ゲスト
(ka0000)
伝説に似た喜劇
マスター:紺堂 カヤ

このシナリオは3日間納期が延長されています。
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 4~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2017/08/06 15:00
- リプレイ完成予定
- 2017/08/18 15:00
オープニング
●これは夢
少年は夜道を急いでいた。すっかり遅くなってしまった。今日は珍しい種類の鉱石がたくさん入荷していたから、嬉しくなってあれもこれもと夢中になってしまったのだ。
きっと先生は心配しているだろう。
だが、きっと先生は今日の収穫を喜んでくれるだろう。
はやる気持ちを抑えられず、少年は駆け出す。先生が待っているはずの小さな家へ。
(あれ?)
けれど、家の前まで来て少年は違和感をおぼえた。もう夜遅いというのに、窓に明かりがない。先生がこんな時間に出かけるはずはないのに。
もしかしてあまりにも遅い自分を探しに出てしまったのだろうか、と思いながら、少年は家の扉を開いた。
すると。
「先生!!」
窓から差し込む月明かりがたっぷりとたまっているかのような、そんな床に。
先生が倒れていた。
血を流して。
「先生!? どうしたんですか先生!!」
少年は駆け寄って大人の男の大きな身体を必死に持ち上げた。
「ああ……、セブ……。よかった、無事、で……。そして、最後に、会え、て」
「どういうことなんです、先生! 最後だなんて! 待ってください、すぐに医者を」
慌てる少年の手を、先生は弱々しく握った。そして、ゆるく微笑んで首を横に振った。
「セブ、お前の幸せを、祈って、る……」
それが、最後の言葉だった。
●これは現実
早朝、現実になることだけを夢にみる青年は目覚めた。
今夜も夢をみていた。幾度となく繰り返した夢だった。
同じ夢を何度もみることは珍しくない。まだ現実になっているところに遭遇していない夢の光景ならば、より強く覚えておけることになるため、繰り返しは有難い。
だが。
今夜の夢は有難くない。
今夜の夢はすでに遭遇している過去の出来事であるからだ。それどころか、青年にとって一番の、苦い思い出だ。
けれど皮肉なもので、この夢を一番よくみるのである。
青年と呼べる歳まで成長した少年は、深い深いため息をついた。この夢をみるたびに、忘れようと思っている自分の名前を思い出してしまう。
あのとき、自分は十二歳。あれから、六年の歳月が流れた。
先生を殺したのが誰なのか。そしてなぜ殺されなければならなかったのか。まだ何も、わかっていない。
青年は、この世のものとは思えぬほどに整った己の顔を両手で覆い、低く呻いた。
「……先生……」
その夢をみたからだろう。この日、青年はひどく機嫌が悪かった。
書き溜めた夢日誌の中の夢のひとつに登場した村とよく似た村を見つけ、立ち寄ったのだが。
(これはわざわざ確認に来るほどのことではなかったな……)
今回青年が見た夢は「未来」に起こるはずのこと、であった。しかし、その内容は村の中でのささいな諍い。キイチゴをたくさん収穫できるのは俺だ、いや俺の方が、という実にくだらないことだった。
何か裏があるのでは、としばらくは調べてみたが、特に何もない。時間を無駄にしただけだった。
機嫌が悪いのに加えての疲労感に、青年はぐったりしていた。だから、それは本当に、不機嫌が溜まったが故の考えなしの行動だった。
キイチゴ収穫レースの前日に、酒場で「絶対俺が勝つ!!」と息巻いていた男に、こう言ってしまったのだ。
「あなたは、負けますよ。優勝は、黒い帽子をかぶった金髪の男だ」
その結果。
青年の言うとおり、黒い帽子をかぶった金髪の男が優勝した。知っていた結末を見届け、青年は村を去ろうとしたのだが。
「なあ、あんた! あんたは、伝説の精霊様なんだろう?」
「は?」
「村には伝説があるんだ、なんでも知っている、先のこともなんでもわかる精霊様が、いつか訪れて村を救ってくださる、と。あんたは人間とは思えないほど美しい。それに未来がわかってた」
「残念ながら俺は人間です、未来がわかった、というのはちょっと違う……」
「いいんです、人間に姿をやつしていらっしゃるのでしょう? わかっております」
「いや、その発言ですでに、あなた方が精霊について何も知らないことが丸わかりですが」
「おおお申し訳ない、我々は無知でして。どうぞこちらで我々にご教授を」
「そういうことではなく!」
「ところであなたのお名前は?」
「俺の名前……? さあ、なんだったかな……」
「あああ、わたしどもにはとても名前など教えて貰えないということですな!!!」
「いや、そうではなく!」
みるみる村人に取り囲まれ、立派な家に押し込められ、そして。
そこから出られなくなってしまった。
(う、嘘だろう……?)
青年は、三日耐えた。どんなに違う、と説明しても村人たちはわかってくれない。その上、うっかり明日の天気を予測などして、しかもそれが当たってしまったりしたものだから更に始末が悪くなった。なお、天気を当てたのは空の雲を読んだからであって夢の所為ではない。
名前を覚えていない、という言葉もどうにも違う方向へ解釈され、「人とは違う尊い存在」としての価値を高めてしまっているようだった。
青年は、何度も逃げ出そうとした。しかし。
夜にこっそり抜け出そうとしても見張りがいる。ならば昼間に堂々と出てってやろうとすれば後ろからぞろぞろ人がついてきてパレード状態にされる。
ほとほと困り果てた青年は、手紙を書いた。ハンターオフィスに向けて。
『どうか俺をここから助け出して欲しい。 夢追い人より』
少年は夜道を急いでいた。すっかり遅くなってしまった。今日は珍しい種類の鉱石がたくさん入荷していたから、嬉しくなってあれもこれもと夢中になってしまったのだ。
きっと先生は心配しているだろう。
だが、きっと先生は今日の収穫を喜んでくれるだろう。
はやる気持ちを抑えられず、少年は駆け出す。先生が待っているはずの小さな家へ。
(あれ?)
けれど、家の前まで来て少年は違和感をおぼえた。もう夜遅いというのに、窓に明かりがない。先生がこんな時間に出かけるはずはないのに。
もしかしてあまりにも遅い自分を探しに出てしまったのだろうか、と思いながら、少年は家の扉を開いた。
すると。
「先生!!」
窓から差し込む月明かりがたっぷりとたまっているかのような、そんな床に。
先生が倒れていた。
血を流して。
「先生!? どうしたんですか先生!!」
少年は駆け寄って大人の男の大きな身体を必死に持ち上げた。
「ああ……、セブ……。よかった、無事、で……。そして、最後に、会え、て」
「どういうことなんです、先生! 最後だなんて! 待ってください、すぐに医者を」
慌てる少年の手を、先生は弱々しく握った。そして、ゆるく微笑んで首を横に振った。
「セブ、お前の幸せを、祈って、る……」
それが、最後の言葉だった。
●これは現実
早朝、現実になることだけを夢にみる青年は目覚めた。
今夜も夢をみていた。幾度となく繰り返した夢だった。
同じ夢を何度もみることは珍しくない。まだ現実になっているところに遭遇していない夢の光景ならば、より強く覚えておけることになるため、繰り返しは有難い。
だが。
今夜の夢は有難くない。
今夜の夢はすでに遭遇している過去の出来事であるからだ。それどころか、青年にとって一番の、苦い思い出だ。
けれど皮肉なもので、この夢を一番よくみるのである。
青年と呼べる歳まで成長した少年は、深い深いため息をついた。この夢をみるたびに、忘れようと思っている自分の名前を思い出してしまう。
あのとき、自分は十二歳。あれから、六年の歳月が流れた。
先生を殺したのが誰なのか。そしてなぜ殺されなければならなかったのか。まだ何も、わかっていない。
青年は、この世のものとは思えぬほどに整った己の顔を両手で覆い、低く呻いた。
「……先生……」
その夢をみたからだろう。この日、青年はひどく機嫌が悪かった。
書き溜めた夢日誌の中の夢のひとつに登場した村とよく似た村を見つけ、立ち寄ったのだが。
(これはわざわざ確認に来るほどのことではなかったな……)
今回青年が見た夢は「未来」に起こるはずのこと、であった。しかし、その内容は村の中でのささいな諍い。キイチゴをたくさん収穫できるのは俺だ、いや俺の方が、という実にくだらないことだった。
何か裏があるのでは、としばらくは調べてみたが、特に何もない。時間を無駄にしただけだった。
機嫌が悪いのに加えての疲労感に、青年はぐったりしていた。だから、それは本当に、不機嫌が溜まったが故の考えなしの行動だった。
キイチゴ収穫レースの前日に、酒場で「絶対俺が勝つ!!」と息巻いていた男に、こう言ってしまったのだ。
「あなたは、負けますよ。優勝は、黒い帽子をかぶった金髪の男だ」
その結果。
青年の言うとおり、黒い帽子をかぶった金髪の男が優勝した。知っていた結末を見届け、青年は村を去ろうとしたのだが。
「なあ、あんた! あんたは、伝説の精霊様なんだろう?」
「は?」
「村には伝説があるんだ、なんでも知っている、先のこともなんでもわかる精霊様が、いつか訪れて村を救ってくださる、と。あんたは人間とは思えないほど美しい。それに未来がわかってた」
「残念ながら俺は人間です、未来がわかった、というのはちょっと違う……」
「いいんです、人間に姿をやつしていらっしゃるのでしょう? わかっております」
「いや、その発言ですでに、あなた方が精霊について何も知らないことが丸わかりですが」
「おおお申し訳ない、我々は無知でして。どうぞこちらで我々にご教授を」
「そういうことではなく!」
「ところであなたのお名前は?」
「俺の名前……? さあ、なんだったかな……」
「あああ、わたしどもにはとても名前など教えて貰えないということですな!!!」
「いや、そうではなく!」
みるみる村人に取り囲まれ、立派な家に押し込められ、そして。
そこから出られなくなってしまった。
(う、嘘だろう……?)
青年は、三日耐えた。どんなに違う、と説明しても村人たちはわかってくれない。その上、うっかり明日の天気を予測などして、しかもそれが当たってしまったりしたものだから更に始末が悪くなった。なお、天気を当てたのは空の雲を読んだからであって夢の所為ではない。
名前を覚えていない、という言葉もどうにも違う方向へ解釈され、「人とは違う尊い存在」としての価値を高めてしまっているようだった。
青年は、何度も逃げ出そうとした。しかし。
夜にこっそり抜け出そうとしても見張りがいる。ならば昼間に堂々と出てってやろうとすれば後ろからぞろぞろ人がついてきてパレード状態にされる。
ほとほと困り果てた青年は、手紙を書いた。ハンターオフィスに向けて。
『どうか俺をここから助け出して欲しい。 夢追い人より』
解説
■成功条件
青年を村から連れ出す。
(成功以上で青年のフルネームを知ることのできるシナリオとなります)
■村の伝説
「いつか何でも知っている精霊が現れ、村を救ってくれる」という言い伝え。
まことしやかに村にこの言い伝えが囁かれるようになったのは十年ほど前からだとのことで、出所は不明。
考えられる元ネタや由緒などもなく、眉唾物の噂が定着してしまったものと思われる。
なお、現在村には特に「救ってほしい」と思えるほどの困窮した事情は皆無で、実に平和そのものである。
■救出作戦
青年の意向としては、この村から出られれば何でも構わないため「村人を説得して正面から」でもいいし「こっそり抜け出す」でもいいと思っている。
ただし、村人に危害は与えないでほしいとのこと。
ほぼ監禁状態の家には応接室、寝室、キッチンがあり、入り口は玄関のみ。応接室には大きな窓があるが見張りがおり、寝室の窓は頭がようやく出るほどの小さなもの。
■青年
必ず「現実」のことが夢になる。しかし、それが「未来」のことなのか「過去」のことなのかみた時点ではわからないため、夢と同じ現実の手掛かりを探せるよう、常にノートに書きつけをしている。
この青年が何者なのか、どうしてそのような力を持っているのかは不明。
なお、この青年は夢の出来事以外を覚えておくことが非常に苦手で、人の名前もすぐ忘れてしまう。また、夢以外のことを覚えておこうという気もあまりないようである。
自分の名前も忘れてしまった、と言っているが……?
青年を村から連れ出す。
(成功以上で青年のフルネームを知ることのできるシナリオとなります)
■村の伝説
「いつか何でも知っている精霊が現れ、村を救ってくれる」という言い伝え。
まことしやかに村にこの言い伝えが囁かれるようになったのは十年ほど前からだとのことで、出所は不明。
考えられる元ネタや由緒などもなく、眉唾物の噂が定着してしまったものと思われる。
なお、現在村には特に「救ってほしい」と思えるほどの困窮した事情は皆無で、実に平和そのものである。
■救出作戦
青年の意向としては、この村から出られれば何でも構わないため「村人を説得して正面から」でもいいし「こっそり抜け出す」でもいいと思っている。
ただし、村人に危害は与えないでほしいとのこと。
ほぼ監禁状態の家には応接室、寝室、キッチンがあり、入り口は玄関のみ。応接室には大きな窓があるが見張りがおり、寝室の窓は頭がようやく出るほどの小さなもの。
■青年
必ず「現実」のことが夢になる。しかし、それが「未来」のことなのか「過去」のことなのかみた時点ではわからないため、夢と同じ現実の手掛かりを探せるよう、常にノートに書きつけをしている。
この青年が何者なのか、どうしてそのような力を持っているのかは不明。
なお、この青年は夢の出来事以外を覚えておくことが非常に苦手で、人の名前もすぐ忘れてしまう。また、夢以外のことを覚えておこうという気もあまりないようである。
自分の名前も忘れてしまった、と言っているが……?
マスターより
ごきげんいかがでございましょうか、紺堂でございます。
OP、冒頭のシリアス加減と後半のドタバタ加減に凄まじく落差があってすみません……。
本シナリオは「夢追い人」というシリーズの3作目ですが、これまでのものを知らなくても問題ありませんので気軽に参加してください。
依頼はとにかく「青年を村から出すこと」なのでそこに注力していただくようにお願いします。冒頭のシリアスシーンはPL情報ですので考察していただいてもリプレイには反映いたしません。
よろしくお願い致します。
OP、冒頭のシリアス加減と後半のドタバタ加減に凄まじく落差があってすみません……。
本シナリオは「夢追い人」というシリーズの3作目ですが、これまでのものを知らなくても問題ありませんので気軽に参加してください。
依頼はとにかく「青年を村から出すこと」なのでそこに注力していただくようにお願いします。冒頭のシリアスシーンはPL情報ですので考察していただいてもリプレイには反映いたしません。
よろしくお願い致します。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2017/08/14 22:27
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/08/04 18:59:40 |
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相談卓ってヤツ カーミン・S・フィールズ(ka1559) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2017/08/06 14:08:19 |