• 冒険

捨てられた母子

マスター:江口梨奈

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
現在8人 / 6~8人
サポート
現在0人 / 0~8人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
プレイング締切
2014/06/22 07:30
リプレイ完成予定
2014/07/01 07:30

オープニング

 どのくらい、気を失っていただろうか。
 あの男に頭を殴られたせいで、くらくらする。顎もずきずきする、口の中が鉄臭い。
 ここはどこだ……暗いのは、周りの木々が空を覆っているからか、もう真夜中だからか。
「……さーん、……おかー……さ……」
「!? カリン!」
 血の気がひいた。泣きながらミサの体を揺すっているのは、彼女の6歳になる娘だ。どうして、この子まで……。
「おかーさん……生きてた……」
「カリン、あなたは大丈夫? 何があったの?」
 大丈夫、じゃない。娘の顔に触れると、腫れているのが分かった。
「知らないおじさんが……倒れたおかーさんを、荷台にのせて……あたしものせられて、『しずかにしろ』って、叩かれて……あとはおぼえてない……」
「ごめんね、ごめんね、カリン……」
 真っ暗なこの場所で、動かない母親の隣で、この子はどれほど不安だったろう。その傷を少しでも癒そうと、ミサは娘を力強く抱きしめた。
「ごめんね、カリン」
 父親のせいで。

 10年前に一緒になったミサの夫、ゼノは優しい男だった。が、当時行っていた商売が軌道に乗り金回りがよくなると、酒と女を覚え、酔ってはミサに手を上げるようになった。自分が女遊びをしているからか、妻の貞操も疑うようになり、カリンを身ごもった時に、それを自分の子だと信じなかった。
 殴られ、疑われ、なぜいつまでもこの男と暮らせようか。
 ミサは逃げた。夫のその後は知らない。
 それからしばらくして、ゼノの商売の関係で顔見知りだったジャンとの仲が深まり、カリンもジャンを父親と信じ、平穏な生活が手に入った。
 数日前のことだ、偶然、街中でゼノをみかけた。
 最初、ゼノだと分からなかった。酒と美食に肥え太っていた面影は無く、見慣れた成金趣味の上着を着ていなければ気づかなかっただろう。
 声をかける気にはならない。むしろ、ゼノに見つからないように、足早にそこを去った。
 もしかしたら、あの時に向こうから気づかれたのかもしれない。
 どうして、あのドアのノックに、不用意に扉を開けてしまったのか。
「おかーさん……おうちに帰りたいよう……」
「いまは暗くて動けないわ。朝になったら動きましょう。今日はおかあさんのお膝で寝なさい、ね」
 荷台に乗せられて来たというなら、近くに大きな道があるはずだ。そこまで出られれば何とかなるかもしれない。凍死するような季節でなくてよかった、あとは野獣が出ないことを祈るほかない。
 まずは夜明けを待とう、それしかない。

 日が暮れて家に戻ったジャンは、荒らされた家と妻子の不在を知り、己の勘のままに酒場へ……数日前に金をせびりに来たかつての商売相手の姿を探した。何日も飲んだくれているという白髪の男は、今日も変わらず、いた。
「よぉ……」
 10年前は羽振りが良く、常に隣に美女をはべらしていた男だが、商売に失敗し、あとはお決まりの転落譚らしい。顔見知りに片っ端から声をかけ、金を借りようとしており、数日前にもジャンのところを訪れていた。……ミサの話を、ついこの時にしてしまっていたことが悔やまれる。
「ゼノ、ちょっと聞きたいんだが……、ミサを見なかったか?」
 努めて、平静を装った。しかしゼノはそれを知ってか知らずか、げらげら笑いだした。
「ああ、知ってるぞ。あのあばずれなら今頃、『死の森』で死体になってるだろうよ」

 『死の森』とは、街から馬車で小一時間ほど離れた場所にある、今では誰も立ち入らなくなった山のことだ。かつては何件か家もあり人も住んでいたが、いつの頃からかマテリアルの均衡が崩れたのか、ヴォイドが頻繁に現れるようになり、誰も住まないどころか獣も減り、皆が怖れるようになった汚らわしい場所だ。
「ジャン、俺は知っているぞ。お前がずっとミサにちょっかいを出していたのをな! あんな女、ヴォイドに喰われてしまえばいいんだよ」
「くそったれ!!」
 ジャンはゼノの胸ぐらを掴み、拳で思い切り殴りつけた。
「いいか、俺は神に誓って、道義にもとることはしていない!」
 ミサのことをずっと想っていたのは事実だ、事実だがそれ以上のことは無い。それなのにこの男は、そんな些細なことで元の妻を疑えるのか。
 この男には何を言っても無駄だ。死ぬまで殴りつけてやりたいが、今はそれどころではない。一刻も早く『自分の』妻と娘を助け出さなければ!

「おかーさん、おとーさんはだいじょうぶかなあ?」
「うーん、今頃、心配してるだろうね」
「おとーさん、かわいそう」
「大丈夫よ、ちゃんと、カリンが帰るのを待っててくれるからね」
 朝になったら、一刻も早く動こう。
 早く。 

解説

 この街の住民に『死の森』と呼ばれる、ヴォイドが頻出する山に、ミサとカリンが取り残されています、これを探し出して救出してください。死の森は、かつて住人があったことから、途中まで馬車で入ることができますが、ゼノはそこから更にミサたちを抱えて奥に行き、捨てたようです。人間二人を抱えて動くのですから、そこまで遠くに行けるとは思えません。
 依頼を受けた直後は真夜中で、捜索するにも作業は困難でしょう。しかし夜明けになると、対象は移動を始めるかもしれません。
 現在はヴォイド、雑魔、猛獣などの存在は確認されていませんが、過去にそれらは何度も現れており、今もいないとは限りません。

マスターより

 先にネタバレをします。ヴォイドか雑魔か猛獣、どれか出します、ミサたち襲われます。けど、皆さんが真夜中に動いても、夜明けに動いても、どっちにしても「あー、間に合いませんでしたー、食べられてましたー」にはなりませんのでご安心を。その辺はゲーム。
 それでは、頑張ってください。
リプレイ公開中

リプレイ公開日時 2014/06/29 08:28

参加者一覧


  • ナハト(ka0383
    人間(紅)|26才|男性|闘狩人

  • 神凪 宗(ka0499
    人間(蒼)|22才|男性|疾影士
  • 紫桃の令嬢
    エルウィング・ヴァリエ(ka0814
    人間(蒼)|16才|女性|聖導士
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 穏かなる銃使い
    石橋 パメラ(ka1296
    人間(蒼)|20才|女性|疾影士
  • 花言葉の使い手
    カーミン・S・フィールズ(ka1559
    人間(紅)|18才|女性|疾影士

  • 来栖 龍馬(ka1890
    人間(蒼)|20才|男性|機導師

  • サー・ルクニール(ka2017
    エルフ|25才|男性|聖導士
依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/06/18 04:53:47
アイコン 相談卓
神凪 宗(ka0499
人間(リアルブルー)|22才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2014/06/22 03:00:05