押し切った。彼の直情な有り様を小気味良いとする者もいたが、同時に直情すぎる青年に味方する者も少なかっただろう。ダンテが幸運だったのは、その数少ない味方の一人に若き日の前国王アレクシウス・グラハムが居たことだった。
アレクシウスは年少の頃より聡明で、国内外の諸問題に心を痛めていた。歪虚という共通の敵相手に一致団結出来ない様を見るにつけ、強い苛立ちも抱えてもいた。
ダンテはそれら貴族の派閥や権力にまるで頓着しなかった。彼の無知がそうさせていた事もあったが、アレクシウスにとってこれほど心の躍る働きをする者もそうそういなかった。同時に彼が暴力的なだけではなく、善性や義侠心を持つ事もアレクシウスは見抜いていた。
年近い二人は階級を気にせずよく遊び、よく暴れ、よく叱られていた。一時重責を忘れるために放埓を演じるアレクシウスと、根っから粗暴なダンテではその意味は大きく異なるが、年近い二人が良き友人であった事には疑いようがない。
この二人の関係は制御不能と思われたダンテの心象にも大きな変化を与えた。国王を通じて見識を広げたダンテは粗暴さを収める術を覚え、人を率いる難しさを知り、人を護りたいという思いをより強くする。そして彼は街を歩く義賊ではなく、街を守る騎士となった。ダンテにとってアレクシウスとは単なる首長ではなく、彼自身を騎士たらしめる要石でもあった。
二人の良好な関係が終わりを迎えたのはホロウレイドの負け戦。国王アレクシウスは戦の前夜、国でも民でもなく「娘を頼む」とだけダンテに託して死地に赴いた。良き国王であり続けたアレクシウスの、極めて個人的な願いだった。
その頃には中年に差し掛かって背負うものが膨れ上がり、昔ほど粗暴にも放埓にもなり切れず、それでも互いに最善と信じた道を歩いてきた。その人生の果てに迎えた危機の中、アレクシウスは遠い昔の夢を共にした友人に、小さな未来を託して死んでいった。ダンテが王国騎士団の副団長及び赤の隊の隊長となったのはこの後の事である。
●
ダンテを始めとする赤の隊の者達は悩みを抱えていた。戦場で主体となる戦術が変化し、自分達が骨董品となりつつあることだ。以前からはその傾向はあったが国家間の調整不足から王国のみで歪虚に対応する場合もおおく、王国の技術レベルの中では十分必要な部隊であった。それがサルヴァトーレロッソの漂着以後、急速に人類の結束は進んだ。更にはロッソの技術が流入することで技術進歩は目覚ましく、既存のシステムは陳腐化が進んだ。同様に戦術より外れつつあると聖堂戦士団も嘆いてはいるが、彼らは前線で戦闘可能な衛生兵として自身を再定義すれば、むしろ現状のままでも需要は大きい。ヒールを使えば10秒で応急処置が出来る為、リアルブルーの衛生兵よりも対応力は高い場面もあるだろう。
では赤の隊はどうすればいいのか。明日から銃を持って隊列を組めばいいかと言えばそうはならない。歪虚の攻勢も激しくなる昨今、ベテランの武器を挿げ替えて新兵に戻してしまうわけにはいかないのだ。今ある技術はいかしつつ、新しい技術の要素を取り込む必要がある。
「というわけで、これが新装備です!!」
ジェフリー・ブラックバーン(kz0092)が居並ぶ赤の隊の騎士と模擬戦に参加するハンター達に示したのは砲戦用刻令ゴーレム「Volcanius」。これまで後方支援を外部に委託するしかなかった赤の隊だが、砲兵を随伴させる事により連携の取れた部隊を連れていく事が可能になる。
問題はーー。
「すまねえ。俺、数学は苦手なんだ」
弱り顔のダンテが正直に告白する。勿論そんな事は先刻承知であるが、ジェフリーは逆に安心した。砲兵が数学で動いていると理解してくれている。どのみち砲兵は新規編成である。使う側が数学まで意識する必要は余り無い。
「では予定通り模擬戦でも一回やってみましょうか」
「なあおい」
「砲弾は訓練用に砂が降ってくるだけなのでちょっと痛いぐらいです」
「なあおいって!」
ジェフリーは笑顔でダンテの呼びかけを無視する。弱ろうがどうしようが、導入自体を決めたのは自分ではない。そして決定事項なのだ。
「安心してください。ダンテ隊長の仕事は砲弾をかわすだけの簡単な仕事ですよ」
「的じゃねえか!!!」
「では、私に代わって砲兵の指揮をしますか?」
思わず席を立ったダンテだったが、固まったまま表情のままゆっくりと席についた。
「任せるぜ」
ニカッと笑顔で仕事を快諾してくれるダンテ。単純明快で有り難い。
今回の模擬戦自体の手順は簡単だ。普通にぶつかってもらうだけである。この模擬戦で問題があるのは新装備組だ。戦術がほぼ確立している旧装備組に対して、新装備組は連携訓練が済んでいるとはいいがたい。既に準備からもたついている様子があり先が思いやられる。天幕の中まで慌ただしさが伝わってくるようだった。
「しっかしまあ、ほんの数年で戦争が変わっちまったなあ」
ゴーレムを見上げるようダンテは呆れたな感心したような、捉えにくい声でそうつぶやいた。
「王女殿下が女王陛下になるぐらいまでは、あのベリアルのクソ野郎に掛かり切りのつもりだったのに、あれよあれよという間に豚野郎討伐か。ホロウレイドは運が良かったな。ベリアルにこの前みたいな変身をされてたらもっとひでえ事になってたろうなあ」
「そういえば、隊長からホロウレイド以前の話を聞いたことはありませんでしたね」
「へ。そうだったか?」
「はい、全く」
教育としては何度も聞かされる話だが、ダンテ本人が語ることはなかった。戦史として語るには彼の視点は主観的に過ぎ、戦術の知識として語るには彼は言葉が拙い。誰も彼にその役割を求めることなく、彼自身も特に語る事は無かった。
「そうか。なら準備が出来るまでの時間つぶしにでもするか」
ダンテは天幕の下の椅子に深く腰掛けると、騎士達にとってなじみの薄い前国王の話から始めた。彼の話は軍事的には学ぶべき内容がそれほどなかったが、国を守る決意に至る部分では多くの騎士と同じ感情を伴っていた。話下手ゆえに短い話ではあったが、騎士とハンター達は黙ってダンテの語りを聞いていた。
解説
●依頼内容
新装備を交えた模擬戦への参加
●ハンターの役割
・模擬戦の参加
ダンテ率いる旧装備の赤の隊(仮想敵役)と、
ジェフリー率いる新装備の赤の隊(概念実証)の
どちらかに片方に参加可能です。割り振りは偏っても構いません
・それ以外
観戦や治療なんかのギャラリー参加も可能です
また、今回の再編成はハンターとの共闘を前提にする部分が多い為、
ハンターからの要望も受け付けています
●場所
王都郊外の平野部
遮蔽無しの平地で、砲戦ゴーレムの射程外まで離れてから戦闘を開始します
●装備品
旧装備部隊はいつもどおりです
新装備部隊はVolcaniusが3機配備されていますが、
代わりに前衛となる騎士の人数が旧装備部隊の6割程度です
ハンターが参加した場合も戦力としてこの比率になるよう人数調整します
●評価基準
RB基準では古い知識ではありますが、三兵戦術の有用性は確立されています
なので評価は以下になります
・新規編成の砲兵と旧来赤の隊騎士の連携確立
・赤の隊騎士の砲兵への理解浸透
・PCよりの提案内容で有用なものがあれば上記と別枠で加点
●他
・OP前半の内容はPC情報となります
・諸般の事情もありまして、相談期間を短くしています。ご了承ください
新装備を交えた模擬戦への参加
●ハンターの役割
・模擬戦の参加
ダンテ率いる旧装備の赤の隊(仮想敵役)と、
ジェフリー率いる新装備の赤の隊(概念実証)の
どちらかに片方に参加可能です。割り振りは偏っても構いません
・それ以外
観戦や治療なんかのギャラリー参加も可能です
また、今回の再編成はハンターとの共闘を前提にする部分が多い為、
ハンターからの要望も受け付けています
●場所
王都郊外の平野部
遮蔽無しの平地で、砲戦ゴーレムの射程外まで離れてから戦闘を開始します
●装備品
旧装備部隊はいつもどおりです
新装備部隊はVolcaniusが3機配備されていますが、
代わりに前衛となる騎士の人数が旧装備部隊の6割程度です
ハンターが参加した場合も戦力としてこの比率になるよう人数調整します
●評価基準
RB基準では古い知識ではありますが、三兵戦術の有用性は確立されています
なので評価は以下になります
・新規編成の砲兵と旧来赤の隊騎士の連携確立
・赤の隊騎士の砲兵への理解浸透
・PCよりの提案内容で有用なものがあれば上記と別枠で加点
●他
・OP前半の内容はPC情報となります
・諸般の事情もありまして、相談期間を短くしています。ご了承ください
マスターより
御無沙汰してます。今回の繭国では赤の隊とダンテを担当させていただきます
というとあれですが、いつもどおりでしたね
大筋としては内政フェイズの王国なので、プレイングも成長につながる内容であれば歓迎です
もちろん遊びに来るだけでも構いません。どなたもお気軽に御参加ください
というとあれですが、いつもどおりでしたね
大筋としては内政フェイズの王国なので、プレイングも成長につながる内容であれば歓迎です
もちろん遊びに来るだけでも構いません。どなたもお気軽に御参加ください
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2017/07/13 22:57
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 水流崎トミヲ(ka4852) 人間(リアルブルー)|27才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2017/07/05 17:50:08 |
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質問卓 ボルディア・コンフラムス(ka0796) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2017/07/02 23:50:51 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/07/05 17:43:18 |