ゲスト
(ka0000)
Sultry night
マスター:楠々蛙

このシナリオは5日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在4人 / 3~4人
- サポート
- 現在2人 / 0~4人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 3日
- プレイング締切
- 2017/07/24 22:00
- リプレイ完成予定
- 2017/08/07 22:00
オープニング
※このシナリオは原則として戦闘が発生しない日常的なシナリオとして設定されています。
──キャロォォル、バリィィィ。お前らにはがっかりだぜ。
ヤツは、その言葉とは裏腹に口端を曲げていた。
──学ばなかったのか、なにも。まぁわかっちゃいたさ、だろうってな。壁の穴(Wall in the Hole)なんて、くだらねぇ名前を未だに使ってんだからよ。
ヤツが鼻で哂いながら首筋に突き付けた刀を引いたかと思えば、次の瞬間には、その切っ先を左肩に突き刺された。
苦鳴を噛み殺す。
──無用な穴はこさえない、ってか? だがよ、そんな戒め籠めたところで、穴が塞がるわけじゃねぇ。
ヤツは肩から刀を引き抜き、赤く濡れた刀身を舐めるように眺め回す。
──この世界は最高だ。余計なしがらみもなく、力だけが物を言う。イーストウッドの世界そのまんまさ。他所から回されたお使いなんざやらなくとも、テメエで事を為せばイイ。テメエがテメエの為すが儘にな。
ヤツは刀から視線を切ると、こっちの眼を覗き込んで来た。
──イカレ(Wild)ちまえばイイのさ。穴をこさえにこさえて、壁なんざ崩しちまえよ。
ヤツはニオイでも嗅ぐように鼻先を近付け、更に続けた。
──なぁキャロル、いつだかお前言ってたじゃねぇか。人間に鉛玉喰らわす時にゃ、脳ミソをトカゲにするって。なら簡単だ、常日頃っからそうすりゃイイ。そのほうが、もっとシンプルに事を済ませられる。
その顔に唾を吐き捨てる。──バカが、お前にゃわからねぇ。
ヤツはしばらく表情を止めたままだったが、やがて顔を俯かせると肩を震わせ始めた。同時に、呼気めいた笑声を漏らす。そして再び顔を上げ、外套の袖で顔を拭った時には表情の一切を消して、僅かに一歩、足を後ろに退いた。
自らは腰に佩いた鞘に刀を納めながら、──抜けよ。と呟く。同時に、それまで両手を拘束していた縄が解かれる。
後ろ手に手首を縛っていたロープを解いたのは、ヤツの取り巻きの一人。何が可笑しいのか、ニコニコと微笑むガキだった。年は、少年と青年との境程だろうか。カラフルな髪留めで後ろ髪を縛ったそのガキは、ロープを放り捨てると、入れ替わりに同じく帯状のモノを投げて寄越した。
足許に放り出されたのは、自前のガンベルト。そのホルスターには、同じく自前のリボルバーが納まっていた。
無言のまま、ガンベルトを腰に巻く。
ヤツはそれを確認すると、左手を刀の鞘に置き、右手を前にスッと差し出した。
Clink……
そして無言のままに、コインを天高く弾き飛ばした。
クルリクルリと舞い上がるコインは、やがて重力に引っ張られて下へと墜ちてゆく。
そしてコインが地面に触れるとともに、コッキング音と鞘鳴りが同時に張り詰めた空気を劈いた。
ギシッ──と、寝台代わりに使っていたソファが大きく軋む。
ばね仕掛けのように跳ね起きた上半身──一糸纏わぬ褐色の半身は、粘るような汗に濡れていた。
首筋を伝い落ち、鎖骨が作る溝に溜まった汗が一滴、零れ落ちる。細身ながら引き締まった胸板を滑り、六つに割れた腹筋の中心をなぞるかと思えば、汗の滴は割れ目の横筋に逸れて、流れの筋を左へと変えた。
やがて辿り付いたのは、左脇腹の辺りに穿たれた一つの刃傷。──その、傷跡。
「……クソ暑ぃ」
古傷に右手を宛がい、キャロル=クルックシャンクは、忌々しく呟きを発した。不快極まる汗は、このうだるような夏の夜の暑さばかりのせいではない。寧ろ熱を発しているのは、その古傷であった。
やがてキャロルは舌打ちを零すとともに、気怠そうな挙措でソファから立ち上がった。身に付けている物と言えば、縦縞のトランクスのみである。
彼は、窓から差し込む月明かりのみを頼りとする、薄暗い古宿の一室に据えられた丸テーブルまで床板をギシギシと鳴らしながら歩み寄ると、天板に置かれた水差しを手に取った。そして傍らに置かれたコップに構う事なく、注ぎ口に直接口を付けて喉を鳴らす。
「……ぬりぃ」
やがて水差しから口を離したキャロルは、口許を拭いながらそう吐き捨てた。
水差しをテーブルの上に戻すと、同じく天板に置かれていた煙草の紙箱を手に取り、上蓋を指先で叩いて飛び出した一本の紙巻き煙草を唇に食んだ。だが火を着けようにも、手許にマッチ箱が見当たらない。
再び舌打ちを零したキャロル。「ほらよ」不意に横合いから声を掛けられ、咄嗟に右手を掲げ、投げて寄越されたマッチ箱を受け止めた。
彼は無言のまま、箱からマッチを摘まみ取ると、その頭薬を丸テーブルの木目に擦り付けて、生じた火を咥え煙草の先端に近付ける。用を済ませたマッチ箱を投げ返し、紫煙を一筋虚空に向けて吐き出してから、キャロルは「いつから起きてた」と、マッチ箱を投げて返した先へと視線を向けた。
「お前が起きる前からだ」
それに応じたのは、室内に一つだけ置かれたベッドの上に腰掛ける、バリー=ランズダウンである。彼もまた腰から上には何も身に付けてはいなかったが、下半身は下着のみでなくスラックスを履いていた。
「ウーウーウーウーと、うるさくて眠れやしない」
「そいつはイビキだ」
「そいつはまた、随分と風変りなイビキだな」
バリーが皮肉混じりに呟くと、キャロルは肩越しにソファを親指で示す。
「寝床が粗末なモンでな。もちっとマシになりゃ、イビキも納まるだろうぜ」
「そいつは残念だったな。コインの表に賭けた自分を恨め」
すげなく鼻を鳴らすバリー。彼は一口だけ喫したのみで、ベッド脇のナイトテーブルに置かれた灰皿に煙草を押し付けて火を揉み消した。
「観念してさっさと寝ろ。明日も早い。朝一番でこの町を出るからな」
「……行き先は、ラウラの村か」
「……ああ、そうだ」
未だ紫煙を昇らせるキャロルの台詞に、バリーはおもむろに首肯した。彼は灰皿の傍らに置いてあるミサンガを見遣る。それは先日、今彼らが滞在している街の祭りからラウラ=フアネーレが宿に戻って来た折、腕に着けていた物だ。
ビーズを束ねて作られたそのアクセサリには、二人共に見覚えがあった。
「なんだかんだと、あの子と長く居過ぎた。これ以上は、命取りだ。あの子にとっても、俺たちにとっても」
「……ああ、わかってる」
キャロルはそれだけ返すと、口許の煙草を摘まんで、指先で弾き飛ばした。薄闇の中に赤い筋を描き、月光に照らされて浮かぶ煙の筋を残しながら飛んだ吸い差しは、ナイトテーブルの灰皿へと落ちる。
バリーが手を伸ばし、投げ入れられた煙草の火を揉み消して視線を戻した時には、既にキャロルはソファの上に寝そべって、眼を閉ざしていた。
──キャロォォル、バリィィィ。お前らにはがっかりだぜ。
ヤツは、その言葉とは裏腹に口端を曲げていた。
──学ばなかったのか、なにも。まぁわかっちゃいたさ、だろうってな。壁の穴(Wall in the Hole)なんて、くだらねぇ名前を未だに使ってんだからよ。
ヤツが鼻で哂いながら首筋に突き付けた刀を引いたかと思えば、次の瞬間には、その切っ先を左肩に突き刺された。
苦鳴を噛み殺す。
──無用な穴はこさえない、ってか? だがよ、そんな戒め籠めたところで、穴が塞がるわけじゃねぇ。
ヤツは肩から刀を引き抜き、赤く濡れた刀身を舐めるように眺め回す。
──この世界は最高だ。余計なしがらみもなく、力だけが物を言う。イーストウッドの世界そのまんまさ。他所から回されたお使いなんざやらなくとも、テメエで事を為せばイイ。テメエがテメエの為すが儘にな。
ヤツは刀から視線を切ると、こっちの眼を覗き込んで来た。
──イカレ(Wild)ちまえばイイのさ。穴をこさえにこさえて、壁なんざ崩しちまえよ。
ヤツはニオイでも嗅ぐように鼻先を近付け、更に続けた。
──なぁキャロル、いつだかお前言ってたじゃねぇか。人間に鉛玉喰らわす時にゃ、脳ミソをトカゲにするって。なら簡単だ、常日頃っからそうすりゃイイ。そのほうが、もっとシンプルに事を済ませられる。
その顔に唾を吐き捨てる。──バカが、お前にゃわからねぇ。
ヤツはしばらく表情を止めたままだったが、やがて顔を俯かせると肩を震わせ始めた。同時に、呼気めいた笑声を漏らす。そして再び顔を上げ、外套の袖で顔を拭った時には表情の一切を消して、僅かに一歩、足を後ろに退いた。
自らは腰に佩いた鞘に刀を納めながら、──抜けよ。と呟く。同時に、それまで両手を拘束していた縄が解かれる。
後ろ手に手首を縛っていたロープを解いたのは、ヤツの取り巻きの一人。何が可笑しいのか、ニコニコと微笑むガキだった。年は、少年と青年との境程だろうか。カラフルな髪留めで後ろ髪を縛ったそのガキは、ロープを放り捨てると、入れ替わりに同じく帯状のモノを投げて寄越した。
足許に放り出されたのは、自前のガンベルト。そのホルスターには、同じく自前のリボルバーが納まっていた。
無言のまま、ガンベルトを腰に巻く。
ヤツはそれを確認すると、左手を刀の鞘に置き、右手を前にスッと差し出した。
Clink……
そして無言のままに、コインを天高く弾き飛ばした。
クルリクルリと舞い上がるコインは、やがて重力に引っ張られて下へと墜ちてゆく。
そしてコインが地面に触れるとともに、コッキング音と鞘鳴りが同時に張り詰めた空気を劈いた。
ギシッ──と、寝台代わりに使っていたソファが大きく軋む。
ばね仕掛けのように跳ね起きた上半身──一糸纏わぬ褐色の半身は、粘るような汗に濡れていた。
首筋を伝い落ち、鎖骨が作る溝に溜まった汗が一滴、零れ落ちる。細身ながら引き締まった胸板を滑り、六つに割れた腹筋の中心をなぞるかと思えば、汗の滴は割れ目の横筋に逸れて、流れの筋を左へと変えた。
やがて辿り付いたのは、左脇腹の辺りに穿たれた一つの刃傷。──その、傷跡。
「……クソ暑ぃ」
古傷に右手を宛がい、キャロル=クルックシャンクは、忌々しく呟きを発した。不快極まる汗は、このうだるような夏の夜の暑さばかりのせいではない。寧ろ熱を発しているのは、その古傷であった。
やがてキャロルは舌打ちを零すとともに、気怠そうな挙措でソファから立ち上がった。身に付けている物と言えば、縦縞のトランクスのみである。
彼は、窓から差し込む月明かりのみを頼りとする、薄暗い古宿の一室に据えられた丸テーブルまで床板をギシギシと鳴らしながら歩み寄ると、天板に置かれた水差しを手に取った。そして傍らに置かれたコップに構う事なく、注ぎ口に直接口を付けて喉を鳴らす。
「……ぬりぃ」
やがて水差しから口を離したキャロルは、口許を拭いながらそう吐き捨てた。
水差しをテーブルの上に戻すと、同じく天板に置かれていた煙草の紙箱を手に取り、上蓋を指先で叩いて飛び出した一本の紙巻き煙草を唇に食んだ。だが火を着けようにも、手許にマッチ箱が見当たらない。
再び舌打ちを零したキャロル。「ほらよ」不意に横合いから声を掛けられ、咄嗟に右手を掲げ、投げて寄越されたマッチ箱を受け止めた。
彼は無言のまま、箱からマッチを摘まみ取ると、その頭薬を丸テーブルの木目に擦り付けて、生じた火を咥え煙草の先端に近付ける。用を済ませたマッチ箱を投げ返し、紫煙を一筋虚空に向けて吐き出してから、キャロルは「いつから起きてた」と、マッチ箱を投げて返した先へと視線を向けた。
「お前が起きる前からだ」
それに応じたのは、室内に一つだけ置かれたベッドの上に腰掛ける、バリー=ランズダウンである。彼もまた腰から上には何も身に付けてはいなかったが、下半身は下着のみでなくスラックスを履いていた。
「ウーウーウーウーと、うるさくて眠れやしない」
「そいつはイビキだ」
「そいつはまた、随分と風変りなイビキだな」
バリーが皮肉混じりに呟くと、キャロルは肩越しにソファを親指で示す。
「寝床が粗末なモンでな。もちっとマシになりゃ、イビキも納まるだろうぜ」
「そいつは残念だったな。コインの表に賭けた自分を恨め」
すげなく鼻を鳴らすバリー。彼は一口だけ喫したのみで、ベッド脇のナイトテーブルに置かれた灰皿に煙草を押し付けて火を揉み消した。
「観念してさっさと寝ろ。明日も早い。朝一番でこの町を出るからな」
「……行き先は、ラウラの村か」
「……ああ、そうだ」
未だ紫煙を昇らせるキャロルの台詞に、バリーはおもむろに首肯した。彼は灰皿の傍らに置いてあるミサンガを見遣る。それは先日、今彼らが滞在している街の祭りからラウラ=フアネーレが宿に戻って来た折、腕に着けていた物だ。
ビーズを束ねて作られたそのアクセサリには、二人共に見覚えがあった。
「なんだかんだと、あの子と長く居過ぎた。これ以上は、命取りだ。あの子にとっても、俺たちにとっても」
「……ああ、わかってる」
キャロルはそれだけ返すと、口許の煙草を摘まんで、指先で弾き飛ばした。薄闇の中に赤い筋を描き、月光に照らされて浮かぶ煙の筋を残しながら飛んだ吸い差しは、ナイトテーブルの灰皿へと落ちる。
バリーが手を伸ばし、投げ入れられた煙草の火を揉み消して視線を戻した時には、既にキャロルはソファの上に寝そべって、眼を閉ざしていた。
解説
・テーマ
じっとりとした真夏の夜を過ごす人々。
・備考
タイトル、そしてテーマの通り、熱帯夜を過ごすPCの濃密描写をするだけのシナリオです。プレイング次第ですが、今回のリプレイは前後を分けずに、それぞれ一組ずつ一息に描写した、ショートショートになる予定。
サポート枠は、一応PC組み合わせで参加するつもりが通常参加枠からあぶれてしまった際の配慮です。1PCに付き一枠原則という事でお願いします。
OPでの描写の通り、基本的に官能的表現になります。あくまで官能的な“表現”です。当然、蔵倫に抵触しないように直接的な性描写はダメ、絶対! まあほら、こういう事はちゃんと明言しておかないといけませんからね。
実際に何処までいけるかは、手探りで。ギリギリのところは、暗喩表現多めにしてなんとか。
じっとりとした真夏の夜を過ごす人々。
・備考
タイトル、そしてテーマの通り、熱帯夜を過ごすPCの濃密描写をするだけのシナリオです。プレイング次第ですが、今回のリプレイは前後を分けずに、それぞれ一組ずつ一息に描写した、ショートショートになる予定。
サポート枠は、一応PC組み合わせで参加するつもりが通常参加枠からあぶれてしまった際の配慮です。1PCに付き一枠原則という事でお願いします。
OPでの描写の通り、基本的に官能的表現になります。あくまで官能的な“表現”です。当然、蔵倫に抵触しないように直接的な性描写はダメ、絶対! まあほら、こういう事はちゃんと明言しておかないといけませんからね。
実際に何処までいけるかは、手探りで。ギリギリのところは、暗喩表現多めにしてなんとか。
マスターより
はい、というわけで真夏の夜シナリオです。
OPは、西部劇シリーズにおいて結構重要な話になっていますが、基本リプレイとは無関係。切り離して展開します。
PCの昏い過去を明かすもよし、恋人との熱い夜の一時を繰り広げるもよし。ご自由にどうぞ。
ちなみに、キャロルとバリーが相部屋取ってんのは、宿代が勿体ないからだからね。別にそういう関係じゃないからね。
OPは、西部劇シリーズにおいて結構重要な話になっていますが、基本リプレイとは無関係。切り離して展開します。
PCの昏い過去を明かすもよし、恋人との熱い夜の一時を繰り広げるもよし。ご自由にどうぞ。
ちなみに、キャロルとバリーが相部屋取ってんのは、宿代が勿体ないからだからね。別にそういう関係じゃないからね。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2017/08/02 22:59