ゲスト
(ka0000)
【幻視】魂の灯火
マスター:凪池シリル

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加人数
- 現在18人 / 1~25人
- 報酬
- 寸志
- 相談期間
- 5日
- プレイング締切
- 2017/10/13 07:30
- リプレイ完成予定
- 2017/10/22 07:30
オープニング
※このシナリオは原則として戦闘が発生しない日常的なシナリオとして設定されています。
受付に案内されて、指定された場所へと向かう。依頼者は、ちゃんとそこにいた。
「やあ……今回はよろしく。……やっぱりなんだか変な気分だな。『こっち側』として挨拶するのは」
そう言って、今回の依頼人──伊佐美透は、困ったように笑った。
「大した報酬も出せずにすまない。要は身の上相談に乗ってほしいわけだが、本来、他人の手を借りて解決するようなものでも無いっていうのも分かってるんだ。気負わず、雑談会だと思って好き勝手に意見してくれないか。……ああうん、テーブルの上のものは、適当に食べ始めててくれていい。それで、ええと……どこから話そうかな」
やってきた人たちに着席を促しながら、未だ調子がつかめない様子で透は話し始める。
「でも、そうだな。やっぱり初めから聞いてもらおうか。ちょっと長い、面白くもない自己語りになってしまうが……まあ、依頼主だしな。そう思って暫く我慢して聞いてくれ」
慣れない感じではあったが、それでも役者である彼の声は、聞き取りやすく、感情をよりはっきり伝えてくる緩急があった。
まるで朗読劇のモノローグのように、彼は語り始める。
……透がクリムゾンウェストへと転移してきたのは、サルバトーレ・ロッソが転移してくるより少し前だ。時期にして、そのおよそ二か月ほど前だったろうか。一人で転移したがゆえに訳が分からなくて、これが夢でないと信じるまでに随分とかかった。
その時、23歳。若手の役者として、それでも、確実に手ごたえを感じ始めた頃だった。オーディションが通ることも増えてきた。そうするうちに演出家に気に入られて、直接話を貰う事も出来るようになる。毎月のように役を貰って舞台を踏めることが日常になってきた。そのうちに、『当たり役』ともいえるものが出来て、話題になって……単独のファンイベントなんかも、事務所が企画してくれるようになった! ……そんな矢先。
「異世界に転移したなんて信じられなかった。長い夢を見てるんだと。いつか目が覚めて、迎えるはずだった、転移した日、その翌朝になってるんだと。だって……」
サルバトーレ・ロッソの転移。大量のリアルブルー人との邂逅。その中に、再会もあった。……紛れもなくこれが現実で、そして、自分がこうして異世界にいる間も、リアルブルーでの時は過ぎているのだと、意識し、理解せざるを得なかった。
「……じゃああの時受けたオーディションの結果はどうなるんだ!? その前に受けた雑誌のインタビューは、ちゃんと掲載できたのか!? ファンになってくれた人たちは!? ……俺の誕生日の、企画に。決して安くはない参加費を払ってくれて。一人一人と握手して、ありがとう、と伝えたのだって、それほど前じゃなかったんだぞ……?」
──そんな感じで。
「一度は、絶望しかけたんだ。訳も分からず、積み上げてきたものが、一気に……壊された気がして」
一区切りつけるための台詞は、どこか言葉を選んでいるようでもあった。自分だけが、自分が一番不幸などと言えるわけがないのも、分かっている。……縁あって、鎌倉クラスタ戦には何度か関わるようになった、その後とくればなおさら。
一度、ゆっくりと息を吐く。
「……ここまでが、相談の前提その一、だ」
その一。間の取り方を分かっているように、絶妙な呼吸を置いてから、続きが期待される「その二」を彼は口にする。
「……コーリアスからの手紙について、ここの皆は把握しているだろうか」
ゆっくり、見まわして、反応を待つ。
コーリアスのアジトを探索したという手紙は、ハンターたちによって発見され、それゆえ中身については既に周知のものとなっている。
──ハンターの未来を憂い、呪う手紙。
「俺は」
ぐ、と力をこめて、特にはっきりと聞こえる声でそう言って。そこで一度、言葉を止める。そして。
「それでも、演じることは、諦めたくない。叶うなら、リアルブルーの世界で、前と同じように。未来を否定されて──否定されたからこそ、未だ強くそう思ってると、気付いたんだ」
叫ぶような言葉ではなく、口調は静かに。だが良く通る声で、きっぱりと彼は言った。
「相談したいことは二つ。……前提も二つでわざとらしいな。偶々なんだが」
笑いながら、彼はピッと一つ指を立てた。
「ソウルトーチってスキルがあるよな。闘狩人の奴には説明の必要はないと思うが。……あれを俺は今、取得してないんだ。──気持ち悪いと思ってしまって。自分でいい演技ができたと思っていないのに、注目を集められることが」
覚えてしまったら、意識せずにいられるだろうか。自分がいったい今どうして見つめられているのか、疑わずにいられるだろうか。
何かを振り払うように、ゆっくりと首を振る。
「──思う反面、その力が実際役に立って、何かを守る場面もよく見てきた。鎌倉クラスタ戦では、特にな。……力は、力だ。使い方次第だ。つまらない拘りで選択肢を狭めて、結果守れるものも守れないのは、それは、それこそ、逃げじゃないのか? 敗北じゃないのか?」
言いながら、じっと、彼は開いた掌を見つめていた。微かに震えている。理屈で言い聞かせても、感情は割り切れるものではない。迷っているうちに、重大な喪失を味わうかもしれない。でも、変わってしまえば、確実に、もう知らなかったころには戻れない。だから、理屈を、言い訳を、重ねるだけでは決断は出来ない。
「どう思う? 俺はどうすればいい? ──意見を、聞かせて欲しい」
掌を、握る。そして、指を二本立てる。
「二つ目だ。これは、相談というよりは、まあ、背中を押してほしいというか。リアルブルーに行けるようにもなったことだし──かつて居た事務所に連絡してみようと思うんだ」
後半の言葉を告げるとき。彼が吐いた息には、隠しきれない緊張があった。
「不可抗力とはいえ、同時の状況からすれば何も告げずに失踪したことになるんだろうな、俺は。……滅茶苦茶迷惑かけたんだろうなあ。今更連絡とられても困惑させるだけかもしれないが……それでも、出来るだけ『前と同じように』と思うなら、ここから……確かめて、おきたい」
きっとそれは、『何を失ったのか』を確かめる行為になるのだろう。
知らないと突き放されても文句は言えないだろう。戻ることが許されるとして、覚醒者となった自分を「普通の役者」として扱ってくれるだろうか。……ファンの子たちは、まあ確実に、『別の推し』を見つけてるだろう。
分かってる。それでも、確かめなければいけない。新しく始めるなら、まず、現状を。
「分かってるんだが──やっぱり怖い」
どこか子供っぽい声でそう言って、彼は天井を仰いだ。
「別に励ましてくれとかじゃないんだ。緊張が解れるように、適当になんか話してくれれば。……長くなって本当にすまない。まあ、そんな感じだ」
受付に案内されて、指定された場所へと向かう。依頼者は、ちゃんとそこにいた。
「やあ……今回はよろしく。……やっぱりなんだか変な気分だな。『こっち側』として挨拶するのは」
そう言って、今回の依頼人──伊佐美透は、困ったように笑った。
「大した報酬も出せずにすまない。要は身の上相談に乗ってほしいわけだが、本来、他人の手を借りて解決するようなものでも無いっていうのも分かってるんだ。気負わず、雑談会だと思って好き勝手に意見してくれないか。……ああうん、テーブルの上のものは、適当に食べ始めててくれていい。それで、ええと……どこから話そうかな」
やってきた人たちに着席を促しながら、未だ調子がつかめない様子で透は話し始める。
「でも、そうだな。やっぱり初めから聞いてもらおうか。ちょっと長い、面白くもない自己語りになってしまうが……まあ、依頼主だしな。そう思って暫く我慢して聞いてくれ」
慣れない感じではあったが、それでも役者である彼の声は、聞き取りやすく、感情をよりはっきり伝えてくる緩急があった。
まるで朗読劇のモノローグのように、彼は語り始める。
……透がクリムゾンウェストへと転移してきたのは、サルバトーレ・ロッソが転移してくるより少し前だ。時期にして、そのおよそ二か月ほど前だったろうか。一人で転移したがゆえに訳が分からなくて、これが夢でないと信じるまでに随分とかかった。
その時、23歳。若手の役者として、それでも、確実に手ごたえを感じ始めた頃だった。オーディションが通ることも増えてきた。そうするうちに演出家に気に入られて、直接話を貰う事も出来るようになる。毎月のように役を貰って舞台を踏めることが日常になってきた。そのうちに、『当たり役』ともいえるものが出来て、話題になって……単独のファンイベントなんかも、事務所が企画してくれるようになった! ……そんな矢先。
「異世界に転移したなんて信じられなかった。長い夢を見てるんだと。いつか目が覚めて、迎えるはずだった、転移した日、その翌朝になってるんだと。だって……」
サルバトーレ・ロッソの転移。大量のリアルブルー人との邂逅。その中に、再会もあった。……紛れもなくこれが現実で、そして、自分がこうして異世界にいる間も、リアルブルーでの時は過ぎているのだと、意識し、理解せざるを得なかった。
「……じゃああの時受けたオーディションの結果はどうなるんだ!? その前に受けた雑誌のインタビューは、ちゃんと掲載できたのか!? ファンになってくれた人たちは!? ……俺の誕生日の、企画に。決して安くはない参加費を払ってくれて。一人一人と握手して、ありがとう、と伝えたのだって、それほど前じゃなかったんだぞ……?」
──そんな感じで。
「一度は、絶望しかけたんだ。訳も分からず、積み上げてきたものが、一気に……壊された気がして」
一区切りつけるための台詞は、どこか言葉を選んでいるようでもあった。自分だけが、自分が一番不幸などと言えるわけがないのも、分かっている。……縁あって、鎌倉クラスタ戦には何度か関わるようになった、その後とくればなおさら。
一度、ゆっくりと息を吐く。
「……ここまでが、相談の前提その一、だ」
その一。間の取り方を分かっているように、絶妙な呼吸を置いてから、続きが期待される「その二」を彼は口にする。
「……コーリアスからの手紙について、ここの皆は把握しているだろうか」
ゆっくり、見まわして、反応を待つ。
コーリアスのアジトを探索したという手紙は、ハンターたちによって発見され、それゆえ中身については既に周知のものとなっている。
──ハンターの未来を憂い、呪う手紙。
「俺は」
ぐ、と力をこめて、特にはっきりと聞こえる声でそう言って。そこで一度、言葉を止める。そして。
「それでも、演じることは、諦めたくない。叶うなら、リアルブルーの世界で、前と同じように。未来を否定されて──否定されたからこそ、未だ強くそう思ってると、気付いたんだ」
叫ぶような言葉ではなく、口調は静かに。だが良く通る声で、きっぱりと彼は言った。
「相談したいことは二つ。……前提も二つでわざとらしいな。偶々なんだが」
笑いながら、彼はピッと一つ指を立てた。
「ソウルトーチってスキルがあるよな。闘狩人の奴には説明の必要はないと思うが。……あれを俺は今、取得してないんだ。──気持ち悪いと思ってしまって。自分でいい演技ができたと思っていないのに、注目を集められることが」
覚えてしまったら、意識せずにいられるだろうか。自分がいったい今どうして見つめられているのか、疑わずにいられるだろうか。
何かを振り払うように、ゆっくりと首を振る。
「──思う反面、その力が実際役に立って、何かを守る場面もよく見てきた。鎌倉クラスタ戦では、特にな。……力は、力だ。使い方次第だ。つまらない拘りで選択肢を狭めて、結果守れるものも守れないのは、それは、それこそ、逃げじゃないのか? 敗北じゃないのか?」
言いながら、じっと、彼は開いた掌を見つめていた。微かに震えている。理屈で言い聞かせても、感情は割り切れるものではない。迷っているうちに、重大な喪失を味わうかもしれない。でも、変わってしまえば、確実に、もう知らなかったころには戻れない。だから、理屈を、言い訳を、重ねるだけでは決断は出来ない。
「どう思う? 俺はどうすればいい? ──意見を、聞かせて欲しい」
掌を、握る。そして、指を二本立てる。
「二つ目だ。これは、相談というよりは、まあ、背中を押してほしいというか。リアルブルーに行けるようにもなったことだし──かつて居た事務所に連絡してみようと思うんだ」
後半の言葉を告げるとき。彼が吐いた息には、隠しきれない緊張があった。
「不可抗力とはいえ、同時の状況からすれば何も告げずに失踪したことになるんだろうな、俺は。……滅茶苦茶迷惑かけたんだろうなあ。今更連絡とられても困惑させるだけかもしれないが……それでも、出来るだけ『前と同じように』と思うなら、ここから……確かめて、おきたい」
きっとそれは、『何を失ったのか』を確かめる行為になるのだろう。
知らないと突き放されても文句は言えないだろう。戻ることが許されるとして、覚醒者となった自分を「普通の役者」として扱ってくれるだろうか。……ファンの子たちは、まあ確実に、『別の推し』を見つけてるだろう。
分かってる。それでも、確かめなければいけない。新しく始めるなら、まず、現状を。
「分かってるんだが──やっぱり怖い」
どこか子供っぽい声でそう言って、彼は天井を仰いだ。
「別に励ましてくれとかじゃないんだ。緊張が解れるように、適当になんか話してくれれば。……長くなって本当にすまない。まあ、そんな感じだ」
解説
そんなこんなで過去ときめいていた舞台俳優いさみんとお食事会イベントー。こう言うとイベントの意味がなんか違ってそうだな。
さておきまして。一応、提示されている議題は二つですね。
【彼はスキル『ソウルトーチ』を習得すべきか否か? あなたがそう考える理由は?】
【かつて所属していた事務所、「失った過去」にアクセスしようとする彼に、何か言うことは?】
なのですが。ぶっちゃけここがどういう話の流れになろうが、シナリオの趣旨としてはそんな重要じゃありません。
肝は【コーリアスからの手紙】です。
ピンと来てない方は【幻視】連動シナリオ特設ページより公開されているエピローグノベルをどうぞ。
マスターの意図としては、透の相談をとっかかりにして、貴PCのこの手紙に対する心情整理をどうぞ、という事です。
なので、スキルを取らせようとか依頼を成功させようとかそんなことは意識せず、貴PCの、自然な考えを表現する場になってほしいと、マスターとしてはそう願っております。
つまりは心情系シナリオです。
特に二つ目の質問。本当に、ただの雑談をしてもかまいません。励ましたり慰めたりだけでなく、逆に自分語りをしたり、笑い話をしたり。
あるいは回答ぶっちぎって、内心で話を聞いて思ったこと、あなた自身が「失ったかもしれないもの」を思い返して飯食いながら一人悶々としてる、なんてのも全然ありだと思います。
どうぞ、「この状況でできること」を、あなたのPCらしく、ご自由に演出ください。そんなシナリオです。
さておきまして。一応、提示されている議題は二つですね。
【彼はスキル『ソウルトーチ』を習得すべきか否か? あなたがそう考える理由は?】
【かつて所属していた事務所、「失った過去」にアクセスしようとする彼に、何か言うことは?】
なのですが。ぶっちゃけここがどういう話の流れになろうが、シナリオの趣旨としてはそんな重要じゃありません。
肝は【コーリアスからの手紙】です。
ピンと来てない方は【幻視】連動シナリオ特設ページより公開されているエピローグノベルをどうぞ。
マスターの意図としては、透の相談をとっかかりにして、貴PCのこの手紙に対する心情整理をどうぞ、という事です。
なので、スキルを取らせようとか依頼を成功させようとかそんなことは意識せず、貴PCの、自然な考えを表現する場になってほしいと、マスターとしてはそう願っております。
つまりは心情系シナリオです。
特に二つ目の質問。本当に、ただの雑談をしてもかまいません。励ましたり慰めたりだけでなく、逆に自分語りをしたり、笑い話をしたり。
あるいは回答ぶっちぎって、内心で話を聞いて思ったこと、あなた自身が「失ったかもしれないもの」を思い返して飯食いながら一人悶々としてる、なんてのも全然ありだと思います。
どうぞ、「この状況でできること」を、あなたのPCらしく、ご自由に演出ください。そんなシナリオです。
マスターより
ところで【幻視】
気になったんですが10/14にリリースされるリベンジシナリオ。あれ、同じ日にネネ・グリジュ戦もリリース予定なんですが。意識してくれてる人いるのかしらこれ。
いやあのー、本筋と全然かかわってないからピンと来てないかもしれないですが、彼女も一応【幻視】シナリオに合わせて出てきててね…?
まあそんなこんなで、これを見た方でもし周りに気にしてそうなPLさんがいらっしゃるようでしたら、こそっと周知してくれると。はい。
そう言えば私も突如失踪してしれっと二年半ぶりくらいに復帰したマスターですが、覚えてくれてる人いたのかしら。そんな凪池シリルでした。
気になったんですが10/14にリリースされるリベンジシナリオ。あれ、同じ日にネネ・グリジュ戦もリリース予定なんですが。意識してくれてる人いるのかしらこれ。
いやあのー、本筋と全然かかわってないからピンと来てないかもしれないですが、彼女も一応【幻視】シナリオに合わせて出てきててね…?
まあそんなこんなで、これを見た方でもし周りに気にしてそうなPLさんがいらっしゃるようでしたら、こそっと周知してくれると。はい。
そう言えば私も突如失踪してしれっと二年半ぶりくらいに復帰したマスターですが、覚えてくれてる人いたのかしら。そんな凪池シリルでした。
リプレイ公開中
リプレイ公開日時 2017/10/21 21:32
参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談&雑談卓 ジャック・エルギン(ka1522) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2017/10/11 20:42:01 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2017/10/11 09:20:07 |