ゲスト
(ka0000)
【界冥】絶望からはまだ遠い位置
マスター:凪池シリル

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在6人 / 3~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2017/07/21 09:00
- リプレイ完成予定
- 2017/07/30 09:00
オープニング
敵の姿を発見すると、真っ直ぐに駆けつける。
現れたのはもうすっかり見慣れた目玉型の『狂気』の歪虚だ。それが、三体。
接近の気配に反応した一体がこちらに向かって触手を伸ばし叩きつけてくる。刀を斜めに打ち下ろしてそれを払い落として、更に前へ。こちらの間合いに入る前に、別の触手がもう一撃。足元を払うように薙いで来た攻撃を飛んで避ける。勢いのまま踏み込んで、斬りつける!
一撃は浅くはない程度に敵の身体に食い込み血飛沫を上げた。逆に言えば一刀両断とはいかなかった。もがく敵はつまりまだ暴れる程度には余力があるということで、その肉体の多くを占める単眼にエネルギーが灯るのを見て取って、身構える。
熱線が来る。判断した頭はまず横に避けようとして右足で地を蹴ろうとして……刹那、思い留まって逆に足を踏みしめた。刀を掲げるように身構える。やがて来る衝撃を巡らせたマテリアルと防具の厚みを利用して弾くが、それでも灼ける痛みを感じた。
苛立ちを敵へと向けて意志に変え、踏みとどまったことで変わらぬ距離を再び一気に詰める。数回、触手と刀が弾き合う。斬撃の度に歪虚は動きを鈍らせていき、やがて落ちる。
目の前の敵を倒したところで、周りを見る。残る敵は──
「はっ! 他愛もないでさあ!」
チィ=ズヴォーが上げた雄たけびと共に確認した。どうやら他のハンターの手により倒されたらしい。
「いいかてめえらぁ! 手前どもと、この透殿が来たからにゃあ、これ以上この地で狼藉が許されると思うなでさぁ!」
そうしてチイは、もはやピクリとも動かない敵へと向けてびしりと刀を突きつけて宣言していた。
……なんでお前もまたここに居るんだ──とは、伊佐美透は問わなかった。勝手に俺まで巻き込むな、とも。
軽く肩を回して、熱線を受けた傷の具合を確認する。ヒリつく感触はあるがまだ支障はないだろう。それを確かめるとともに、後ろを振り返る。透が避けていれば熱線が向かったであろう場所。観光地に相応しい旅館の入り口がそこにあった。
視線をやったその先には江の島の風景がある。この景色を一か所、無残に粉砕された旅館の玄関、に書き換えただけで、その意味が大きく変わってしまうような。
それを想像して、しかし、合理的な判断ではないという事も透は認めていた。
依頼内容はしっかりと頭に入っている。江の島に上陸する歪虚の軍勢を討伐すること。島の入り口となる江ノ島大橋入り口では既に別のチームが交戦しているが、特に数の多い小型浮遊歪虚はどうしても全てを足止めするのは難しい。その討ち漏らしに対処するのがこちらに回された任務だ。
その目的は、あくまで今回江ノ島沖に停泊しているメタ・シャングリラの援護だ。こちらの戦力の消耗と、乗り込んできた敵による工作を防ぐためで、江の島の町や観光資源を守るところまでは含まれていない。後どれほど、あの橋の向こうから敵がやってくるかが読めない以上、任務外のことにまで気を回して消耗を増やすのは正しい行動とは言い難い。
それでも、そうしてしまったのは。それこそが、きっとチイがここに来た理由と一緒なのだ。
あの光景を見てしまったから。
先日の依頼。鎌倉クラスタその周辺を偵察してくるというその依頼の果てに、彼らもまたたどり着いた光景。
だけどこの地はまだ。少なくともこの地はまだ。人々が消えたのでも遺したのでもなく留守にしただけと分かるこの地は、絶望的と呼ぶには、遠い。
「……これ以上、この地を、蒼の世界を、踏みにじらせねえっすよ!」
もはや敵に向けてではなく、チイが言った。はっきりと義憤を込めて。
それに。
(……臆面もなく言えるものだ)
浮かび上がる思いは、感心と呆れのどちらが大きいのだろう。冷静に省みれば、多分前者の方が大きい。
迷いなどそれこそ無駄だと分かっていても、透にははっきりとは割り切れなかった。
すべてが瓦礫と化したあの光景を見てしまったからこそ。
ここを守ったところで、その代わりになるとでも?
そこにムキになる資格が己にあるのか?
ああ。感じてしまう。あの光景を見たときの己の想いもまた、絶望からは遠い。所詮己に関りのある場所ではなかったから。
疑念の声はさらに囁く──そして守りきることが、現実的に可能だとでも?
広くはない島だ。坂の多い道は、狭い路地も多い。だからこそ白兵での対応になるわけだが、それでも周囲を巻き込まずに戦うなど至難の業に思えた。厳密に言えば、今の戦闘でもすでに触手に叩かれて道路の何カ所かが割れている。
不毛な思考の巡りを止めてくれるのは皮肉にも敵の存在だった。誰かが新たに敵の侵入を確認したとの声に再び走る。索敵と戦闘の同時進行だ。すべての敵を橋の終わり、江の島の入り口で対処しきるとはいかず、幾度かは市街地に入り込まれる。
街並みの中、狂気が無闇に触手を振り回すのが見えて。
「やあやあ、手前どもこそはズヴォー族の戦士が一人、チイ=ズヴォー!」
走りながら、チイが声を上げた。
「てめえら、手前どもと透殿を無視して進もうってんなら覚悟するでさあ! 背を向けるならこれ幸い、義によって手前どもらがてめえらを成敗するでさあ! 無視するならそれも! なんだか、めっちゃめちゃに! とにかくすごいアレで!」
……はったりをかますならもう少し何とかならなかったのかと言いたくなるような言動ではあったが、意外なことに歪虚たちは意識をチイたちへと向きなおした。市街の奥へと進もうとしていた一団の何体かが進路を変える。
チイが確信を得た笑みを透に向ける。半ば自棄な心地で、透も声を張り上げた。
「ああそうだ! 俺に背を向けるなら、貴様らに待つのは残虐な末路だ!」
発声に練り上げる。怒りを、憎しみを。それが己のものではなくても想像して作り上げることはできる。それを生業にしてきた。
「あの橋を越えて貴様らが踏み込んできたのは怒れる獣の顎の中と知れ! もはや貴様らは噛み砕かれ飲み込まれるだけだ! せめて死に方を選びたい奴は来い!」
台詞と共に、光にかざすように白刃を閃かせる。見世物の剣技を──魅せるための剣閃を──交差させる。興が乗れば全身から発せられる気組みも格段に違うものとなった。所詮はったり、小芝居だ。だが芝居であるがゆえに、集めた敵の数が多かったことは、本職として少しばかり溜飲が下がった。
現れたのはもうすっかり見慣れた目玉型の『狂気』の歪虚だ。それが、三体。
接近の気配に反応した一体がこちらに向かって触手を伸ばし叩きつけてくる。刀を斜めに打ち下ろしてそれを払い落として、更に前へ。こちらの間合いに入る前に、別の触手がもう一撃。足元を払うように薙いで来た攻撃を飛んで避ける。勢いのまま踏み込んで、斬りつける!
一撃は浅くはない程度に敵の身体に食い込み血飛沫を上げた。逆に言えば一刀両断とはいかなかった。もがく敵はつまりまだ暴れる程度には余力があるということで、その肉体の多くを占める単眼にエネルギーが灯るのを見て取って、身構える。
熱線が来る。判断した頭はまず横に避けようとして右足で地を蹴ろうとして……刹那、思い留まって逆に足を踏みしめた。刀を掲げるように身構える。やがて来る衝撃を巡らせたマテリアルと防具の厚みを利用して弾くが、それでも灼ける痛みを感じた。
苛立ちを敵へと向けて意志に変え、踏みとどまったことで変わらぬ距離を再び一気に詰める。数回、触手と刀が弾き合う。斬撃の度に歪虚は動きを鈍らせていき、やがて落ちる。
目の前の敵を倒したところで、周りを見る。残る敵は──
「はっ! 他愛もないでさあ!」
チィ=ズヴォーが上げた雄たけびと共に確認した。どうやら他のハンターの手により倒されたらしい。
「いいかてめえらぁ! 手前どもと、この透殿が来たからにゃあ、これ以上この地で狼藉が許されると思うなでさぁ!」
そうしてチイは、もはやピクリとも動かない敵へと向けてびしりと刀を突きつけて宣言していた。
……なんでお前もまたここに居るんだ──とは、伊佐美透は問わなかった。勝手に俺まで巻き込むな、とも。
軽く肩を回して、熱線を受けた傷の具合を確認する。ヒリつく感触はあるがまだ支障はないだろう。それを確かめるとともに、後ろを振り返る。透が避けていれば熱線が向かったであろう場所。観光地に相応しい旅館の入り口がそこにあった。
視線をやったその先には江の島の風景がある。この景色を一か所、無残に粉砕された旅館の玄関、に書き換えただけで、その意味が大きく変わってしまうような。
それを想像して、しかし、合理的な判断ではないという事も透は認めていた。
依頼内容はしっかりと頭に入っている。江の島に上陸する歪虚の軍勢を討伐すること。島の入り口となる江ノ島大橋入り口では既に別のチームが交戦しているが、特に数の多い小型浮遊歪虚はどうしても全てを足止めするのは難しい。その討ち漏らしに対処するのがこちらに回された任務だ。
その目的は、あくまで今回江ノ島沖に停泊しているメタ・シャングリラの援護だ。こちらの戦力の消耗と、乗り込んできた敵による工作を防ぐためで、江の島の町や観光資源を守るところまでは含まれていない。後どれほど、あの橋の向こうから敵がやってくるかが読めない以上、任務外のことにまで気を回して消耗を増やすのは正しい行動とは言い難い。
それでも、そうしてしまったのは。それこそが、きっとチイがここに来た理由と一緒なのだ。
あの光景を見てしまったから。
先日の依頼。鎌倉クラスタその周辺を偵察してくるというその依頼の果てに、彼らもまたたどり着いた光景。
だけどこの地はまだ。少なくともこの地はまだ。人々が消えたのでも遺したのでもなく留守にしただけと分かるこの地は、絶望的と呼ぶには、遠い。
「……これ以上、この地を、蒼の世界を、踏みにじらせねえっすよ!」
もはや敵に向けてではなく、チイが言った。はっきりと義憤を込めて。
それに。
(……臆面もなく言えるものだ)
浮かび上がる思いは、感心と呆れのどちらが大きいのだろう。冷静に省みれば、多分前者の方が大きい。
迷いなどそれこそ無駄だと分かっていても、透にははっきりとは割り切れなかった。
すべてが瓦礫と化したあの光景を見てしまったからこそ。
ここを守ったところで、その代わりになるとでも?
そこにムキになる資格が己にあるのか?
ああ。感じてしまう。あの光景を見たときの己の想いもまた、絶望からは遠い。所詮己に関りのある場所ではなかったから。
疑念の声はさらに囁く──そして守りきることが、現実的に可能だとでも?
広くはない島だ。坂の多い道は、狭い路地も多い。だからこそ白兵での対応になるわけだが、それでも周囲を巻き込まずに戦うなど至難の業に思えた。厳密に言えば、今の戦闘でもすでに触手に叩かれて道路の何カ所かが割れている。
不毛な思考の巡りを止めてくれるのは皮肉にも敵の存在だった。誰かが新たに敵の侵入を確認したとの声に再び走る。索敵と戦闘の同時進行だ。すべての敵を橋の終わり、江の島の入り口で対処しきるとはいかず、幾度かは市街地に入り込まれる。
街並みの中、狂気が無闇に触手を振り回すのが見えて。
「やあやあ、手前どもこそはズヴォー族の戦士が一人、チイ=ズヴォー!」
走りながら、チイが声を上げた。
「てめえら、手前どもと透殿を無視して進もうってんなら覚悟するでさあ! 背を向けるならこれ幸い、義によって手前どもらがてめえらを成敗するでさあ! 無視するならそれも! なんだか、めっちゃめちゃに! とにかくすごいアレで!」
……はったりをかますならもう少し何とかならなかったのかと言いたくなるような言動ではあったが、意外なことに歪虚たちは意識をチイたちへと向きなおした。市街の奥へと進もうとしていた一団の何体かが進路を変える。
チイが確信を得た笑みを透に向ける。半ば自棄な心地で、透も声を張り上げた。
「ああそうだ! 俺に背を向けるなら、貴様らに待つのは残虐な末路だ!」
発声に練り上げる。怒りを、憎しみを。それが己のものではなくても想像して作り上げることはできる。それを生業にしてきた。
「あの橋を越えて貴様らが踏み込んできたのは怒れる獣の顎の中と知れ! もはや貴様らは噛み砕かれ飲み込まれるだけだ! せめて死に方を選びたい奴は来い!」
台詞と共に、光にかざすように白刃を閃かせる。見世物の剣技を──魅せるための剣閃を──交差させる。興が乗れば全身から発せられる気組みも格段に違うものとなった。所詮はったり、小芝居だ。だが芝居であるがゆえに、集めた敵の数が多かったことは、本職として少しばかり溜飲が下がった。
解説
鎌倉クラスタ戦、江ノ島大橋入り口をどうしても超えてしまう浮遊型小型狂気を待ち構えて討伐します。
戦場は江の島上、橋の終点から江島神社、江の島ヨットハーバーを頂点とする三角形に囲まれるあたりとなるでしょう。
市街地を含み、坂も多く、細い路地を含む地形です。
目的は江の島沖に停泊中のメタ・シャングリラを攻撃されないことにあります。それ以外の損害は依頼失敗と見做されません。
敵のデータは以下の通り
小型狂気(浮遊型)
リアルブルーで最もよく見られるVOIDで、サイズ1。
大きな眼球を持った虫とクラゲが融合したような外見。
ゆったりとした速度で浮遊・飛行する。触手の他、目からのレーザーで攻撃します。
一気にやってくる数は多くはありません。入り込んできたことを漏らさず、確実に討伐し進ませないことが主眼となります。
戦場は鎌倉クラスタからの妨害電波により機械類や通信類は機能しません。魔導アーマー、CAM、車両だけでなくトランシーバーや魔導短伝話も使えません。
ただ、覚醒者が武器として使う魔導機械の一部などは動くことが確認されています。
OPに登場したNPC二名はそこそこの腕前の闘狩人です。勝手に適切に判断し戦いますので、放置して状況が悪化したり判定結果が悪くなることはありません。
単純に、凪池シリルというマスターがどのような文章を書くのかの参考に登場しています。
PCからの絡みがない限りはリプレイには一切登場しない予定ですが、興味をお持ちなら話しかけたり連携を試みても構いません。上手く彼らを利用したプレイングは他PCとの連携と同様に評価の対象にはなり得ます。
戦場は江の島上、橋の終点から江島神社、江の島ヨットハーバーを頂点とする三角形に囲まれるあたりとなるでしょう。
市街地を含み、坂も多く、細い路地を含む地形です。
目的は江の島沖に停泊中のメタ・シャングリラを攻撃されないことにあります。それ以外の損害は依頼失敗と見做されません。
敵のデータは以下の通り
小型狂気(浮遊型)
リアルブルーで最もよく見られるVOIDで、サイズ1。
大きな眼球を持った虫とクラゲが融合したような外見。
ゆったりとした速度で浮遊・飛行する。触手の他、目からのレーザーで攻撃します。
一気にやってくる数は多くはありません。入り込んできたことを漏らさず、確実に討伐し進ませないことが主眼となります。
戦場は鎌倉クラスタからの妨害電波により機械類や通信類は機能しません。魔導アーマー、CAM、車両だけでなくトランシーバーや魔導短伝話も使えません。
ただ、覚醒者が武器として使う魔導機械の一部などは動くことが確認されています。
OPに登場したNPC二名はそこそこの腕前の闘狩人です。勝手に適切に判断し戦いますので、放置して状況が悪化したり判定結果が悪くなることはありません。
単純に、凪池シリルというマスターがどのような文章を書くのかの参考に登場しています。
PCからの絡みがない限りはリプレイには一切登場しない予定ですが、興味をお持ちなら話しかけたり連携を試みても構いません。上手く彼らを利用したプレイングは他PCとの連携と同様に評価の対象にはなり得ます。
マスターより
凪池シリルです。再び鎌倉クラスタ戦にお邪魔いたします。
登場NPC含め前回シナリオ(鎌倉クラスタ偵察)の続きっぽい話になっていますが、参加したのしてないのはぜーんぜん気にしなくてオッケーです。
連動シナリオながら、難易度は「普通」。始めたばかりの方や復帰したての方も遠慮なく、とか、あとは、心情や台詞を多めにしても他のところよりは迷惑がかかりにくいんじゃないかとか、そんな要望に合わせましてどうぞ。
登場NPC含め前回シナリオ(鎌倉クラスタ偵察)の続きっぽい話になっていますが、参加したのしてないのはぜーんぜん気にしなくてオッケーです。
連動シナリオながら、難易度は「普通」。始めたばかりの方や復帰したての方も遠慮なく、とか、あとは、心情や台詞を多めにしても他のところよりは迷惑がかかりにくいんじゃないかとか、そんな要望に合わせましてどうぞ。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2017/07/22 09:17
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 鞍馬 真(ka5819) 人間(リアルブルー)|22才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2017/07/21 04:12:58 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/07/17 06:16:51 |