ゲスト
(ka0000)
【幻視】眠りと泥濘
マスター:凪池シリル

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在5人 / 3~5人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2017/08/10 07:30
- リプレイ完成予定
- 2017/08/19 07:30
オープニング
玄室、と呼ぶのが一番しっくりきそうな場所だった。
しっかりとした石壁で囲まれた四角い部屋だ。息詰まる感じを覚えないようにだろう、広さはそれなりにある。中は暗く、部屋全体が均一に、うっすらと輪郭が分かる程度の明るさしかない。
そこを玄室、と呼ぶのが躊躇われるのは、部屋の奥に置かれた寝台、そこに横たわる存在が遺体ではないという一点に尽きる。静かに横たわっている様はいかにもそのように見えるが。だがそれは──つまり比喩とかではなく──眠っているだけだ。
歪虚兵ネネ・グリジュは至って分かりやすい≪怠惰≫だ。如何に気持ちよく眠り続けるかそれにしか興味がない。自身が生存するためと快適な空間を維持するための僕を動かすだけのエネルギー、それ以外に彼女が動くとすれば理由は一つ、『新しい寝具が欲しくなった』、それだけだった──二年と少し前、とある部族の族長が一族郎党丸々消失させられた原因が、『そのベッド欲しかったから』だったとは死した彼らは思いも寄るまい。
下手をすれば年単位で滅多に動かない、動く切欠は被害者からすれば理不尽としか言いようがない、天災的な歪虚。部下とするにはあまりにも扱い辛い、が。
「いいか。私はコーリアス様の伝令に来た。故に伝令が伝わると判断できるまではここで話し続ける。伝令故に撃退も無駄だ。また別のが来るだけだからな」
コーリアスは、存外彼女が嫌いではないらしい。内心で呆れのため息をつきながら、伝令役は淡々と告げる。
「うー……」
やがて、ネネは気だるげに反応を返した。一番労力なく問題を解消するにはとりあえず話を聞いてやることだと判断して。
「トーチカを裏で支援してほしいとのことだ」
「うー……うー……」
更に低くなった声と、もぞもぞと首を振る気配。最低限の音と気配で伝えてくるのは『眠いから嫌』だ。しかし伝令役もその主も分かっている。
「……お前に興味がありそうな話を持ってきた」
言葉の後に伝令役が何事かと告げると、初めて、ネネの肩がピクリと動いた。
「少しはその気になったか。それでは……」
「待ってー……あと十分……」
続いて発せられたのは、起きる気がない者の定番と言える台詞だが、伝令役は待つことにした。
部屋が明るくなりつつあるのだ。
「待って……待ってて、ね……。そーいうことなら、ちゃんと聞くからあ……」
ゆっくり、ゆっくりと部屋が明るくなっていく。急速にではなく、心地よく眠気を払っていくように。眠たげな声は、目的のために手段を選ばない歪虚の酷薄なものへと変わっていく。
そうしてネネは、ぱちりと開いた目で伝令役の言葉を聞いて、そして。
「さーて、じゃあどうしようかなー……最近サボってたから、小道具もあんまり揃ってないし……第一あれはこっちから攻めるときにはあんま使えないよねえー……」
●
ああ、少し伸びてきている。
吹く風に何げなく髪を撫でつけるように梳いて、孫 楽偉は舌打ちしたい気分と共にその事実を認めた。
常に忙しかった彼の父は髪をずっと長く伸ばしていた。半端に伸びてくるよりはずっとこうしていた方が楽なんですよ、と言って。さも合理的だというように父は言っていたが、要するに髪を切りに行く暇すらないほどに忙しなく働き続けているというのは合理的でも何でもないだろう、と後に思った。だから楽偉は常に髪は短めに揃えておこうと心がけることにしている。鬱陶しさを感じる前に切りに行けないのは己を律せていない証左だと。
この依頼が終わったら切りに行こう。そして、暫くは休業だ。決意すると、気を引き締め直す。休みと決めたら、なおの事その期間を怪我の治療だけで終えてたまるものか。
耳を澄ませ、周囲の気配に神経を集中させる。チュプ大神殿へと進行してくる歪虚の軍勢の迎撃。それが今回請け負った依頼だった。拠点を設けた坑道で待ち構える。
……やがて幾つもの足跡がこちらに向かってくるのを捉え、共に行動するハンターと共に身構える。
現れたのは亡者の群れだった。眼下に虚ろな闇を灯す、表情を失った人々の群れ。それが、老若男女、背の高いもの低い者、肥えた者やせ衰えたもの、貴族のように着飾っていたり民族衣装らしき姿であったり……あるいはリアルブルー出身と伺えるものまで様々な姿で。
「──……!?」
そして、幾多にもある標的の中、楽偉は反射的に一体の敵を見定めて、銃弾を放っていた。
様々な姿をした亡者、その中に……髪の長い、リアルブルーの宇宙軍の軍服を着た姿を認めて。
偶然にも、手にした銃は火属性だった。焔を纏った弾丸が、亡者の服に、乾いた皮膚に着弾して、パッと炎を──上げなかった。
ガツッと鈍い音がして、亡者の姿は一切燃えることなく、そして銃弾が命中した一部が欠けて落ちた。……欠けた、のだ。肉体のみならず服の一部まで。そして、その下から覗いたものは、土くれの色。
亡者、ではない。亡者に似せた土人形。それが、やってきた敵の正体と知って、楽偉は苛立ちに奥歯を鳴らした。
見間違えたのは敵の正体がゾンビではなかったというだけではない。反射的に狙い打ってしまった何かはよく考えるまでもなく父のそれであるはずがなかった。
(宇宙に砕け散った父の遺体がこんなにきれいに残ってるわけがないじゃないか!!)
一瞬それすら忘れかけた自分の間抜けさを酷く酷く呪う。
なぜ遺体モドキ人形なんてわざわざ手の込んだ物を作るのか? そう、その中に『偶々』知り合いと似た姿があれば、動揺を、苛立ちを誘えるとみてだろう! 今まんまと自分が引っ掛かりかけたように!
おそらくは、適当なのだ。ここに現れた遺体モドキ全て。適当にそれっぽく、色々なパターンを作成して、その中に偶々父と似た特徴の『作品』があっただけ。何の感慨も遠慮も必要な相手ではない。
怒るな。苛つくな。それは敵の思うつぼだ。そして何より、一番悪いのは己の阿呆さだ。この失点を取り返すためには、これ以上敵の意図に乗っかってやるにはいかない――。
深呼吸して、改めて次の対応を見定めた。
●
歪虚兵ネネ・グリジュ。気まぐれで怠惰な彼女を、コーリアスは、存外嫌いではない。
何故なら「極力働きたくない」という想いそのことは、工夫を生む動機でもあるからだ。
彼女がよく使う、死体を用いる手口もそう。不慮で死んだ者の死体をそれと分かる内に保存しておき、ようやく死の悲しみも受け入れてきたそのころを見計らって親しい者の傍で暴れさせる。そうやて彼女は「最低限必要なエネルギー」を効率よく回収してきた。
今回の作戦はその一つの集大成と言ったところだろう。土人形にしたのは、今回偶々、掘り返されて加工しやすい土がそこら中にあったから。ただそれだけである。
欲望のままに、いとも無造作に人を踏みにじる。
ネネ・グリジュは至って分かりやすい──歪虚兵だ。
しっかりとした石壁で囲まれた四角い部屋だ。息詰まる感じを覚えないようにだろう、広さはそれなりにある。中は暗く、部屋全体が均一に、うっすらと輪郭が分かる程度の明るさしかない。
そこを玄室、と呼ぶのが躊躇われるのは、部屋の奥に置かれた寝台、そこに横たわる存在が遺体ではないという一点に尽きる。静かに横たわっている様はいかにもそのように見えるが。だがそれは──つまり比喩とかではなく──眠っているだけだ。
歪虚兵ネネ・グリジュは至って分かりやすい≪怠惰≫だ。如何に気持ちよく眠り続けるかそれにしか興味がない。自身が生存するためと快適な空間を維持するための僕を動かすだけのエネルギー、それ以外に彼女が動くとすれば理由は一つ、『新しい寝具が欲しくなった』、それだけだった──二年と少し前、とある部族の族長が一族郎党丸々消失させられた原因が、『そのベッド欲しかったから』だったとは死した彼らは思いも寄るまい。
下手をすれば年単位で滅多に動かない、動く切欠は被害者からすれば理不尽としか言いようがない、天災的な歪虚。部下とするにはあまりにも扱い辛い、が。
「いいか。私はコーリアス様の伝令に来た。故に伝令が伝わると判断できるまではここで話し続ける。伝令故に撃退も無駄だ。また別のが来るだけだからな」
コーリアスは、存外彼女が嫌いではないらしい。内心で呆れのため息をつきながら、伝令役は淡々と告げる。
「うー……」
やがて、ネネは気だるげに反応を返した。一番労力なく問題を解消するにはとりあえず話を聞いてやることだと判断して。
「トーチカを裏で支援してほしいとのことだ」
「うー……うー……」
更に低くなった声と、もぞもぞと首を振る気配。最低限の音と気配で伝えてくるのは『眠いから嫌』だ。しかし伝令役もその主も分かっている。
「……お前に興味がありそうな話を持ってきた」
言葉の後に伝令役が何事かと告げると、初めて、ネネの肩がピクリと動いた。
「少しはその気になったか。それでは……」
「待ってー……あと十分……」
続いて発せられたのは、起きる気がない者の定番と言える台詞だが、伝令役は待つことにした。
部屋が明るくなりつつあるのだ。
「待って……待ってて、ね……。そーいうことなら、ちゃんと聞くからあ……」
ゆっくり、ゆっくりと部屋が明るくなっていく。急速にではなく、心地よく眠気を払っていくように。眠たげな声は、目的のために手段を選ばない歪虚の酷薄なものへと変わっていく。
そうしてネネは、ぱちりと開いた目で伝令役の言葉を聞いて、そして。
「さーて、じゃあどうしようかなー……最近サボってたから、小道具もあんまり揃ってないし……第一あれはこっちから攻めるときにはあんま使えないよねえー……」
●
ああ、少し伸びてきている。
吹く風に何げなく髪を撫でつけるように梳いて、孫 楽偉は舌打ちしたい気分と共にその事実を認めた。
常に忙しかった彼の父は髪をずっと長く伸ばしていた。半端に伸びてくるよりはずっとこうしていた方が楽なんですよ、と言って。さも合理的だというように父は言っていたが、要するに髪を切りに行く暇すらないほどに忙しなく働き続けているというのは合理的でも何でもないだろう、と後に思った。だから楽偉は常に髪は短めに揃えておこうと心がけることにしている。鬱陶しさを感じる前に切りに行けないのは己を律せていない証左だと。
この依頼が終わったら切りに行こう。そして、暫くは休業だ。決意すると、気を引き締め直す。休みと決めたら、なおの事その期間を怪我の治療だけで終えてたまるものか。
耳を澄ませ、周囲の気配に神経を集中させる。チュプ大神殿へと進行してくる歪虚の軍勢の迎撃。それが今回請け負った依頼だった。拠点を設けた坑道で待ち構える。
……やがて幾つもの足跡がこちらに向かってくるのを捉え、共に行動するハンターと共に身構える。
現れたのは亡者の群れだった。眼下に虚ろな闇を灯す、表情を失った人々の群れ。それが、老若男女、背の高いもの低い者、肥えた者やせ衰えたもの、貴族のように着飾っていたり民族衣装らしき姿であったり……あるいはリアルブルー出身と伺えるものまで様々な姿で。
「──……!?」
そして、幾多にもある標的の中、楽偉は反射的に一体の敵を見定めて、銃弾を放っていた。
様々な姿をした亡者、その中に……髪の長い、リアルブルーの宇宙軍の軍服を着た姿を認めて。
偶然にも、手にした銃は火属性だった。焔を纏った弾丸が、亡者の服に、乾いた皮膚に着弾して、パッと炎を──上げなかった。
ガツッと鈍い音がして、亡者の姿は一切燃えることなく、そして銃弾が命中した一部が欠けて落ちた。……欠けた、のだ。肉体のみならず服の一部まで。そして、その下から覗いたものは、土くれの色。
亡者、ではない。亡者に似せた土人形。それが、やってきた敵の正体と知って、楽偉は苛立ちに奥歯を鳴らした。
見間違えたのは敵の正体がゾンビではなかったというだけではない。反射的に狙い打ってしまった何かはよく考えるまでもなく父のそれであるはずがなかった。
(宇宙に砕け散った父の遺体がこんなにきれいに残ってるわけがないじゃないか!!)
一瞬それすら忘れかけた自分の間抜けさを酷く酷く呪う。
なぜ遺体モドキ人形なんてわざわざ手の込んだ物を作るのか? そう、その中に『偶々』知り合いと似た姿があれば、動揺を、苛立ちを誘えるとみてだろう! 今まんまと自分が引っ掛かりかけたように!
おそらくは、適当なのだ。ここに現れた遺体モドキ全て。適当にそれっぽく、色々なパターンを作成して、その中に偶々父と似た特徴の『作品』があっただけ。何の感慨も遠慮も必要な相手ではない。
怒るな。苛つくな。それは敵の思うつぼだ。そして何より、一番悪いのは己の阿呆さだ。この失点を取り返すためには、これ以上敵の意図に乗っかってやるにはいかない――。
深呼吸して、改めて次の対応を見定めた。
●
歪虚兵ネネ・グリジュ。気まぐれで怠惰な彼女を、コーリアスは、存外嫌いではない。
何故なら「極力働きたくない」という想いそのことは、工夫を生む動機でもあるからだ。
彼女がよく使う、死体を用いる手口もそう。不慮で死んだ者の死体をそれと分かる内に保存しておき、ようやく死の悲しみも受け入れてきたそのころを見計らって親しい者の傍で暴れさせる。そうやて彼女は「最低限必要なエネルギー」を効率よく回収してきた。
今回の作戦はその一つの集大成と言ったところだろう。土人形にしたのは、今回偶々、掘り返されて加工しやすい土がそこら中にあったから。ただそれだけである。
欲望のままに、いとも無造作に人を踏みにじる。
ネネ・グリジュは至って分かりやすい──歪虚兵だ。
解説
チュプ大神殿へと通じる地下道で、攻め込んでくる歪虚の軍勢を迎撃します。
敵
ゾンビ型土人形…約20体程度。
サイズ1。姿は様々で、武器も持っていたり素手だったり。土の弾丸を撃ってくる銃モドキを持った敵もいます。
OPに登場しているネネ・グリジュは今回は姿を見せません。
地下道は横幅は3スクエアほど。高さはそこまでありませんが、武器を振り回すのに支障がない程度にはあります。
OPに登場した孫 楽偉はそこそこの腕前の猟撃士です。勝手に適切に判断し戦いますので、放置して状況が悪化したり判定結果が悪くなることはありません。そーは見えないかもしれませんが。まあ実際まだ15才なんで精神的に未熟なところは多々あるんですが。とりあえずこのシナリオに関しては放置でも問題はありません。
単純に、凪池シリルというマスターがどのような文章を書くのかの参考に登場しています。
PCからの絡みがない限りはリプレイには一切登場しない予定ですが、興味をお持ちなら話しかけたり連携を試みても構いません。上手く彼らを利用したプレイングは他PCとの連携と同様に評価の対象にはなり得ます。
敵
ゾンビ型土人形…約20体程度。
サイズ1。姿は様々で、武器も持っていたり素手だったり。土の弾丸を撃ってくる銃モドキを持った敵もいます。
OPに登場しているネネ・グリジュは今回は姿を見せません。
地下道は横幅は3スクエアほど。高さはそこまでありませんが、武器を振り回すのに支障がない程度にはあります。
OPに登場した孫 楽偉はそこそこの腕前の猟撃士です。勝手に適切に判断し戦いますので、放置して状況が悪化したり判定結果が悪くなることはありません。そーは見えないかもしれませんが。まあ実際まだ15才なんで精神的に未熟なところは多々あるんですが。とりあえずこのシナリオに関しては放置でも問題はありません。
単純に、凪池シリルというマスターがどのような文章を書くのかの参考に登場しています。
PCからの絡みがない限りはリプレイには一切登場しない予定ですが、興味をお持ちなら話しかけたり連携を試みても構いません。上手く彼らを利用したプレイングは他PCとの連携と同様に評価の対象にはなり得ます。
マスターより
凪池シリルです。
敵は老若男女様々な姿をしております。その中に、『偶々』、貴PCの心に引っかかるような姿があることにしてもかまいません。
数は少なくないですが大した敵ではなく、戦闘依頼の皮をかぶった心情依頼な部分も多々あります。
NPCにいろいろ言ってやるも良し。字数が許せばご自由に演出ください。
勿論、格好良く無双していただいても構いません。
敵は老若男女様々な姿をしております。その中に、『偶々』、貴PCの心に引っかかるような姿があることにしてもかまいません。
数は少なくないですが大した敵ではなく、戦闘依頼の皮をかぶった心情依頼な部分も多々あります。
NPCにいろいろ言ってやるも良し。字数が許せばご自由に演出ください。
勿論、格好良く無双していただいても構いません。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2017/08/11 09:39
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/08/07 07:47:54 |
|
![]() |
相談卓 ノエル・ウォースパイト(ka6291) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2017/08/07 08:01:51 |