ゲスト
(ka0000)
南海に進路を取れ
マスター:KINUTA

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
1,000
- 参加人数
- 現在8人 / 3~8人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- プレイング締切
- 2017/09/25 19:00
- リプレイ完成予定
- 2017/10/04 19:00
オープニング
●ポルトワール
海運会社グリーク商会では、家族会議が行われている。
次期会長と目されている長女ニケが、現会長である母を前にして話し込んでいる。
二月前に起きた新造船沈没事故によって生じた負債については、事故を起こした当事者からお釣りが出るほど補填した。おかげで資本金は増えた。
しかし本業自体の収益は、横這い傾向が続いている。
あちこちで歪虚による騒ぎが起きているのも原因の一つだろうが、やはり最も大きな問題は新市場の開拓が出来ていない所にあるのではないだろうか。
現在のところ商会は、西方の各港湾都市としか取引をしていない。グリーク商会は現会長が創設したものだ。企業としてはまだまだ新参の部類に入る。古参勢力と既存のパイを奪い合うことに力を注ぐより、新たなパイを求める努力をすべきではないだろうか。
そこまで話が進んだところであくびが聞こえてきた。
目を向ければ金髪の美少年――弟のナルシスが肘掛によりかかるようにして、頬杖をついている。
「相変わらず金のことばかり考えてるね姉さんは。ねえ、僕もう帰っていい? 正直ここに僕がいる意味ってないよね?」
ニケは銀縁眼鏡を光らせた。弟につかつか歩み寄り、耳を引っ張る。
「いっ、た、た! 何すんだよ!」
「何すんだよじゃないでしょナルシス……金が無くて人間どうやって生きていけると思うの? ええ? びた一文稼がないでのうのうとヒモ生活してる人間には分からないだろうけどね」
母親はすぐさま娘を止めに入った。彼女はいつも息子に甘い。
「これやめなさいニケ。ナルシスをいじめるのは」
「いじめてないわよ母さん。これは躾よ」
と言いながら指を放すニケ。耳をさすってナルシスは、舌を出す。
「暴力をふるう人間ってすぐそういう言い訳するんだよね。ねえ父さん」
話しかけられた父は一拍遅れてパイプの煙を吐き出した。
「ん? んむ」
なんだか分からない生返事。察するに話を聞いていなかったらしい。まあ、彼はいつもこんな調子だ。
「ナルシス、あんたそういえばこの間幽霊船退治に連れて行ったとき、宝島の地図を海に捨てたっけね」
都合の悪い話が蒸し返される気配を感じたナルシスは、姉の顔から目をそらした。
「やだなあ、まだあのこと根に持ってるの? あの時僕言ったじゃない。あんな地図絶対作り物だよって。大体さあ、海賊の宝だの将軍の埋蔵金だの旧帝国の隠された軍資金だの九割九分九厘ただの噂だよ噂。そうだったらいいのになって気持ちが押さえられなくて生み出された妄想だよ。ねえ父さん」
「ん? んむ」
●南海方面
マストにはためくは白地に青十字の旗。
帆に風を受け波を蹴立てて進むのはグリーク商会の高速商船。乗っているのは船員5名とハンターたち。そして。
「ていうかさー、なんでまた僕がさあ、付き合わされてんの。僕の身に何かあったら、マリーおねえさん号泣しちゃうと思うんだけどー」
「黙んなさい」
不平たらたらの操舵手ナルシス。臨時船長のニケ。
彼らは今、南海に出ているところ。目的は南海における独自航路の開拓。めでたく浄化を果たした海賊船船長の日記を参考にして、これまであまり探索が進んでいない海域を調査する。
13魔のカッツォ・ヴァイが異世界から連れてきたオートマトンを使い、人魚の島で騒ぎを起こしたのはつい最近のこと。同盟海域の中でさえ危険はあるのだ。そこから離れるのなら、ハンターの存在はなお欠かせないものとなる。
ちなみにハンターのうちには、カチャも含まれている。本日彼女は酔い止め持参であるので、さほど船酔いに悩まされていない――だからって気分爽快というわけでもないが。
ニケが日誌を片手に、言う。
「この先には、『鮫の顎』と言われている岩礁地帯があるそうです。牙みたいに尖った岩礁が所狭しと立ち並んでいる。引き込まれた船は腹を破られて沈む、おまけに多数の歪虚が潜んでいるとのこと。必ず迂回して通ることと記してありますね」
操舵室から顔を出し、ナルシスが愚痴る。
「何でそんなところにわざわざ行かなきゃなんないのかな。全く意味がわかんないんだけどー」
「いいから操船に集中してナルシス」
●鮫の顎
いざ来てみれば『鮫の顎』は、言われていたほど危険な場所ではなかった。
確かに潮の流れがぶつかりあちこち波立ってはいるのだが、肝心の岩礁らしきものは――ほとんど見当たらない。林立どころかお互い同士遠く離れ、ぽつりぽつりと寂しげにそびえているばかり。
「……ここが『鮫の顎』?」
構えていただけに拍子抜けしたような気持ちを隠せないハンターたち。
ニケは日誌と目の前の光景を見比べ戸惑う。
「いや――確かにここで間違いないはずなんですけど……」
ナルシスが鬼の首でも取ったように文句を言い始めた。
「ほーらほら、だからそんな日誌なんかさあ、アテになんないんだって、僕最初から言ったじゃない」
そこに口笛のような音が聞こえた。空耳ではない。船の下から聞こえる。
皆が船縁を覗いてみれば、2人の女人魚がいた。双子なのだろうか、顔がそっくりだ。
「初めまして、こんにちは。私はリンです」
「私はランです。つかぬ事をお伺い致しますが、あなたたちは強いですか?」
ハンターなので強いと言えば強い。そう答えると彼女たちは、安心したような顔をした。
「それでは少し、お頼みしたいことがあります」
「この海域にいる歪虚を、退治していただけませんか?」
「岩礁が大幅に間引かれたのに、まだ居残っているものがいまして……」
ニケは身を乗り出す。
「え? 岩礁が間引かれたって……どういうことなんですか?」
リンとランは顔を見合わせ、ひそひそ話し合ってから答えた。
「二ヶ月ほど前のことでしょうか」
「ここに見慣れない精霊様が現れまして」
「あのたくさんの岩を持って行ってもいいかしら、建築材料にしたいのだけどと、通りがかった私たちに聞かれました」
「私たちはいいですよと答えました」
「それから一週間ほどたってまたここを通ってみると」
「この通り岩礁が、すっかりなくなっていたのです」
「巣食っていた歪虚もその大半がいなくなっていました」
その話を聞いたカチャの脳裏に、危険信号めいた何かが点滅し始める。
(……まさか……でもそういうことやりそうな人だか精霊だかって……あの人しか……)
直後、けたたましい鳴き声が響いた。人魚たちは一目散に水の中へ潜ってしまう。
取り残された岩礁の陰から翼竜形の歪虚が出てきた。それが群れをなし、船に向かって飛んでくる。
ハンターたちはひとまず揃って迎撃態勢をとった。人魚に話の続きを聞くのは、あれを殲滅した後だ。
海運会社グリーク商会では、家族会議が行われている。
次期会長と目されている長女ニケが、現会長である母を前にして話し込んでいる。
二月前に起きた新造船沈没事故によって生じた負債については、事故を起こした当事者からお釣りが出るほど補填した。おかげで資本金は増えた。
しかし本業自体の収益は、横這い傾向が続いている。
あちこちで歪虚による騒ぎが起きているのも原因の一つだろうが、やはり最も大きな問題は新市場の開拓が出来ていない所にあるのではないだろうか。
現在のところ商会は、西方の各港湾都市としか取引をしていない。グリーク商会は現会長が創設したものだ。企業としてはまだまだ新参の部類に入る。古参勢力と既存のパイを奪い合うことに力を注ぐより、新たなパイを求める努力をすべきではないだろうか。
そこまで話が進んだところであくびが聞こえてきた。
目を向ければ金髪の美少年――弟のナルシスが肘掛によりかかるようにして、頬杖をついている。
「相変わらず金のことばかり考えてるね姉さんは。ねえ、僕もう帰っていい? 正直ここに僕がいる意味ってないよね?」
ニケは銀縁眼鏡を光らせた。弟につかつか歩み寄り、耳を引っ張る。
「いっ、た、た! 何すんだよ!」
「何すんだよじゃないでしょナルシス……金が無くて人間どうやって生きていけると思うの? ええ? びた一文稼がないでのうのうとヒモ生活してる人間には分からないだろうけどね」
母親はすぐさま娘を止めに入った。彼女はいつも息子に甘い。
「これやめなさいニケ。ナルシスをいじめるのは」
「いじめてないわよ母さん。これは躾よ」
と言いながら指を放すニケ。耳をさすってナルシスは、舌を出す。
「暴力をふるう人間ってすぐそういう言い訳するんだよね。ねえ父さん」
話しかけられた父は一拍遅れてパイプの煙を吐き出した。
「ん? んむ」
なんだか分からない生返事。察するに話を聞いていなかったらしい。まあ、彼はいつもこんな調子だ。
「ナルシス、あんたそういえばこの間幽霊船退治に連れて行ったとき、宝島の地図を海に捨てたっけね」
都合の悪い話が蒸し返される気配を感じたナルシスは、姉の顔から目をそらした。
「やだなあ、まだあのこと根に持ってるの? あの時僕言ったじゃない。あんな地図絶対作り物だよって。大体さあ、海賊の宝だの将軍の埋蔵金だの旧帝国の隠された軍資金だの九割九分九厘ただの噂だよ噂。そうだったらいいのになって気持ちが押さえられなくて生み出された妄想だよ。ねえ父さん」
「ん? んむ」
●南海方面
マストにはためくは白地に青十字の旗。
帆に風を受け波を蹴立てて進むのはグリーク商会の高速商船。乗っているのは船員5名とハンターたち。そして。
「ていうかさー、なんでまた僕がさあ、付き合わされてんの。僕の身に何かあったら、マリーおねえさん号泣しちゃうと思うんだけどー」
「黙んなさい」
不平たらたらの操舵手ナルシス。臨時船長のニケ。
彼らは今、南海に出ているところ。目的は南海における独自航路の開拓。めでたく浄化を果たした海賊船船長の日記を参考にして、これまであまり探索が進んでいない海域を調査する。
13魔のカッツォ・ヴァイが異世界から連れてきたオートマトンを使い、人魚の島で騒ぎを起こしたのはつい最近のこと。同盟海域の中でさえ危険はあるのだ。そこから離れるのなら、ハンターの存在はなお欠かせないものとなる。
ちなみにハンターのうちには、カチャも含まれている。本日彼女は酔い止め持参であるので、さほど船酔いに悩まされていない――だからって気分爽快というわけでもないが。
ニケが日誌を片手に、言う。
「この先には、『鮫の顎』と言われている岩礁地帯があるそうです。牙みたいに尖った岩礁が所狭しと立ち並んでいる。引き込まれた船は腹を破られて沈む、おまけに多数の歪虚が潜んでいるとのこと。必ず迂回して通ることと記してありますね」
操舵室から顔を出し、ナルシスが愚痴る。
「何でそんなところにわざわざ行かなきゃなんないのかな。全く意味がわかんないんだけどー」
「いいから操船に集中してナルシス」
●鮫の顎
いざ来てみれば『鮫の顎』は、言われていたほど危険な場所ではなかった。
確かに潮の流れがぶつかりあちこち波立ってはいるのだが、肝心の岩礁らしきものは――ほとんど見当たらない。林立どころかお互い同士遠く離れ、ぽつりぽつりと寂しげにそびえているばかり。
「……ここが『鮫の顎』?」
構えていただけに拍子抜けしたような気持ちを隠せないハンターたち。
ニケは日誌と目の前の光景を見比べ戸惑う。
「いや――確かにここで間違いないはずなんですけど……」
ナルシスが鬼の首でも取ったように文句を言い始めた。
「ほーらほら、だからそんな日誌なんかさあ、アテになんないんだって、僕最初から言ったじゃない」
そこに口笛のような音が聞こえた。空耳ではない。船の下から聞こえる。
皆が船縁を覗いてみれば、2人の女人魚がいた。双子なのだろうか、顔がそっくりだ。
「初めまして、こんにちは。私はリンです」
「私はランです。つかぬ事をお伺い致しますが、あなたたちは強いですか?」
ハンターなので強いと言えば強い。そう答えると彼女たちは、安心したような顔をした。
「それでは少し、お頼みしたいことがあります」
「この海域にいる歪虚を、退治していただけませんか?」
「岩礁が大幅に間引かれたのに、まだ居残っているものがいまして……」
ニケは身を乗り出す。
「え? 岩礁が間引かれたって……どういうことなんですか?」
リンとランは顔を見合わせ、ひそひそ話し合ってから答えた。
「二ヶ月ほど前のことでしょうか」
「ここに見慣れない精霊様が現れまして」
「あのたくさんの岩を持って行ってもいいかしら、建築材料にしたいのだけどと、通りがかった私たちに聞かれました」
「私たちはいいですよと答えました」
「それから一週間ほどたってまたここを通ってみると」
「この通り岩礁が、すっかりなくなっていたのです」
「巣食っていた歪虚もその大半がいなくなっていました」
その話を聞いたカチャの脳裏に、危険信号めいた何かが点滅し始める。
(……まさか……でもそういうことやりそうな人だか精霊だかって……あの人しか……)
直後、けたたましい鳴き声が響いた。人魚たちは一目散に水の中へ潜ってしまう。
取り残された岩礁の陰から翼竜形の歪虚が出てきた。それが群れをなし、船に向かって飛んでくる。
ハンターたちはひとまず揃って迎撃態勢をとった。人魚に話の続きを聞くのは、あれを殲滅した後だ。
解説
補足説明
これは翼竜型歪虚を始末し人魚たちの憂いを取り除くことを目的とするシナリオ。
『幽霊船からふんだくれ』に続く話です。
歪虚についてのデータは以下の通り。
数:全部で20羽。
大きさ:羽を広げて2メートル。
形:翼竜。
食性:肉食。
知性:鳥。
攻撃:クチバシでつつく。噛む。体当たりする。手や足の爪で引っ掻く。
備考:飛行能力はあるが潜水能力はない。完全に水中にいる者は攻撃することが出来ない。体形上、歩行能力はいまいち。羽をうまく畳むことが出来ず、翼腕をついてのよちよち歩きになってしまう。
数は多少多いですが、動きは単純な敵です。
高速商船には4人乗りのボートが、4隻装備されています。使い道は自由です。
人魚たちは戦いが終わるまで、船の下に隠れています。安全になったらまた出てきます。
何か質問すれば自分たちが知る範囲のことを教えてくれます。
戦闘が終わった後は、改めて海域を調査した後、戻ることになります。
これは翼竜型歪虚を始末し人魚たちの憂いを取り除くことを目的とするシナリオ。
『幽霊船からふんだくれ』に続く話です。
歪虚についてのデータは以下の通り。
数:全部で20羽。
大きさ:羽を広げて2メートル。
形:翼竜。
食性:肉食。
知性:鳥。
攻撃:クチバシでつつく。噛む。体当たりする。手や足の爪で引っ掻く。
備考:飛行能力はあるが潜水能力はない。完全に水中にいる者は攻撃することが出来ない。体形上、歩行能力はいまいち。羽をうまく畳むことが出来ず、翼腕をついてのよちよち歩きになってしまう。
数は多少多いですが、動きは単純な敵です。
高速商船には4人乗りのボートが、4隻装備されています。使い道は自由です。
人魚たちは戦いが終わるまで、船の下に隠れています。安全になったらまた出てきます。
何か質問すれば自分たちが知る範囲のことを教えてくれます。
戦闘が終わった後は、改めて海域を調査した後、戻ることになります。
マスターより
KINUTAです。
ナルシス君は今日も労働意欲に欠けています。
ナルシス君は今日も労働意欲に欠けています。
関連NPC
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2017/10/01 03:05
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 マルカ・アニチキン(ka2542) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2017/09/24 23:55:00 |
|
![]() |
【質問卓】 メイム(ka2290) エルフ|15才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2017/09/24 01:53:19 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/09/20 18:25:31 |